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All Chapters of 蒼い華が咲く: Chapter 61 - Chapter 70

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翔太の優しい声に反応するように顔を上げると額に目元に頬に優しいキスが降りてくる。そして最後に唇に…。 触れるだけの、子供がじゃれ合うような軽いキスを繰り返す。もう一度、額に唇を寄せ 「もう大丈夫か?」 優しい声で静かに聞いてくる。俺はそんな声を聞きながらそっと目を閉じ息を吐く。 「ありがと翔太。もう大丈夫」 翔太のこの行為のおかげで俺はいつも落ち着ける。そしていつもの偽りの俺へと戻れるんだ。 「ねぇ」 躊躇いがちに声をかけられ 「ん?」 二人して声のした方を見る。 「二人とも付き合ってないんだよね?」 雅がそんなことを聞いてくる。 「そうだけど?どうして?」 なんでそんなこと聞くかなぁ? 「あ…うん…織田くんは苗代くんのこと好きなのかなって…だって傍から見たら二人とも恋人みたいだったから…」 雅が少し焦りながらいう。榊や佐紀も頷いている。んー説明するのめんどぉ。そんな気持ちを含めて翔太を見てみる。翔太は少し困った顔をして溜め息をつき 「俺たちはお互い好きだぜ。ただ恋人になるぐらいの好きじゃない。好きって気持ちも色々あるだろ?蒼樹は金城のことが好きでしょうがない。蒼華の名を捨ててもいいぐらいに…。俺だって彼女のことが好きでしょうがない。俺たちのお互いを好きって気持ちはそんなもんだよ」 俺を撫でて答える。俺はそんな翔太の撫でる手を甘受しながら翔太の服を掴んでいた手に少しだけ力を込める。 「それに…さっきのあれはこいつにとってとても大事な儀式だ」 俺をもう一度その腕に抱き締め翔太が続ける。 「儀式?」 雅たちの頭に疑問符が浮かんでるね。ん、ほんと面倒。 「本来の姿に戻ったこいつを落ち着かせるためだけの行為。それ以上でもそれ以下でもない。あれはこいつにとっても俺たち…俺にとっても必要な儀式なんだよ」 翔太の言葉に溜め息をつく。こんな面倒なこと聞かれるのなら見せるんじゃなかったなぁ。ほんと… 「大丈夫だ。だから落ち着け」 俺にだけにしか聞こえないように優しい音色が耳に滑り込んでくる。ほんと、翔太ってばよく気が付くなぁ。俺がイラつきだしてるって…。 「俺たちにとって蒼華は絶対だ。お前たちを掟の中に入れるのも蒼華が決めたからだ。そこだけは勘違いするな。お前たち四天王は俺たちに守られる必要なんてない。それだけの実力があるんだから
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俺はタバコを吸い煙を肺の中に吸い込み吐き出す。何日ぶりだっけ?タバコ吸ったの?拓ちゃんに会ってからしばらく止めてたんだけどな…「そうだ蒼樹お前の携帯は…ってお前はぁ~!!」 ヤベぇ。翔太に見つかった。 「1本だけだから心配するなよ」 自分の携帯を翔太に投げつけ短くなっていくタバコを吸いながら答える。 「それで止めとけよ」 翔太は諦めたのか俺の携帯を受け取りデータを入れてくれている。俺はギリギリまで吸って小さくなったタバコを捨て踵で踏みつけ火を消す。 潰したタバコを拾いポッケの中にしまい、ゆっくりとみんなの方に戻る。そろそろ終わりそうだったからさ… 「終わった?」 俺は翔太の傍に立ち聞いてみる。 「おう。お前はどうする?」 俺に携帯を返しながら聞いてくる。俺は小さく首を振り笑う。あっ、翔ちゃんの眉間に皺が寄った。きっと下手くそな顔してたんだろうね。 「待ってるからさ…拓ちゃんが…行くわ…ほいじゃねぇ」 離れようとした俺の腕を翔ちゃんが掴み抱きしめられた。あぁ、もう、ほんとに。このお節介。こんな時はなにも言わずに行かせてくれればいいのに…。 「…自分の言った言葉に後悔するな。俺はお前の言った言葉だから聞き入れたんだ…下手くそな顔して無理に笑うんじゃねぇよ…俺の前でそんな顔しなくてもいいつっただろうが…金城に甘えてこい」 俺にしか聞こえない声で言われる。