Semua Bab ~スーパー・ラバット~ムーン・ラット・キッスはあなたに夢中: Bab 91 - Bab 100

124 Bab

~第十八話②~ ついに出たあの男

 一方、それを喜ばない人間たちもいた。「こういうの、私、イヤなんだな」 一年特進コースで定期テスト二位の神宮寺真宮子が不機嫌に言った。  飛鳥の三百m後方。黒のデリカD5の後部座席を龍とふたりで占領している。前の席には、運転手のほかに取り巻きの宇野や松下たち五人が座っていた。「最近、やたらと自信ある態度とってさ。何でクラスカーストの最下層がそんな態度とれるワケ。おかしいじゃない」 隣に座る龍を冷たく見つめる。「龍は何も出来ないダメな人間なんだ」 龍があわてて真宮子に顔を向ける。「少し時間くれよ」 「定期テスト近いんだけど、どうするのかな。先回はあの女が一位で朝井が二位。私が三位だったけど。これっとすごく屈辱的なんだけど……。遠山が今も一位にいるのも頭くるけど、よりによって朝井なんかに抜かれたんだよ。龍が何も出来ないのなら、私、もうつきあわない。あんた、死んだら?」 「待ってくれよ。ふたりとも必ず破滅させてやるからさ。特に朝井のヤロー!」 悠馬に危機が迫っている。「実は親父の仕事の関係で、オレたちの力になってくれる人に出会ったんだ」「どういう人?」「外国の軍事兵器会社の御曹司だっていうんだ。名前は……」 「名前は?」「エブリー・スタインって人だ……」 悠馬と飛鳥の運命は如何に?
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-25
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~第十八話③~ お小遣い二百万なんてどうしよう

 悠馬の家の庭。ベンチに座ったまま、うさ子は悠馬を抱きしめて離さない。「悠ちゃん、君を守ることの出来る人間は私だけ! だってフィアンセなんだもん。フィアンセの義務だからね」 悠馬は顔を真っ赤にして叫ぶ。「よく分かりました。だけどもう離れてもらえませんか?」 離れる代わりに抱きしめた腕に力が入る。「もっと強く抱きしめて欲しいんだよね。またお姫様抱っこして欲しいんだよね。いいよ~」 ちょっと待って。どうしてこんな答えになるのでしょうか?悠馬も困ってしまった。「違います。僕、そんなこと言ってません」 悠馬はちょっとだけ目が潤んでいた。「そうだ。お小遣いあげる。とりあえず百万円の束ふたつでどう? 飛鳥という貧乏な少女なんか、悠ちゃんに何もあげられないよ。今日華というオバさんは若い女性に化けるのにお金使いすぎ、悠ちゃんにはシワ隠しのクリームの空き瓶しかあげられないよ。ねっ、二百万でいい? もっと欲しいっていうなら一千万ならすぐあげられるから」 こんなの全然答えになっていない。それにこの女性って、どうしてそんな大金持ってるのかしら? 悠馬は恐る恐る、うさ子に話しかける。「あの、僕、そんなのいりません。それに僕、恥ずかしいから離れてくださいとお願いしましたが、『もっと強く』とか、『もう一度、お姫様抱っこしてください』なんて言ってません。本当です」 悠馬の控えめな主張を、どうしてうさ子が聞くでしょうか。「ワワワッ、悠ちゃん。恥ずかしいからそんなこと言って」 また頬ずりされてしまった。「今度、そんなこと言ったらね。ペナルティだよ~。悠ちゃんのバージン奪っちゃうからね」 うさ子がはしゃいでいる。悠馬の顔が真っ赤になる。それが可愛いと悠馬の唇を奪う。「あのね。ちゃんと、君の言葉、レコーダーに録音したんだよ」 悠馬は首をかしげる。レコーダーを再生すれば、自分が「離れて欲しい」   と叫んでいるのが分かるはず。 うさ子がかぶっている長いウサギの耳がついた帽子。うさ子がニコッと笑って、ウサギの耳の部分に手をあててみる。「さっきの悠ちゃんの言葉再生するからね」 それは、「よく分かりました。だけどもう離れてもらえませんか?」とお願いする言葉のはず。  だが、だが、だが……。悠馬の予想はことごとくはずれたのである。 ど
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-26
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~第十八話④~ どうしてこうなるのでしょうか

