車は滑り出すように発進し、深夜の静まり返った道路を走った。真衣は千咲をじっと見つめ、拳を固く握りしめた。手のひらに爪を食い込ませ、その痛みで正気を保っていた。千咲の微かな息遣いが、真衣の胸を打ちつけるように響いた。真衣は目を閉じることも、気を緩めることも、ほんの少し油断することもできなかった。前世で、千咲は高熱による肺炎で亡くなった。今世では、たとえ命を懸けても、千咲を守り抜かなければならない。ミラー越しに、不安そうな顔で身体をこわばらせている真衣を見ると、礼央の胸は痛んだ。礼央は冷たくなった真衣の手を握って言った。「大丈夫、すぐ病院に着くから」「うん」真衣は震える声で返事をした。「俺がついてる」礼央は声を和らげた。「何があろうと、俺は傍にいる。千咲に何も起きさせやしないし、お前一人を苦しませたりしない」真衣の目頭が熱くなり、また涙がこぼれた。彼女は礼央に打ち明けたかった。でも――あの記憶はあまりにも重く、不気味で、信じがたいものだった。生まれ変わるなんて話を、誰が信じるだろう?真衣は礼央にまで自分と同じ不安や恐怖を味わわせたくなかった。ましてや、ようやく手に入れた平穏な毎日を壊したくはなかった。彼女は不安や恐怖を、心の中に押し込めるしかなかった。車は病院の入口に静かに停まった。夜空の下、救急室の明かりはひときわ目立って見えた。礼央は千咲を抱きかかえて車から降り、真衣はよろめきながら後を追った。「夜分にすみません!助けて下さい!」礼央の声には切迫感が滲んでいた。「七歳の娘が熱を出して、意識が朦朧としているんです」看護師と医師がすぐに駆け寄り、慣れた様子で体温測定、聴診、喉の診察を行った。真衣は傍に立ち、診察を行う医師をじっと見つめていた。体温計に数値が表示された――38.4。高熱だ。真衣は全身の力が抜け、その場に崩れ落ちそうになった。前世と、同じ体温だった。全く同じ。真衣は目の前が真っ暗になり、無意識に壁に手を伸ばして、ようやく身体を支えた。「肺炎やウイルス感染の可能性を確かめるため、血液検査をし、レントゲンを撮る必要があります」医師は素早く手配した。「とりあえず、解熱剤の注射を打って様子を見ましょう」「わかりました」礼央はすぐに応じた。真衣は
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