Home / BL / メモリアルホロウ / Chapter 31 - Chapter 40

All Chapters of メモリアルホロウ: Chapter 31 - Chapter 40

55 Chapters

第三十話 接触

三十話 接触 二人でワルツを踊ると、ふんわり俺の体を抱き寄せた。その感触がシステムで作られた存在に思えない。温もりは勿論、彼の鼓動、息遣い、全てが本物だったんだ。 「メモリアルホロウを作ったのは美緒と言う人間だ。君の義理の母にあたる。君の記憶を書き換える為にね。このゲームを起動すると催眠状態になってしまい、自分から全ての装置をつけ、冬眠状態を作り出して、ゲームへと縛り付ける。そうやって君の日常を壊そうとしていたんだよ、彼女は」 何も感じてないのか、淡々と真実を話していく。催眠状態になって、自分から求めるようになるって事なのか。細かい事は、分からないが、ギルバートに何故、人のした行動や思考が見えているのだろうか。 彼はシステムなんかじゃなくて、俺と同じ世界から来た人間が演じているキャラクターなのだろう。そう考えると辻褄が合っていく。 それもメモリアルホロウの全てのシステムを把握し、キャラクターの情報を全てを握っている。それをシステムが出来るとは思えない。それが出来るのなら、どれだけ発展しているだろうか。 「近いね、でもね、僕の全てを知る事は出来ないよ。例え君でもね、レイト」 「この空間は何なんだ。どうしてプレイヤー名を言ったらいけない?」 何となくだが、曲が終われば、彼との会話も終わる気がする。メモリアルホロウが作り出した設定ではなく、ギルバート自体が無理矢理作り替えたもののような気がする。そんな事を考えていると、彼も胸につけているブローチが目に映る。中には本物の砂が入っているようで、さらさらと下へと落ちていく。 「砂時計は、僕との、会話の残り時間を表している。もう時間はないね。これが最後かな」 色々、突っ込みたい事はあるが後で、自分で整理すればいいだけだ。残された時間が後少しなら、この質問の答えを聞く必要がある。これからロロンの力を使えないのなら、余計に。 メモリアルホロウのシナリオの難易度が上がる可能性があるから。 「僕といる場所はメモリアルホロウとは違う異空間だよ。昔に使われていた基本の保存データーを
last updateLast Updated : 2025-08-17
Read more

三十一話 欲望の獣

三十一話 欲望の獣 メモリアルホロウへと戻ると、そこには今まで出会った攻略対象が集結していた。ここは見るからにして、ミラウス城の中央にある王室だった。自分の部屋に居たはずなのに、どうしてここに飛ばされていたのだろうか。 何が起きているのかを、確認する為に、一人一人に事情を聞いていく事にした。 「ラウジャ、どうしてここにいるんだ?」 「……」 虚に写っている俺の姿は、ラウジャに届いていないように見える。どうしてだろう、彼の呼吸を感じているはずなのに、まるで中身の抜けた人形のように感じた。 返答する事のないラウジャを避けると、俺達の方を観察しているレイングが瞳に映る。自分の希望をぶつけるように、レイングの腕を掴んだ。 「何があったんだ、レイング」 「ハウ……」 ラウジャと違って、反応はある。しかし、何かに行動を、言葉を阻まれているようだった。もしかしてより深い関係だと、こうやって反応が見えるのかもしれない。 「君はどうして、ここに来たのかな?」 「えっ」 「ハウエル様、貴方は選択肢を間違えた。貴方が王を名乗らないのなら、この国はどうするのです? 国王が亡くなってしまった現実から逃げるのですか」 俺の全てを否定するように、掴んで居た手をレイングから強引に外すと、行き場の無くした手は、宇宙を彷徨い続けた。 「グレイ、どうして」 どうしてグレイは普通に話すことが出来ているのだろう。ラウジャとレイングは自由を縛られているのに、彼は自由そのものに見えた。いや、それ以上に、キャラクターと言うよりか、本物の人間が写り込んでいるような違和感を感じてしまうのは、何故だろうか。 そこには俺の知っているグレイは存在しない。全ての引き金を引く為に、シナリオを発生させるタイミングを狙っていた彼は、グレイと言う架空の存在を演じていただけだった。 「私はグレイ。それ以上も以下もない。ここではね。君は間違えたんだよ。NOを選んでくれたから、私達は自由に動けるようになったのだ
last updateLast Updated : 2025-08-18
Read more

