Semua Bab ~スーパー・ラバット~ムーン・ラット・キッスはあなたに夢中: Bab 71 - Bab 80

83 Bab

~第十五話 さよなら、スーパー・ラバット~ セレネイ人の秘密

「ただいま」 学校から帰宅した健は、恐る恐る一階の廊下から、応接室にいる母と荒川先生に声をかけた。「おかえり」「おかえりなさい」 テーブルの上には英語の本や書類、パソコンが置かれている。月の研究についての相談中の模様。 呼び止められ、将来の予定について問い詰められずに済みそう。 健はふたりの気が変わらないうちにと、急いで自分の部屋に入った。母の芽衣と荒川先生が、どんな話をしていたのかは何も知らない。「天王星を発見したウィリアム・ハーシェルの息子でイギリスの天文学者、ジョン・ハーシェル(1792~1871)は『月の人類』の中で、ハッキリ、月に住むセレネイ人とテレバシーで語り合ったと言っている。セレネイ人は、『自分の目はどんなに遠いものでも見えるし、どんな遠いところでも音声が聞こえる。今、私にはあなたの顔がハッキリ見える。何か飲み物をすする音もハッキリ聞こえる』とテレパシーで語ったそうよ」「セレネイ人は、月からハーシェルの姿が見えた。それにハーシェルの声も……。そんなことがあり得るのでしょうか?」「研究家の間でも色々な意見があるの。アメリカの天文学者、サイモン・ニューカム(1835~1909)はこう書いているわね。『セレネイ人は、まず遠近を切り替える目で目標物を定め、次に目標物とその周辺から発せられる音声を耳でとらえるのではないか』 この場合は、望遠鏡を見ていたハーシェルの視線にまず気がついたのだろうという訳ね。ただしこれはハーシェルの書いていることが事実ならばという場合。ハーシェルの子孫はハッキリ、『『月の人類』は元々、口述で書かれた私家本だったのに、SF作家、H・G・ウェルズ(1866~1946)の友人だった助手のハーラン・オーグルビー(ウェルズの代表作『宇宙戦争』に登場するオーグルビーのモデルとされる)が、金儲けに父を利用し勝手に増補した。先祖が月に住むセレネイ人なる荒唐無稽な存在を信じていたと云われるのは耐え難い』と語っている」「それじゃあ、ハーシェルが描いたとされる、このセレネイ人の絵も実はオーグルビーが……」「現在ではそう云われているわね」 ふたりは、ハーシェルが描いたというセレネイ人の絵に目をこらしていた。 絵を見ていた芽衣が、ハッと思い出したように言った。「明日、家政婦に家の中を大掃除して貰う。あのウサギも外のウ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-05
Baca selengkapnya

~第十五話②~ 悠馬は告白する

 悠馬が自分の部屋に入ると、ベッドの上にスーパー・ラバットがいた。 いつもと同じ。部屋の中のケージから、知らないうちに飛び出してベッドの上にちょこんと座っている。 悠馬に気がついたらピョンと跳ね上がり、無重力状態でフワフワと浮かびながら、最後は悠馬の胸の中に着地。悠馬は真っ白で大きなメスのウサギ、スーパー・ラバットを、悠馬の性格と同じく優しく丁寧に、そしてしっかり受け止める。 スーパー・ラバットはパッと悠馬の唇にキッス。そのまま、悠馬に優しく頬ずりしてくる。「君って本当に人間みたいだね」 悠馬が優しく問いかける。「時々、君がサ。僕の恋人みたいに感じることがあるんだ」 スーパー・ラバットがもう一度、悠馬の唇にキッス。ウサギなのに、悠馬の言葉が分かるのだろうか?「僕って婚約者がいたんだよ。信じる? こんな陰キャラにさ」 悠馬はスーパー・ラバットを抱きしめたまま、ベッドに横になった。 母親の芽衣と荒川先生は、悠馬を天文部に入部させ、将来は悠馬と荒川先生と結婚させて芽衣の研究を手伝わせようと綿密な計画を立てている。 今の悠馬には、それに抵抗するだけの勇気がなかった。 婚約者だった筈の彩良先生は、悠馬に背を向けて田辺さんと結婚して、悠馬の前から去った。そして今も行方不明のまま。もう二度と会うこともないかもしれない。母や荒川先生の願いに逆らうだけの強い理由なんか今はない。 悠馬に出来ることは、誰かに自分の思いを伝えることだけ。 悠馬はスマホを開いた。 彩良先生とのツーショットをディスプレイ画面に呼び出した。ディスプレイ画面の中では、今でも悠馬と彩良先生は婚約者のままなのに…。「スーパー・ラバット。彼女が僕の婚約者なんだよ」 悠馬はスマホの画面をスーパー・ラバットの鼻先に近づける。そのまま、ポロポロ涙を流した。「どうなんだろう?」 悠馬の声が途切れ途切れとなった。「今でも、僕って」 悠馬は、か細い声を出した。「彩良先生の婚約者のままなんだろうか?」 悠馬の声は慟哭に変わった。スーパー・ラバットが、長いお耳で悠馬の顔を優しく愛しそうになでた。 前足で、悠馬の胸をしっかりとつかんで離さなかった。 しばらくの後、悠馬はスマホを手にしたまま、眠りにおちていた。 疲れたのか? それとも何かの力が働いたのだろうか? スヤスヤと眠る悠馬の
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-06
Baca selengkapnya