あぁ、もう翔太のバカ。 「んっ、ごめんね…ありがと…」 俺が呟きのように言えば 「気を付けていけよ」 抱きしめていた腕を放し頭を撫でて言ってくる。 「ふざけんなバーカ」 俺はべーっと舌を出しその場を離れた。ほんと、ありがと…翔太がいなかったら俺もっと荒れてたよ…あぁ…染まる…黒く…闇に…染まっていく…黒く黒く… 俺の意思とは関係なく…染まっていく…抜け出せなくなるぐらい…黒く染まっていく… お願い…助けて…拓真…俺は急ぎ足で公園に向かう。公園に入っていつもの場所に見慣れた姿を発見。その姿を見てホッと息を吐く。ちゃんと待っててくれたんだ。「お待たせ」 ちょこんと彼の前にしゃがみ顔を覗き込む。 「終わったのか?」 静かに聞いてくる。 「うん。掟に加えてきちゃった。拓ちゃんもね。ごめんね勝手なことして」 俺はそのままの体勢で答える。眉間に皺。ずっとついてる。
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俺と拓ちゃんはなんの会話もなく正輝さんの店に向かった。こうやって一緒に歩けるだけで俺は嬉しいよ。 店に入ればみんなが来てて騒いでた。まぁ相手はバイクなんだから当たり前なんだけどね。 「そーちゃん!」 なんて抱きついてくるから 「まーくん!」 とまぁいつもの挨拶を例の如く30人分やってのけた。その挨拶を終えてから俺は拓ちゃんを連れて翔太が座ってるボックス席のソファに座った。なんだかんだで雅たちも一緒に来たんだね。 「おまたせぇん」 そう声をかけて拓ちゃんが隣に座ったのを見計らってゴロッと膝枕をする。いつものことだから拓ちゃんはなんにも言わない。 「お前さ、いっつもこんななのか?」 翔ちゃんは驚き半分、呆れ半分って顔で聞いてくる。ん、なんとなく翔太の考えてることわかる。 「うん、だって拓ちゃんの膝って気持ちいいんだもん」 俺は素直に答えた。拓ちゃんの手はゆっくりと俺の頭を撫でてくれる。それがほんと気持ちいい。 「ねぇ翔太…掟…金狼さんも入れてもいいよね?」 俺は戸惑いながら聞いてみる。 「そんな顔すんなって。蒼華の決めたことだ俺は反対しねぇ。それにお前がそんだけ懐いてんだから無碍にはできねぇだろが、金城もお前に対して本気みてぇだし…携帯のデータをくれればそれでいい。なんかあったときに連絡が取れればそれでいいからな」 翔太はクシャッて俺の頭を撫でて答えてくれる。ほんと優しいね。 「だって、拓ちゃんそれでいい?」 今度は拓ちゃんを見上げて聞いてみる。 「あぁ、それでいいなら俺はかまわない」 拓ちゃんはそういって携帯を取りだす。その携帯にメンバー全員のデータが書き込まれた。 「ところで蒼樹。一言言ってもいいか?」 翔太が突然そんなことを言うから 「ん?なぁにぃ?」 不思議に思いながら訊き返せば 「はっきり言ってさ見た目カップルじゃねぇかお前ら。ってか昼間、授業サボって学校でやったんだって?」 なんて言われた。んなぁ!!なんで学校でやったのバレてんの!!雅たちだな、もう。 「いやぁ~ん。えっちぃ~!翔ちゃんともいっぱいしたじゃない!」 なんてお道化てみせる。 「はいはい。確かにいっぱいしましたね。あの頃は若かったなぁ~」 なんて軽く翔太にあしらわれちゃった。つまんなぁ~い! 「なぁ翔太。いつになったら俺に彼女を紹
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「でも…それで本当によかったの?」 雅が困った顔しながら聞いてくる。そんな顔しなくてもいいのに。 「なにが?恋愛は個人の自由でしょ?俺はそれに関してはなにも言わないよ?真樹だって拓海と付き合ってるし、直海だって晃司と付き合ってるんだし。メンバー同士で付き合ってるやつ他にもいるよ?それってさ本当に自由じゃないのかな?俺が止めることじゃないもん。俺はそこまで口出さないよ?俺が口出す問題じゃないしね。俺がZEAのルールを決めてるわけじゃない」 俺は守られてはいるけどZEAのルールを決めるつもりはない。