レイフは鎖を引き、地面へと埋まっていた大鎌の刃を再び宙へと放つ。 勢いそのままに腕に力を入れ鎖を廻せば、鋭利な風切り音が空間を支配するように響き渡る。 レイフが見据えるのは、|旋棍《トンファー》を構えて迅雷の如き勢いで迫り来るルーカス。 「斬り裂けえぇぇ――!!!!」 瞬く間に両者の距離が詰まるなか、慈悲なき死神の刃がルーカスの頭上へと振り下ろされる。 「ついてこれるか――俺の|速度《スピード》に?」 ルーカスは口角を三日月のように上げた後に、雄々しく荘重な旋律を奏でてゆく。 〝|夜の湖面に見えた其方の姿は 陽炎のように《Quasi Imago Fragilis Super Undas Nocturnas Fluitans》 |吹きつける嵐は 剣のように《Velut Procella Acerba, Tanquam Ensis Fulminans》 |この身を削る痛み それさえも我が歩みを阻むことなく《Etiam Dolor Corporis Meum Exhauriens Iter Meum Non Retinet》 |夜霧に攫われた 其方の香りを探る《Quaero Odorem Tuum, Quem Nebula Noctis Rapuit》 |再び手を繋がん 白白明ける陽の下で《Iterum Manus Teneamus Sub Luce Diei Alboris》 〟 ――『|西風の牙《ゼフィロス・グレイガ》』!! 碧い風が、絹の衣のようにルーカスの身体に纏わりつき、上空より飛来した刃を〝受け流した〟。 「なっ――」 驚愕にレイフの目が見開かれる。 彼に続く言葉を発する間も与えず、ルーカスの姿が消えた。 |否《いや》、消えたのではなく〝移動〟したのだ。 一瞬にしてレイフの正面へと――。 目前にルーカスの姿が現れたかと思った瞬間には、既にレイフの腹部へと旋棍が打ち込まれていた。 「かはっ――!?」 「レイフ――!!!!」 暴風と言って良い風を纏った旋棍の一撃が、易々とレイフの身体を吹き飛ばしてゆく。 冷たい地面が無情に背を削る。 ヴィオレタの悲痛な叫びが、レイフの耳朶を打つ。 「大丈夫だ……」 何度か咳を出した|後《のち》に、レイフは駆け寄ろうとするヴィオ
Terakhir Diperbarui : 2025-09-15 Baca selengkapnya