~第十五話③~ 運命の日だって知らなかった

 どうしてそんな日が来たのかは分からない。まさか運命がそう決めたのだろうか? 翌日。その日は祝日だった。ただ悠馬の学校では祝日を利用し、こうなきの施設点検が予定されていた。朝、悠馬はブレザーの制服に着替えると自室のケージにスーパー・ラバットを戻した。「今日は学校の用事で、僕ら一年のクラス委員は参加しなければならないんだ。午後には帰ってくるからね」 悠馬はスーパー・ラバットにそう話しかけた。スーパー・ラバットはといえば、ケージの中からじっと悠馬を見つめている。「じゃあ、待っててね」 悠馬が手を振る。スーパー・ラバットは悠馬から目を離さなかった。ドアを開けて部屋を出るとき、もう一度、振り返ってみる。スーパー・ラバットはまだ悠馬を見つめている。 悠馬は部屋に戻って、ケージの中からスーパー・ラバットを抱き上げた。 「行ってきます」 悠馬が声をかける。不思議なウサギ、スーパー・ラバットと、また何度目かのキスをした。 知らないうちに、スーパー・ラバットと唇を重ねていたのだ。 悠馬はもう一度、スーパー・ラバットをケージに戻し、今度は後を振り返ることなく部屋を飛び出していた。 悠馬が家を出てしばらく経った頃のこと。ふたりの家政婦が自宅の清掃をするため尋ねてきた。 母の芽衣と荒川先生が応対する。「私たちは出かけますが、後のことよろしくお願いします」「そうだ、先輩。ウサギを庭のケージに移さなければ」「そうだった」 母の芽衣が思い出したように叫ぶ。「全く、ずっと庭のケージでいいと思うんだけど」「その件は、また悠くんと相談しましょうよ」 母と荒川さんの相談が、果たしてどういう結果をもたらすのか? 今の悠馬は何も知らない。 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-07
Baca selengkapnya