ZEAのトップは翔太なのだから…翔太が決めることだから…俺は口を出さない。恋愛は自由だから気にしない。でも…でも俺は…俺は…そんな自由な恋愛にすら恐怖している…俺には壊せない壁があるから…過去のトラウマが俺を自由にはさせてくれない…「帰るぞ。お前、疲れてるだろ?」 急に拓ちゃんが言い出す。 「ほえ?別に大丈夫だけど?」 最近の拓ちゃんって翔太並みかも… 「いいから帰るぞ。苗代もういいだろ?」 なんて勝手に翔太に聞いてるし 「あぁ、わりぃ。強引にでも連れて帰ってくれ」 翔太までも言う。はぁ、バレてるのね。俺がまだ引きずってること…しょうがないかぁ相手は翔太だもんね。 「ほいじゃまたね翔太。みんなもまた遊んでねぇ」 俺はメンバーに声をかけてから拓ちゃんと一緒に店を出た。 並んで帰る道。やっぱり会話らしい会話はない。でもさ…それでもすごく落ち着くんだ。拓真が傍にいてくれるからだよね。「あ…あのさ…拓ちゃん」 俺は躊躇いながら声をかけた。 「ん?どうした?」 すぐに返事が返ってきた。 「あのさ…甘えても…甘えてもいいって…言ったよね?」 俺は立ち止り訊いてみる。同じように立ち止まった拓ちゃんがゆっくり振り返る。 「言ったな。どうしたい?どうしてほしい?」 漆黒の瞳が俺を捕らえ訊いてくる。少しの沈黙。そして俺は… 「もう少し…もう少し拓真の傍にいたい…傍にいて欲しい…ダメかな?」 精一杯の勇気を振り絞り思っていたことを口にする。 「なら一つ聞いてもいいか?」 フッと微笑み聞いてくる。 「なに?」 「今夜、蒼樹の家に泊まってもいいか?」 その言葉に涙が出そうになった。あ
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65 翔太の想いと拓真の気持ち

side翔太「はぁ」 蒼樹が教室を出ていって一人溜め息をつく。なんか色々と問題があるんだが、あいつ自身が身動きが取れねぇ状態にある以上、俺はどうしようもない。金城はお前のこと全部知ってんだぜ?この言葉があいつに告げられたら…あいつがその言葉を聞いたら…あいつは少しは楽になるんだろうか?蒼樹がサボるために校内を彷徨い出したのをいいことに、俺は席を立ち隣のクラスへと向かった。特Aクラスの中を覗き 「なぁ、金城いるか?」 扉の近くにいたやつに声をかけてみる。 「金城くん?あぁ、いるよ。金城くん、お呼びだよ」 そいつはすぐに金城を探し出し呼んでくれる。その声にザワッと室内が騒がしくなり、一気に視線が俺に向けられる。まぁ、俺と金城に特に接点なんてないと思われてるだろうしな。最近は蒼樹が金城にかまい倒してるから、それでかもとは思われてるだろうけどな。 「珍しいな。なにかあったのか?」 少し驚いた顔して金城が扉まで来た。 「ちょっと話がしてぇんだけど大丈夫か?」 俺はこいつの気持ちをもう一度ちゃんと聞いておかなければならねぇから… 「織田は大丈夫なのか?」 少し困った顔になる。 「今サボりに行ったからよ。だから大丈夫だ」 苦笑を浮かべて答えれば 「相変わらずだな。生徒会室に行こう。ここで話す内容じゃないんだろ?」 同じように苦笑を浮かべた金城が言う。やっぱりわかってたんだな。いつか俺が話しに来ることを… 「あぁ、できればその方がいい」 こんな話、誰かに聞かれても困るしな。 「だろうな、行こう」 金城に促される形で俺は生徒会室へと向かった。「どうして黙ってたんだ?」 生徒会室に入るなり聞いてみた。 「すまない」 あまりにもすんなりと金城が謝る。それには驚いた。こんなにもあっさり謝るとは思ってもみなかったから。 「怒っちゃいねぇよ。ただ、なんで金狼だって教えてくれなかったのかって思っただけだ」 俺が初めて金城と接触したとき、まだ金狼という名を名乗ってなかった。だから調べたのだ。あらゆる手を使って…蒼樹のために… 「お前ならその手の情報はすでに持ってるんだろ?俺があいつに接触した時点で…それに金狼といわれるようになったのはGoldWolfを辞めてからだ。…俺はお前たちZEAに…お前に金城拓真として認めてもらいたかったんだよ」
