/ 青春 / 異人青年譚 / 챕터 11 - 챕터 20

異人青年譚의 모든 챕터: 챕터 11 - 챕터 20

42 챕터

不死身青年と殺人鬼少女の青春Ⅱ

 コンビニを後にして数分......いや、そんなに時間が経っていない筈なので、どんなに多く見積もったとしても、時間は数十秒といったところだろう。 僕から一方的ではあるけれど、友人とひとしきり、他愛ない話をして買い物を済ませてから、たったほんの数十秒歩いただけの帰り道...... だからまぁ、予想しようと思えば出来たは筈で、むしろこの場合、こんなことを言ってしまう僕の方がおかしいのかもしれないと、そんな風にも思ってしまう。 しかしながらそれでも......「あのさ......」 まさかまだ、変わらずにそれを携えて居るとは、まだ家に帰らずに、よりにもよって僕の帰り道に居るとは...... そんなこと、思わないじゃないか......「あら、偶然ね......」 そう言いながら、手元の包丁をこちらに見せて、しかしながら彼女自身はそれを全くと言っていい程に、それこそ、その鋭利な凶器すらも自分の身体の一部の様な扱いをしている。 だからきっと僕が、彼女が持つそれに対して多少なりとも気遣いをしたとしても、彼女はそれを、そのことをまったく、気にしない。 気にせずにまっすぐと、こちらを見据えて来る。「......」 何も話さず、何も喋らず、ただまっすぐと......「......」 さっき会ったばかりの、剝き出しの包丁を携えている女の子に見つめられていると、たとえその子の容姿が、一般的にとても綺麗な部類だとしても、その姿は恐怖の対象でしかない。 だから僕は、平然を装いながらも強引に、話を進めたのだ。「それで......こんな所で何してるんだよ?」  もしもこの言葉が、見知らぬ女の子に対してのモノだったら、まるで僕がナンパでもしている様に捉えられてしまうかもしれないが、しかし包丁を手に持っている彼女に対してなら、そんなことはないだろう。 そもそも、その話しかけた女の子が、さっき初めて知り合った女の子なのだから、そういう意味では、全く見知らぬ子には、当てはまらない。「......別に、何もしていないわ......」 そう言いながらその女の子は、手に包丁を持ったまま、二三回程軽く振りながら、変わらずにこちらを見据える(っていうかそんな物軽くでも振り回すな、怖いわ)。 こんな時間にこんな場所で、それに包丁さえなければ、普通の女の子という風に
last update최신 업데이트 : 2025-07-24
더 보기

不死身青年と殺人鬼少女の青春Ⅲ

 着替えた後は、再び洗面台に行き、髪の毛をワックスで整える。高校時代はワックスで髪を整えて登校するなんて習慣が無かったせいか、これが未だに上手くできず、かなり手こずってしまう。  そんな風に手ごずりながら、とりあえずはイイ感じに髪型をセットしようと、試行錯誤をしていると、後ろの方から急な言動が飛んでくる。「それはそうとさ、どうして君は昨日、あんな所で殺されていたんだい?」「......」 髪の毛をいじる手を一度止めて、正しい返答を考える。 そして考えながらも、彼についても考える。 彼からしてみれば...... 異人の専門家で、僕を管理することを仕事の一環としている彼からしてみれば、その質問を僕にすることは、考えなくても当然のコトなのかもしれないけれど...... しかしそれでも普通、そのとき殺された本人に対して、その時のことについてそんなに安易に、尋ねてしまえるモノなのだろうか。 死なないだけで、不死身なだけで、別に痛みがないわけでも、苦しくないわけでもないのに...... そんな風に彼に対して、単純に、嫌悪的な気持ちになりながらも考えた、あまりにもつまらない返答は、僕の口から零れ落ちる。「......よくわからないんです......どうしてあんなことになったのか」 そしてその零れた言葉に対して、彼はいつもと変わらない静かな口調で、言葉を返す。「そっか......まぁ、わからないことを訊いても仕方がないよね.........」「......」「けれど荒木くん。あまり、無理をしてはいけないよ?」「えっ......」「不死身の異人とは言え、君はほんの前までは普通の人間だったんだ。あんな切っ掛けで、今は後天的な異人体質者になってしまっているけれど、それでも、心が身体と同じ速度で、その異質さに追い付けるとは限らない......」「えっと......何が言いたいんですか......?」「単純だよ、『何かあったら相談しろ』って、そう言いたいんだ」「......」 無言になってしまう僕に向けて、彼はそのまま言葉を続ける。「僕はこう見えて異人の専門家なんだ。だからもしも、それ絡みのことで何かあるなら、頼れるときは頼ってくれて構わない......」 その言葉の後の、数秒の沈黙の後に、僕は口を開いた。 「......そうですね、そうし
last update최신 업데이트 : 2025-07-27
더 보기