第三十二話 ギルバートの正体

三十二話 ギルバートの正体 ギルバートは管理者権権を奪うと、現実世界の人間達が目視出来ないように、全ての通信を切断していく。思い通りに扱われては、製作者の思いを汚してしまうと考えている。美緒の思考を忠実に再現する事で、新しい人格ギルバートが生まれたのだ。 簡単に言えば、電脳で生きている美緒そのもののコピーだった。 「僕はメモリアルホロウを使い、全ての感覚を取り戻す実験をしているのに、どうしてこいつらは欲望の為に、動くのか」 事故なので意識が戻らない人達を、全感覚を無意識にあげていく事で、現実世界で目を覚ます、その原理を作る為にこの研究がある。見ただけではゲームにしか見えないが、人の意識をメモリアルホロウに取り込む事で、擬似体験を感じさせる事が出来、そこから現実への線を足す事により、元の生活へと繋げていく。人を助ける為に、生まれたシステムが悪用されるのは、ありえない。 「君がクリアをした時に、全ての答えが出てくるんだ。それを邪魔はさせないよ」 ギルバートは忠告文を男達へ送ると、自分の分身の脳みそを見つめながら、全てのデーターを自分の体へと吸収していった。 例え脳が機能を終えたとしても、このデーターさえあれば、美緒はギルバートとして生き続ける事が出来る。データー移行を終わらすと、現実に放置された元の体を思い出しながら、暗闇に記憶を沈めていった。 一つの空間に閉じ込められていた俺達は、ギルバートの力により、元のメモリアルホロウを取り戻していく。乗っ取られていた二人は勿論、ラウジャとレイングも、いつもと同じ様子で過ごしていた。 「戻ったんだ……よかった」 「何がですか?」 ラウジャは不思議そうに首を傾げると、僕の腕に巻きついてくる。思いっきり甘えたい気分のようだ。その様子を見ていると、むず痒くなっていく。 「ラウジャばかりにいい思いはさせないからな」 「レイング、貴方は来なくていいのに」 「お前の指図は受けない」 どうしてだろう。二人は俺を取り合うように、
last updateLast Updated : 2025-08-18
Read more

第三十三話 アピールタイム?

 三十三話 アピールタイム? 「ん〜、よく寝た」 連続でトラブルが起きていた。その負担が精神にきているようだ。自分の思っている以上に、疲れが溜まってきている。以前に、ロロンが作った回復するドーナツの存在が頭を過ぎる。ギルバートの言葉が事実なら、あのドーナツを食べる事は、もう出来ない。 あれを食べると、疲れは勿論、全ての状態が正常に戻っていく。そんな不思議、アイテム。自分で作り出す事が出来るのが、一番だが、そう簡単に作れやしないだろう。一度、ギルバートに聞いてみようと考えた。「爆睡していたよね、ハウエルの寝顔、可愛かったよ」 俺の思考を遮断させたのは、ラウジャの一言だった。裸の状態で、ずっと抱きついている。彼は自分がどの角度でなら、可愛さを表現しやすいのかを把握していた。 上目遣いで俺を見つめてくる。一瞬、周りの事を忘れて、二人の空間に飲み込まれていきそうになる。そんな俺達をゴホンと邪魔するグレイがいた。「私達もいますからね。見せつけないでくれませんか?」 目のやり場に困っている。チラリと確認しては、逸すの繰り返しだ。この様子を見ていると、どうやらイチャイチャに興味があるように思える。「……グレイも来る?」 自分から誘うような事は、基本的にしないが、どうしても悪戯心が顔を出してしまう。グレイがどんな反応を示すのかを、見てみたい自分がいたんだ。「いや……何言って」「遠慮はしなくていいから。甘やかしてあげる」 普段と違う俺の様子に、皆は口をあんぐりと開けて放心状態になっている。メリエットに関しては、汚物を見るような怪訝な表情で、かなり引いているようだ。 そんなに俺の発言が変だろうか。そういえば、何故こんな言葉が出てくるのだろう。こんな臭いセリフを吐けるタイプじゃないのに。「目を逸らさないでよ。俺だけを見て」 周囲の視線なんて、全く気にならない。いくらでも口説ける。今まで、恥ずかしがっていた言葉を形にするのも、躊躇う事は全くなかった。
last updateLast Updated : 2025-08-19
Read more

