結衣が彼女を見た瞬間、目を丸くした。さっきまで悔しさと怒りでいっぱいだった顔が、一気に驚きと戸惑いに変わる。結衣の視線が、星乃を上から下まで探るように動いた。信じられないというように見つめ、何かを確かめるような目をしている。ほんの数分前まで、結衣は自分をここに連れてきたのが星乃じゃないかと疑っていた。というのも、ここに連れて来られる直前、星乃に手を出すよう命じた部下が失敗し、警察に連れて行かれたという知らせを受けたばかりだったのだ。だから結衣は、星乃が仕返しとして自分を誘拐したのだと思っていた。けれど今、目の前には、星乃も同じように縛られている。結衣の目が、星乃の体を縛るロープをなぞる。それでもまだ、星乃が自作自演しているのではないかという疑いが完全には消えない。「星乃?あなたも捕まったの?本当に?それとも演技?」星乃は答える間もなく、さっきの男に腕をつかまれ、もう一つの椅子へと押し込まれた。そのまましっかりとロープで縛られる。「二人とも、大人しくしてろ」どう見てもリーダー格の男が低く言い捨て、ドアの向こうへ出ていった。他の男たちも後に続く。部屋には見張りの二人だけが残った。星乃は周囲を見回した。ここは倉庫のようで、周りには漁網やタイヤ、ガソリン缶などが雑多に積まれている。湿った空気が漂い、床のあちこちに水溜まりができていた。すぐ近くに水辺がある。たぶん海か湖のそばだろう。星乃は顔を上げ、倉庫の窓を見上げた。窓は高い位置にあり、地面から三メートルほど。しかも鉄の網が張られていて、外は真っ暗で何も見えない。もう一度辺りを見回したとき、結衣の声がした。「見たって無駄よ。逃げられない。さっき連れてこられる途中で何度も助けを呼んだけど、誰も反応しなかったの。つまり、このあたりには人がいないのよ」星乃はちらりと彼女を見ただけで、返事をしなかった。結衣は少しバツが悪そうに口をつぐむ。けれど、星乃の表情や目の動きを見ているうちに、結衣にもわかってきた。どうやら星乃は本当に巻き込まれただけで、芝居をしているわけではなさそうだ。それに、彼女がこんな面倒なことを仕掛ける理由もない。星乃は話す気がなさそうで、結衣もそれ以上は何も言わなかった。時間が過ぎ、何時間も経っ
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