All Chapters of 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける: Chapter 1621 - Chapter 1626

1626 Chapters

第1621話

「琴美、一体何を企んでる?」時正は琴美に、これほど激怒したことは一度もなかった。琴美は全身を震わせながら、涙を流した。「私が彼女を追い詰めたわけじゃない。彼女が自分で出て行くと言ったのよ……」「黙れ」時正は琴美を見る気にもなれず、心の中は麗蘭への心配と動揺でいっぱいだった。彼女は記憶を失い、金も携帯もなく、頼れるものなど何一つない。その上、怪我をした子猫を連れて、一体どこへ行けというのか?危険な目に遭っていないだろうか?怯えていないだろうか?どこかで泣いているんじゃないか?「すぐに調べろ」彼は背後にいるボディーガードに命令した。「どんな手を使ってもいい、すぐに麗蘭さんを見つけ出せ」ボディーガードは、すぐにその場を去った。わずか十数分で、麗蘭がいるホテルの住所が時正の携帯に送られてきた。時正は住所を確認すると、すぐに上着を手に取り、傍で泣いている琴美に何も言わず、外へと駆け出して行った。琴美は、彼の断固とした後ろ姿を眺めた。顔は青ざめ、瞳の奥に潜んでいた悔しさは、次第に怨念と狂気へと変わっていった。また麗蘭だ。いつだって麗蘭ばかり。子猫のことで、ほんの二言言われただけで、被害者面で家を飛び出し、時正を虜にする。琴美は納得がいかなかった。どうして?時正は車を飛ばし、ホテルに駆けつけた。車が止まると、彼は飛び出すように車を降り、麗蘭のいる階へと一直線に向かった。部屋の前に立ち、ドアをノックしようとしたが、時正は手を止めた。麗蘭は自分に会いたがらないかもしれない。それ以上に、見知らぬ者を見るような目で彼女に見つめられるのが怖かった。時正は深く息を吸い、手を上げて、そっとドアをノックした。「トン、トン、トン」静まり返った廊下に、ノック音が響いた。ベッドに座り、子猫を撫でていた麗蘭は、ノック音を聞いてはっとした。ここに滞在することを、彼女は誰にも話していないのに、誰が訪ねて来たのだろう?麗蘭は立ち上がって、ドアを開けずに尋ねた。「どなたですか?」ドアの外から、時正の張り詰めた声が聞こえた。「私です」麗蘭は全身がこわばった。時正だった。まさか彼がここまで来るなんて。心の中が混乱し、麗蘭は沈黙したままドアの傍に立っていた。彼女はもう、時正に会い
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第1622話

時正は何も言わず、その場を離れようとはしなかった。次の瞬間、彼はドアをそっと押し開け、部屋の中に入った。決して荒々しくはなかったが、その動作からは譲れないという意志が感じられた。麗蘭は驚いて、後ずさりした。「何するの?!」時正は背中でドアを閉め、鍵をかけた。部屋は狭く、ベッドと小さなソファがあり、サイドテーブルには、子猫の手当に使ったガーゼとキャットフードが置いてあった。狭く窮屈な部屋だが、清潔感があった。時正は部屋を見渡して言った。「私も今夜、ここに泊まります」麗蘭は呆気にとられて彼を見た。目の前にいる時正を見て、彼の考えていることが何のかわからなかった。「時正さん、あなたって理屈の通じない人なのね」麗蘭は眉をひそめた。「ここは私が取った部屋なの、出てって」「出て行きません」彼はきっぱりと言った。「あなた――」麗蘭は腹を立て、時正を押し出そうとしたが、彼に手首を掴まれた。彼の手は温かく、力強かったが、力を込めてはおらず、ただ手首を押さえているだけだった。「何もしません」彼は声を落とした。「でも、あなたを外で一人にするわけにはいきません。親切面しないで!」麗蘭は声を荒げた。「ここは安全だし、泊まる場所も、食べ物もある。子猫も元気だし、私に構わないで」「それは安全とは言わない。隠れているだけだ」時正は真剣な表情で言った。「あなたは記憶を失っていて、身体も回復したばかり。携帯も、十分な金も持っていないのに、放っておけるわけがないでしょう」麗蘭の胸が締め付けられるように痛んだ。彼の言うことはすべて事実だった。だが、事実であるほど、彼女は居心地の悪さを感じた。今の彼女には何もなく、自由さえ危ういものだった。「それでもいいの」麗蘭は唇を噛んで言った。「あなたが出て行かないなら、私が出て行く」そう言うと、彼女は時正を見ず、子猫を抱きかかえ、くるりと向きを変え、ドアに向かって歩き出した。しかし、時正はすぐに麗蘭の後を追った。一歩も、寸分も離れない。時正は、麗蘭の歩く速度に合わせて歩いた。常に一歩ほどの距離を保ち、近すぎず遠すぎず、まるで振り払えない影のようだった。麗蘭は、ついに我慢の限界に達して足を止め、赤くなった目で彼を睨みつけた。「一体何がしたいの?!」麗蘭は震える
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第1623話

