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Lahat ng Kabanata ng 異人青年譚: Kabanata 21 - Kabanata 30

42 Kabanata

不死身青年と旅人童女の追憶Ⅲ

 車に乗り合わせてから数時間と掛からない間に到着した、関東近県のリゾート地である静岡県熱海市は、相模さんの言う通り、遠過ぎず近過ぎない、言ってしまえば、程よく旅行気分を味わえる程度の距離に位置していた。 もっともそれは、スタート地点が埼玉県や千葉県とかではなくて、神奈川県の横浜市だから言えることで、僕や琴音や柊が過ごしている大学の立地の良さが関係していると言っても、過言ではないのだ。 それにこの場所を指定したのは、実は僕ではない。 ここまでの経緯でなんとなく、察しの良い方なら気付くかもしれないが、あの夜、僕の携帯に着信を入れた相模さんに、僕は今日のことを、どこかいい所は無いかと、相談したのだ。 そしてその結果が、今日のコレである。 運転手付きの車を用意したことに関しては、あまり詳しく言及していなかったけれど、相模さん曰く、仕事のついでということらしい。 まぁそれを聞かされたのは今日の出発当日で、それどころか出発する時間に、いきなりそう言われたわけだから、驚くというか、呆気に取られたという感じだったのだけれど......でもまぁ、それ以上に驚いたのは、やっぱりこの二人を会わせたことだ。 そんな風に思いながら、僕は両隣の、やはりどこか険し目な雰囲気漂う彼女達に、視線を向ける。「「なにか用?」」「......いや、べつになんでもないです......」 お前等、ほんとうは仲良しなんじゃないのか......? 熱海駅周辺に到着後、車から降りた僕等四人は、相模さんが手配した車を見送った後、相模さんの案内で昼食を取ることになった。 その道中、僕は未だに無言を決め込んでいる二人の雰囲気に耐えきれなくて、逃げ道として相模さんに話しかけた。「......それにしても、相模さん」「ん?なんだい?」「どうして熱海だったんですか?」「べつに、特に理由はないよ。強いて言うなら、僕が好きな町だからかな?」 そう言いながらいつもと変わらずに、口元に笑みを浮かべる彼の表情に、僕は苦言を呈する。「いや......相模さんがそう言うと、なんだかメチャクチャ嘘くさいです」「ヒドイな~相変わらず。別に君等の旅行を邪魔する気なんてサラサラないから、安心しなよ」「......その言い方だと、やっぱり何かあるんですか?」 そう言いながら、僕は彼の方に視線を向けると、彼はこ
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不死身青年と旅人童女の追憶Ⅳ

 昼食もそこそこに、なんならそれなりに話をして、お互いの名前だとか、出身地とか、そういう自己紹介的な情報交換もそこそこに、どういう話の経緯だったか忘れたが...... どんな話をして、どういう流れでそうなったかは忘れたが...... 僕と琴音と、そして浴衣姿の小さな女の子である、若桐 薫は...... 今現在、熱海城に続くロープウェイに乗っている。 少しだけ気まずそうな笑みを浮かべながら、右隣に座る若桐は、僕に小声で語り掛ける。「やっぱり、アレですね......他のお客さんも入ると、少し狭いですね......」 そしてその言葉に対して、僕も彼女と同じように、小声で返す。「まぁでも、ロープウェイならこんなモノじゃないかな?特に観光地とかなら尚更......」 そう言い掛けた所で僕は言葉を切った。 いいや、そうじゃないか...... どちらかと言えば、『言葉を失った』という方が、適切な表現なのかもしれない。 なんせ、ロープウェイに乗っていることで、自分が思っているよりも近い距離に、若桐が座っていたのだ。 しかもその容姿は、ハッキリ言ってめっちゃカワイイ。 いいや、そうじゃないなぁ...... どちらかと言えば、『可憐』という方が、適切な表現なのかもしれない。 着ているモノが浴衣のせいなのか、もしくは彼女が、その容姿とは裏腹な、大人の様な柔らかさを携えた話し方をするからか、どこか現実味がない、浮世離れしたような、そんな不思議な感覚を、僕は彼女に覚えてしまう。 色んな意味で、まるで人形のような綺麗さを持ったこの女の子を、琴音は『ロリ』と評していたが、その言葉がそのまま当てはまるほど、彼女は幼くない様にも見える。 浮世離れした、現実味のない、人形のような女の子。 それはまるで、何かしらの物語に出てきそうな、そんな不思議な女の子だと、僕は静かに彼女を見ながら、そう考えていた。 そしてそんな、僕の静かな視線に気が付いた彼女は、少しだけ頬を赤らめながら、僕に語り掛ける。「......あの、どうかしましたか?」「......」 うん、カワイイ なんか色々理屈っぽいことを考えていた気もするけれど、要するにこの 若桐 薫 という少女は、問答無用でカワイイのだ。  そんな風に、僕が心の中で結論付けていると、その声がまさか
last updateHuling Na-update : 2025-08-12
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不死身青年と旅人童女の追憶V