 どこからか悠馬の声が聞こえてきたのである。「うさ子さん。いつまでも僕、うさ子さんから絶対に離れません。離れたくないんです」 ちょっと待って! こんなこと言ってないはず。「お願いです。もっと激しく、もっと強く、ああ、しっかりと僕のこと、抱きしめてください。ああ、はやくお姫様抱っこを」 悠馬の目が点になる。教えてください。何でこうなるの……。「それじゃあ、お小遣い三千万ください。それならあなたの言う通りになります」 エエーッ! ちょっと~。絶対、こなこと言ってはいない。 悠馬には理解できないことが続いている……。「ウフッ、分かった。悠ちゃんの言う通りにするからね。明日、一緒に三千万の預金口座、銀行につくりに行こうね」 ふたりの「愛の会話」が続いていた頃……。「今すぐ、彼女を攻撃しないんですか? それともエブリー・スタイン公子におまかせするんですか?」 悠馬の自宅近くの電柱の陰。美しきメイドが声をかける。ネイビーのワンピース。そしてフリルをあしらい後ろ姿が可愛いホワイトのエプロン。襟元にはネイビーのリボン。カチューシャにはネイビーのリボンとフリルをあしらっている。  そして長い脚には、ホワイトのクルーソックスにシルバーのシューズ。  すれ違えば誰もが振り向くだろう。  彼女にとってひとつだけ残念なことは、両目にを照らす冷たい光に、どこか怖さを感じることだろう。 メイドが話しかけている相手とは一体?
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-01
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~第十八話⑤~ 飛鳥とうさ子の対決

「悠ちゃんに何するんですか?」 悠馬の自宅の庭の外。遠山飛鳥、ただ今到着。うさ子にお姫様抱っこされている悠馬を見て、垣根ごしに大声で叫ぶ。叫んでからあわてて口に手を当てる。一瞬のうちに顔が真っ赤。知らないうちに「朝井くん」ではなく、「悠ちゃん」と呼んでいた。 それは悠馬も同じこと。クラスメイトに「悠ちゃん」と呼ばれ、どうしたらよいのか分からないまま、目が宙を泳いでいる。 うさ子は悠馬が顔を真っ赤にしている姿に愛しさを募らせる。悠馬の髪に軽くキス。「やめてください。痴漢、変質者。私のクラスメイトをいじめるなんて絶対許しません」 飛鳥は今にも垣根を飛び越える迫力を見せる。いつもは誰にも見せない飛鳥の姿。飛鳥はハッキリ、悠馬に恋してることを自覚していた。悠馬が自分を助けてくれたように、自分だって悠馬を助けたい。 お互い困ったときは力を合わせて助け合う。そんな関係になろうと決意していたのである。 だがうさ子から見れば、ゴミのような存在でしかなかった。ニコニコ、クスクス冷たい笑いを浮かべる。「あら、あなたはこの前、会った人ね。確か学校のウサギ小屋でウサギをいじめてたんじゃない。口を大きく開けて長い舌を出して気持ち悪く笑ってたこと思い出した。そうだ! 可哀そうなウサギさんをホウキの柄で叩いていた。そんなひどいことしちゃダメだからね。恥ずかしくないの?」 悠馬の婚約者を名乗るうさ子が、今度は正義感あふれたヒロインを演じる。 飛鳥ったら、今度は怒りで、一瞬のうちに顔が真っ赤になる。「フェイクはやめてください。悠ちゃんはやさしく素直な子だから、本気にするじゃないですか!」「だって本当のことじゃない。ホウキで叩いた後、次は雑巾をウサギの耳に投げつけてたじゃない。『お前はもうウサギじゃない。ゾウだ。』と理解不能なことを叫んでたよね」「またフェイク。あなたなんかここから出ていってください。悠ちゃんにこれ以上、ひどいことさせませんから」 またまた叫んだ「悠ちゃん」の言葉。ハッと気がつく飛鳥だが、もう恥ずかしがりはしない。(私、負けない。隣の席のクラスメイトから、いつも悠ちゃんの隣にいる関係になってみせる) うさ子とは二度目の対面。一体、どういう女性なのか、今でも見当もつかない。けれども悠馬をムリヤリ抱きしめているような女性ならば、悪人に決まっている。「
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-02
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~第十八話⑥~ うさ子の正体は?

