All Chapters of 欲しがり男はこの世のすべてを所望する!: Chapter 31 - Chapter 34

34 Chapters

act:毒占欲の果てに7

「こればっかりは、お願いをきけないよ。ちゃんと傷が治ってからじゃないと、ダメだから」「だって……すごく克巳さんが欲しいって思っちゃったんだもん。しょうがないじゃないか」「困ったコだな、君は。そんな煽るような目をして言わないでくれ。自制が利かなくなるだろ」 涙に濡れた瞳は、いつも以上に俺のことを煽りまくる。心を解放して強請られているのが伝わるからこそ、手を出さずにはいられない。「だって欲しいんだ、アナタのすべてが。ねぇ、ちょうだぃ……」 掠れた声に誘われて涙に濡れた頬を両手で包み込み、稜の唇に自分の唇を思いきり重ねてしまった。「ン、ンっ……もっと――っ」 俺の舌にぎゅっと自分の舌を絡ませて、逃げられないようにしてるクセに、まだ求めてくる。顔の角度を変えて稜の口内を責める感じで、上顎に向かってぬるりと舌を滑らせてやった。「っ……あぁん、克巳さ……」 ついでに薄い病衣の上から背筋を下から上になぞってやると、ビクビクッと躰を振るわせた。甘い吐息を吐く稜の耳元に、そっと唇を寄せる。「一応君は病人なんだ、大人しくしないとダメだよ」 そんなことを言いつつもイジワルな俺は、背筋に這わせていた指を上から下へとなぞっていった。背中から腰へ、そしてその下にも――「ああぁっ……耳元で喋るの、やめっ……んっ、感じちゃ……うっ」 ただ指を上下に往復させているだけなのに、息を乱して体温を上げていく稜。「そんな変な声を出していると、看護師さんが来ちゃうかもね。ちゃんと我慢しないと」 笑いながら形のいい稜の耳を唇で食んでやると、左手を振りかぶって、いきなり頭を殴りつけた。「はぁはぁ……克巳さんのバカ! スケベ! もう知らないっ!」 俺の躰をどんと突き飛ばし、真っ赤な顔をして布団に潜り込む。そんな彼を見て、声をたてて笑ってしまった。さっきの態度とは一変、元気な様子が嬉しくて堪らない。それに――。(――欲しいクセに、一生懸命にガマンするなんて)「今の稜の姿、なんだか下着の中で猛ってる、君の分身の姿に思えてならないよ」「なっ、なんでそんな表現するかな。それって酷くない?」 ちょっとだけ怒った声が、布団の中からくぐもって発せられた。俺は感じたままを、素直に言葉にしただけなのに。「だって、そうだろ。ほら――」 布団の形状から稜の体勢を予想し両腕を突っ込んで、その
last updateLast Updated : 2025-07-23
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act:ゲイ能人・葩御稜として

「お昼のショータイム! 特ダネ de ワイドショーがお送りします今日のゲスト。今、超話題のあの人、芸能人ならぬゲイ能人表明した、モデルで俳優の葩御稜さんですっ!」「はいはーい♪ お昼の明るい時間に、俺みたいなゲイ能人がテレビに堂々と出演しちゃっていいのかな、みたいな。葩御稜で~す、皆さん、こんにちは!!」 久しぶりに浴びるスポットライトを躰に感じ、この場所に戻ってきた高揚感で胸がいっぱいになった。 まずはそれを落ち着かせようと深呼吸をしてから、いつもの芸能人スマイル全開でカメラに向かって手を振りながら登場し、指定されている席に優雅に腰をおろした。目の前にいる司会者のふたりが、ゲストの俺とおもしろおかしくトークしていく形で、ワイドショーが展開される番組だった。 スタジオには出演祝いの花輪が、所狭しと飾られていた。色とりどりの花は目に優しい上に、とてもいい香りを放っていたので、気持ちが自然と穏やかになっていく。「葩御さん、はじめまして。アナウンサーの藤井と申します」「アシスタントの鷲見と申します。この度はご出演してくださり、ありがとうございます」 俺はそれぞれに手を伸ばして握手をし、ほほ笑みを絶やさずに丁寧にお辞儀をした。「いえいえ、こちらこそ。真昼間から俺のようなゲイ能人を呼んでもらえたのが、奇跡みたいな待遇ですって♪」 小首を傾げて肩よりも伸びきってしまった髪を、ふわりとかき上げる。「女の私から見ても、本当に色気があって羨ましいです。葩御さん」 場を盛り上げようとしたのか、アシスタントの鷲見さんがまるで女子高生のようなノリで話しかけてきたので、お返しをしてあげようと考えた。腰を上げて、目の前にいるアシスタント嬢の頭に手を伸ばし、優しく撫でてあげる。「鷲見さん、俺のこと名字呼び名じゃ硬いから、稜さんって呼んでほしいな♪」 頭を撫でていた手を頬に移動させ、そっとなぞるように顎に滑らせてから、くいっと強引に上向かせた。瞳を細めて顔を近づけてやると、ブワッとその頬が真っ赤に染まっていく。「おやおや早速、鷲見さんが葩御さんの色気に、やられちゃいましたね」「え? あの、だって――」「あれぇ、藤井さん。もしかしてヤキモチを妬いてるとか?」 アシスタント嬢から手を放し、隣の席にいるアナウンサーを自分に近付かせるべく、無理やりネクタイを引っ張った。
last updateLast Updated : 2025-07-24
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act:ゲイ能人・葩御稜として②