 気がかりだった着替えの件は、近くのコンビニに売られている物を使うということになり、それを買いに行くときは一人でいいから家に居ろと、そう言って彼女は再び僕の家を出ていった。    僕の家から徒歩数分のところに、一軒だけコンビニがあるから、おそらくそこに向かったのだろう。 出て行ってから三十分と経たない間に、柊は部屋に戻ってきた。 そして部屋に入るなり、彼女は言う。「汗をかいたから、シャワーを浴びたいわ」 そう言いながら僕の方を見つめる彼女は、数秒のわざとらしい沈黙の後に、睨みが利いていない無表情な顔で言い放つ。「覗いたら殺すわよ?」「誰が覗くか!」 そういうのはもう少し、表情を作って、感情を露わにしてから言ってくれ......  そんなやり取りをした後の、風呂場の方からは、シャワーの音と鼻歌が聞こえてくる、そんな妙なタイミングで、また何故かこんな、何かを見透かされている様なタイミングで、僕の携帯電話に着信が入った。 そしてその電話に出ると、聞き覚えのある不愉快な声が、僕の耳に届く。「やぁ~荒木君、今電話、大丈夫かい?」 そう言いながら、大丈夫であることを既に知っている様な彼の声は、少しだけ笑いを含んだ彼の声色は、相変わらずのゆったりとした静かな物腰で、僕の言葉を待っている様だった。 だから僕は、そんな彼の言葉に対して、同じような静かな物腰を意識して、言葉を選んで、返答する。「えぇ......大丈夫ですよ。相模さんこそ、こんな時間にどうしたんですか?」「いや~今なら連絡しても差し支えないと思ったからね~、電話してみた」「それはそれは、気を遣って頂きありがとうございます。ついでに気持ち悪いんで死んで頂いてよろしいですか?」「ついでにしては要求が些かヘビーだと思うのは僕だけかな?」「まぁ、僕は死なないので......」「あぁ、そういえばそうだったね......ところでさ......」「......なんですか?」 そんな風に彼もまたわざとらしく言葉を切って、少しの間の沈黙を作ってから、僕に尋ねる。「今君の部屋にいる女の子は、一体何者なんだい?」 そう尋ねた彼の言葉に、僕もまた数秒の沈黙の後に、こう返した。 もっともそれは、彼が僕に尋ねた言葉にに対しての返答ではなくて、その時の彼の言動に対しての、取り繕うことすら不可能なくらい
last updateHuling Na-update : 2025-08-13
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不死身青年と旅人童女の追憶Ⅵ