不死身青年と殺人鬼少女の青春Ⅳ

 現時点での時刻は、おおよそ十六時頃だろうか...... 「......っ」「......」 いや、もしかしたらもう既に、そこから一時間程経過して、十七時になってしまっているのかもしれない。 なぜなら、今いるこの場所を訪れた時よりも、少しだけ周りの人間の数が、多くなって居るからだ。 しかしまぁ、今僕達が居るこの場所を思えば、この時間帯にこれだけ人が集まる現象は、実はそこまで珍しい事柄でもない。 なぜならこの場所は......「......あ、あのさ......」「なに?」「いや......とりあえず、何か頼まないか?」 大学から程近い、所謂ファミリーレストランと言われる場所だからだ。 ファミリーレストランという場所は、一般的には気楽に入ることが出来る飲食店として、様々な年齢層の人達から愛されている。 値段がリーズナブルな点は、その要素の最たるモノの一つであろう。 さらに付け加えるなら、メニューとして出されてくる料理の味が、安定しているということだ。 まぁそれは、大抵のファミリーレストランが、大型のチェーン店であるが故に、しっかりとしたマニュアルに従って料理が作られているからなのだろう。 手頃な値段で、安定した美味しい味の料理を食べることが出来る場所。 そんな快適を絵に描いた様な場所で、僕は今、まるで針の筵のような心境で、店員さんに渡されたお冷に、口をつけて、うなだれる。 どうして今更、僕がファミレスについてこんなに事細かく説明するかというと、そうしなければ僕の心が、僕の精神的な何かが、確実におかしくなってしまいそうになるからだ。 無理もない。 なんせ今、僕の目の前に座っている彼女は、昨日僕を刺し殺した張本人で、間違いないのだから......「......」 なんだろう、考えてみれば、僕はココ最近、運が悪いどころか、不幸なことがあまりにも多く起き過ぎている。 不死身の異人に成り果てた、あのゴールデンウィークの惨状も、切っ掛けは僕の不運が招いた、不幸な事故だった。 それに加えて、昨日のアレだ...... もしも彼女が本当に、殺人鬼の異人というコトならば、もしかしたらあの時から、もしかしなくてもあの時から、偶然ではなく必然的に、僕は異人という存在に、近付き過ぎてしまっているのかもしれない。 あぁそうか、だからきっと相模
last update최신 업데이트 : 2025-07-28
더 보기