 うさ子が耳に手を当てる。「フフフフフフ、ハハハハハ、私は遠山飛鳥。弱い者いじめの好きな桜花高校一年生だ」 突然、あすかの大声が、校内放送のようにあたりに響き渡る。間違いなく、垣根の外に立つ遠山飛鳥、彼女自身の声だ。飛鳥呆然。うさ子の満足げな笑み。「今日はウサギをいじめてやる。最初はホウキの柄で叩き、次は雑巾を投げつけてやる。フフフフフフフフ、ハーハハハハハ」 さっきよりも大きく飛鳥の声が響き渡る。飛鳥は突然、流れてくる自分の声にどうしたらよいのか分からず立ち尽くしている。 悠馬に悪い印象を与えたのは確かだと思う。(悠ちゃん! 違う、違うよ。これ、私の声だけど私じゃないの) 飛鳥の思いを嘲笑いかのように、今度は近所の家まで聞こえるような大声が響き渡る。「フフフフフフ、ハハハハハ、私は遠山飛鳥。弱い者いじめの好きな桜花高校一年生よ。ウサギには飽きたから、今度は朝井悠馬をいじめてやる。そのためにわざわざ朝井悠馬の家を訪ねてきたのだ」 隣近所の家から何事かと住民が飛び出してくる。若い人から年配の人、子どもまで、何事かと左右を見回している。その数、約三十人あまり。飛鳥を見つけて指をさし、何事か話し合っている。 幼稚園くらいの女の子が母親に話しかけている。「ねえ、お母さん。あのお姉さん、悪い人なの?」 母親がうなずく。うなずくだけではない。飛鳥をにらみつけて我が子にささやく。「そうね、ものすごく意地の悪い顔。あんなお姉さんになっちゃいけないからね」「お母さん、ウサギいじめるなんて、本当にひどいね」 飛鳥、大ショック。どうしてこれ以上、ここにいられるでしょうか?「イヤーーーーッ」 大声で叫ぶとその場から全速力で走り去った。泣き声が長く続いた。 悠馬は何がなんだか分からないまま、突然悠馬を尋ねてきたかと思うと、すぐに帰ってしまった飛鳥の後ろ姿を見送っていた。すぐそばにいるうさ子の心の声を知る由もなかった。「消えろ、小娘。目障りだ。私に逆らって生命を永らえたことに感謝するがよい」 うさ子の冷たい笑い。うさ子の腕の中にいる悠馬は何も知らない。「金星と冥王星を短時間で滅ぼしたこのムーン・ラット・キッス。再び私の回りをウロウロしたときには、それ相応の代償を支払ってもらうからな」 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-03
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~第十八話⑦~ アマンがナースに!