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「あいつは…お前がGoldWolfの前頭だったって知らねぇよ。俺も話してねぇし、そんな情報は今のあいつには必要ねぇからな。今のあいつに欲しいのは金城の愛だけだから…金城の気持ちだけだからさ」 これも事実。蒼樹が一番欲しいのは…一番手に入れたいのは金城自身。金城から与えられる愛情。あいつはそれを今、必死になって欲しがってる。でも本当の自分を曝け出す勇気がなくて身動きが取れなくなってる。 「あいつ…俺が本当のあいつの姿を知ってるのまだ知らないんだろ?」 金城が思い出したように聞いて来る。 「あぁ、知らねぇよ。俺が教えることでもねぇし。あいつが自分でお前に見せなきゃ意味がねぇだろ?」 肩を竦め俺は答える。あいつのことを他人の俺が口に出すことじゃない。あいつ自身が進まなきゃならねぇんだ。特に今回のことは…。「金城は蒼樹をどうしてぇの?」 俺は金城があいつに付き合ってやってる気がしなくもねぇ。あいつのモタモタした自分で解決できない現状に…。 「俺は…今は蒼樹の傍にいられればそれでいい。あいつがいつか俺の気持ちをちゃんと受け止めてくれるまで…俺の気持ちがどれだけ本気か気付いてくれるまで俺は蒼樹の傍にいたい。あいつに伝えたいんだ。俺がどれだけ本気で好きか、どれだけ傍にいたくて、この腕で抱きしめていたいか、あいつをどれだけ必要としているか…」 悲痛な叫びとも思える金城の言葉。あぁ、そうか。金城は金城で臆病なあいつに想いの全てを伝えることができず苦しんでるのか。ほんと不器用なやつら。お互いがお互いのことを気にしすぎて、思いすぎて身動きとれねぇんだから…ほんと不器用だな。それでいて羨ましいとさえ思う。こいつらの純粋な気持ちが…。俺は…自分から手に入れるのを諦めたからな。ふと、視線を窓の外に向ければ彷徨ってる最中の蒼樹と目が合った。あいつも俺と一緒で視力は凄くいい。「なぁ、金城。お前に面白いもん見せてやるよ」 ふと思いついた悪戯。俺は一人笑いながら金城に近づく。 「はぁ?なに言ってんだ?」 いきなりの俺の言葉に金城の眉間に皺が寄る。 「だから面白いもん見せてやるって。滅多に見れねぇぜ。あいつの怒った顔なんてな」だからちょっと俺のすることは目を瞑れ。「あくどい顔だなオイ。まぁ、いい。乗ってやる」 金城は俺の言葉に納得したのか諦めたのか溜め息をつく。
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side拓真夜の公園で一人でいる蒼華に声をかけたあの日から俺は大きな罪を背負った。それは決して消すことのできぬ罪。タブーを犯した俺が決して逃げることのできぬ罪。それでいいと思った。ずっと見続けてきた蒼華の崩壊の姿を…あの姿をもう見たくなくて俺のこの手で止めることができたのならと思い続けて…俺はあの日、大罪を背負う決心をした。蒼華と接触をすればZEAに俺の情報が行くことはわかっていた。だからあえて隠すことはしなかった。ZEAの頭である苗代には俺の気持ちは既に伝えてあったから…。まだ俺がGoldWolfの頭であったあの時に俺は苗代に頭を下げてまで蒼華の…織田蒼樹のすべてを知りたかった。本当の姿さえも…蒼樹が俺の前だけで見せるその涙は今まで泣くことのできなかったあいつの心からの悲鳴で…胸が締め付けられた。もっと早く行動に出ていれば…こんなに我慢させなくてよかったのに…好きだ何度も伝えようと思った。それがあいつを苦しめることになったとしても…この気持ちを伝えてお前を必要としてるやつがここにいるんだと教えてやりたかった。でも…恋愛することを極端に怖がってるあいつに伝えることはできなかった。臆病なあいつの心を追い込みたくはなかったんだ。それでも自分の中には醜い欲求が日に日に増していった。あいつが俺に少しずつ心を開いてくれたから…俺だけ何度もあいつと肌を重ねることができたから…もっと…もっと…あいつの傍にいたくて、もっと触れたくて、抱き締めたくて…この腕に閉じ込めてしまいたかった。