不死身青年と殺人鬼少女の青春V

 気がかりだった着替えの件は、近くのコンビニに売られている物を使うということになり、それを買いに行くときは一人でいいから家に居ろと、そう言って彼女は再び僕の家を出ていった。  僕の家から徒歩数分のところに、一軒だけコンビニがあるから、おそらくそこに向かったのだろう。 出て行ってから三十分と経たない間に、柊は部屋に戻ってきた。 そして部屋に入るなり、彼女は言う。「汗をかいたから、シャワーを浴びたいわ」 そう言いながら僕の方を見つめる彼女は、数秒のわざとらしい沈黙の後に、睨みが利いていない無表情な顔で言い放つ。「覗いたら殺すわよ?」「誰が覗くか!」 そういうのはもう少し、表情を作って、感情を露わにしてから言ってくれ...... そんなやり取りをした後の、風呂場の方からは、シャワーの音と鼻歌が聞こえてくる、そんな妙なタイミングで、また何故かこんな、何かを見透かされている様なタイミングで、僕の携帯電話に着信が入った。 そしてその電話に出ると、聞き覚えのある不愉快な声が、僕の耳に届く。「やぁ~荒木君、今電話、大丈夫かい?」 そう言いながら、大丈夫であることを既に知っている様な彼の声は、少しだけ笑いを含んだ彼の声色は、相変わらずのゆったりとした静かな物腰で、僕の言葉を待っている様だった。 だから僕は、そんな彼の言葉に対して、同じような静かな物腰を意識して、言葉を選んで、返答する。「えぇ......大丈夫ですよ。相模さんこそ、こんな時間にどうしたんですか?」「いや~今なら連絡しても差し支えないと思ったからね~、電話してみた」「それはそれは、気を遣って頂きありがとうございます。ついでに気持ち悪いんで死んで頂いてよろしいですか?」「ついでにしては要求が些かヘビーだと思うのは僕だけかな?」「まぁ、僕は死なないので......」「あぁ、そういえばそうだったね......ところでさ......」「......なんですか?」 そんな風に彼もまたわざとらしく言葉を切って、少しの間の沈黙を作ってから、僕に尋ねる。「今君の部屋にいる女の子は、一体何者なんだい?」 そう尋ねた彼の言葉に、僕もまた数秒の沈黙の後に、こう返した。 もっともそれは、彼が僕に尋ねた言葉にに対しての返答ではなくて、その時の彼の言動に対しての、取り繕うことすら不可能なくらいの、
last update최신 업데이트 : 2025-07-30
더 보기

不死身青年と殺人鬼少女の青春Ⅵ

 携帯電話のアラームを止めて、時間を確認する。 時刻は午前10時過ぎ......「......っ」 僕の隣で寝ている柊を起こさないように、眠気でけだるい身体をゆっくりと起こして、そしてその動きのまま、台所に足を運び、コップに一口分の水を入れて、それを口に含む。 そしてそのまま数秒程うがいをした後水を吐き出し、歯ブラシに歯磨き粉をつけて、それを口の中に入れ歯を磨く。 別に毎朝必ず最初に行うわけではないが、僕は起き抜けの口の中の不快感は、なるべく早く取り除きたいと思う方だし、それに今日はいつもと違って宿泊客がいるモノだから、家主ではあるけれど、彼女より先に起きることが出来た僕は、なるべく早めに身支度を整えようと、そう思ったのだ。 そんな風に、昨日というより今日の夜明け前に起きたあの出来事のことを、なるべく思い出さない様にしながら身支度を進める。 しかしそれでも、思い出さない様にしていても、やはりそれを完全に忘れることは出来ないわけで...... 殺された時の記憶など、強烈過ぎて僕には、扱いに困るのだ。  歯磨きを終え、口を濯ぎ、お湯に切り替えて顔を洗う。 それらのことを一通り、まるで一呼吸のような感覚でやり終える。 そしてやり終えた後に、タオルで顔を拭きながら、そのまま後ろに後退り、壁にもたれる様にして力なく、ただ力なく立ち尽くす。 そして立ち尽くしながら、ただ天井を仰ぐ自分の顔は、たとえ鏡を見なくとも、ひどい顔をしていることは容易にわかる。 そんな風にして壁に力なく寄りかかる僕は、夜中に柊によって刺された首元を、もう傷が綺麗に塞がっていて、何事もなかったかのように見える自分の首元を撫でる様に、なぞる様に触りながらポツリと呟く。「......やっぱり、血も何も残らないんだなぁ......」 もうわかりきっていた筈の自分の体質に対して...... 身体の傷どころか、飛び散った血液すらも、まるでマジックインクの様に消えてしまう、なんとも便利な自らの体質に対して...... 少しばかりの恨めしい気持ちと安堵を込めながら呟いたその言葉は、当たり前の様に、誰にも届かない。「......まぁ、それでいいんだけれどね......」 そう言いながら、何故だか泣きたくなるような気持ちになりながら、僕は手に持っていたタオルで自分の顔を覆う。  し
last update최신 업데이트 : 2025-08-02
더 보기