~第十五話④~ タイガーの咆哮

 駅前の商店街。一本奥に入ると、人通りはあまりない。小さな八百屋や雑貨店、理髪店、スナックが並んでいる。シャッターが下りたままの店もある。 駅前の一本奥の通りを、タイガーを連れた村雨春樹がゆっくりと歩いていく。 虎と同じように毛を縦縞に染められたウルフ・ハイブリッド。「狂犬」の異名を持つ恐ろしい犬だ。 そして春樹を囲むように弟の龍や宇野、松下ら六人の取り巻きが従っている。全員私服姿である。 春樹の左手に小さな八百屋があった。店の外に台が置かれ、夏みかんや八朔、バナナの盛られたザルが並べられている。「本日の特価 どれも三百円 美味しい果物ですよ」とカードが立てかけてある。 この近くだと大型ショッピングセンター「ハピー駅前店」はあるものの、車のない高齢者などは歩いて買い物にはいけない。 子どもが小さくてわざわざ車で買い物に行けない人もいる。町の片隅に今も残る心のこもったお店である。 突然、タイガーがうなり声をあげた。春樹がリードを放す。 春樹が冷たい笑いを浮かべる目の前で、タイガーは台に盛られた果物をひっくり返した。八朔や夏みかんが、バナナが道路に散乱する。龍や宇野、松下たちが落ちた果物を足で踏みつぶした。 八百屋の店長があわてて飛び出してくる。「君たち、何をしているんだ」 四十代後半のよく日に焼けた店長が、平気で果物を踏みつぶしている龍たちを見回す。八朔や夏みかんの汁が道路を濡らす。バナナが真っ黒になって無惨につぶれている。「ここにゴミ箱があったから、ゴミをキレイにしていただけですよ」 春樹が店長に嘲りの表情を見せた。店長が眉をひそめる。「君たち、どこの高校だ。食べ物にそんなことをするなんて、許されないことだよ」 鈴木が首を横に振る。「どこに食べ物があるんですか? みんなゴミですよ」 鈴木のそばで龍たちも声をあげる。「ジジイ、認知症か?」「汚い店だな。火でもつけた方がいいんじゃないか?」「ゴミ屋敷の親父!」 店長がたまりかねたように大声で叫ぶ。「いい加減にしないか。反省しないなら警察を呼ぶよ」 店長だって、「警察」とか、こんな言葉は叫びたくはないが、あまりの態度の悪さに苦渋の選択をしたようだ。 だが今日の春樹は、「警察」の言葉にも平然としている。「呼んだらどうですか? 知ってますか? オレは大手流通企業の『ハピー
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-08
Baca selengkapnya

~第十五話⑤~ スーパー・ラバットへ魔手が迫る

 春樹と六人の取り巻き、そして春樹の愛犬、「タイガー」と呼ばれるウルフ・ハイブリッドが我がもの顔で、駅近くの道を進んでいく まもなく反対の方角から春樹に犬を提供している雪村が現れた。ペットショップの息子で、春樹はありがたいお客様だった。 今日はクマそっくりの巨大な体を持つノルウェー原産の「フォレスト・キラー・ベア」を連れていた。全身の毛を染め、まるで北海道のヒグマそっくりに変身させていた。 いや、今やヒグマ以上の凶悪さだった。「村上さん。毛を染めました」 春樹が満足そうにうなずく。「オレたちは無敵だ。みんな分かったろう?」 春樹のすぐ後ろに、フォレスト・キラー・べアを連れた雪村が続く。「もう誰もオレたちを止められないんだ。そう思うだろう」 龍や宇野、松下、鈴木たちがニタニタともみ手をする。「にいちゃん、親父は今や総理大臣ともお友だち。警察なんかこわがって手も出せないもんね」 龍が春樹の機嫌をとる。「オレは三度目はプライドが許さないんだ。分かるな」 春樹が一同を見回す。「警察に二回も邪魔された。オレは親父が政治に興味持ってるのよく知ってるからな。総理大臣とか、と仲よくするようにうまく勧めたんだ。オレのスマホには、親父と総理大臣や与党の幹事長なんかの大物とのツーショットが入っている。交番のヒラ警官なんか、オレたちに手は出せるもんか」 春樹が驕りに満ちた表情で、取り巻きに告げる。「お前たち、エラそーにしていたいだろう。だったらオレみたいにしっかり勉強するんだ」 春樹が好き勝手なことを言うそばを、ひとりの少年が通り過ぎる。きれいな包装紙に包まれた四角い箱を大切そうにかかえている。「おい、オレたちのそばを黙って行くのか」 龍に呼びかけられた少年が、怯えた顔で振り返る。ホワイトのシャツにスラックス、ブラックのカーディガンを身に着けた真面目そうな少年である。「何だ、『可燃ゴミ』か」 オリーブのトップスにオーシャン・グリーンのカーディガンにボトムズをさっそうと着こなした龍がバカにしたように笑う。「龍、知ってるのか?」「一年の井上。パシリヤローだよ。暗くてムカつけど、こいつがいるおかげでオレたちも助かってるんだ」 井上を奴隷のようにこき使っている龍や宇野たちが井上を取り囲む。「知らん顔しやがって」「オレたちのこと、どう思ってるんだ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-09
Baca selengkapnya

