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All Chapters of メモリアルホロウ: Chapter 21 - Chapter 30

55 Chapters

第二十話 三人目の台風

二十話 三人目の台風 三時間が経過している。寝ていた方がいいのに、結局、言う事を聞かずに、俺の側に痛いと言い張って、俺の部屋へいる事になった。了承した訳でもないのに、婚約したといい張っている二人を見ていると、頭が痛くなっていく。 自分に正直になれば、凄く嬉しい。だけどまだ何も決めていないのに、話だけが進んでいる。それが気に食わない。真面目すぎると言われて、二人に叱られたが、結局は二人は言い合いながら、喧嘩に発展している。 「旦那様は僕のだよ。どうして君にそこまで言われなくちゃいけないんだよ」 「はぁ? ハウエルの婚約者は俺だ。お前の方こそ勝手に決めるなよな」 周りから尊敬されている二人が俺の事で争うなんて誰が考えただろう。止める人は俺しかいない。何回も仲裁に入ろうとしたが、結果は惨敗。次こそ、ちゃんと止めなければ…… 脳裏に起こるエンスの表情が浮かんでくる。ここで粗相をしたら、後がないんじゃないのかと身震いをした。 「……それなら、二人とも婚約者になればいいんじゃないかな?」 ドアが開いていたようで、廊下から誰かの声が響き渡る。その考えがあったかと、腑に落ちた二人は幸せそうに笑い始めた。 「入るよ……」 「「メリエット様」」 紫髪でローブを羽織っている青年がそこにいた。ふんわりと微笑むと、周囲を虜にする魅力を持っている。見た事のないキャラクターの出現に驚きながら、彼のプロフィールを確認する事にした。 画面に情報が映ると、こう書かれている。 【ハウザ・メリエット エリスの弟子の魔術師 ラウジャからしたら兄弟子になる 人の心を虜にする魅了を持っている人材 魔法全般は使用可能 手ぐせが悪く、少しでも好意の匂いがすると、男なら誰でも受け入れる】 新しいキャラクターが追加されたと言う事は、もしかしてラウジャのシナリオを攻略したのだろうか。しかし攻略したとの表記が出てこない。それならこれは一体、どうなってい
last updateLast Updated : 2025-08-12
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第二十一話 情報の保管場所

二十一話 情報の保管場所 この数日間、慌ただしい日々だった。何処にいてもラウジャとレイングの目が光っていて城の中を自由に動けない状況が続いていたからだ。メリエットが登場した事で、これ以上、他の人が近づかないように、警戒しているように見える。 元々、モテるタイプじゃないのに、そこまで躍起にならなくてもいいと思うのだが、俺の言葉は二人には届かない。 そんな二人を見ていたエンスは、仕事をほっぽり出しているレイングに騎士団副団長として、行動を考えるようにと叱り、ラウジャに対しては俺の世話係を外したと告げた。急な話に二人はショックを受けているようで、渋々と俺から離れていったんだ。 一人の時間も大切だ。メモリアルホロウの事を今以上に知る為には、必要なのだから。沢山の書物を揃えている場所、現代で言えば国家の事を取り扱っている図書館があるが、そこよりも大きい。そこに行くと、見た事のない字で過去の事が書かれている。中には御伽話のような表現をしている書物もあった。視覚から入ってくる文字は読めないが、脳裏の中で変換しながら、語りかけてくれる。こんな機能があるのなら、現実にも欲しいものだ。 一つの本を手に取ると、並べられている椅子に座り、読みふける。いつの間にか時間を忘れて、読書をしている自分が懐かしくて仕方なかった。文章はいつも俺のそばにある。書かれたものは、今まで読んだ事のない話ばかりで、面白く感じている。 「ハウエル、偶然だね。君も読書をしに来たの?」 集中していたのに、水をさされた。物語の中で冒険をしていた俺を呼んだのは誰なんだ。一言、言ってやろうと振り返ると、そこにはメリエットがニンマリ佇んでいる。 「げっ」 つい言葉に出してしまった。出さなくても、彼には心の声が読めるのだから、仕方ないが…… 「そんなに嫌がらないでよ、傷つくなぁ」 「……邪魔をしないでくれ」 「ふふ。何の本、読んでるの?」 ヒョイと顔を覗かせて、内容を確認してくる。俺の顔とメリエットの顔が予想以上に、近づきすぎて、耐えられない。メリエットのス
last updateLast Updated : 2025-08-13
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第二十二話 レイングの忠告