 矛盾が生じてしまう恐れがあるので、予め言っておくと、僕は彼女のことを、とても綺麗で特別な存在だと、それは間違いなく、今でも思っているのだけれど...... なんだろう、それはなんとなく、そう理解しているに過ぎないのだ。 欲求だとか、下心だとか、色気だとか、そういうモノをまだ、微かになんとなく感じることが出来る筈なのに...... それなのに、ただ綺麗なモノを、綺麗だなって...... 僕は彼女に対して、そういう風な気持ちにしか、ならないのだ。「ねぇ......」「えっ?」 考え込んでいたところに、不意に声を掛けられたから、一瞬だけ思考が鈍くなる。「誠、私に話があるって言ってたでしょ?何の話?」「あぁ、うん......」 一拍置いて、少しだけ言葉を考えて、話し出す。「昨日さ、あのあと相模さんに会ったんだ......」「えっ、アイツに会ってたの?」 そう言いながら、彼女の視線は厳しく、冷たく、鋭さを増す。「あっ......」 言葉選び大失敗。 彼女にとっては、名前を出すべきではない人の名前を、僕は真っ先に言ってしまったのだから...... しかしこの話は、やはりあの専門家である相模さんの名前を出さない事には始まらない。 だから僕は、その彼女の視線に臆せずに、そのまま話を続ける。「うん、昨日あの後の帰り道、偶然会って、そのあとファミレスで少しだけ話をしたんだ」「偶然?へぇーそれで?」 明らかに不機嫌な態度をとる彼女に、やはり僕はそのまま話を続ける。「うん、吸血鬼の異人がどういう存在で、そしてこれから先、琴音さんや僕が、どういう風になってしまう恐れがあるのかも、多分全部ではないけれど、粗方訊いたんだ」 そう言うと、彼女は少しだけ表情を真剣なそれにして、口を開く。「そう......それで、誠はそれを訊いて、怖くなっちゃったの?」 その彼女の言葉に、僕は何故か、とても素直に返事をした。「......うん、そうだね。怖くなった......」 そう言いながら、僕は彼女の視線を見つめる。 その見つめた視線に、彼女が合わせながら話してくれる。「そっか......そりゃそうだよね......」「うん......まだ全然、自分が人間ではなくなったなんてこと、ちゃんと自覚はしていないけれど、でも......それでも緩やかに、けれど
last updateHuling Na-update : 2025-08-14
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不死身青年と旅人童女の追憶Ⅶ

 泊まっていた宿がある熱海市から、数キロほど離れた所にある三島市には、雄大な景色を見渡すことができる観光地が存在する。 その場所のメインは日本最長の大きな吊り橋で、その橋を渡りながら眺める光景は、まるで空の上を散歩しているかの様な感覚を味わえることから、『三島スカイウォーク』と呼ばれている。 もちろん僕も、そのくらいの観光地があることくらいは、この旅行がある前から知っていた。 しかしまさか、自分がその場所に来ることになるとは正直思っていなくて、端的に言ってしまえば、あまり心の準備をしていなかったのだ。 だって、まぁ...... いくら車で数十分の所にあるからと言っても、それでもやはり、目的地の場所からはズレた所にあるわけだから、行くはずがないだろうと、そう思っていたのだ。 そしてそうなると、どうなるか......「いやいやいや、高い高い高い、怖い怖い怖い」 そう、こうなるのだ。 吊り橋の中央でしゃがみ込み、足を震わせて、しかし両手で、尋常ではない程の力で手すりを掴む、そんな僕の情けない姿を見て、柊はうんざりとした表情でこちらを見る。「あの......荒木君、いくらこういう場所が好きだからと言っても、あまり変に騒ぎすぎると、周りのお客さんにも迷惑だから、その、静かにしてくれるかしら」「どう見たらそう見えるんだよ!!普通に怖いよ!!」「えっ、だって荒木君でしょ?煙と荒木君は高い所が好きなんじゃないの?」「さては柊、僕のことバカだと思っているな!」「ちがうの?」「もういっそのことそう言ってくれ!!」 そう言いながら、風で揺れる吊り橋に怯えながら、僕は足元を見る。「まさかここまで高くて下が丸見えだとは思わないだろ!?ダメなんだよ僕、こういう高い所で、尚且つ安全が保障されていない所!!」「騒ぎ過ぎよ......いや本当に......そんなに古い吊り橋でもないし、むしろ安全面はかなり配慮されている方なのよ?それともなに?高い所が苦手で乗り物酔いもするなら、いっそのことあの山の麓にある遊園地にでも行く??」 そう言いながら柊は、僕が必死で掴んでいる方の手すりから見える、日本一高い山を指さす。 そんな柊からの、嫌がらせ以外の何者でもない様なその言葉に、僕は必死に対抗する。「どんな嫌がらせだ!!そのまま確実に廃人になるわ!!」 そう言うと
last updateHuling Na-update : 2025-08-15
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不死身青年と旅人童女の追憶Ⅷ