不死身青年と殺人鬼少女の青春Ⅶ

「やぁ、荒木君、久しぶりだね。元気だったかい?」 そう言いながら、相変わらずの顔面詐欺のおじさんは、僕を見ながら薄っすらとした微笑を浮かべている。 そしてそんな彼に対して、彼とは対照的な表情をしながら、僕は言葉を返す。「まぁ、それなりに......」「そうかい、それなりなら、なによりだよ......」 そう言いながら彼は、手元に持っているジュースの入ったコップにストローを指して、それを少しばかり飲んだ後に、まるで自分の部屋にいる様な態勢で、ソファーに深く座り込む。 そんな相模さんを見ながら、僕は相対するような形ではなく、仕方なく隣に腰を落ち着かせる。 そして腰を落ち着かせた後に、自分が持ってきた、ジュースの入ったコップをテーブルに置いて、そのあと少しばかり間も置いて、電話の時も訊いたけれど、改めて彼に尋ねる。「ところで相模さん......」「なんだい?荒木君」「電話で、話があるって言われて来ましたけれど、どうして待ち合わせ場所が......こんなカラオケの個室なんですか?」 そう......電話で相模さんが僕を呼び出した場所は、わざわざ白楽駅に近い、なんならウチの大学の奴等が多く利用するであろう、なかなか学生に優しい価格設定で営業している、カラオケボックスのお店の、とある一室だった。 まぁ『とある一室』といっても、この店はそこまで多く部屋数があるわけではないし、しかも二人で横並びに座る様な部屋は、きっとそこまで多くはないから、単純に『一室』と言う方が適当な表現なのだろう。 そんなどうでもいい様な、どっちで言っても変わらない様なことを考えている僕の隣で、相模さんは僕が尋ねた言葉に答える。「別に、ただ単純に、僕がカラオケで歌いたかったからっていう、それだけの理由だよ」「それだけの理由なら、僕を呼び出す必要はないですよね?」「そんなことはないさ、ただ歌うだけじゃ物足りないから、誰かに聞いてもらいたいっていうのは、普通のことだろ?なんなら一曲、荒木君も歌うかい?」 そう言いながら相模さんは、いつもの様な、明らかに僕のことを面白がるような表情で、マイクを渡す。 そして僕はというと......「......もしかして、僕が歌わないと先には進まない感じですか?」「そっちの方が面白いだろ?せっかく二人で来たんだから、ココは大学生らしく、楽し
last update최신 업데이트 : 2025-08-04
더 보기

不死身青年と殺人鬼少女の青春Ⅷ

「考えてみればというよりも、考えなくてもわかることよね......コレ......」 そんな風に言いながら、昼食を食べ終えた彼女は、隣に座る僕のことを視界に入れて、携帯電話を操作しながら、目的の画面を表示する。 そして表示したその画面を、僕に向けて、さらに言葉を続ける。「私に送られている筈のメッセージなのに、私を連れて来るように書いてあるってことは、つまりこの文章、そもそも私宛のモノじゃないのよ」「まぁ、たしかに......」 そう言いながら、僕は彼女から視線を外す。 するとそんな僕を見て、柊はさらに、詰め寄るような言動で僕に言う。「そしてそうなると、ココ数日で私が関わった人間で、さらには......」「さらには......?」 その言葉の後に、彼女は僕の瞳に視線を合わせて、静かではあるけれど力強い言葉で、僕に言った。「飛びぬけて気持ち悪い奴が関わっているということになるわ」「......っ」 その彼女の力強さに、僕は泣きそうになるのをグッとこらえた。「あぁ、ごめんなさい。人間ではなかったのよね、荒木君」「うん、そっちじゃなくて『飛びぬけて』を訂正して欲しいかな......」「『気持ち悪い』は認めるの?」「うん、もうそこは何を言っても、訂正してくれないだろうから......」「あら、よくわかっているじゃない、さすがね」「......」 何を持ってして流石なのかは、これ以上は傷つきたくはないから聞かないでおくとして......「それにしても、どうして私の携帯の番号が、こんな見ず知らずの誰かに流出しているのかしら?」「言っておくけれど、僕がその流出元じゃないからな。ただ単に、このメッセージを送ってきた人物が、お前と僕の携帯電話の番号を把握していたっていう、それだけのことなんだから......」「それだけのことって......本来ならそれは、そんな軽い物言いで捉えて良い事柄ではないでしょう?個人情報もへったくれもないじゃない......」 そう言いながら、自分の携帯と僕のことを交互に見て、そして僕からは視線を外す。 そしてそんな彼女に対して、僕はなんだか言い訳をする様な声色で、言葉を紡ぐ。「まぁ......そうなんだけれど......でも大丈夫、この人は信用できるよ」 そう紡いだ僕の言葉に、外れていた彼女の視線が再び戻
last update최신 업데이트 : 2025-08-05
더 보기

