เข้าสู่ระบบけれど相模さんときたら、その向けたられた視線に、投げ掛けられた質問に、相変わらずの微笑を浮かべながら、また一段と深く湯舟に身体を沈めて、言葉を紡ぐ。「フフッ、説明……説明か……そうだねーなんて説明するのが正しいのかなぁ……」「……」 視線に対して、少しばかり合わせたかと思えば、またすぐに切って、けれどまた合わせて。 そんなことを二回か三回繰り返した後に、彼は静かに、口を開く。「そんなに睨むなよ……どこまで白状するべきなのか、僕としても判断が難しくてね。なんせコレは、僕個人の動きではなくて、組合という組織が関わっていることだ。下手に口を割ってしまうのは、非常に不味い」 そう言って、言い終えたのか、もしくはその後の言葉が出て来ていないだけなのか、数秒の空白が横たわる。 だから僕も、彼と同じ速度で、言葉を返す。「ずいぶんと……」「ん?」「ずいぶんと、白状なんですね。この旅行を企画してくれたのは貴方なのに、別行動することが前提で、しかもそれでいて、その目的やら詳細は、あまり話せないなんて……」 そう言い終えると、その後の言葉が出てこない僕は、数秒の沈黙を横たわらせる。 すると相模さんは、ため息交じりに、けれど声色は上向きに、言葉を紡ぐ。「まぁ、申し訳ないとは思っているよ。騙し討ちをした様なモノだしね……けれどこうでもしないと、君等三人を効率良くカウンセリングするのが難しいのも事実だ。特に柊ちゃん」 彼のその言葉に、僕はつい、反応してしまう。「柊が……ですか……?」「……意外そうだね」「えぇ……だって、どちらかといえば、僕や琴音の方が、異人としても人間としても、存在が不安定なわけですから、問題視されるなら、僕等二人の方だと、そんな風に思っていましたし……」 そう僕が言い淀むと、彼は訂正する。「あぁ、その認識は間違っていないよ。その通り、君や佐柳ちゃんの方が、異人としても人間としても不安定な存在で、警戒しなくてはいけないのも、問題視しなくてはいけないのも事実だ。けれどそれなら、問題視することが決まっている分、対処も予め考えられる。早いうちに手を打てるなら、考えられる時間が多い分、対処も楽になる」「だが彼女は、柊ちゃんは、まだ未確定な部分が多過ぎる。暫定的に人間であるだけで、異人性が抑えられているだけだと、僕は君に説明したと思うけれど、
「ようやく来たね、荒木君。まったく、待ちくたびれたよ」扉の先に居た人物が、そしてその人物が口にする台詞が、こんな……「……っ」こんな普段とはまるで違う場所ですら、あまりにもいつも通りに登場して、そのいつも通りの台詞が鼓膜を揺らすものだから……「ん?どうしたんだい?」 そう尋ねながらその人は、さっきまで腰掛けていた風呂の淵から湯舟の中に身体を沈めて、僕の方を見る。 そしてそんなその人に、僕はため息交じりに、視線を逸らしながら、湯舟に浸かる一歩手前の場所で、自分の顔に手を当てて、うなだれながら答えるのだ。「いいや、なんかデジャブというか……どうしてもう少し警戒心を抱かなかった、そんな自分に後悔しているというか……」 その言葉に対してその人は、少しだけ笑いながら、言葉を続ける。「まぁ、若いうちはそんなモノだよ。同じ様な失敗を何回も繰り返して、そして身に着けるんだ。もっとも、あまりにもそれらが多過ぎると、見限られるけれどね」「見限られた方が、僕はありがたいんですけれどね……」 そう言いながら僕が、諦めに満ちた心境で湯舟に身体をゆっくり鎮めると、それを見たその人は、相変わらずのニヤケ面のままで、僕に言葉を返す。「それは出来ない相談だな、なんせ僕の仕事は君を管理する専門家なのだから」「異人の専門家ですねよ、その言い方だとなんだか僕個人の専門家みたいに聞こえるので、やめてください。気持ち悪い」「ヒドイなぁ、あながち間違えたことは言っていないのに……」「……えぇ、ほんと。残念なことに……」 そう言い返して、それ以上は何も言わずに、僕は空を仰いだ。 この状況……あんな状態の柊と一緒に居たあの部屋よりも、今この場所でこうしている方が、ある意味地獄な様な気がする。 異人を管理することに長けたこの人は、どうせ僕の今日の動向を知っている。 知ったうえで、何も言ってこないこの状況は、やはり気持ち悪い。 だからだろう、代わりに僕が口を開いた。「ところで、相模さん。今日は一体、何をしていたんですか?」 その僕の言葉に、返答するわけでもなく、しかしなぜか感嘆する様に彼は言う。「へぇ……」「なんです?」「いいや、わざわざ自分から僕に口を開いてくれるとは思わなくてね、成長が著しいよ」「それは、どうも……でも普通、あんな居無くなり方をされたら、誰だって