 そう言いながら、その見ず知らずの派手な女性は、僕のことをジッと見る。 ジッと見ながら、うっすらと口元に、微笑を添える。 そしてそこまで見てようやく、僕はようやく、目の前の人物がどんな人間であるのかを、理解した。「専門家......ですか......?」 そう僕が尋ねると、その女性は口角を上げて、言葉を紡ぐ。「やっと喋ったね~いいじゃないか。そっちの方がずっと良い」 そう言いながら、こちらのことを完全に、完全に掌握している様なその女性の瞳は、僕のことをジッと捉えて、放さない。 だから僕は、ただ思っていることを正直に、知っていることを洗い浚い、全て口にしたのだ。「だって、どういう訳かは知りませんけれど、僕の考えていること、全部あなたに筒抜けなんですよね?それに僕のこと『不死身の兄ちゃん』って、そう言っていたじゃないですか......」「あぁ、たしかにそう言ったよ?だってその通りだろ?」「そうですね......でもそれを知っているのは、僕のことを知っている、僕が人間でなくなったことを知っている、数少ない人達です。それに貴方のその感じは、僕の知り合いにすごく似ているんです。僕の様な異人を、専門的に管理する専門家......」 そこまで言葉を口にして、そのあと少しだけ迷って、しかしもう、ほとんど確実にそうだろうと思ったから...... だから僕は、彼の名前を口にして、もう一度尋ねた。「あなたも、相模さんと同じ、異人を専門的に管理する、専門家なんですか?」 しかしそう尋ねた途端、僕の耳元にとてつもなく速い銃弾が通過した。 いや、正確には...... 僕はそれが銃弾であることを、すぐには理解できなかった。 すぐに理解できたのは、騒音と火薬の匂い。 そしてその後に、いつの間にか、さっきまではその女性の手元になかった筈の、小さなピストルが視線に入って...... そこまでを感じて、そこまでを見てようやく、僕は自分の耳元スレスレの所に、銃弾が通過したことを、理解したのだ。 そのすぐ後に、目の前の女性は言う。「あぁ、不死身なら当てても良かったなぁ......いつもの癖でつい外しちまったぁ~」「......っ」「まぁでも、アタシをあんな、未だに自分の事を『専門的に管理する専門家』だなんて......そうやって、高い所からモノを見下
last updateHuling Na-update : 2025-08-16
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不死身青年と旅人童女の追憶Ⅸ

 唐突に鳴り出した携帯電話の内容は、なんてことのない。 ただ単に、迎えの車が店に来たという、それだけのことだった。 だからその連絡を聞いて、既に夕食を済ましている僕と佳寿さんは、「店を出ようと」僕に言い、話を途中で切り上げて、その店を後にしたのだ。 ちなみに会計は、佳寿さんが出してくれた。 まぁ、あれだけのことをされたから、当然だと思うけれど...... そう思いながら、僕は「ありがとうございます。ご馳走様です」と口にした。 しかしその言葉を聞いて、佳寿さんは言う。「心にも無い言葉は言わなくてもいいよ、兄ちゃん。今日のことを考えたら、これくらいのことは当然なんだろ?」「......」 ちくしょう、やはりやり辛い。 そんな風に思いながら、きっとこんな気持ちも、全て覗かれていると思いながら、僕は車に乗り込む。 別れ際、車のドアを閉めようとした僕に対して、車体に身体を預けながら、佳寿さんは言う。「なぁ兄ちゃん。さっきの話だが、一つ訊いてもいいか?」「えぇ、どうぞ......」「自分が吸血鬼の異人に対してしたことを、あそこまでハッキリと肯定する癖に、どうして兄ちゃんは、その行動に対して未だに、悩みを抱えているんだい?結果としてその吸血鬼の異人は、今も生きているんだ。最低限のことは達成された。それなら、そこまで悩まなくてもいいだろ?」「それは......」 そこで言葉を切って、車体に身体を預けながらこちらを見る佳寿さんに対して、僕は視線を逸らしながら、言葉を探しながら、静かに紡ぐ。「......僕がしたことは、結局のところ自己満足なんですよ。生きて欲しいと願ったのは、琴音じゃない。僕なんです。僕は彼女から、彼女が望んだ結末を奪い取って、生きることを強いたんです。そしてそれは、僕にとっては正しいことだったかもしれないけれど、琴音にとっては、そうじゃない」  そう言いながら俯く僕に対して、佳寿さんはさらに言葉を返す。「......それ、本人が言っていたのかい?」「いいえ、そうじゃないですけれど......でも、怖くて聞けませんよ......そんなこと......」 そう言いながら僕は、車のドアを閉めた。 そして運転手の人に「出してください」と言って、車を発進してもらう。 ゆっくと走る車の助手席に座りながら、サイドミラー越しに映る佳
last updateHuling Na-update : 2025-08-17
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不死身青年と旅人童女の追憶Ⅹ

