最初に感じさせられた冷然とした響きではない。 むしろ、わずかながらの親しみを感じさせる調子の言葉で、まるで友人に秘密を打ち明けるように少女は自らの正体を明かした。 それは、ここに来てからずっと予想していたものでもあったために、特別驚くほどのものではなかった。 だが、想像する限り、最も厄介な相手にどうやら自分は捕まってしまったらしい。 〝|蒼月の女神《ヴェスペリア》〟――|天界《カエルム》・|現世《サエクルム》・|冥界《オルクス》、本来分離されている三つの世界を繋げる存在。 ヴィオレタを自身の好奇心のために寿命という枷から解き放った元凶。 目の前の少女によって、どれだけヴィオレタが苦しむ羽目になったことか。 そもそも、この少女が三つの世界を繋げたりしなければ、このような人類の存亡をかけた争いも起こってはいないのだ。 それを思えば、怒りも湧いてくる。 だが、自分でも不思議なことにレイフは目の前の少女を憎みきることもできなかった。 少女の瞳に微かに浮かぶ〝寂寥感〟――それはおそらく本人さえも気がついていない感情。 自分がここに呼び出されてからというもの、少女はこれも自覚があるのかは定かではないが、心から自分とのやりとりを愉しんでいるように思えた。 そして、その姿はどうしても――〝彼〟を彷彿とさせる。 「私に聞きたいことが、たくさんあるでしょう。構いませんよ、今は不思議と気分が良いですから。時間もたっぷりとあります」 「生憎と、俺には時間がない。俺からの頼みは、ひとつだけだ。俺をもとの世界に戻してくれ。ぶっ飛ばさなきゃいけねぇヤツが居るんでな」 一瞬、少女は意表を突かれたように息を呑む。 だが、すぐに相好を崩し、ケーキを一口頬張った。 「ふふ、私にあなたを生き返らせてあげることができると確信しているような言い方ですね」 「そうじゃなきゃ、ここに呼びつけねぇだろ。なにが望みだ?」 「望みですか。むしろ、あなたが私に何をできるというのですか? 無力なひとりの死神に過ぎないあなた風情が――」 その声音は意図的か、突き放すように冷然とした響きがあった。 だが、その一方で口元に浮かぶ少女におよそ似つかわしくない蠱惑的な微笑みには、この駆け引きに愉悦を感じる抑えきれない狂気が滲んでいる。 それは暗に、つ
Last Updated : 2025-09-21 Read more