「今日より皆さんには、王宮の女官として、それぞれ大臣の補佐役を全うしていただきたい。」王宮の広間では、新任の女官達を迎える式典が開催されていた。レナータ・コートは、その内の一人で、一列に並んだ他の女官に目をやると、ある特徴に気がついた。それは、どの女性達も驚くほどに容姿端麗なことである。ただし、私一人を除いて。私は吊り上がった目元で、平凡としか言えない顔立ち。背が高く、これまで異性に言い寄られたことも、男性とお付き合いしたことももちろんない。ただひたすら勉学に励んで来たのだ。そんな私は、並んだ女性達の冷ややかな視線と場違い感に青ざめる。よく見たら私だけが、王宮から支給された女官服を着ている。他の女官達は、みんな形は同じだけれど、生地の色や質が明らかに違い高級感に満ち、とても煌びやかだ。きっと、型は同じだけれど、自分用に特別にあつらえているんだわ。私の抱いていた王宮の女官像とかけ離れている。どう見ても、裕福な家柄の令嬢達にしか見えない。王宮の女官とは、知性と勤勉を武器に働く頭脳集団の集まりじゃないの?家計を支えるため、上流とは言い難い貴族の娘たちが努力の末に職を求めて集まる場所だと、そんな先入観を、私は持っていた。それとも、この美しき女官達は皆容姿だけでなく頭脳も兼ね備えた才女たちなの?式で話されている内容が全く頭に入ってこないほどに混乱する。私は家族がいないため、田舎の養護院で育ち、「王宮では能力が秀でていれば、誰でも活躍できる。」と聞いて、給金目的で試験に臨んだ。元々努力することでしか生きられないと思って生きて来たから、学業の成績は常にトップだったのだ。それで、養護院に併設された教会のネバダ牧師が、貴族の養子にと勧めてくれ、伯爵令嬢となり、無事女官の試験に合格し、今にいたる。「では、引き続き君達の上司にあたる大臣方を紹介しよう。」司会役の方がそう言った瞬間、広間の扉が開き、いかにも高貴な男性達が、入場してくる。そして、中でもひと際目を引く男性が現れた瞬間、新任の女官達は明らかに色めき立ちざわついたので、慌てて私もそちらに目をやる。するとそこには、金髪に碧い瞳、端整な顔立ちに気品をまといながらも、どこか冷たく、不機嫌そうな表情を浮かべ、見るからに異彩を放つ男性がいた。嫌々連れて来られた。そう、態度で示しているのに
Last Updated : 2025-07-14 Read more