六十九話 バラの匂い なるべく時間稼ぎをする事が出来たラウスはさっきの戦闘の事を考えながら、足を早めていく。 幸運スキルと叫んでいた。今までそんなスキルを聞いた事がなかった。プレイヤーの俺の事を異質な存在と認識し始めている。「あいつは何者なんだ」 心の声が言葉として作られ、表面に滲んでいく。まるで誰かに引き出されているように。心の奥底にあるしこりが彼を蝕んでいく。 考えてもキリがないのに、どうしてだかあの光景が頭から離れない。俺に対して悪意を抱いているはずのラウスは、記憶を巻き戻しながら、何度も再生していく。 レイングとラストの間に割り込んできた邪魔な存在のはずなのに、プレイヤーとして存在している俺を眩しそうに目を伏せた。「どうして浮かぶんだよ、奴は俺からレイングを奪ったのに……」 動揺は心拍数を増加させ、冷静な判断を失わせようとしている。そんなラウスの様子を見物しているカリアは、自分がいる場所と彼の空間にアクセスし、繋げていく。 簡単に行ける場所ではないのに、カリアの力により自由に行き来する事が出来るようになった。その事にラウスが気づく事はない。「あれが彼の固有スキルやな。キャラクターにも影響を与えれるんか」 スキル幸運は元々メモリアルホロウに存在しないスキルの一つだ。誰でも取得する事が出来ない。最初は全てにおいてプレイヤーの行動に数%の幸運を与えるものだった。しかしカリアの登場により、無意識のうちに能力値の解放と言葉の覚醒により、スキル幸運を媒体にして、複数の選択肢を作り変える事が出来るように変化してしまった。「人に光を魅せるスキル。人を惑わす力」 危険な目に遭いそうになっても、最終的には助かるようになっている。敵だったキャラクターが味方へと変わったり、シナリオの進行を阻害する存在が現れると、強制的に排除する事が出来る。 幸運スキルを持っているプレイヤーは全ての事柄から守られるようになる。「オイラの影響を与えんと、成長を止める事は出来ひんのやな」
Terakhir Diperbarui : 2025-09-22 Baca selengkapnya