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公爵様は、今日も不機嫌です
公爵様は、今日も不機嫌です
Auteur: 月山 歩

1.女官

Auteur: 月山 歩
last update Dernière mise à jour: 2025-07-14 10:17:47

「今日より皆さんには、王宮の女官として、それぞれ大臣の補佐役を全うしていただきたい。」

王宮の広間では、新任の女官達を迎える式典が開催されていた。

レナータ・コートは、その内の一人で、一列に並んだ他の女官に目をやると、ある特徴に気がついた。

それは、どの女性達も驚くほどに容姿端麗なことである。

ただし、私一人を除いて。

私は吊り上がった目元で、平凡としか言えない顔立ち。

背が高く、これまで異性に言い寄られたことも、男性とお付き合いしたことももちろんない。

ただひたすら勉学に励んで来たのだ。

そんな私は、並んだ女性達の冷ややかな視線と場違い感に青ざめる。

よく見たら私だけが、王宮から支給された女官服を着ている。

他の女官達は、みんな形は同じだけれど、生地の色や質が明らかに違い高級感に満ち、とても煌びやかだ。

きっと、型は同じだけれど、自分用に特別にあつらえているんだわ。

私の抱いていた王宮の女官像とかけ離れている。

どう見ても、裕福な家柄の令嬢達にしか見えない。

王宮の女官とは、知性と勤勉を武器に働く頭脳集団の集まりじゃないの?

家計を支えるため、上流とは言い難い貴族の娘たちが努力の末に職を求めて集まる場所だと、そんな先入観を、私は持っていた。

それとも、この美しき女官達は皆容姿だけでなく頭脳も兼ね備えた才女たちなの?

式で話されている内容が全く頭に入ってこないほどに混乱する。

私は家族がいないため、田舎の養護院で育ち、「王宮では能力が秀でていれば、誰でも活躍できる。」と聞いて、給金目的で試験に臨んだ。

元々努力することでしか生きられないと思って生きて来たから、学業の成績は常にトップだったのだ。

それで、養護院に併設された教会のネバダ牧師が、貴族の養子にと勧めてくれ、伯爵令嬢となり、無事女官の試験に合格し、今にいたる。

「では、引き続き君達の上司にあたる大臣方を紹介しよう。」

司会役の方がそう言った瞬間、広間の扉が開き、いかにも高貴な男性達が、入場してくる。

そして、中でもひと際目を引く男性が現れた瞬間、新任の女官達は明らかに色めき立ちざわついたので、慌てて私もそちらに目をやる。

するとそこには、金髪に碧い瞳、端整な顔立ちに気品をまといながらも、どこか冷たく、不機嫌そうな表情を浮かべ、見るからに異彩を放つ男性がいた。

嫌々連れて来られた。

そう、態度で示しているのに、それでも女官達は、嬉しそうにその男性を眺めている。

「大臣達を束ねるオズワルド公爵閣下よりご挨拶をいただきます。」

司会をしていた男性が、不機嫌なオーラを纏うその男性に悪びれることなく促すと、わずかに眉をひそめて一言だけ放った。

「特になし。

以上。」

そう言い放つと、その男性はあっという間に会場を後にした。

「オズワルド公爵は多忙を極める方なので、無理をお願いしてのご出席でした。

なお、皆さんの配属先はホール正面の掲示板に貼り出していますので、後ほど確認し、明日からは各部署へ直接出仕してください。

皆さん、これからの活躍を期待しています。

それでは、式はこれにて終了といたします。」

司会の男性が閉会を告げると、周囲の女官たちは早速ざわざわと話し始めた。

「オズワルド公爵様、やはり素敵だったわね。

でも、私達からは所詮遠い存在だわ。」

「不機嫌そうな顔でも、この距離で見られるだけで女官になった意味はあったわ。」

「私、いつか話しかけてみせるわ。」

皆先ほどのオズワルド公爵に夢中のようだ。

でも正直、不機嫌そうな人は、私なら遠慮したいけれど。

どちらにせよ、新人の私には関係ない。

公爵様だなんて、雲の上の人だもの。

きっと関わることもないはず。

帰る前に明日からの配属先を知るため、先ほど司会の方が言っていた配属先が書かれた張り紙を見ようと、人だかりを割って進む。

そして、張り紙を見て絶望する。

私の配属先はオズワルド公爵執務室になっていた。

えー、さっきのあの方のお部屋だわ。

あんな不機嫌そうな方の下で働くことになるの?

すごく恐ろしい方だったらどうしよう?

私、大丈夫かしら?

一瞬不安になるが、きっとあの人の周りには沢山の部下がいて、私は隅っこにいるだけだから、直接関わることなんてないはずよ。

なんとかなるわ。

私はそう言い聞かせながら、とぼとぼと一人で暮らす家に帰る。

王宮のそばに借りた一軒家は、古く小さな部屋が一つあるだけの粗末な造りだった。

けれども、今の私では、ここを借りるだけで精一杯。

とりあえず、最初の給金をもらうまでは、節約しなくちゃ。

手元には、養護院時代にお手伝いをして稼いだ僅かな蓄えのみだ。

それでも、これから一人この王都で頑張って生きていくわ。

私は明日からの王宮での仕事を思い、意欲を昂らせ、早めに寝るのだった。

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