真衣は声のする方を見た。萌寧がどことなく現れ、この花瓶に目を留めた。礼央は萌寧をちらりと見て、笑いながら尋ねた。「いつからこんなものが好きになったんだ?」「刺激的なものばかりじゃ飽きるから、たまには心を癒すものも必要だわ」高史が歩み寄り、その陶芸花瓶を見て少し驚いた表情を見せた。確かに美しい。無地ではあるが、細部まで完璧に仕上げられている。「いいセンスをしている」高史は褒め言葉を口にした。「これを飾れば、部屋の雰囲気も一気に良くなるね」真衣は冷たい声で言った。「申し訳ないが、この花瓶は私が先に欲しいと言ったわ」これは多恵子の遺品で、真衣はどうしても手元に置いておきたかった。それに、慧美も修司も多恵子をとても慕っていた。修司も多恵子の作品を見れば、心身の健康にも良い影響をもたらせれるだろう。慧美によれば、修司の体調が悪化したのは多恵子が亡くなってからだという。「この花瓶は、私がいただくわ」萌寧の真衣に対する態度は、以前とは違っていた。萌寧は淡々と真衣を見て言った。「母さんの会社のプロジェクトが一件落着したから、お祝いで贈り物にしたいの」翔太が萌寧の手を引っ張りながら言った。「ママ、大丈夫。おばさんに説明する必要はないよ。おばさんはママとは争えないし、お金もないし、ママが欲しければ、パパが買ってくれるから。パパはママが大好きなんだから」高史は大笑いし、翔太の頭を撫でた。「よく言った!もっと話してもいいぞ」真衣が今日この美術展に来られたのも、どうやってチケットを手に入れたか怪しいものだ。また何か汚い手段を使ったに違いない。「真衣、礼央が萌寧を喜ばせるために買うんだよ。仲良し夫婦の邪魔をしないでくれよ」千咲は眉をひそめて呟いた。「本当に品がない人だわ……」「お前――」高史は顔を曇らせ、真衣を睨みつけた。「子供に一体何を教えたんだ?せっかくいい子なのに、こんな風に育てやがって」真衣は高史の視線を真っ直ぐに受け止めて言った。「私が娘にどう教育しようとあなたの知ったことではない。それより、あなたは普段から他人を誹謗中傷することで自分の品のなさを隠すのが得意そうね?」高史は鼻で笑い、それ以上は何も言わなかった。やきもちを焼いて争うような子どもじみた駆け引き。真衣が萌寧に勝てるわけがな
Read more