~第十五話⑥~ スーバー・ラバットの最期

 悠馬の自宅の庭は春樹や龍のものではない。だがいまや悠馬の家の庭は、春樹と取り巻き、そして「タイガー」という名前のウルフ・ハイブリッドとヒグマそっくりに毛を染めたフォレスト・キラー・ベアによって占領されている。 庭の花は踏みつぶされ、スーパー・ラバットを入れていたケージが隅に転がっている。鉄パイプか何かで思いっきり打たれたのか、ケージはほとんどペシャンコになっていた。鉄パイプを入れているらしい布袋は宇野が手にしている。 六人と二匹の魔犬が半径五mくらいの円形をつくって並び、その中心には叩き壊されたケージの住民がいた。 六人と二匹に囲まれて逃げ場のなくなったスーパー・ラバットが体を丸めてうずくまっている。まるでホームセンターで売られている置物のように身動きひとつしない。「タイガー」 春樹の叫びと共に、タイガーがスーパー・ラバットの身体に突進する。大きな口を開けると、たちまち血の臭いが庭にただよった。肉を噛み切る音、骨を砕く音が低く鈍く恐ろしく響き渡る。 庭の土が赤土に変わり、やがて赤い湖となった。 湖水の中に、うらめしげな赤い眼が春樹たちを見上げている。スーパー・ラバットの頭部が血まみれで横たわっている。ヒゲまでも赤い糸と化していた。 白いはずの前歯が赤い。 フォレスト・キラー・ベアが頭部を口にくわえる。たちまちスーパー・ラバットの頭部がヒグマのような魔犬の口の中に消えた。 しばらくしてフォレスト・キラー・ベアがペッと何かを吐き出した。どす黒い血の塊の中に赤い眼がキラキラと輝いていた。 そして悠馬が春樹たちに出会ったのは、それから二十分後のことだった。駅前に続く川沿いの道である。カーカーッとカラスの声が空に響き渡る。 学校帰りの悠馬を、春樹がほがらかに迎える。「やあ、優等生の朝井悠馬くんじゃないか」 春樹が声をかけてくる。龍たちがバカにしたように悠馬を見据える。二匹の犬がうなり声を浴びせてくる。「君は僕に色々と教えてくれた」 春樹が微笑む。だか悠馬は、春樹のさわやかな微笑みの奥に、ゾッとするような冷たく残酷な笑いを見た。龍たちの嘲るような笑いも気になる。「何事も証拠だ。学校のウサギを盗んだんじゃないかと君のことを疑ってもだ、証拠がなければどうにもならないんだ。証拠がなければな。君からの教訓、よく覚えておくよ。証拠がなければ何も出来な
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-10
Baca selengkapnya

~第十五話⑦~ スーパー・ラバットとのお別れ

 自宅に戻った悠馬は、庭で何が起きたかを知った。目の前の光景が全てを物語っていた。  そしてもうひとつ。春樹が繰り返していた「証拠」という言葉の意味を知った。「何でお母さん、庭に出したの? 何で、何で、何で……」 悠馬は血の湖の中にひざまずき、大声で泣き続けた。涙が湖に落ち、庭の湖は少しずつ大きくなっていった。スクールパンツにスーパー・ラバットの血が染みてくる。それでも悠馬はそこを立ち去ろうとはしなかった。  湖に浮かぶスーパー・ラバットの白い毛を指先でつまみ、胸に押し当てた。「ごめんね、ごめんね。みんな僕のせいで……」 スクールシャツが血で汚れたって構わなかった。スーパー・ラバットと一緒にいたかった。「僕のところに来たことが間違ってたんだ。僕って誰も守れないダメな人間なんだ。ごめんね……」 悠馬は目の前の血の湖に、ドロドロとした肉片に、そして白い毛に、スーパー・ラバットの面影を探し続けていた。いつまでも探し続けていた。  ふと耳をすましたら、なつかしい声がかすかに聞こえてきた。小さな声だけれど、悠馬の耳にはハッキリと聞こえた。「朝井くんはね。優しくて、親切だけど、力もないし勇気もない。本当にダメな子なんだから。泣いたって叫んだって先生を助けることなんて絶対出来ないんだよ。どんなに優しくたって、親切だって、それだけで他人を助けるなんて出来ないんだからね。  でもそれでいいじゃない。そんないい子がひどい目に遭う世の中がいけないんだから。世の中が間違っているんだから」 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-11
Baca selengkapnya