「どうだ、この完璧な変装。これならどこから見ても地球の一般人だ」 悠馬の自宅付近。悠馬を見張っているはずのキラーリ公主は なぜか自己満足の笑み。キラーリ公主とアマンは、メイドを卒業してナースに転職していた。 ナースの衣装を身に着けたアマンの長い脚には、ミニスカートからのぞくホワイトのガーターストッキングがよく似合う。かすかな網目から覗く大理石のように硬質で光を帯びた白い肌が、高貴で神々しく、それでいて目を離すことの出来ない色気を感じさせるのである。 そればかりではない。元々軍人であるアマンには、キリッとした制服がよく似合うのかもしれない。 だが待って欲しい。セレネイ王国王宮警備隊長のアマンは、一体いつからナースに転職したというのだろうか? 説明しちゃおう。「メイドの制服は、とてもセレネイ人の正体を隠すのにふさわしくはない。スマホで撮影され拡散されて、かえって目立ってしまう」 アマンの訴えに応えたキラーリ公主がふたりのコスチュームを一瞬でチェンジさせたのである。 だがナースの制服をよく考えてみよう。 アマンのコスチュームというのは、ホワイトのキャップに露出度満点のミニスカワンピース、ホワイトのガーターストッキング。ナースの制服も機能性を重視するようになり、現在のホスピタルからは少なくなっている。 男性が狂喜するこのコスチュームはかえって目立ち、また動画が拡散されるのではないのか? キラーリ公主ったらホワイトのブラウスにベージュのミニスカタイト、ブラウンのガーターストッキング。上から白衣のコート。 なぜミニスカなのか? なぜガーターストッキングなのか? しかもストッキングは網目ではないか! 患者の病気を治すのではなく、中高年のストレスを解消して元気にするお仕事をしているとしか思えない。 アマンは、キラーリ公主が日本の文化や生活のことをあまり知らないのではとハッキリ悟った。サライが生きていれば、こんなミスをしなかったはずなのだが……。「キラーリ公主。私たちの変装というのは、一体どういうデータを見て決められたのですか?」 アマンがキラーリ公主に疑いの目を向ける。「アマン! 私のこと疑ってんの? いけないなあ、セレネイ王国のお姫様にその態度は……。あのさ、絶対怪しいデータじゃないからね。日本でベストセラーになってる本」 キラーリ公主の手
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-04
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~第十八話⑧~ アマンの診察

「それはそれとしてね」 アマンの見せてくる絶対納得いかないという表情に、あわててキラーリ公主が話題を変える。「飛鳥という少女、何であんな変なこと言ってたの? 自分の意志じゃないでしょ」 キラーリ公主の質問に、アマンの目がキラリと光った。「その秘密は『朝井うさ子』と名乗った得体の知れない女が握っています」 キラーリ公主が庭に目を向ける。悠馬もうさ子も姿が見えない。家の中に戻ったのだろう。「私たちの知っているのは、別の名前だけどね」 キラーリ公主が垣根にもたれる。「教えてくれる。ムーン・ラット・キッスは何をしたの?」 右手を伸ばし、ガーターストッキングの網目をなでる。タイトのミニスカかめくれ、一瞬、太腿の白い根元が覗いた。「復元に成功したサライさんの調査データによれば、ムーン・ラット・キッス女王の耳は、自分のキャッチした音声を全て保存し、いつでも再生して聴くことが出来ます」 キラーリ公主が庭の奥にある悠馬の自宅に目を向ける。何事にも動じない表情の奥に、冷酷さと憎しみをこめた目が光っていた。「さらに自分がキャッチした音声を自由に編集することが出来ます。先ほどはあらかじめ保存しておいた遠山飛鳥の音声を、自分に都合がよい内容に編集したのでしょう。もちろん編集した音声を、スピーカー機能を使って大音声で再生することも可能です。女王に驚くべき能力がいくつも備わっていることは間違いないようです」 アマンは淡々と説明した後に、次のように皮肉な口調で付け加えた。「サライさんが生きていれば、もっと多くの情報を得ることが出来たでしょう。非常に残念なことです」 キラーリ公主はアマンの方を振り返った。あでやかな笑みを向ける。「アマン姉さん、その通りだよね」 アマンに手を伸ばし、頬を優しくなでた。「それでさ。お姉ちゃんにだから言うんだけれど、そういうことを何度も繰り返さない方がいいと思うんだよね。だってさ。誰だってイライラするときがあるじゃない。お姉ちゃんに災厄が降りかからないか心配なんだ」 キラーリ公主の指先が、アマンの頬を軽くつねった。「ねえ、お姉ちゃんなら分かるでしょ」 アマンはキラーリ公主の手首をつかんだ。じっとキラーリ公主の表情から目を離さない。「心配されなくても結構です。あなたが過ちを深く反省して改める指導者だと信じておりますから」 キラ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-05
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~第十八章⑨~ キラーリ公主の計画とは