第三十四話 思考の具現化

 三十四話 思考の具現化  俺とグレイの二人きりの空間は、まるで円卓の会議をしているような場所へと、作り替えられていく。どうやら攻略対象の思考を具現化して言ったようだ。空間そのものがグレイ自身と言う事なのだろう。 ラウジャを選んだら遊園地とかになりそう、そんな事を考えていると、つい表情が緩みそうになっていく。一人一人の為に、作られる空間とか凄すぎる。俺のも、作ってもらいたいぐらいだ。 俺は円状の机を見て、用意された席に座ると、対面になるようにグレイも座った。 向き合って、お互いを見る事が、初めての俺達は、少し気まずさを感じながら、言葉を作り出そうとしていく。 封を切ったのはグレイだった。彼は俺の視線が気になるようで、自分の心そのものを見せようとしてくれている。案外、人からの視線に弱いのかもしれない。 誰に好かれている、嫌われているとか、気にしなさそうなキャラクターなのに、意外に感じてる自分がいる。「ハウエル様、色々すみませんでした。どう謝罪をしたらいいのかを考えましたが、言葉で尽くすしか方法が……」 結局、彼は魔石によって操られていただけ。例えグレイの感情を模ったものを、ぶちまけたとしても、彼を責める事は出来ない。 それが全て、彼の意志で行動を起こしたのなら、話は別だが。この場合は、謝罪なんて必要ないと感じた。「気にしなくていい。グレイは悪くないからさ」 彼がこれ以上、自分を責めないようにするのは、本当に気にしていないように、振る舞う事だ。作り物の行動は、意味がない。心から受け止めるのが重要だった。 俺が気にしないように配慮をしても、彼は引き下がれない。結局は自分の弱い心が原因なのだから、と言葉を添えてくる。 グレイの立場と俺の位置を入れ替えて、考えてみる。すると、自分でも同じ行動をするかもしれない。 俺は全ての感情を空気と一緒に吐き出すと、言葉の魔法をかけ始める。メモリアルホロウは言葉によって作られていく物語。それなら俺の光を彼に伝染させればいいんじゃないか。
last updateLast Updated : 2025-08-19
Read more

第三十五話 真相と計画

 三十五話 真相と計画  王座につく選択肢もあったが、結局自分が選んだのは違う道だった。ずっと知らなかった事実が明らかになる。 攻略対象として作られたキャラクターは俺の腹違いの兄弟に当たる存在ばかりだったのだ。皆、王子としての役割を放棄して、俺に王座を譲ろうとしていたんだ。 メモリアルホロウでは兄弟でも結婚が出来るシステムになっている。血の繋がりは関係ないらしい。と、言っても俺の血筋は他の王子とは明らかに違う。立場的には下の下だ。 今思えば、最初から変だった。他の兄弟の紹介をされずに、まるで第一王子として扱われていたから、余計に。 その時に、気づくべきだったのかもしれない。自分と恋に落ちるキャラクターが、まさかの兄弟なんて、考えるはずないだろう。 現実世界でも当たり前は、メモリアルホロウでは通用しない。それなら新しい、本当の自分になるきっかけになるんじゃないか、と考え方を変えてみる。「ハウエル、黙っていてすまない」「いいんだよ、レイング。君にも立場があるだろう。それを無下にはしたくないからね」 ある意味、ゲーム内容が変化した事で、現実への執着を断ち切る事が出来たのかもしれない。最初はただのゲーム、作られた存在だったのに、今では大切な人になった。 俺は大切な人達を守りたい。 いつしか現実世界に戻る事は二の次で、この環境を楽しむ決意をしていく。「しかし、誰が王になるんだ?」「それは、もう決まっているよ」 レイングはまだ知らないのだろう。エンスに口ぞえをした事も大きいが、計画は順調に進んでいる。当の本人は知らないが、俺達は情報を共有している。 その情報をレイングに伝える為に、騎士団の練習場に顔を出したのだ。真剣に指導しているレイングを見たい気持ちもあった。 その事は内緒だけどな——「いつも公務を抜け出して、遊んでいる奴に押し付けるのが妥当だと思うんだよな。そうなると……一人しかいない」 ヒントになる言葉で謎解きに
last updateLast Updated : 2025-08-20
Read more