「さて改めまして、もう一度ご紹介致します。モデルで俳優の葩御稜さんです」「こんにちは、ど~も♪」 テレビカメラに向かっていつものようにほほ笑み、ふたたび右手を振ってみせた。「稜さんってお呼びしますね。今日はプライベートについて、いろいろ突っ込んだ質問していきますので、どうぞヨロシク」 アナウンサーが原稿を手にして、にこやかに笑いながら俺の顔を見る。「遠慮せずに、ど~ぞ♪」 緊張を解すべく、目の前に置いてあったお茶を一口飲んだ。「えっと稜さんは幼い頃から、モデルのお仕事をされていたんですね」「こちらが、そのときのお写真になります。すっごくかわいらしい」 アシスタント嬢が大きく引き伸ばした写真を、テレビカメラに向ける。 リコちゃんと仲が良かったときの、小さな自分がそこにいた。純真無垢でなにも知らない、ただリコちゃんのことが好きだった俺――。「カメラマンをしている父親と、読者モデルの母親の間に生まれたんですけど、性格の不一致が原因で離婚したそうなんです。その後、母親がファッションモデルで生計を立てながら、俺を育ててくれました。小さいときから一緒に引っ付いていたせいでしょうか、いきなり声をかけられたんです。それがモデルになるきっかけで、いろんな服を着ることができて、すごく楽しかったですよ」 両親の離婚の本当の原因は父親が若い女に走ったからだと、大きくなってから聞いたんだけどね。「ずっと、モデルのお仕事をされていたんですね。この中学から高校にかけてのお写真、雰囲気が一気に大人になったように見えます」「ああ、それね――」 アナウンサーの言葉に誘導されるように、パネルが二枚並べられ、ちょうど比較しやすい状態になっているのが目に留まる。中学一年のときと、高校二年のときのものだった。「かわいらしかった稜さんの変化は、成長期ですかね。背が伸びて、男らしさに磨きがかかったように見えます」 アナウンサーがしげしげとふたつの写真を見比べて、率直な感想を述べた。それに対して俺は、意味深な笑みを浮かべてやった。「確かに成長期もあったけど、性長期のトラブルがあった時期なんですよ。性長期の性はサガって漢字だよ、藤井さん」「……トラブル、ですか?」 目の前のふたりは困惑した表情を浮かべながら、顔を見合わせた。芝居がかっていないその様子は、さすがはプロというべき
last updateLast Updated : 2025-07-24
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act:ゲイ能人・葩御稜として③

 稜が『大事なことをテレビで暴露するかもしれないよ♪』というメッセージを送ってきたせいで、どうにも気になった俺は銀行を休み、テレビ局の裏口で待機していた。ここで待機していても、彼に逢えるかどうかわからない――表の玄関から出てしまったら、そのまますれ違いとなってしまうだろう。 マスコミがおもしろおかしく誇張をした報道のせいで、世間の目がまだ稜に対して冷たい視線を向けている最中に退院。その後、芸能界に復帰するために迷惑をかけた関係各所に、謝罪行脚をしていると電話をもらったきり、連絡が途絶えてしまった。メールをしても返事が来ず、自宅に赴こうかと思ったときに、待ちに待ったメッセージが着て。『こんなに、しっぺ返しを食らうとは思わなかった。毎日お偉いさんに頭を下げる日々に、正直疲れ切ってしまったけど、何とか頑張るから』 これを読んで、稜が住んでいるマンションに向かう足が止まってしまった。いつも明るく振舞う彼が弱音を吐いている姿に、今直ぐに駆けつけたくなったけど、俺が行ったところでなにができるだろうかと……。 逢いたい気持ちをぐっと堪えて、メールの返信をすべく文章を考える。彼にこれ以上の負荷がかからないように、当たり障りのないものにしなければならない。『あまり無理せずに頑張るんだよ。応援してる』 たったこれだけを打ち込むのに、えらく時間がかかってしまった。本当はもっと伝えたいことがあったり、聞きたいこともあったせいで、長い文章を打ち込んでしまった。本当に稜については、貪欲な自分。そこから不要なものを一気に削除し、ここまで短いものに直して送信した。 これの返事が来たのが送信した、一週間後の昨日だった。ありがとうの言葉と一緒にテレビ出演のことが書いてあり、復帰の目途が立ったことに安堵したのだが――稜が出演するという番組をスマホに映して、画面を食い入るように眺めた。久しぶりに目にする彼の姿に、胸が痛いくらいに高鳴る。(また少しだけ、痩せたんじゃないだろうか。ほっそりして見えるのは、小さい画面で彼を見ているせい?)「やっと、君に逢えたというのに――」 カメラ目線でこちらを見る視線と俺の視線は、残念ながら絡んでいないんだね。 君が見つめる先にいるのは、目の前の司会者とテレビ画面のむこう側にいる、視聴者なのだから。俺を魅了したその笑みは、たくさんの人を惹きつけるだろう
last updateLast Updated : 2025-07-24
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