 深夜のことである。スカイツリーのそばに立つ高層マンションの最上階の一室。ラケットはどこにも見当たらないのに、なぜかテニスウェアを着ているふたりの女性がいた。  襟元がホワイトのピンクのポロシャツ。そしてホワイトのプリーツスカート。歩く度にスカートが揺れて太腿の根元までバッチリ見えてしまう。  王宮警護隊隊長が軍服ではなくテニスウェアを着ていると知ったら、部下は一体何と思うだろう。多分激怒するようなことはないと思うのだが……「テニスウェアなら銀河系のどの惑星も共通。この変装なら、私たちがセレネイ王国の人間とは気づかれない。ネネッ、このファッションなら絶対ナチュラル。目立たないでしょう」 アマンは答えられない。「この衣装は一体、どこで買われたんですか?」 「日本のネット通販。ネット通販だって銀河系のどの惑星も共通。アマン、知ってた?」 キラーリ公主は、スマホの画面をアマンに向けてはしゃぎまくる。  画面には、テニスウェアを購入した大手ネット通販の広告。アマンが目を見開き眉をひそめた。<彼女をもっとセクシーにチェンジさせるナイト・テニスウェア> キラーリ公主が注意書きを読んでいないことは確かだ。<このテニスウェアはあくまで寝室用で、テニスの試合には適してはいません> アマンが何か言おうとしたときである。左手の手首にはめた腕時計のような形態の機器がかすかに振動した。  アマンが腕時計に似た機器に目を落とす。実際、この機器はレーザーや通信機能のほか、腕時計としても使用できる。銀河系の多くの惑星で、兵の携帯品として使用されている。アマンが使用している機器は、「ムーン・サルト」という名称だった。「キラーリ公主」 アマンが緊張した声をあげる。「ムーン・ラット・キッスのことでしょ」 キラーリ公主がニヤっと笑う。「よくお分かりですね」 「あなたがそれほど緊張してるからね」 今度は笑っていなかった。敵意に満ちた表情を浮かべる。「地球から姿を消したんだな」 「はいっ、間違いありません。地球で彼女の生体反応をキャッチできません。間違いなく地球を出たのです」 「行き先はバレリーのところだろう」 銀河系宇宙を統括する銀河連邦のバレリー広報官の名前が出た。「バレリー広報官ですか?」 キラーリ公主は自分でウィスキーをグラスにつぎ、ストレートで飲
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-06
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~第十八話⑩~ 悠馬を尋ねてきた怪しい美女