麗蘭は呆然とし、言葉に詰まってしまった。「でも、琴美さんが……」彼女は呟いた。「彼女はもういない」時正は言った。「彼女があなたを追い出したと知り、すぐに別荘から追い出しました。しばらくの間、彼女があなたの前に姿を現すことはありません」麗蘭は呆然と時正を見つめた。麗蘭は、彼の言葉を信用していいのかどうか、わからなかった。しかし、その真剣な表情を見て、彼が嘘をついているようには思えなかった。「一緒に帰りましょう」彼は手を伸ばし、彼女に触れようとしたが、途中で手を止めて言った。「お願いします。ここより、別荘の方が安全です」麗蘭は黙って、唇をきつく結んだ。彼女はまだ、琴美が言った、「私がこの家の女主人だ」という言葉と、追い出された屈辱を覚えていた。しかし――彼女の携帯は、時正の別荘に置いたままだった。携帯がなければ、誰とも連絡が取れず、必要な情報を得ることもできない。携帯はどうしても必要だ。しかも、それはただの携帯ではない。彼女の過去を知れる、唯一の手掛かりなのだ。麗蘭は長く沈黙した後、冷ややかな表情を変えないまま言った。「私の携帯を返して」時正はすぐに、彼女の考えを見抜いた。彼は頷いた。「家に帰ったら、お返しします。元々、あなたのものですから」「……」麗蘭は唇を噛みしめながら言った。「あなたと一緒に帰るわ」彼女は子猫を抱き、時正に背を向けて言った。「行きましょう」時正は麗蘭の頑なな横顔を見つめ、思わず微かに微笑んだ。彼は何も言わず、ただ静かに彼女の後ろについて歩いた。道中、二人は言葉を交わさなかった。車は滑るように別荘のガレージに入り、ヘッドライトが辺りを明るく照らした。琴美の車は、見当たらなかった。麗蘭は子猫を抱いて車を降り、別荘を見上げると、やはり胸が締め付けられるような気がした。しかし、彼女はもう怯まなかった。時正は麗蘭の横を歩き、そっとドアを開けた。「どうぞ」明るいリビングの中、お手伝いさんがうつむいて立っていた。家全体が静まり返り、明かりの微かな作動音だけが響いていた。琴美の声も、わざとらしく繕った笑顔も、秘めた敵意もなかった。彼女は本当に、出て行ったのだ。麗蘭の張り詰めていた気持ちが、少しだけ緩んだ。しかし彼女はそれを表には出
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第1624話

「隠していたわけではありません」時正は続けた。「とりあえず預かっておいたんです。持ち物には触っていないし、プライバシーも覗いていません」「どこにあるの?」麗蘭は冷たい口調で尋ねた。時正は姿勢を正し、デスクの一番下にある鍵付きの引き出しを指さした。「あそこです。鍵は……」彼は言葉を切り、サイドテーブルを指差した。「鍵はそこにあります」麗蘭は鍵を取ると、デスクに駆け寄り、鍵を鍵穴に差し込んだ。「カチッ」鍵が開いた。彼女は引き出しを開け、中を覗いた――引き出しの中に、携帯が入っていた。その瞬間、麗蘭の胸のつかえがふっと消えた。まるで最後の頼みの綱を掴んだようだった。麗蘭は手を伸ばし、携帯を手に取った。携帯の冷たい感触が、手に伝わった。ついに、取り戻せた。時正は、麗蘭の安心した表情を見て静かに言った。「携帯をお返しします」「今後はもう、私が預かることはありません」麗蘭は何も言わず、携帯を握りしめた。彼女は指先に少し力を込め、暗い画面を見下ろした。この中には、彼女の過去が詰まっている。彼女の記憶が詰まっている。彼女が誰で、誰を愛し、誰を憎み、何を経験してきたかが詰まっている。麗蘭は深く息を吸い、電源ボタンを押した。画面がゆっくりと明るくなった。彼女の後ろに立つ時正は、複雑な目で、静かに彼女の後ろ姿を見つめた。彼はわかっていた。一度電源を入れれば、もう隠し通せない。彼女はすべてを思い出すかもしれない。彼の良い所も、過ちも。再び彼を憎み、彼を避け、また逃げ出そうとするかもしれない。それでも時正は麗蘭に携帯を渡した。それは、気付いたから――無理強いをして傍に置いても、それは本当の意味で寄り添うことにはならないと。閉じ込めても、心は留められない。彼にできるのは、ただ待つことだけなのだ。麗蘭が思い出し、許し、もう一度自分の意志で彼の傍にいてくれることを待つだけなのだ。部屋は静まり返っていた。ただ、携帯の起動時の微かな振動音だけが、静かに響いていた。麗蘭は携帯を握りしめ、指の関節がわずかに白くなっていた。携帯の画面が再び光ったこの瞬間から、人生の答えを取り戻す可能性が生まれた。-真衣が麗蘭を見舞いに来た。空には弱い雨が降り、風
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第1625話

