五十九話 沈んでいくラウジャ ロロンは暗号通り自分の役割を遂行しようとしていた。これを押せば、俺を、俺達を助ける事が出来ると信じて。 レイングを含めこの状況を把握している人はいない。ロロンは彼らの態度を見て、そう確信していた。自分だけが知り得るものなら、後はどうにかなるかもしれない。 そう考えて、リセットを押そうとする。「ロロン、何をしようとしているの?」 今まで黙って様子を見ていたラウジャが問いかける。ぎくりと確信を突かれたような気分になったロロンは、動揺心を隠して、いつもの調子で話をし始める。「何が言いたいのかな〜? ラウジャ」 どこまで誤魔化せるかはロロンの腕次第といった所だろう。隠している情報をキャラクター達に告げるのはよろしくない。 考えても、答えに辿り着けない。今までならプレイヤーにもキャラクターにも、そこまで興味を抱かなかった。しかし、今回は違う。旅をして、関わり、会話を重ねて信用を作ってしまった。その記録が記憶として残り、彼の決断を揺さぶっているようだ。「さっきから様子が変だよ。何かをしようとしてるんじゃないの? この状況だからこそ隠し事はなしだよね?」 いつもの彼なら、ここまで饒舌になる事はない。ラウジャを作り出した時に、彼には弱さを埋めつけている。 例え自分の考えがあったとしても、ここまで首を突っ込んでくるような事はないはずだ。 この異変に気づいたロロンは、自分の知らない所で異質な存在との接触があったのではないかと、考えを切り替えていく。「どうしたの? ロロン」 攻略対象キャラクターとしての位置付けされているラウジャが、内情を隠している。メモリアルホロウに存在しているキャラクターの全てを把握出来るはずのロロンは、彼の隠しているものを読み取ろうとスキャンした。【権限がありません】 ビビビと警告音が頭の中で響くと、その反動で痛みが現れる。ロロンの後ろで糸を引いているギルバートがいる限り、弾かれる事はないはず。それなのに、強い力
Last Updated : 2025-09-12 Read more