それができないのは判ってる。あいつは彷徨う蒼い華。蒼華だ。夜の街では誰もが慕う高嶺の花。触れ合えたことだけでも幸せなことなんだ。俺が思ってる以上に俺は独占欲が強いらしい。あいつが俺のものじゃなのに…俺はあいつを独り占めにしたい。こんな気持ちを知られたらあいつは俺の傍からいなくなるかもしれない。「そんときは自業自得だな」ポツリと呟いた言葉はやけに大きく響き消えていく。それでも傍にいられる間は俺はあいつの…蒼樹の傍にいたい。俺のありったけの気持ちをあいつに与えていきたい。本当の愛情を受けることなく欠落してしまったあいつの心に…俺は何度もあいつに愛を囁きたい。好きだと…俺にとってお前は最高に価値のある存在なんだと…そんな蒼華が夜の掟を変えた。それ
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side蒼樹翔ちゃんが出ていって凄く気まずい。怒りに任せて俺、絶対に変なこと言っちゃったよ。「蒼樹」 っ、訊くのが怖い。 「な…なに?」 でも訊かなきゃダメだよね。 「そんな顔するなって…なぁ、消毒してくれないか?」 突然そんなことを言われて 「へっ?」 間抜けな声が出た。消毒ってなに?キョトンとした顔で見てたら 「これ、消毒してくれないか?」 拓ちゃんは制服の襟元を肌蹴させ俺に見せた。 「っっ、翔太のヤロ~!!ぶっ殺す!!」 くそ、なんで拓ちゃんの首にキスマークなんかつけたんだよあいつ! 「蒼樹、してくれないか?」 いつの間にか俺の傍に来た拓ちゃんが俺の腰に腕を回して言ってくる。 「俺で…いいの?」 ほんとに俺が消毒してもいいの? 「お前がいいから頼んでるんだけど?それとも他のやつにしてもらおうか?」 んにゃぁ~! 「ダメぇ~!!俺以外がつけたらダメぇ!」 って勢いに任せて俺なに言ってんだろ。 「じゃぁさ、消毒してくれるか?」 拓ちゃんは凄く優しい笑みを浮かべもう一度、同じこと訊いてくるから俺は頷いた。俺は拓ちゃんの首についてる翔太の付けたキスマークを上書きするように、同じ場所に唇を寄せ新しく痕を残す。痕をつけて顔を上げ 「消毒…できた?」 訊いてみる。 「あぁ、ありがとな」 俺の頬を撫でて言ってくれる。 「よかった」 俺が小さく笑えば拓ちゃんの顔が近付いてきて俺は自然と眼を閉じた。そっと唇を塞がれる。触れるだけの優しいキスを何度もくれる。優しいよね。最後に額にキスをして拓ちゃんが離れていった。ちょっと寂しい…「少しだけこうしててもいいか?」 まるで俺の心を見透かしたように拓ちゃんは俺を抱きしめながら聞いてきた。 「う…うん…いいよ…」 俺は頷きながらそっと拓ちゃんのシャツを掴んだ。拒まれてもいいから…どれだけそのままでいたんだろうね?遠くでチャイムが鳴った。それを引き金にするように拓ちゃんが俺を放した。 「俺は戻るけど蒼樹はどうする?」 拓ちゃんが俺の顔を覗きこみながら聞いてくる。このままサボってたい。でも拓ちゃんは生徒会長だし特Aクラスだもんね。戻らないとダメだよね。 「俺は…一緒に戻ろうかな…」 どうしようか考えたけど授業に遅れるのは俺のせいだから…俺もいかないとダメだよなぁ
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結局、まともに授業なんか受けないまま、また授業の終わりを告げる音が響いた。やっぱり先生はさっさと出ていく。こんなもんだけどね。「蒼樹、飯食いに行ってくるけど大丈夫か?」 翔太が振り返り訊いてくる。俺が戻ってくるって思わなかったんだろうね。 「ん、大丈夫。行ってきていいよ」 小さく笑って答えれば 「さっきは悪かったな。じゃぁ、いってくる」 俺の頭を一撫でして他のやつらと教室を出ていった。さて、俺はどうしますかね…とりあえず立ち上がり財布の中から小銭を出して教室を出た。「うげ!お茶が売り切れ…。まぁいいか、コーヒーにしよ」 自動販売機の前に来てお茶を買おうとしたら売り切れのランプが点灯していた。