警察官たちは顔を見合わせ、ありのまま答えた。「通報者は川上麗蘭さんです。琴美さんは、彼女に違法薬物を故意に投与し、安全を脅かした疑いがもたれています。証言や会場の防犯カメラ映像、送金記録、店員の供述など、一通り証拠は揃っています」「違法薬物を故意に投与」時正は、胸に刻むように、その言葉を繰り返し呟いた。彼は目を閉じ、深く息を吸った。まだ、麗蘭の体温が残っているようだった。彼女がぼんやりとした瞳で、時折苦しそうに喘ぎながら彼にすり寄る姿と、琴美の悪意や策略が時正の脳裏で重なり合った。時正はすでに、琴美に対して我慢の限界に達していた。彼女を追い出し、関係を断ち切ることが、彼にとっての最後の線引きだと思っていた。まさか、琴美がこれほどまで狂っていたとは思わなかった――琴美は公の場で、しかも人前で、麗蘭に薬を盛った。彼女を破滅させようとした。彼女の社会的生命を断とうとした。時正は再び目を開けると、あらゆる感情を押し殺し、静かに決意を固めた。彼は、傍で青ざめた顔をしている琴美から目を逸らし、警察官に向かって言った。「彼女を、連行して下さい。法に基づいて、公正な判決が下されることを願っています。誰かの体裁を気にしたり、忖度する必要などありません」彼の言葉を聞いて、警察官たちは呆然とした。彼らは、時正が圧力をかけ、調停し、彼女を保釈させるだろうと予想していた。彼がこれほどあっさり手を引くとは思っていなかった。琴美は泣き崩れ、声を上げて叫んだ。「時正!地獄へ堕ちろ!覚えてなさいよ!波多野家はあなたを絶対に許さない――」時正はまるで聞こえていないかのように、彼女に振り向きもしなかった。彼は手を上げ、後ろに待機していた部下を呼び寄せた。部下は時正の傍に寄り、うつむいて指示を待った。時正は声を落して言った。「警察署までついていけ。中にいる者に、琴美を厳しく取り調べるように伝えてくれ。殴ったり、罵ったり、規則を破る必要はないが。決して――彼女を甘やかすなと伝えろ」部下の背筋が凍り付いた。時正さんは本気で怒っている。暴力も罵倒もしないが、彼女を中に閉じ込め、もがき苦しませようとしているのだ。これは直接手を下すよりも、残酷な拷問といえるだろう。「承知いたしまし
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