四十話 彼女は彼? 「スキル発動レイドリアン——」 自分が何をすればいいのか分かる。初めて使うスキルだが、手に入れた時点で組み込まれているようだった。浮かんできたスキルの本来の名前を呼ぶと、全ての空気を使い光を集めていく。高密度な光の欠片を作り出すと、実体化が始まった。 大きく小さく、細く長く、複数の形に移り変わりながら、一つの姿が完成されていく。そこに出現したのは、綺麗な金髪の長い髪を揺らす妖精族の少女だった 閉じられている瞼がゆっくり開いていくと、緑色の瞳が顔を覗かせた。彼女は俺を目視すると、嬉しそうに飛び跳ね始めた。「ハウくん〜」 ビトッと引っき虫のように、頬に抱きついてくる。俺の名前は最初から彼女にインプットされているようだ。 妖精族と言えば、どうしてもロロンを思い出してしまう。面倒な奴だったが、こうして振り返ると少し寂しさが滲んだ。「初めまして、俺はハウエル。君の名前は?」「……酷い」 自己紹介をしただけなのに、何故だかショックを受けている。何か気に触る事をしたのだろうか。彼女は俺と距離を開け、何か言いたそうな瞳で訴えかけてくる。「僕の事、忘れたの?」「いや、忘れたも何も……君とは初対面じゃないか」 記憶を揺さぶっても、彼女のような少女と関わりなんてない。身に覚えのない事を言われても、困ってしまう。 しろどもどろになりながら、彼女の話に耳を傾けていく。はっきりとは言わないが、彼女は僕を知っているようだ。話した事もあるらしい。 全く、さっぱり分からない……「こんな可愛い子と知り合いだったなんて、浮気者」 水を溜めていたはずのラウジャは、俺が彼女と話している所を見て、急いで帰ってきたようだった。 彼のセンサーは侮れない。 しかし妖精族と言っても、この世界で初めて女の子に出会った。今までは男性ばかりで、つい女性の存在を忘れていた。 今までの俺なら妖精族だとしても、こんな美少女を目の前にして、
Last Updated : 2025-08-24 Read more