不死身青年と殺人鬼少女の青春Ⅸ

「まぁ、あの子のことは、今はそれほど心配しなくていいよ、荒木君」「......」 あの一件から、少しばかり時間が経った今日この頃、僕と相模さんは、あの時と同様、例のカラオケボックスのお店の一室に、向かい合わせになりながら座っていた。 しかしながら、今回はどちらも歌わない。 歌うための場所であるということは、もちろん僕も、そして彼も、重々承知している。 しかしまぁ今日は、『歌う』というよりも『謳う』のだ。 事後報告というか、答え合わせというか...... そういう感じに、そういう風に今まで出した、出し並べた情報をすり合わせて、すり減らして、柊のこの一件に、殺人鬼のあの一件に、区切りをつける。 今日の目的は、そんなところだ。 先に開口した相模さんは、それに対して何も言わない僕を見て、続けてゆっくりと、あのとき僕に見せた新聞記事をテーブルの上に置いて、話し出す。「もうわかっていることから、丁寧に並べていこう。まず、あのときココで君に見せたこの新聞記事、ココに載っている人物の名前は 柊 陽太(ひいらぎ ようた) 血縁上は柊ちゃん 柊 小夜(ひいらぎ さや) の兄で、当時は今の君等と同じ大学一年生で......」「彼も、殺人鬼の異人だった......」 そう僕が口を開いたところで、相模さんは少しだけ間を置いた後、「そうだねぇ......」と言った。 最初に...... 僕が最初に殺人鬼の異人のことを知ったのは、相模さんからの電話で、『仕事仲間から聞いた、噂程度の代物』と、そういう風に聞いていた。 それはつまり、噂が流れる程に、それ程までに、前例があったということで、そしてそれはそこまで古くない事例だったからという事に、他ならない。 そしてその事例が、この新聞記事の内容である。「まぁ、火のない所に煙は立たぬって言うしね......無関係の人間の、しかもまだ、年端も行かぬ子供を異人が殺したなんて......これほどの前例があれば、こういう危険性の根拠の様なモノがあれば、今回のように、僕ら専門家の間では、噂くらいになっても、おかしくはないよね......」 そう言いながら、彼は自分がテーブルの上に置いたその新聞記事を、ジッと見る。 そしてその時の彼の視線は、珍しくも少しだけ、険しく見えた。 それはきっと...... きっと自分が関係してい
last update최신 업데이트 : 2025-08-07
더 보기