「あの......」「ん?」「いや......佳寿さんの名前を知っているってことは、その......専門家の人......ですよね?」「うん、そうだよ......まだ思い出せない?」「えぇ......その......相模さん......あっ、佳寿さんじゃない方の......」「あー宗助《そうすけ》くんのことね」「はい......その人と佳寿さんと......すみません、その人達の印象が強すぎて......」「そりゃあそうよ。あんなにキャラが濃い姉弟に絡まれている君には、さすがに同情するわ」「......そうだなぁ......自分が見ている世界を、必ずしも他人が見てくれているわけではないから、それだけは、気を付けてねって言葉の意味は、ちゃんと理解してくれたかしら?」「えっ......」「短い時間ではあったけれど、私は楽しかったわよ?夜のドライブ」「夜の......あっ......」「......思い出してくれた?」「はい......その......すみませんでした。あの日、宿まで送ってくれたのに......」「......よかった。べつにいいのよ、思い出してくれただけでも、嬉しいから......」「あの......」「ん?どうしたの、荒木誠君」
「どうしたの、珍しく眠そうじゃない」「あぁ、おはよう......いや、なんだろうな......寝ていたはずなのに、ずっと眠い......」「あなた、それ病気なんじゃないの?」「へっ?」「稀有な体質の貴方に、こんなことを言って、どれだけ当てはまるかは知らないけれど、あるらしいわよ?寝ても眠気がとれなくて、疲れがずっと溜まり続ける病気......」「へぇーそうなんだ。けれどまぁ、それはないだろうな......」「あら?どうして?」「そりゃあ......僕はお前が言うところの、稀有な体質なんだ。もうこれ自体が、病気みたいなモノだろ?」「べつに、病気にかかるのは、一人一つというわけでもないでしょ?」「それ、合併症ってこと......?」「さぁ、どうなのかしらね......」「あの......」「はい?」「荒木......君......ですよね......?」「えっ......あぁ......はい。荒木です」「よかった~会えた~」「はい?えっとあなたは......」「あぁ、この恰好だと流石に、憶えていないか」「どこかで、会いましたか......?」「まぁ......そうなるよね......印象深い関りは、加寿さんに取られたからね......」
「さて、そろそろ帰ろうか」「もう帰るのか?まだ来て、そこまで時間、経ってないだろ?」「いや、もう帰らないとダメだよ。もうそろそろ、この姿じゃなくなる。そうなると帰るのが大変になる」「そっか......そりゃあヤバイ。帰ろう」「あのさ......」「ん?」「いや、来るときはいきなりだったから、何も思わなかった......っというより、そんなことを考える余裕がなかったけれど、僕が背中に乗ることに、お前は何も思うことはないのか?」「無いよ......そんなことを思う様に、ボクはできていない」「そんな言い方......まるで自分が、誰かに作られた様な言い方をするんだな」「似た様なモノでしょ?生き物みんな、作ってくれた親が居るんだから」「いや......そうだけれど......」「けれど......?」「今の言い方だと、生き物のそれとは明らかに違うニュアンスになっている気がするからさ......」「そうかな?あんまりそういうつもりはなかったけれど」「まぁ、いいや。そろそろ本当に、行かないとね」「あぁ、頼んだ」「ところでさ」「ん?」「乗り心地とかってどうなの?」「えっ?」「いや、自分だとわからないモノだからさ」「まぁ、それなりだよ......」