麗蘭はうつむいて言った。「私はただ……人に迷惑をかけたくないだけなの」「迷惑なんかじゃないわ」真衣は穏やかな声で言った。「麗蘭さん、覚えておいて。あなたは誰にとっても重荷なんかじゃないわ」その言葉は、麗蘭の心にある、いちばん繊細な部分を突いた。彼女は沈黙し、リビングには壁掛け時計の音だけが響いていた。ついに、麗蘭は顔を上げ、その目には戸惑いや脆さ、言いようのない不安が宿っていた。彼女は声を潜めて尋ねた。「寺原さん、教えてくれない?私は……どんな人間だったの?」真衣は呆然とした。「何も覚えていないの」麗蘭は独り言のように呟いた。「自分の好みも、性格も。自分が周りの人にとってどんな存在なのかも、全然わからないし、覚えていない」麗蘭は間を置いて、ずっと胸に秘めていた疑問を口にした。「私と時正さんの間には……一体何があったの?」なぜ彼はいつも、傷ついたような目で私を見るのかしら?なぜ彼は私のために、琴美さんを追い出し、自分のアレルギーのことを後回しにするの?彼は元々強い人なのに、どうして私の前では、あんな風に怯えたような顔をしているの?彼女には理解できなかった。全くわからなかった。真衣は麗蘭の途方に暮れた様子を見て、心の中でそっとため息をついた。あまりに鋭く、辛い真実を、彼女は口にすることができなかった。彼女が、かつて時正に保護という名目で監禁されていたことを伝えることはできない。彼女が、必死に逃げようとし、彼を心底憎んでいたことも。彼女が、毒を盛られて昏睡し、命を落しかけたことも、真衣は伝えることができなかった。真衣は、麗蘭を傷つけないように、彼女の清らかで温かい人柄について話すことにした。真衣は声を柔らげ、落ち着いた口調で言った。「あなたは、とても素敵な人だったわ。誇りを持っていて、明るく、心のままに生きていた。優しくて思いやりがあり、皆から好かれていたわ」真衣は少し間を置いて続けた。「時正さんは、あなたのボディガードだったの」麗蘭は驚いて、顔を上げた。ボディガード?圧倒的な存在感を放っている彼が、私のボディガードだった?「本当よ」真衣は言った。「十数年もの間、彼はずっとあなたの傍で、あなたを守っていた。彼は、あなたの行く所ならどこへでも行き、あなたの望みを何でも
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第1626話

真衣は麗蘭を見つめ、そっと手を叩いた。「私には遠慮なんかしないで」「何かあったらいつでも電話して。ただ誰かと話したい時でも、私が付き合うから」しばらく話した後、真衣は少し疲れた様子の麗蘭を見て立ち上がり、別れを告げた。真衣が立ち去った後、別荘は再び静けさに包まれた。広い屋敷全体が、がらんとして、静まり返っていた。麗蘭はリビングに立ち尽くし、頭の中で真衣の言葉を繰り返し思い出していた。とてもいい人。彼はかつて、彼女のボディガードだった。十数年の間、片時も離れず、彼女を守ってくれていた。望みを叶えてくれた。麗蘭は、そのような光景と今の時正を重ね合わせることができなかった。胸のあたりが何かで塞がれたように、息苦しいのに、出口が見つからない。麗蘭は、それ以上考えるのを止め、背を向けて裏庭の方へと歩いて行った。子猫のことがきになっていた。ホテルから連れ帰った後、麗蘭は子猫の小屋を裏庭の日当たりのいい場所に置き、水とキャットフードを用意して、お手伝いさんに世話を頼んでいた。麗蘭にとって子猫は、この別荘の中で唯一の心のよりどころだった。彼女が自らの手で救い出した小さな命。彼女が心細く感じた時に、唯一安心できる存在だった。「ミミ」麗蘭は小屋のドアをそっと開けて言った。「ただいま。ちゃんとご飯を食べた……?」彼女は言葉を詰まらせた。小屋からは、ミミの「ニャー」という鳴き声はしなかった。小屋の中は、異常なほどに静まり返っていた。麗蘭の顔が次第にこわばっていった。彼女は急いで中に入り、毛布の上に横たわる小さな姿を見つめた。子猫は静かに横たわり、微動だにしなかった。子猫は目を閉じ、体はぐったりとして、すでに硬直し始めていた。死んでいた。麗蘭は全身から血の気が引き、身体をこわばらせた。彼女は信じられず、小さな体をじっと見つめた。震える指で、子猫の体に触れる勇気はなかった。触れれば、残されたわずかな希望が完全に崩れてしまうような気がした。「嘘よ……」麗蘭は呟いた。「昨日まであんなに元気だったのに……ご飯も食べて、私に甘えて……元気に鳴き声を上げていたのに……」どうして突然死んでしまったの?獣医は、大した怪我ではなく、数日世話をすればよくなると言っていたのに。麗
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