不死身青年と旅人童女の追憶Ⅰ

『旅人』という言葉を、耳にしたことはあるだろうか...... それは一般に、『旅をしている人』を指して使う言葉で、さらにもっと詳細に言えば、『自らの所属する社会を離れて、別の社会への移動過程にある人』を指して使う言葉でもあるらしいのだ。 しかしながらこの言葉を、こんな風に後者の様に考えながら使う人は、おそらくいないだろう。 いなくて当然のことである。 このたった二文字の、見れば意味がすぐにわかる様な単語を、こんな風に考えて使う人がいること自体、そもそもおかしな話で、普通ではないのだ。 けれど旅人という者は、その二文字の単語ほど、今ではわかりやすい者ではないのかもしれない。 なぜなら今の旅人という者は、その人の見た目からはあまり、わからなかったりもするからで......つまりどういう意味かというと、旅人は必ずしも、格好からして旅人というわけではないという意味だ。 旅人を旅人として認識するには、その旅人である者が自ら誰かに、「私は旅をしています」と言う必要があって......旅人はそんな風に、誰かに自分が旅人であることを自己申告しない限り、他人から見ればその人は、旅人として存在していないということになる。 逆に言えば、旅人ではない人を、旅人と他人が捉えてしまえば、例えそうじゃ無くともその人は、旅人として存在できてしまうのだ。  これでは誰しもが、そういう風にしてしまえば、旅人として存在できる様なモノである。 しかし実際のところは、そういうモノなのかもしれない。 今では昔と違い、様々な交通手段が普及したことで、誰しもが遠い距離の移動が容易になった。 車で道路を走ったり、電車で線路を辿ったり、飛行機で空を飛んだり、船で海を渡ったり。 遂には地球から離れて星々を巡るために、ロケットなんてモノも出て来てしまった。 それ故に旅人という者の存在は、やはり昔よりも希薄になってしまったのかもしれない。 今では旅人かそうでないかの見分けは、昔よりもつきにくく、分かりにくいモノになってしまった様に思える。 その昔は、ただひたすら歩きながら、町から町へ、街から街へと移動していたらしいので、きっとその姿を見れば、誰しもがすぐに、『この人は旅人である』と気付いたのだろう。 そんな時代の人間が、もし今の日本を見たらどう思うのだろうか。 便利になったと喜ぶのだろ
last update최신 업데이트 : 2025-08-08
더 보기

不死身青年と旅人童女の追憶Ⅱ

 不死身の異人に成り果ててから......イヤ、成り果てる前にも恐らくは、何度も目にした彼のこの表情と、同じように何度も耳にしたその声には、どこか予感めいた何かが携えられている様に、今日の僕には思えたのだ。 実際思い返してみれば、さっきまで思い出していた事柄の全てが起きる前に、僕は彼と会話して、そしてこういう場面が必ず...... 僕が彼に対して何かを言って、そして彼はそれに対して、不敵な微笑を浮かべながら、余裕がある声色で言葉を返す、こんな場面が...... なんだかいつも、あったように思えるのだ。 まぁでも、おそらく相模さんは、他ではどうだか知らないけれど、少なくとも僕とは、普段からこんな感じで喋る様な人だから、これがそのフラグだと断定するには、あまりにも大雑把が過ぎるけれど...... けれどまぁ、やはり少しばかり、警戒をするに越したことはないのだろう。 そう思いながら、僕はなるべく平静を保ちながら、彼に言う。「まぁ......それくらいのことはわかりますよ......望ましくはないけれど、僕は貴方と、それなりに深い付き合いをしていますからね......」 そう言いながら一口、自らが用意したコーヒーを口にする。 そしてその後に、ここまでのことをなかったことには出来ないけれど、まぁ幾分、区切りをつける様な口調で、そんな感じの声色を意識して、僕は再度彼に対して、静かに問い掛けた。「それで......一体何の用なんですか?」「まぁそう焦るなよ~怖いなぁ~ちゃんと言うからさぁ~」 そう言いながら彼は、自身のジーンズのポケットから、一枚の茶封筒を僕に見せて、それをテーブルの上に置く。 そしてその動作の延長で、コーヒーを手に取り口にする。 一口飲み終わった後、僕の方を見ながら、促す様に彼は言う。「まぁ開けてみなよ。悪いモノではないからさ」「......」 その彼の言葉に対しての信用度は、ハッキリ言って無いに等しいのだけれど、しかしそれでも、この人がわざわざ、こんなクソ暑い日中に僕のアパートにまで訪ねて来て渡したかった物が、その封筒の中にはあるわけで...... だから僕は、その封筒を丁寧に、わざわざその場を立って、机の上にある鋏を使って、慎重にその中身を取り出した。 そしてそこまでのことをして取り出した中身は......「あの...
last update최신 업데이트 : 2025-08-09
더 보기
이전
12345
앱에서 읽으려면 QR 코드를 스캔하세요.
DMCA.com Protection Status