三十話 接触 二人でワルツを踊ると、ふんわり俺の体を抱き寄せた。その感触がシステムで作られた存在に思えない。温もりは勿論、彼の鼓動、息遣い、全てが本物だったんだ。 「メモリアルホロウを作ったのは美緒と言う人間だ。君の義理の母にあたる。君の記憶を書き換える為にね。このゲームを起動すると催眠状態になってしまい、自分から全ての装置をつけ、冬眠状態を作り出して、ゲームへと縛り付ける。そうやって君の日常を壊そうとしていたんだよ、彼女は」 何も感じてないのか、淡々と真実を話していく。催眠状態になって、自分から求めるようになるって事なのか。細かい事は、分からないが、ギルバートに何故、人のした行動や思考が見えているのだろうか。 彼はシステムなんかじゃなくて、俺と同じ世界から来た人間が演じているキャラクターなのだろう。そう考えると辻褄が合っていく。 それもメモリアルホロウの全てのシステムを把握し、キャラクターの情報を全てを握っている。それをシステムが出来るとは思えない。それが出来るのなら、どれだけ発展しているだろうか。 「近いね、でもね、僕の全てを知る事は出来ないよ。例え君でもね、レイト」 「この空間は何なんだ。どうしてプレイヤー名を言ったらいけない?」 何となくだが、曲が終われば、彼との会話も終わる気がする。メモリアルホロウが作り出した設定ではなく、ギルバート自体が無理矢理作り替えたもののような気がする。そんな事を考えていると、彼も胸につけているブローチが目に映る。中には本物の砂が入っているようで、さらさらと下へと落ちていく。 「砂時計は、僕との、会話の残り時間を表している。もう時間はないね。これが最後かな」 色々、突っ込みたい事はあるが後で、自分で整理すればいいだけだ。残された時間が後少しなら、この質問の答えを聞く必要がある。これからロロンの力を使えないのなら、余計に。 メモリアルホロウのシナリオの難易度が上がる可能性があるから。 「僕といる場所はメモリアルホロウとは違う異空間だよ。昔に使われていた基本の保存データーを
Last Updated : 2025-08-17 Read more