「自分の憧れのアイドルに会ってこんなに興奮するとはな」と公徳が言った。「安心しろ、彼女はそんなアイドルのような人じゃないから」美和子が管制室の中を一瞥する。真衣は専門的に各種データの照合や操作を行い、全体の制御を担当していた。生中継で、真衣の顔がくっきりとテレビに映し出された。何より一番すごいのは、管制室には若い顔ぶれがずらりと並んでいるという事実だ。ベテランではない。新しい世代の力がこれほど強いなら、この国の未来はきっと明るい。これは世界に向けたある種のメッセージでもある。礼央は静かに現場の様子を見守っている。現場では、皆緊張感を持ちながら進めている。発射1時間前。発射30分前。発射10分前。全国民が注目する発射のカウントダウンがついに始まった。海外在住の邦人さえも、スマホでこの生中継を見ている。現場でカウントダウンの声が響く。「3」「2」「1」「エンジン点火」「打上げ時刻は15時30分25秒」衛星の打ち上げ成功を見届ける。全国民が歓喜に沸く。萌寧は人混みの中に立ち、全身が冷え切り、唇を硬く引き結んでいた。管制室内は興奮に包まれていた。全ての努力は、今日のこの瞬間のためだ。彼らは、どの工程にもどの計算にも誤りがあってはならないと、細心の注意を払っていた。わずかなミスが今日の発射の失敗につながることを恐れていた。衛星の打ち上げの成功を見て、皆は心の中で安堵の息をついた。真衣もまた同じだ。「おめでとう!また大きな成果を上げたな」安浩は真衣の方を見た。真衣はホッと一息をつき、全ての努力がこの瞬間に実を結んだのを見た。自分は、自分のいる分野で輝いて力を発揮している。萌寧は人混みの中に立ち、この光景を見ていた。周りの全員が興奮して喜んでいる中、彼女だけが特に不機嫌な表情を浮かべていた。高史さえも管制室の中にいるのに、彼女だけが外に立っていて、この雰囲気に溶け込めなかった。外では、萌寧が誰なのか、知る者はいない。「あちらで主任技術者のインタビューが始まるから、急ぎましょう」人々は萌寧の横を通り過ぎ、彼女がその場に突っ立っているのを見た。誰かが萌寧を押しのけ、「なんでここに立って道をふさいでいるの?見ないなら邪魔しないで!」と言
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