二十二話 レイングの忠告 いつの間にか閉館時間がきていた。自分で思っていた以上に、集中していたらしい。現実で生きていた時の俺は、ここまで集中した事がなかった。環境が変われば、ここまで変化するのかと、驚いた程だ。 スタスタと部屋へ戻ろうとしていると、ふと中庭に目線がいく。そこには楽しそうに話をしているラウジャとメリエットがいた。どうやら今日の仕事は終わったらしい。彼達が何をしているのかは、分からないが、きっと魔法に関する事だろう。 ラウジャの笑顔を見ていると、安心する。その相手がメリエットと言うのが癪だが、仕方ない。彼にとってメリエットは兄弟子だから、仲がいいのも納得出来る。 それでも二人の親密そうな姿を見ていると、もやもやしてしまう。こんな事に気づかれたら、また弄ばれてしまうに決まっている。 二人とは距離があるが、心の声が何処まで届くかは不透明だ。早く消えろと念じながら、感情を無にしていく。 「くすくす」 「どうしたのですか、メリエット様」 急に笑い出したメリエットを不思議そうな目で見てくるラウジャ。彼には音を聞き分けれない。だからこそ、メリエットは自分の権限のように楽しんでいる。 ラウジャに出来ない事があるのは、珍しい事だった。何なく卒なくこなしていく優等生に勝利した気分が心地よかった。 チラリとメリエットは俺の方に視線を向けると、掌をひらひらと動かした。 あの時のメリエットの様子を思い出しながら、ベッドの上に転がっている。何を考えているのか掴めない、彼の正体を探ろうとしている自分がいた。 別に恋をしている訳ではない。それでも、あの匂いが俺の体に纏わりつきながら、記憶として保管されていく。 がああ、と小さく唸ると、現実を拒否するように頭を掻き出した。一人で抱え込んでいても、何も変わらないのに。 コンコン—— 扉を叩く音で、我に返る。悶えていた自分をかき消すように、身なりを整えると、何事もなかったように、開けた。
last updateLast Updated : 2025-08-13
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第二十三話 違う色

二十三話 違う色 俺は言葉の重要性を履き違えていた。いつも自分の事ばかり考えていたからだろう。自分の吐く言葉が、キャラクターにどんな変化を与えるのかを理解出来ていなかったのかもしれない。 それを知るのはまだ先の事だ。少しずつ友好関係を結んでいたはずなのに、歪みが出来始めていた。 レイングが部屋を出てから、随分と時間が経過した。最後の彼の言葉を、何度も何度も頭の中でリピートしている。 何を示しているのか、どうしてあんな事を言ったのか分からない。それはレイングだけが知る秘密の一つなのかもしれない。 掴まれた腕が熱くなって、冷めてはくれない。まるで彼の感情が炎を作り、俺自身に注がれているような感覚だった。 俺は目を瞑りながら、頭の中で整理をしている。自分がこれ以上、パンクしない為の処置だった。切ない瞳が、いつまでも俺の心を掴んで離す事はなかった。 吸い込まれるように、眠気が襲ってくる。うつらうつらと時の流れを感じながら、意識を手放した。 いつまでも好き勝手していてはいけないと、エンスから仕事を貰った俺は、大量の資料を抱えながら、騎士団へと向かった。この書類は所謂、給料の明細に当たるものだ。全てを計算して、不備がないかを確認し、一人一人に渡していく。本来なら王子がする仕事ではない。 最初は、自分の立場を考えて欲しいと止められたが、コミュニケーションを図る為だと、言いくるめる事が出来た。こんな、あっさり引き下がるとは考えていなかったが…… 「おはようございます、ハウエル様」 「おはよう、グレイ」 騎士団で一日の騎士達の体調管理を任されているグレイが声をかけてくると、柔らかな表情で対応する。 最初はいかにも作り笑顔って感じだったが、一度、慣れてしまえばお手のものと言った所だ。 彼は長い髪を一つ括りにしている。騎士団に所属している者は皆、髪が短いが、彼だけは例外だった。他の部署にも自由に出入りが出来るようで、エンスの所で見かける事も多々ある。
last updateLast Updated : 2025-08-14
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第二十四話 欲望の匂い