「......」 促されるままに外に出た僕を、何も言わずに水風呂の中に放り込んだ相模さんは、僕の反応を見て笑いながら、しかしビックリするほどの力で、水風呂から出ようとする僕の身体を、冷たさの中に押し込んでくる。 そして数分の間の葛藤を経て、今に至るのだ。「......」 まぁいわゆる、放心状態という奴である。 知らなかった...... サウナに入った後に、水風呂に一分ほど押し込まれ、その後は外の空気に当たりながら、ただただボーっと過ごす。 それがこんなにも、気持ちいいなんて...... そんな風に思いながら、隣の椅子で同じように、外の空気に身を任せている彼の姿に視線を向けて...... そしてまぁ、ゆっくと我に返りながら、僕は彼に、再び問い掛ける。「それで......相模さん......」「うん......なんだい......?」「さっきの話の続きですよ......どういう、意味なんですか......?」「......あぁ、そっか......そうだね、ちゃんと話そうか......」 そう言いながら相模さんは、ほとんど寝ている様な態勢から身体を起こして、ゆっくりと話し始める。「まぁ君も......もう気が付いているだろうけれど......とりあえず、分かりきっていることくらいは......はっきりさせようか......」 そしてこちらに、さっきと同じような、冷たく静かな視線を、彼は見せる。 その瞳は、言葉よりも雄弁だった。 だから僕は何も言わず、ただ彼の言葉に、耳を傾けたのだ。「......」 そしてそんな僕に、ゆっくりと、ゆったりと、言葉を紡ぐ。「その......若桐っていう女の子......その子は確実に......異人だよ」 そう言われて、なんだか少しだけ、理由はわからないけれど、僕は安堵した。 そしてだからだろうか...... その後に、自分の口から出た台詞は、とても穏やかだった。「......えぇ、それはなんとなく、分かっていましたよ......」 少なくとも、今のこの状況で、あの若桐という少女が、普通でないことくらいはわかっていた。 けれど......「いいや、荒木君。大事なのは、その先だ。彼女が一体、何の異人であるのか......今回起こっていることの原因ならぬ要因は、果たして何なのか......
last updateHuling Na-update : 2025-08-18
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不死身青年と旅人童女の追憶Ⅺ