第三十六話 冒険

 三十六話 冒険  何処に行っても強制的に戻されてしまうメリエットは、とうとう逃げれないと諦めたようだった。首輪を外そうともしたが、魔法を付与している為、簡単には外せれない。色々な専門家達に、助力を頼んだが、お手上げのよう。「分かったよ、もうサボらないから」 エンスに謝まっている姿を見ると、イタズラをした子供が怒られたように、不貞腐れている。「もう遅いですぞ。メリエット様には国王になって頂きます」 今まで隠していた事を、発表した。メリエットは一体何を言っているのか、と怪訝な顔をしていた。 国王が亡くなった事により、その席が空いてしまっている。急遽、その席を埋める事が必要になる。本来なら王位を争いながら、手中に収めていくものだと思っていたが、どうやらメモリアルホロウの王子達は、縛られるのが嫌いらしい。「なんで、俺が!」 メリエットの気持ちも分からなくはない。俺が彼の立場なら、同じ事を言うはずだ。俺を含め四人は自分がその役を被らないように、対策をしている。自分を支持している有権者を誑かしたり、メリエットに着くと巨額の富を手に入れる事が出来ると、風潮したり。その結果、メリエットが逃げれない状況へと変化していったんだ。「……少し可哀想な気もするな」 他人事のように見ていると、グレイがある提案をしてくる。「そう思うのなら、ハウエル様が変わればいいのでは?」 思ったよりも声が大きい。俺達はぎくりと心臓を震わしながら、周囲に聞こえていないかを確認する。メリエットが大声をあげているので、かき消されたようだ。ホッと胸を撫で下ろすと、グレイに向かって、厳しい視線を投げつけるラウジャとレイングがいた。「声が大きい。それにハウエルが選ばれてしまうと冒険に行けなくなるだろう?」 冒険の言葉に惹きつけられた俺は、レイングの耳元で囁く。詳しい事を聞くために、秘密話は必要だった。グレイはその事を知らない為、俺とレイングを不思議そうな目で見ている。 国王が亡くなった事で、権力を保持しにくくなった事実
last updateLast Updated : 2025-08-20
Read more

第三十七話 本音と旅立ち

 三十七話 本音と旅立ち 「どうなっているんだよ」 急に接続出来なくなったボス達は、全てのシステムに干渉しようとする。だが、弾かれるように、システムエラーと表示され続けた。「まだ繋がらないのか?」「何度もやってるが、無理だな。コレ」 メモリアルホロウの様子を確認出来ない二人は、自分達の計画が壊れていく事に、怒りを抑えきれない。カタカタとキーボードを叩く指に力が入っていく。「もしかしたら、美緒の脳がAI頭脳の代わりになってしまったのかもな」「どう言う事なんだ?」「彼女の脳にメモリアルホロウの別データーを隠していたんじゃないか。それならチップが独自の機能をし、ゲームに影響を与えられるのかもしれない」 全ては憶測だ。明らかに美緒の脳と直接接続してから、この事態に陥っている。彼女がどんな爆弾を用意していたのかを知らない、彼らは、形のない迷路に落とされている。「俺達に出来る事はないのか?」「……一つだけ手段があるかも」 明らかに言う事を躊躇っている。予想で行動しても自分達が危険に晒されるだけだ。その事を危惧しながらも、伝える。  俺達の楽しい空間を覗き見る事が出来ない。それはギルバートにとって安心出来る環境だった。コレ以上、自分の作ったゲームを荒らされたくない。その気持ちが誰よりも強い。「それでも念には念を……」 チップの中にあったデーターを飲み込むと、自分の体の細胞となっていく。これで新しい機能が追加された事になった。元々のメモリアルホロウは奴らの手にある。権限はギルバートが握っているが、それでもアクセスコードを使えば、侵入されてしまう。「アクセスコードは、私が持っているから大丈夫だとは思うけど」 複製はしていない。隠していた情報は全て彼が所有している。本来のストーリーを崩して、もう一つのサブストーリーを差し込む。それにより、話が飛んでしまったが、仕方ない。「急に国王が亡くなった事になったけど、大丈夫かな。心配しても仕方ないけど」
last updateLast Updated : 2025-08-21
Read more

