萌寧は決して善人などではない。もし彼女が頂点に立ったら、どんなことをしでかすかわかったものではない。これが安浩が心配していることだ。こういう人間にわざわざ嫌がらせを必要はない。だが、一方で萌寧をあるべき位置に押さえつけておく必要も確かにある。真衣はもちろんこれらの道理を理解していた。萌寧がもし本当に頂点に立つ日が来たら、間違いなく業界にとって害となるだろう。「礼央さんは本当にそんな人間を助けるのか?」安浩が聞いた。「それとも礼央さんは外山さんの本性を知らないだけなのか?」「真衣が知っている礼央さんって、どんな人?」真衣と礼央の間には個人的なわだかまりもあるが、萌寧の品行については、ちゃんと注視していく必要がある。そうすれば、真衣も個人的な確執を気にしないで済む。真衣と萌寧の間には、確かにライベル関係である必要はない。安浩はその言葉を聞いて少し固まった。真衣は壇上でスピーチをする礼央を見上げた。彼はすらりと背が高く、声はゆっくりと落ち着いており、気品ある雰囲気を漂わせていた。どんな場面でも泰然自若としており、誰もが注目する存在だ。生まれながらにして上に立つ者。絶対的な権力を彼は持っている。今の地位にいる以上、彼なりの考えがあるはずだ。だが、真衣が知る礼央は――長年同じ屋根の下で暮らしても、自分は完全に礼央を理解することができなかった。少なくとも表面上の浅い交流しかなかった。だからこそ、礼央の本音を理解する機会もなかった。真衣はかつて礼央と心を通わせようとした。うまくいきそうな時もあったが、最終的にはいつもあっけなく終わった。真衣と礼央の交流のほとんどは、ベッドの上で行われた。礼央は見かけによらず、結構性欲の強い人間である。真衣は深く息を吐き、「彼の人となりを実はあまりよく知らないの」と答えた。「だけど、一つだけ確かなのは、彼は決して愚かな人間ではないということね」真衣は口を開いた。「自分を窮地に追い込むような真似はしないからね」「もちろん、愛ですべてを乗り越えられる可能性も否定はできないけど」所詮、愛の前ではどんな賢い男も愚か者になるから。でなければ、なぜ「どんな強い人でも、美しい女性の前では動揺してしまう」という言葉があるのだろうか。真衣はかつ
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