 悠馬は机に向かってため息をついた。短い間に色んなことがあって、悠馬自身どうしたらよいのか分からなかった。 突然、婚約者と名乗って現れた朝井うさ子と名乗る女性。彼女は悠馬が婚約していた高蔵彩良先生がもう亡くなっていると告げた。 そのうえ、うさ子が婚約者を名乗るのは、彩良先生の遺言だとも言っていた。 彩良先生が亡くなったなんて、悠馬にとってはあまりにもショッキングな出来事で、知らないうちにじわじわと悲しみが深まっていく。 今の悠馬。どんなにハンカチでぬぐったって、さっきから涙が止まらない。うさ子は彩良先生を死に追い込んだのは飛鳥や今日華という女性だと話していた。 これって本当なのだろうか?もし本当だとしたら、クラスメイトや教師と同じ名前なのは偶然だろうか? 悠馬は左手首のロレックスに目を落とす。見るからに高級そうだ。朝井うさ子と名乗る女性は、冗談で婚約者を名乗っているのではなさそうだ。 その後、うさ子は、急に「何か用事がある」と言い出し自宅から消えた。もちろんまた戻ってくると言い残していた。本当によく分からない女性である。 そういえば、いつのまにか机の上に飾ってあった彩良先生の写真が消えている。移動させた覚えはないのに…… 不思議に思って部屋の中を探し始めるとすぐドアチャイムが鳴った。ドアの外にはひとりの女性。悠馬は思わず顔を真っ赤にして、そのまま下を向いてしまった。 ミニスカのチャイナドレスを着た背の高い女性が立っていた。チャイナドレスのカラーはカドミアム・レッド。セミロングの髪は大きな真珠やルビー、ガーネットなどの宝石でつくられた髪飾りどまとめられている。大きなダイヤモンドのイアリング。 そして大きな目の輝きこそ一番最高級の宝石だった。何て美しい瞳だろう。 チャイナドレス特有の横割れのミニスカートからは、長く優美な曲線を描く二本の脚。ダーク・ブラウンのガーターストッキングの布地が妙になまめかしく見える。まるで生き物のように熱く呼吸している。 パープルカラーの孔雀の羽根でつくられた扇子を右手に持ち。優雅なポーズで左右にあおいでいた。「すみません。どちらさまでしたか?」 悠馬の顔は真っ赤なまま。極度に緊張した表情。「ご覧の通り、日本のどこにでもいる普通の主婦です。キラリといいます」 ミニスカートのチャイナドレスに宝石の耳飾り。孔雀の
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-07
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~第十八章⑪~ キラーリ公主の思い

「実は私、これまで専業主婦でしたが、サラリーマンだった夫が退職に追い込まれ、今はアルバイト生活なんです。生活も苦しく、私もアルバイトをしようと『人妻専科』という会社に面接に来たのですけれど、駅の近くという以外、会社の場所がよく分からないのです」 駅の近くというのに、なぜわざわざ町はずれまの悠馬の家まで道を尋ねにきたのか?  生活が苦しい人間がどうしてこんなに豪華な衣装を着ているのか?  そもそも「人妻専科」という謎の会社、どう考えても(考えなくても)フツーの会社とは思えない。  フツーの主婦のキラリは、それくらい気がつかないのだろうか?  悠馬も不思議に思ったが、心優しい少年は他人を疑うことが出来ない性格だった。そこが飛鳥の心をとらえた理由のひとつでもあるのだけれど……。「会社に連絡しようと思っても、あたりに公衆電話は見当たりません。『人妻専科』という会社の代表電話は携帯番号なので、公衆電話からではすぐに電話代がなくなってしまいます」 「あの……失礼なことお聞きしてすみません。スマホはお持ちではないのですか?」 「家族三人、ご飯を食べるだけで精一杯で、スマホなんて高級品は持っていません。子どもにオモチャも買ってあげられません」 それでは宝石の耳飾りやイアリングは一体どういうことなのでしょうか?  悠馬はますます不思議に思ったが、何か事情があるのだと好意的に考えることにした。  事実は単純明快。もうお分かりだろう。  ぜーんぜんフツーではないし、絶対どこにもいない「家庭の主婦」キラリに変装したセレネイ王国のキラーリ公主が、日本の事情がよく分からないまま乏しい知識を元に適当なことを話しているだけのこと。「僕、調べてみます。住所か何か分かりますか」  「メモがあります」 悠馬はメモを受け取って少しの間、考えていたがやがて恐る恐る口を開いた。「よかったらキッチンでお待ちください」 それを聞いたキラーリ公主ったら、全く遠慮することなくニッコリ笑い、「ではそうさせていただきます」 キラーリ公主は当然のように家に上がり、悠馬より先にキッチンに向かった。  悠馬はキラーリ公主をテーブルに案内しお茶とお菓子を用意した。「この家はあなたひとり?」 「母がいますが単身赴任で今は僕ひとりです」 「ほかには誰もいないのかしら?」 キラーリ公主
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-08
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