~第十六話 キラーリ公主VSスーパー・ラバット~ キラーリ公主の野望

「月世界、セレネイ王国のキラーリ公主は、銀河連邦の常任理事をめざしています。銀河系のみなさんのお力をお待ちしています」 さわやかな女性のアナウンスが流れた。  タキシード姿のエブリー・スタインは、キラーリ公主のベッドのそばに立っている。すぐ隣にはスーツ姿の小太りの男がいた。しきりにハンカチで汗をかいている。汗臭いのでエブリー・スタインは眉をひそめた。「このプロモーション映像は、銀河の各惑星に配信される。姉上が銀河連邦の常任理事になれるかどうかは、この映像にかかっている」 エブリー・スタインは上から目線で小太りの男を見下ろす。「デブリー会長。あなたの仕事の成果が問われてますよ。姉上が理事になれば、セレネイ王国は銀河系を代表する惑星として君臨することになる」 セレネイを代表する芸能プロダクション、「セレネイ・エンター」のデブリー会長はしきりに大きくうなずいている。エブリー・スタインは、デブリー会長の卑屈な態度を見て冷たく笑った。(見苦しいブタめ。俺とは真逆な人間だ。仕事が出来なければ途上へ送るところだ)「まことにその通りで」 デブリー会長が、エブリー・スタインの心の内側を知るはずもない。  ベッドの上ではキラーリ公主が頬杖をついて寝そべっている。  半透明のシルバーのシュミーズとシルバーのマイクロビキニブラジャー、そしてマイクロビキニランジェリー、シルバーのショートソックス。いつもの普段着を、今日はだらしなく、やる気もなく着込んでいる。  今から立体プロモーション映像の鑑賞時間である。  もうひとりのキラーリ公主が手で髪を払った。もちろんプロモーション映像である。  映像の中のキラーリ公主は眼鏡をかけている。実際にはキラーリ公主は多少近眼だったが、銀河連邦の中のジュエリー系に属するエメラルド星で造らせたコンタクトレンズをはめていた。映像の中でかけているパープル・カラーの眼鏡は、これもエメラルド星でムーン・パイエルと呼ばれる月世界の天然鉱石を一㎏払って造らせたのだった。  そして服装はと云えば、パープルのトップス。  とっても薄くわざと小さめにしている。  だからこそ、パープルカラーの妖しい輝きを通し、白い肌が透けて見える。  そしてしなやかで柔らかい肩と、夜の海の波のような妖しい体の曲線がハッキリと分る。  Lカップの胸にブラジャ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-12
Baca selengkapnya

