「玄関前でなんて、克巳さんらしい。目の前に自宅があるのに、そこでヤっちゃうんでしょ?」「どうなるかは、陵次第。そうやって俺を煽り続けたら、寒空の下で裸体を晒すことになるが、それでいいのかい?」「克巳さんにくっつけば、寒くないもんね! と言いたいところだけど、寒がりな俺には無理な話だわ。キスは、自宅に帰ってからでいい?」 今が冬場でよかった。夏場だったなら、素直に自宅にあがってもらえなかったであろう交渉がうまくいき、安堵のため息をつく。「わかった。それにプラスして冷えた躰を温めるのに、お風呂で乾杯するのはどうだろうか。陵の好きなビールの銘柄は、そろえてあるよ」 陵の腕に自分の腕を絡めてから、ゆっくりと階段を上りはじめた。すると俺を引っ張る勢いで、リズミカルに階段を上って行く。「さすがは俺の有能な秘書さん。仕事終わりのビールほど、美味しいものはないからね。しかも克巳さんと一緒に乾杯できるなんて、マジでしあわせだ~!」「飲むのとヤるの、どっちが先だろうか?」「それ、俺に聞くまでもない話でしょ♪」「いつも通りということか。承りましたよ、将来有望な新人議員殿」 陵に引っ張られながら上って行くこの感じは、きっと俺たちの未来の姿なのかもしれない。ときには揉めたり不安になったりしながらも、結局はこうして仲良く歩むことができる。「陵、将来のために少しだけでいいから、早漏の治療をしなければね」「え~……。将来のためってその言い方。もっとマシな頼み方があるでしょ」「俺と同じタイミングで一緒にイケたら、もっともっと気持ちよくなれるよ。どうだい?」 途端に重くなった足取りの陵を、今度は俺が引っ張る番になった。「……だったらがんばってみようかな」 引っ張った立場になったはずなのに、すぐさま陵が俺を引っ張る。 無理するよりも、こうして尻に敷かれているほうが、もしかしたら性に合っているのかもしれないと思ったのだが、その後の行為により熱くて甘い夜になったのだった。 おしまい
Huling Na-update : 2025-09-05 Magbasa pa