「どこだろ......小田原......いや、箱根かな......これたぶん、蘆ノ湖だし」「車かよ......そこまで時間かかっていなかったろ......」「いや~そんな褒められても」「べつに褒めてねぇよ......」「暗くてよくわからないな......来たこともないから、なおさら......」「そうなんだ、ボクはよくココに来るよ」「......ココに来ると、少しだけ、気持ちが整理できるから......」「それは、どういう意味......?」「......色々あるんだよ」「そりゃあ、そうだろう。そんな姿になるくらいなんだ。色々あるだろうさ......」「......嫌味だな。でも、その通りだから仕方ない」「僕が言えた義理でも、ないけれどね......」「そりゃあ、そうだろね。そんな身体になるくらいなんだ。色々あるだろうさ......」「......イヤミだな。まぁ、その通りだけれどさ......」「人生、いろいろだよね......」「もう人ですら無いような気がするけれど......」「じゃあなんて言うのさ」「えっ......」「人生って言えないなら、ボク等の今生きているこの現状。名前を付けるなら、なんて言うべき?」「さぁ......なんだろうね......」
パンケーキを食べに行った次の日 ゴールデンウィーク二日目である今日は、朝からあまり天気が良くなく、一日中雨が降り続く予報が、テレビから聞こえていた。 時間の節目になり、番組が変わる。 そしてまたその番組では、前の番組でも報道していたことを、報道する。 特に見ているわけでもないテレビ、朝起きて身支度をするときの時計代わりである。 これはこれで案外便利だ。 こちらの要望に関係なく、今イチオシのスイーツだったり、芸能人の不倫疑惑や、新しい映画の完成披露試写会、政治家の汚職、ゴールデンウィークにおすすめのテーマパークの情報、通り魔の事件や強盗、交通事故、その他諸々。 そんなモノばかり
流石に朝起きたままの格好で、みなとみらいのオシャレなパンケーキ屋に行くわけにはいかないということになったので、各々一度家に戻り、シャワーを浴びて、再び大学から一番近い駅に集合することになった。 しかしまぁ、急転直下とは、まさしく今日のような日を言うのだろう。 朝目覚めたら、入った覚えのない大学の教室で、見知らぬ少女とおっさんが居て、そして人間であるはずの僕は、異人とかいう化け物になっていて...... まったく、一夜にして色々なことが起き過ぎている。 女子とパンケーキ屋に行くという、今までにないことを経験できると考えれば、この状況も案外そこまで悪くないのかもしれないけれど、それでも
大学からほど近い、『目の前』と表現するのが妥当なくらいの立地で存在するこのコンビニは、朝から夜まで休みなく、閉店することなく、二十四時間営業し続けているようだった。 まぁ、こんな目の前に大学があるのなら、昼も夜も、それこそ丑三つ時の様な夜中も、学生をはじめとする多くの人が利用するのだろう。 そんな誰もが利用するコンビニで、僕はサンドイッチを二個と、ペットボトルの飲み物を二本買って、店の外に出た。 外に出ると、流石にあの薄着の格好ではない、その上から白い大きめのパーカーを、ワンピースのように着ている女の子。 あの綺麗な深紅髪の、得体の知れない女の子。 『佐柳』と呼ばれていた少女が、待
時刻は真夜中の三時頃だろうか...... 草木が眠る丑三つ時というだけあって、普段は大勢の人間が出入りするこの大学という施設も、日が出るにはまだ少しだけ時間がある今に至っては、僕一人しか居ない状況だった。 しかしながら僕は、真夜中の大学に忍び込んだわけではない。 そもそも大学という施設は、敷地内に入るだけなら、こんな夜中であろうとも普通に出入りができるのだ。 特にこの大学に関していえば、神奈川の横浜近くの某所にキャンパスを構える立地の良さと、そこまで高くない偏差値(まぁそれは学部学科によるが)のおかげで、約一万七千人の学生が在籍している、日本屈指のマンモス校である。 そんな大学だか