二十四話 欲望の匂い 自分の中の何かが崩壊していく。冷静な思考が上書きされていくと、ドクンと心臓の音が飛び跳ねた。頭に熱がこもっていくと、全身へと回るように広がっていく。 「はぁはぁ……」 苦しそうな表情を浮かべる俺を、見下ろしている人物がいる。ああ、レイングか。倒れた俺の看病をしてくれているのだろうか。冷たいタオルで額を拭ってくれている。 「……レイング」 朦朧とした意識の中で、彼の名前を呼んでみると、ぎゅっと手を握りってくれている。自分がどうにかなりそうで、不安に押しつぶされている俺を支えるように。 「ハウエル様の様子はどうです?」 「意識はあるみたいなのですが、急に苦しみ出して……」 「そうですか。なら私の新薬を飲ませてみましょうか、落ち着きますよ」 レイングはグレイの出してきた青い錠剤を手にすると、自分の口に水と薬を含んで、俺に飲ませていく。 最初はつっかえそうになって、むせてしまったが、何回か繰り返すと、ようやく飲み込む事が出来た。 「飲みましたね? 後は私が看病するので、貴方は休みなさい。明日も騎士団の勤めがあるでしょう」 「しかし!」 急に立ちあがろうとするレイングの手を引いて、自分の顔に近づけさせていく。薬のお陰なのか、やっと言葉にする事が出来た。 「俺は……大丈夫。レイングは自分の事を優先して欲しい。俺の我儘……聞いてくれるよな?」 今出来ることは、これ以上、心配かけないようにする事だった。やっと蟠りが解けそうなのに、ややこしい事になって欲しくない気持ちが膨らんでいた。俺の気持ちを理解したのか、頷くと自分の居場所へと戻って行った。 グレイと二人きりになった俺は、彼にも感謝を示すと、眠気が漂ってきた。少し眠る事にしよう。 目を閉じ、微睡んでいると、ゴソゴソと誰かの手の感触が俺の頬を撫でている。その指先からは欲情の色が滲み出てきた。誰の手なのだろうかと、薄目を開けてみるが、ぼんやりとしてよく見えない。
last updateLast Updated : 2025-08-14
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第二十五話 シナリオ発生

二十五話 シナリオ発生 【シナリオ発生 対立する兄弟が開始されました ここでは貴方の言葉でグレイの闇を正してください。 分岐点が発生する際に、選択肢が現れます】 急に始まりを告げるシナリオは、俺の瞳に辛うじて映った。欲望を無理矢理、引き出そうとしている薬の作用が原因だろう。俺の言葉でグレイを正していく。そんな事が出来るのか、分からないがやってみるしかない。 「貴方を見ているとイライラします。どうしてでしょうね、レイングが貴方を選んだからでしょうか。弟の分際で兄を追い越すなんて、あり得ない」 「弟?」 初めて聞く情報を聞き返すと、グレイは、レイングと兄弟だと言う事実を語り出した。俺が逃げれないように、魔法で拘束しながら語っている。 「ラウジャ様も、部外者が急に出てきて、婚約者を名乗るとか、納得されてないようですし、私が力を貸したまで」 まるでラウジャが、この状況を仕組んだように言いながら、嫉妬の感情を俺にぶつけてくる。 「私は一番じゃないといけない。それなのに、私が先に目をつけた貴方に唾をつけるとは……許さない」 目の前に俺がいるはずなのに、彼には見えていない。過去の自分の姿を追いかけているように思った。どうにか現実を見せつけようと、言葉を出そうとするが、ググっと首を締め付けられて、声が出せない。 「ううううううう、ああっ」 そんな俺達に知らしめるように、ラウジャが叫んだ。自分の感情を押さえつけていた彼は、全てが吹っ切れたように、欲望に沈んでいく。 のそりのそりと俺を目指しながら歩いてくる。視線はおぼつかなく、何も見ようとしていない。確実に快楽堕ちをしているようだった。 「なーんで、二人が抱き合っているの? 僕のなのに、ねぇそんな奴、放置して遊ぼうよぉ」 ダラダラと涎を垂らしなあら、俺の足目がけて飛び込んで来た。ラウジャの体がダイレクトに、俺の秘宝を探し当てると、ズボンを脱がして行った。
last updateLast Updated : 2025-08-15
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第二十六話 壊れた関係性