~第十六話②~ キラーリ公主の笑顔は冷たい

「デブリー会長」 キラーリ公主が「セレネイ・エンター」のデブリー会長を呼び寄せる。デブリー会長がベッドの縁に立つ。「弟よ。この人に」 エブリー・スタインが一瞬のうちに異次元倉庫から「ムーン・レインボー」と呼ばれる「幸福の湖」で採取される虹色の宝石を取り出した。宝石の色が気温や天気などの環境に合わせて、赤、オレンジ、黄色、緑、青、藍、紫の七色に変化する。リンゴくらいの大きさの物が一番高価である。 今、エブリー・スタインの右手のひらにあるのが、すなわちそれであった。「このような高価なものを」 デブリー会長が満面に笑みを浮かべる。キラーリ公主も笑っていたが、目の奥には残忍な独裁者の死の宣告が隠れていた。「受け取って、デブリー会長」 キラーリ公主がベッドの上に仰向けに横たわる。横目でデブリー会長をじっと見ている。デブリー会長は何度も頭を下げて「ムーン・レインボー」を受け取り、そそくさとスーツのポケットに入れた。 キラーリ公主は、「ムーン・レインボー」がデブリー会長のポケットに消えるまでずっと目を離さなかった。 それからおもむろにデブリー会長に告げた。「これはね。私が銀河連邦の常任理事に選出されるお礼だから」 デブリー会長が当惑した表情に変わる。「いいよ、つまみぐいくらい。私、何も言わない。不正かもしれないけれど、それくらいは見て見ぬふりしたって構わない仕事を、あなたはしてくれたんだから」 デブリー会長の顔が、一瞬のうちに死人のようになった。体が大きく左右に震えている。 追い打ちをかけるかのように、キラーリ公主の体が宙を舞った。一瞬の後に再びベッドの上に戻ったとき、仁王立ちの姿でデブリー会長を見据えていた。 パープルに輝く詰襟の軍服に、太腿を全てさらけだすショートパンツ。ホワイトのハイソックスにパープルカラーのショートブーツ。 たった今、キラーリ公主の瞳は、まさしく獲物をどう料理するか悩む蛇のように、ダーク・レッドの血の色に輝いていた。 そして自分の身長くらいある長い剣を構えていた。「お前は私を銀河連邦の常任理事にしなければならない」 キラーリ公主の冷たく鋭い声が響き渡った。剣先がデブリー会長の喉元に突き付けられる。「私は常任理事になるのだ。いいか、もう一度言う。私は常任理事になるのだ。分かったな」 デブリー会長は、あふれ出る涙と
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-13
Baca selengkapnya

~第十六話③~ 王宮の決闘

 報告したのは王宮警護隊長のアマンだった。いつものように、ワンピースの制服姿でキラーリ公主の部屋に入ってきた。  デブリー会長は深々と頭を下げると、キラーリ公主の前から退出した。アマンはデブリー会長のおびえ切った表情を見送った。  キラーリ公主がベッドの上に起き上がる。まもなく部屋の中には、黒いガウンに身にまとい、黒いベールを顔に垂らした全身黒ずくめの人間が入ってきた。顔は全く分からない。  云うまでもなく、月世界の先住民族、ムーン・ラット族の最後の生き残り、ムーン・ラット・キッス女王である。「ご機嫌よぅ、ムーン・ラット・キッス女王」 キラーリ公主が笑顔で迎える。だがたとえ口元は笑顔を見せても、両目はかすかにつり上がっている。「地球での調査活動、お疲れさまでした」 ムーン・ラット・キッス女王はベッドの縁に堂々と腰を下ろした。キラーリ公主は眉をひそめた。普通なら許されない行為である。「別に疲れてなどおらぬが、呼び出されたから、地球より戻ってきたのだ」 「その通りです」 キラーリ公主がうなずく。「いよいよ地球総攻撃が始まります。あなたを巻き込むわけにはまいりませんから」 エブリー・スタインが、ムーン・ラット・キッス女王に対し、露骨にあざけりの表情を見せた。「どうか、ゆっくりお休みください。女王の快適な休憩をサポートさせて頂きます」 キラーリ公主はあくまで笑顔を崩さない。ムーン•ラット•キッス女王は少しも笑わなかった。ベールの向こう側から、敵意に満ちた視線が、キラーリ公主に真っ直ぐに向けられている。「ではおまえたちも休むがよい」 女王はそこで言葉を切った。キラーリ公主が何か言おうとする。  女王がベッドの縁から立ち上がる。「地球総攻撃は中止になった。おまえたちは少し休憩するがよかろう」 「休憩は無理ですわ。地球総攻撃は中止などしません」 「残念だな。私が中止と決めたのだ」 「ムーン・ラット・キッス女王。あなたにそんな権限はありません」 「キラーリ公主、お前にもない。遺憾なことだ」 キラーリ公主とエブリー・スタインが顔を見合わせる。一体、この女は何を言いたいのだ。「力こそ法律だ。私が今、宣言する。地球総攻撃は中止だ」 女王が高らかに宣言した。「議論は終わった。私は地球へ戻る」 「これ以上、駄々をこねないことです。地球に
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-14
Baca selengkapnya
Sebelumnya
1
...
456789
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status