第三十八話 新スキル

 三十八話 新スキル  全ての情景を目に焼き付けるように進んでいく。最初は緊張していた皆も時間が経つにつれ、楽しめる余裕を持てるようになってきた。以前にラウジャを助ける為に外に出た以来だ。 メモリアルホロウの表紙を見た時には、自分が冒険をする事になるとは考えなかった。ゲーム性が変わった事でファンタジー要素が強くなったようだ。 表は人材を探す旅だが、これには裏クエストがある。俺があの時、国王になる事を選択していたら、この物語は発動する事はなかった。そして俺達の義兄である第一王子、レバンス・ザクエルを探す事も含まれている。最初は伏せられていたが、声に導かれる事で、裏クエストが出現した事に気づけた。「ぼんやりして、考え事か?」 レイングが思考の牢獄に捕まった俺に自由な風を与えていく。複数の考えに囚われていた俺は、側に彼達がいる事を思い出し、何もなかったように答えた。「このルート歩くの初めてだからさ、これからどうしようと考えちゃって」「……嘘をつくならマシな言い訳を考えろ」「ははは」 今までは何があっても、俺の心を思考を見ていたとしても、見て見ぬ振りしてくれていたのに、この旅が始まった事が原因だろう、遠慮がない。 元々はっきり物事を言うタイプだが、ここまで真っ直ぐに向かってくるとは……「ちょっと、何イチャついてるんだよ、僕がいるのに」 痛い所を突かれて苦笑いしていたのに、そういう所、見えてないんだな。ラウジャは勘がいいやら悪いやら、掴み所がない。そう言う所も魅力的で好きだけどな。 わちゃわちゃと笑いに包まれていく俺達は、太陽の光を見つめながら、微笑み合った。 キィィン—— よそ見をしていた俺を庇うように、刃で魔物を切り捨てていく。レイングの剣技は美しく、繊細だ。戦闘中の彼を見ていると、まるで王子様が助けに来てくれたんじゃないかと思ってしまう。「俺がお前を守ってやる。金魚のフンは知らんがな」 発言は王子様とは程遠いけど、仕方ない。これでも王子の一人なのだか
last updateLast Updated : 2025-08-22
Read more

第三十九話 足止め

 三十九話 足止め  俺達が目指すのはガナディア砂漠。そこを抜けると砂の街ガインと呼ばれる所があるらしい。最初は普通に歩いて、冒険気分を楽しんでいたが、通常よりも時間がかかりすぎたようで、レイングのスキル瞬足を使い、ここまで到着する事が出来た。そこらにいる恐竜に近い存在に運んでもらう事にする。ラウジャは攻撃魔法は勿論、魔物の一部を使役する事が出来る。何と呼ぶスキルから不明だが、使えるものは使うのがいい。 俺とラウジャを抱えて、走ってくれたレイングに休息を取って貰いたいのもあった。基本的にこの砂漠では物理攻撃しか効かないからだ。ラウジャの魔法が使えるのは、まだ先だろう。「物理攻撃だけしか効かないとか、あり得ない。僕の勇姿見てもらうはずだったのにぃ」 いい所を一つも見せる事が出来ていないラウジャは内心焦っていた。刺激的な冒険の中で愛を深める為に、惚れ直してもらおうと奮闘している。 全て空回りしているが、そこは触れないでおこう。 俺達はラウジャが使役した魔物の上に乗ると、どちらが俺と一緒に乗るかを争っている二人がいる。「こんな所で、喧嘩しなくてもいいだろう」「いや、はっきりさせないといけないんだ」「ハウエルは俺と乗る」 二人とも俺の話を聞いてくれない。意地を張っているようにも見える。どちらが一緒に乗るとかよりも、今は目の前の冒険を優先するのが先だろう。意見をなかなか曲げない二人を見て、頭を抱えた。「それじゃあ、レイングとラウジャが一緒に乗ればいいんじゃないか? 俺は先に行くよ」「「え」」 これ以上、時間を無駄にはしたくない。小言なら後で聞こうと思いながら、手綱を引いた。  先を進む俺は、だいぶ手綱を扱うのに慣れてきた。後ろの方でガヤガヤ言い合っている声が聞こえてくる。ここまで聞こえるなんて、どれだけ大きな声なんだ。「元気があるだけ、いいか」 だいぶコイツにも慣れてきた。最初は肌がゴツゴツしていて岩のように感じていたが、慣れてしまうとそこまで気にならない。ふふと微笑みながら
last updateLast Updated : 2025-08-23
Read more
PREV
123456
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status