二十六話 壊れた関係性 自室に戻ったレイングは、あの時の俺の言葉を思い出しながら、ぐっと堪えている。最近のグレイは信用出来るが、以前の彼はそうじゃなかった。彼が事務的な仕事をする前の話だ。 二人の騎士は、団長から認められる存在だった。兄は知能に恵まれ、オールマイティーに戦える騎士。そして弟は突破型だった。最初は兄が副団長を襲名するはずだった。しかし、国からの圧力で、弟のレイングが副団長の立場を手に入れる結果となったのだ。 騎士団の中でしか知らない情報が、国にまで伝わった事が全ての原因だった。 騎士でありながら、魔法の才もある兄は、他の使い道で有効な存在だと、国は考えを示す。勿論、団長にはそれを拒否する権限はなかった。 「レイング、話がある」 「どうしたの……兄さん」 グレイを慕っているレイングは、いつものように笑顔で答えた。その姿が、グレイからしたら見下されたように見えてしまったのだろう。そこから関係は変化していく 「お前が告げ口をしたんだろう、魔法の事を」 「していないよ、俺は」 周囲を冷静に見る事が出来なかったグレイは、全てを弟のせいにした。そこから、レイングのやる事、なす事、邪魔をするようになってしまう。 「私に手に入らないものはない。だから必ず」 このまま邪魔をし続けていたら、いつかは表沙汰になる可能性がある。それならば、確実に、レイングの精神を砕く為に、その時を待つ事が懸命に思えた。その時まで、元の優しい兄を演じつつ、全ての行動をメリエットを通じて、監視していたのだ。 全ては俺がミラウス城に入る前の話となっている。メモリアルホロウの中でプレイに直生関係ないように作られていたが、いつの間にか重要な情報の一つをレイングが握っている。 嫌な胸騒ぎを覚えたレイングは、俺との約束を破り、宮殿へと急いで向かった。あれから2時間程、経過している。行動するなら、どうしてあの時に、しなかったのかと自分を責めていた。
last updateLast Updated : 2025-08-15
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第二十七話 邪石

二十七話 邪石 感情的にならないようにと、忠告されていたのに、グレイの言葉に揺られてしまいそうだ。レイングは一瞬、目を瞑ると、精神を統一させる。ゆっくりと開くと、そこにはいつもよりも、強い眼差しを見せる彼がいた。 ギュインと刃先がグレイの首元に添えられると、一言伝える。 「……元に戻せ」 「何かな?」 「元に戻せと言っている。二人を解放しろ」 「媚薬を飲んだんだから、当分はこのままだよ。いっその事、繰り返し摂取させて、一生、このままにするのも面白いだろうな」 煽って、レイングの感情を支配しようとするグレイは、俺達の事をおもちゃのように見下している。汚い物を見るような瞳を、ちらつかせながら、ため息を吐いた。 もう少し、動かせば、彼の喉を痛みつける事が出来る。グッと力を入れると、みるみるうちに、刃先は血を吸い始めた。 その時だった。全てを見計らったように、指を鳴らすと、グレイの位置と俺達の居場所がすり替わっていく。交換された立ち位置には俺とラウジャが互いの唇を楽しそうに蝕んでいる様子が、レイングに見せつけるように、現れた。 グレイに向けられた刃先は、俺の首元にある。もう少しで貫かれるんじゃと思うくらいに、近い。 浄化の膜を纏っている剣は、俺の首元に軽く触れると、一筋の涙を流させた。血を伝って、浄化の膜が雫へと編成されていくと、俺の体へと取り込まれていった。 「う……あああ」 血が流れていたはずなのに、雫が触れた瞬間に、逆再生していくように、消えていく。ドクンと首筋が焼けるように、熱い。媚薬の中に悪意の雫を入れていたようだ。それを浄化させる為に、効果を無効にしていく。 全身から力が抜けていくと、歪んでいた世界が真っ直ぐに見え出していく。何が起こっているのか理解出来ない俺は、徐々に理性を取り戻していった。 「あ……れ、つっ」 意識を戻した俺を待っていたのは、ラウジャのキスの嵐だった。どんな状況になっているのか、頭が沸騰しているようだ。視線をラウジャから
last updateLast Updated : 2025-08-16
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第二十八話 微笑みが全てを狂わす