 相模さんから運ばれた朝食を平らげるのに、大して時間は掛からなかった。 普段食べる様な量ではないから、多少は残すか、少なくとももう少し、時間が掛かると思っていた。 しかし思いの外、朝食自体が美味しかったのは勿論あるけれど、やはりそれだけ自分が疲弊していたということなのだろうか...... 綺麗に、米粒一つ残さない程に、しっかりと平らげたのだ。 食事を終え、 ウーロン茶に口を付けながら、僕は言う。「相模さん、お願いがあります」 そして言われた相模さんは、僕のその言葉に対して、いつも通りの微笑を添えながら、僕に言う。「あぁ、いいよ」 あまりにも軽快に、彼はそう言った。「......」「ん?どうしたんだい?」「いや、僕まだ何も言ってないんですけれど......」 そう言いながら、少しばかり困惑した僕を見て、彼は笑いながら、言葉を紡ぐ。「フフッ......それくらいわかるさ。僕は君を管理している専門家だ。君が考えていることくらいなら、大方予想できるよ。どうせ、今日と明日、もしかしたらさらにもう一日、一人で行動出来るように図らって欲しいとか......そういうことだろ?」「......はい」 そう言いながら、あまりにも的確に心内を読む相模さんに対して、少しばかりの不快感と、しかしながらの信頼を寄せて、僕は口を開く。「昨日、夢を見ました......若桐と話したんです。彼女は、もう今は居ない、大切な人の気持ちを知りたいと、僕に探して欲しいと、そう言っていました」 僕のその話を聞いて、相模さんは言葉を返す。「大切な人の気持ち......ねぇ......そんなモノ、一体どうやって探すんだい?探しようがないだろう?そんなモノ......その若桐という子......ハッキリ言って、僕は何も助けられない。なんせ僕には、その子の姿は見えないし、声も聞こえない。生きているならまだしも、死んでいるなら尚更、どうしょうもない......」 そう言いながら、その冷たい声色の彼は、僕から視線を外す。 外しながら、彼はさらに、僕に問い掛ける。「それでも君は、彼女の為に動くのかい?」 そして問われた僕は、その問いに対しての答えを、既に決めていた。 だからその言葉を、その答えをゆっくりと、僕は口にする。「......はい。僕には、若桐の姿が見えるので....
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不死身青年と旅人童女の追憶Ⅻ

 時刻経過...... 伊豆での一日目の行動を終えようとした頃、僕の携帯電話が鳴った。「はい......」「やぁやぁ、荒木君。その後、調子はどうだい?何か進展はあった?」「えぇ......まぁ......それなりに......」 そう言いながら僕は、何処かも分からない道路の道すがら、バス停のベンチに、若桐と二人、並んで座っていた。 電話口の向こう側は、笑いを含んだ声で、言葉を返す。「あまり芳しくなかったようだねぇ......まぁでも、そんなに気を落とすことはないよ。難しいことをしようとしているんだ。焦らない方がいい......」「......そうですね、そうします」「それはそうと、今日の宿はもうお決まりかな?」「えっ......あっ、いいえ。これからバスで街に出て、今夜の宿を......」 そう言い掛けた所で、電話口の向こうは僕の言葉を遮る様にして、再び笑いを含んだ言葉を返す。「おいおい、それはいくらなんでも無謀だよ。伊豆は観光地だろ?」「観光地でも、ネカフェとかあるじゃないですか。最悪そういう所でも......」「君はそれでいいのかもしれないけれど、彼女は違うだろ?」「えっ......」 その言葉で、僕は隣に座る若桐に視線を向ける。 そしてそんな僕を見透かしている様にして、電話口の向こうは、言葉続ける。「君一人なら、僕だってそんなこと言わないさ。でも君の隣には、居るんだろ?」「はい......居ますよ」「それなら、そんなことはしない方がいい。ちゃんとした所で、ちゃんとした食事と寝床がある場所で過ごすべきだ。そうだろ?」 そう言いながら、僕のことを見透かした声色は、僕の言葉を待っていた。「......そうですね、その通りです」 言いながら僕は、隣に座る彼女から視線を外す。 彼の言葉が、嬉しかった。 だって彼の言葉は、まるで僕や若桐のことを、ちゃんと一人の人間として考えている様な、そういう言葉に思えたから。 けれど油断してしまうと、涙が流れてしまいそうになるから...... だから僕は、彼女から視線を外したのだ。 そんな僕に対して、彼は言葉を続ける。「大丈夫、ちょうど後五分ほどかな、バスが来るだろうから、終点まで乗って行っちゃってよ。それでそこからまた五分ほど歩いた所に、少し古いけれどいい宿があるから、そこに
last updateHuling Na-update : 2025-08-20
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