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9.二日酔い

مؤلف: 月山 歩
last update تاريخ النشر: 2025-07-14 10:23:35

朝からレナータは吐き気で目が覚めた。

今日はオズワルド様がお休みしていいと言ったから良かったけれど、そうでなかったらどうなっていたことか。

とにかく、起きていてもつらいだけなので、再び布団に潜り込んだ。

それでも、昼過ぎになるとお腹が空いてたまらなくなっていた。

いつも王宮の食堂でお昼を食べていたから、この家には元々食料はほとんどない。

おまけに昨日は、悪事を暴こうと意気込んでいたから、せっかくのお休みだったのにも関わらず、買い物にすら行ってなくて、もう食べるものなんて、この家には少しも残っていなかった。

どうしよう。

まだ少し具合が悪いから、買い物なんて行きたくないし、お腹はさっきからぐうぅうと鳴っているし、そう思っているうちに辺りはどんどん暗くなり、お店なんてとっくに閉まってる。

もうしょうがない。

お腹が空いても一日ぐらいなら、何とかなるはず。

王宮の食堂が、朝からやっていることを祈るしかないわ。

そう思い、ベッドの中でゴロゴロしていた。

その時、ドンドンとドアを叩く音が響く。

「レナータ、開けれるかい?。

いるんだろ?」

ダグラスさんの声だわ。

でも、この格好だから、会うなんてできない。

今着ているさえない部屋着を見て、溜息をつく。

「ダグラスさん、ごめんなさい。

とても見せれる格好ではないの。

何か用かしら?」

ドア越しに答える。

「大丈夫かい?

オズワルド様が心配していてね。

食べ物を持って来たんだ。

ここに置いておくから、食べれたら食べるんだよ。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ、もう一日休んでいいからね。」

「はい。」

そう言い残すと、ダグラスさんは去っていった。

ありがたいわ。

どうして私がお腹が空いているってわかったのかしら。

オズワルド様には何でもお見通しということ?

そう思いながらドアを開け、玄関前に置かれていたバスケットを持つと、部屋へ戻る。

バスケットの中には香ばしいパンとフルーツ、調理された肉の入った小さな鍋が入っていた。

なんてありがたいの。

すぐにテーブルにそれらを広げて、椅子に座り食べ始める。

美味しいわ。

お肉もしっかりと煮込んであって、二日酔いの私でも食べやすい。

それらを頬張り、お腹いっぱいになる頃には、吐き気や目眩もすっかりと良くなり、やる気が出てくる。

やっぱり人間は食べると元気になるものね。

オズワルド様の心遣いに感謝する。

そうでなかったら、今頃、空腹を抱え、惨めな思いで、ベッドに横たわっていただろう。

出仕したら、お礼を伝えなきゃ。

————————————————————

「オズワルド様、レナータ大丈夫そうですね。」

「ああ、そうだな。」

オズワルドとダグラスは帰ったふりをして、レナータの様子を遠くから見守っていた。

レナータは二人に見られているとは思っておらず、部屋着のまま外に出てきて、慎重にバスケットを持ち上げていた。

オズワルドは、その細い腕で少し重たそうにバスケットを抱える姿に、思わず駆け寄り手を貸したくなる衝動にかられる。

今すぐ出て行って、代わりにバスケットを持ってやりたい。

レナータが言っていた通りのさえない部屋着だとしても、普段の王宮での凛とした姿とはまた違って、可愛いものだな。

思わず口元が緩んでしまったことに、自分で気づいて慌てて視線を逸らす。

「それにしてもオズワルド様、食べものぐらいわざわざ持って来なくても、自分の家なんだし何かしらあったんじゃないですかね。」

「だとしても、昨日あれだけ酒を飲んだんだ。

どうしているのか、確認しておく必要がある。

レナータはきっと調子が悪くても、誰にも弱音を吐かないだろうし、田舎から出て来てそれほど経っていないから、頼る相手はいないだろう。

だから、僕達が気づいてやらないと、最悪家で倒れているかもしれないんだ。」

「そうかも知れませんけど、僕達だってレナータの暴いた事件の後始末で、寝不足ですけれどね。」

「僕達も明日一日休みをとろう。」

「ありがとうございます。

でも本当にオズワルド様はレナータに対して過保護過ぎですね。」

「なんとでも言ってくれ。

放っておけないだけだ。

本当は邸に招待して、温かい食事を食べさせてやりたいって言ったら、どうする?」

そう言った瞬間、本音を言い過ぎたと気づく。

「放っておけない」今までにそう思って、自宅まで押しかけた部下が他にいただろうか?

ましてや邸で思う存分温かい料理を振る舞いたいなどと思った同僚が今までいたか?

自分の失言に顔を赤らめ、不機嫌な顔を作りなりながらも考える。

今のでダグラスにも、レナータへの想いが気づかれてしまっただろうか?

何と言えばいいのかわからなくて、とても彼の顔を直視できない。

だが、ダグラスはそんな僕にすでに気づいていて、あっさりと答える。

「わかりましたよ。

もう何も言いませんから。」

————————————————————

休みが明け、レナータは晴れやかな笑顔を作り、オズワルド様の執務室に入った。

「おはようございます。」

執務室に入ると、すでにオズワルド様とダグラスさんが話し合いをしていたが、オズワルド様は手を止め、椅子に腰掛けたまま、こちらに視線を向ける。

その目が、ほんの少し細められた。

「もう大丈夫なのか?」

「はい。ご心配おかけして、申し訳ありませんでした。」

「いや…君が元気そうでよかった。」

あの夜、背負われて帰ったことは恥ずかしすぎて、朝の仕事場では触れられない。

あんなにオズワルド様の背中に抱きつくなんて、酔って素直になった私は、信じられないくらい大胆だった。

でも、彼もその思いを察してくれたようで、その声音にわずかだが優しさがにじんでいる。

オズワルド様も、あのときの親密さには、あえて触れたくないのかもしれない。

だから、どこか安心したような表情を見せている気がする。

…そう感じているのは、私だけだろうか?

「それと…差し入れ、ありがとうございました。

中のお肉がとても美味しかったです。

体にしみました。」

「そうか、それは良かった。」

ほんの一瞬、彼の目元がふわりとほぐれる。

「実は、フルーツも全部、食べてしまいました。」

「…そうか。

君にしてはめずらしく素直な反応だな。」

「えっ、そうですか?」

「いつもはもう少し距離を置くから。」

言われて初めて、彼との距離を意識した。

今の私はオズワルド様に背負われたことで、親密感が増したのか、前よりも彼と話しやすい。

確かにこんなに緊張せずに話したことはなかったかもしれない。

以前は相手はあの公爵様だからと、勝手に警戒していたような気がする。

最近ではむしろ不機嫌な表情でいることはほぼなく、時折見せる温かい顔が彼の本質だとわかっているのに。

そして今日は、思いがけずほんの少しその線を越えてしまったような、そんな気がした。

だって、オズワルド様は私をも気にかけてくれる優しい人だから、とても以前のように距離を置くなんて無理だ。

いつの間にか、彼をもっと知りたいと思い始めていた。

「これからは、もう少しダグラスさんみたいに、この部屋の一員としてオズワルド様と向き合いたいです。」

私の言葉に、オズワルド様はふっと目を細める。

「ああ、それでいい。」

オズワルド様はそれ以上は何も言わず、再びダグラスさんとの会話に戻った。

けれどその耳が、ほんの少し赤く染まっているのに気づいたのは、きっと私だけ。

そして、私の頬も、たぶん同じくらい赤く染まっていたと思う。

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