二十八話 微笑みが全てを狂わす エンスは今回の事で宮殿を閉じる事にした。自室の空間を増幅させ、作った居場所は俺達にとっては急患所でもあった。それを潰す事は、これから急患が出た時に、大変になるだろう。その事を聞くと、どうやら国王に離れを使うように、言われたらしい。 「やはり、私の自室にあるのは、ちょっとね……」 何かあった時に、すぐに動けるように、自室にある方が楽だと考えたのだろう。しかし、今回の騒動が原因で追及をされたらしい。そして、俺のあの姿を見て、別の場所でした方がいいと判断したらしい。 「また、同じ事が起こったら……さすがに私も」 エンスの言いたい事は分かる。結界を張る事で自室に影響が行かないようにしていたが、その結界をレイングが破ってしまった。通常の結界の上から、攻撃魔法を書き加えたグレイにも原因があるだろう。いつの間にか宮殿の中だけではなく、エンスの自室もボロボロにしていた。言葉の力を使った事で、水道は破れ、水浸し。そして、俺とラウジャの交わった残り香がぷんぷんと異臭を放っている。 俺も全てが終わった時に、現状がどうなっているかに気づいたのだが、時すでに遅し。 「自室も変わる事にしたのです、何せ、匂いが……」 当てつけのように言って来るエンスに対して、罪悪感しかない。それ以上の感情は、蓋をしてしまいたい気分だった。 「すみませんでした!」 それしか言えない、それ以上も、以下もない。この謝罪だけでどうにかなるとは、考えていないが。せめて自分の気持ちは素直になりたいと思ったんだ。 「ん」 周囲が騒がしいのに、眠りこけていたラウジャは、微かな声を挙げると、皆の視線を集めた。 俺はラウジャに近づいて、彼の頬に手を添えると、ゆっくりと目を覚ました。寝ぼけているラウジャは、自分が何処で意識を失っているのか理解していない。 一つ一つ、説明するのは後にして、生まれたままの状態になっている彼を隠すタオルを巻き付けていく。 「ハウエル、何して」
last updateLast Updated : 2025-08-16
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第二十九話 管理者権限

二十九話 管理者権限 全てが落ち着いて、休める環境を手に入れる事が出来た。その瞬間を見計らって、俺にアピールするように、言葉が出てくる。 【貴方はメモリアルホロウの王になりますか? YES NO】 初めてのパターンだ。分岐に選択肢が現れると書いていた事をログを見て確認をする。あの時は媚薬の効果で、よく見えなかったが、今なら確認する事が出来る。 俺の腹は決まっていた。自分の願いを込めながら指で選択すると、吸い込まれるように場面が土砂崩れのように、崩壊していく。壁が自分に当たりそうになった瞬間、反射的に目を瞑った。 【新しい世界へようこそ。ここはメモリアルホロウです。 貴方はNOを選択しました。願いを込められた貴方の選択は、全てのシナリオに影響を与えます。 シナリオ「対立する兄弟」クリアしました】 シナリオを達成する事が出来たようだ。しかし今までの仕様とは明らかに違う。基本、自分の視界に出てくる画面から情報を得れていたのだが、今回は少年の音声に変わっている。ロロンとは違うハスキーな声だ。あどけなさが残るが、喋り方からして男の子だと認識する事が出来た。 瞑っていた瞼を開くと、部屋に戻ったはずなのに、目の前に広がっている光景は、まるで舞踏会。今まではロロンが休憩所を確保してくれていたのだが、今回は違うようだった。 「どうなっているんだ?」 一体、何が起きているのかを把握しようと、辺りを見てみるが、何も情報は落ちていない。見た事のない光景に疎外感を感じながら、自分の時間軸が揺らぎ始める。 「やぁ。見ない顔だね。楽しんでる?」 「えっ……と。貴方は?」 見るからに少年のようなあどけなさを抱いている緑髪の青年は、にっこり微笑むと、俺の耳元で囁き始める。 「僕はギルバート。舞踏会を主催した者だよ。君の名前は?」 こういう場所に慣れているのだろう、まだ若いのに、紳士的に見える。見た目と声は幼いのに、体つきは大人だった。
last updateLast Updated : 2025-08-17
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