しょうがない今日は薬は諦めるか。って毎日飲んでるわけじゃないけどさ。がこんと音を立てて缶が落ちてくる。俺はそれを取り出し考える。『昼、いつものように屋上にいるから』ふと、拓ちゃんが言った言葉を思い出す。行ってみようかな?なんて思いながらも足は自然と屋上に向かって動き出す。やっぱり俺って拓ちゃんのことがすっげぇ好きなんだなぁ~って実感する。屋上へ向かう階段を上がり扉を開きかけて動きが止まった。誰かの話し声。「金城先輩が好きなんです。付き合ってください」 そんな言葉が耳に飛び込んできて俺はその場に固まった。 「それはできない」 拓ちゃんのはっきりとした言葉。 「どうしてですか?」 きっと後輩なんだろうね。さっき先輩って言ってたもん。 「俺には好きなやつがいるからだ」 拓ちゃんの答え。それは誰?「どうしてもダメですか?」 涙声の後輩。諦められないよね。 「あぁ、あいつ以外のことは考えられない」 拓ちゃんのはっきりした答え。そうなんだ…拓ちゃんの好きな人は誰?あの言葉…本当は嘘なの?「じゃぁ、キスしてください」 後輩の言葉に俺の頭が痛みだす。 「本当にそれで諦められるのか?」 拓ちゃん?もしかして本当にしちゃうの? 「はい、諦めます」 俺はそれ以上訊いていられなくて音を立てずにその場から逃げ出すように離れた。「は…ははは…」 乾いた笑みが浮かぶ。俺たちは付き合ってるわけでもなし、言葉に出して伝えたわけでもない。だから拓ちゃんが誰を好きで、誰と付き合って、誰とキスをして、誰を抱いたとしても俺にはそれを咎め
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70

「こんにちはぁ~っと」 俺は生徒会室の扉を開けて声をかける。 「あっ、織田くん。来てくれたんだ」 雅が嬉しそうに言ってくる。 「ん~、実はさ…ちょっと急用が入っちゃってさ帰らなきゃいけないんだけど大丈夫かな?」 なんて聞いてみる。 「なんかあったのか?」 拓ちゃんの言葉。ズキズキと痛みだす胸。ほんと重傷。 「ん、内緒。拓ちゃんたちが心配するようなことじゃないから大丈夫」 俺はそう答えて笑う。うまく笑えてるかな?「急用じゃ仕方ないよね」 榊が言ってくる。 「ごめんね。明日はくるから。じゃぁまね。あっ、拓ちゃん今夜いつもの場所に行かないからってか行けないからごめんね?」 俺は拓ちゃんに今夜は行かないとだけ伝える。 「わかった。気を付けて帰れよ?」 拓ちゃんは深く聞かずに答えてくれる。 「うん、じゃぁまたねぇ」 俺は返事をして部屋を出た。ごめん…本当は全部うそ…だから…ごめん…俺は外に出て扉を閉めてそれに凭れて溜め息をつく。そして帰るべく歩き出せば 「織田くん」 急に呼ばれて振り返れば雅が走ってきた。 「どったの?」 俺は立ち止り聞いてみる。 「拓真と…拓真となにかあったの?」 言い難そうに聞いてくる。ほんと、なんでこういうの鋭いかな? 「うんにゃ?なにもないよ?ほんとに急用だよ」 俺はあくまでも急用だと言い切る。 「嘘。顔がそういってないよ」 雅は苦笑を浮かべる。 「雅って意外に鋭い?でも本当になんもないよ?でも、これは俺の問題だから…それ以上はなにも聞かないで?」 俺は小さく頭を振る。 「わかった。じゃぁこれ以上は聞かない。でもなにかあったら相談してね?僕でよければ聞くからね」 雅はそう言ってくれる。 「ありがと。でも大丈夫だから。じゃぁまたね」 俺はそれだけ言ってまた歩き出す。それ以上雅はなにも言ってこなかった。俺の問題。俺の心の問題。俺の気持ちの問題。だから誰にもどうしようもできないんだ…俺は校舎から出るとまた溜め息をつく。 「ほんと…最悪…」 俺は呟き歩き出す。ふと振り返り見上げる。見えるのは生徒会室。偶然、ちらっと見えた拓ちゃんの背中。「…好き…」誰にも聞こえないように呟き歩き出す。家に帰るべく…家に帰ったって誰もいないからシンとしてる。当たり前だよね。 階段を上が
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