Semua Bab ~スーパー・ラバット~ムーン・ラット・キッスはあなたに夢中: Bab 111 - Bab 120

123 Bab

~第十九話⑤~ 地球総攻撃へのカウントダウン

 うさ子こと、ムーン・ラット・キッス女王はまだ知らない。銀河系の惑星からなる銀河連邦の本部で行われている会議の模様を……  この会議室にも秘密漏洩を防止するための「ブラインドリバーシステム」が使われており、うさ子も音声をキャッチすることは不可能だった。「バレリー広報官の意見は分かった。だが地球総攻撃は銀河連邦で正式に決定した議案だ。覆そうとするなら、それなりの手続きが必要だ。ムーン・ラット・キッス女王を銀河連邦本部に呼び寄せたまえ」 「待ってください。彼女は何か大事な用事があるといって、また地球に向かったんです」 「だったらもう一度、地球から離れて貰うんだな」「待ってください。私の提出した意見書だけでは足りないんですか? ムーン・ラット・キッス女王からの聞き取りも詳しく添付しているのですが……」 「いや、これだけでは到底足りない。すぐ彼女を呼び寄せるんだ。我々も話を聞く必要がある」 今のままでは、銀河連邦が決定した地球総攻撃を止めることは難しそうだ。だがムーン・ラット・キッスが再び地球を離れた場合、悠馬を助けてくれる人がいなくなる。  もちろん飛鳥は悠馬を助ける気持ち満々だが、どう考えても、考えなくても、彼女には荷が重そう。  果たして悠馬の運命は?
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-18
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~第二十話 悠馬を助ける者は誰もいない~ アマンは負けない

「この間の経過を報告致します」 アマンの声が部屋に響き渡る。 東京の中心部を見下ろすマンションの一室。 月世界の裏側にあるセレネイ王国の摂政、そしてセレネイ王国の最高権力者、今は秘密裏に日本を訪れているキラーリ公主は、ベッドの上に仰向けになっていた。 今はセレネイ王国で執務を行うときと同じく、半透明のシルバーのシュミーズ姿だった。 シルバーのマイクロビキニブラジャー、マイクロビキニランジェリーを身につけ、脚には、シルバーのショートソックス。 セミロングの髪、そして大きな目はじっと天井を見つめていた。 立体カメラ「ルキッド」に収められた朝井悠馬の映像が天井に展開している。まるで悠馬自身が宙に浮いているように見えるが、もちろんこれは立体カメラの映像である。 悠馬の笑顔に、キラーリ公主も笑顔で返す。 独裁者が心からの笑顔を向けるのは、天井に浮かんでいる朝井悠馬ひとりだけだろう。 そして今は軍服姿のアマンが、ベッドのそばに立って報告書を読み上げている。 キラーリ公主は果たして、アマンの報告をきちんと聞いているのだろうか? 「ムーン・ゴールド。セレネイ王国の誇る銀河系宇宙一美しい金塊。一番大きなムーン・ゴールドの金塊を悠馬くんにプレゼントしたら、彼は私に心を動かしてくれるだろうか?」 多分、いや絶対にアマンの話なんか、聞いてはいません。 アマンは肩をすくめた。「私、直径三十cmのムーン・ゴールドを以前、あなたに下賜されました。私のものなので、どう使おうと自由です」 淡々と話しながら書類をめくる。「ちょっと、待ちなさいよ。アマン」 キラーリ公主が上半身を起こす。「キラーリ公主、あなたは朝井悠馬くんに頭の上がらないことがあるはずです。彼の婚約者だった高蔵彩良ことサライを無慈悲に処刑しました。その事実を知ったら彼は……」 キラーリ公主の顔色が変わる。思わずルキツドを投げつける。アマンは顔色も変えずに右手で受け取った。「朝井悠馬の映像を収めたルキッドを『破壊』しようとした。これも立派な減点対象になるでしょうね」 アマんの言葉にキラーリ公主は言葉も出ない。不機嫌にベッドに体を横たえる。「ではこれまでのことを簡単に時系列で報告します。私たちが今、何をするべきかを考える上での手がかりとなるでしょう」「続けて!」 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-19
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~第二十話②~ 取り返しのつかない過ち

 キラーリ公主は不機嫌な表情で、アマンの説明を聞いている。「月は元々、地球とは双子星の関係にあった。我々月世界の裏側にあるセレネイ王国では念願の地球侵略にあたって、世界中に影響力を持つ日本を最初の攻撃対象に選んだ。日本を壊滅させれば、ドミノ倒しで地球の各国々は滅び去る。そのため、日本の事情に詳しいセレネイ王国情報調査部主任のサライを日本に派遣した。サライは月の研究者として知られる朝井芽衣が、我々セレネイ王国の存在に気がついているか調べるために、芽衣の息子の悠馬に近づいた。だがサライは任務を忘れ、悠馬と恋愛関係に陥って婚約した。サライ主任にも軽率な点はあったと思います。ただ年下の婚約者がいることを知りながら、日本の防衛能力を調査する目的で、サライに防衛大学防衛研究所研究員の田辺成一と結婚するように命じたあなたの冷酷残忍さにも敬服します。さすがは為政者だと思います」 キラーリ公主はまた上半身を起こした。「だからそれは反省している。だけどサライだって私に報告もなしに勝手に悠馬くんと婚約した。これだって問題じゃない。どうなの?」「その通りです」 アマンはうなずいた。「だけど」 アマンの口調が優しくなった。「恋ってそういうものじゃありませんか?」 アマンの心は、キラーリ公主の少女時代、彼女の姉代わりだった頃に戻っていた。度々キラーリ公主を教え諭したことを思い出す。 キラーリ公主は思わず顔を覆った。「ごめんなさい。今はそう思う。そのときはそう思わなかった。サライには申し訳なかった思う。取り返しのつかないことをしたと反省している。」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-20
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~第二十話③~ キラーリ公主は悠馬に夢中

 キラーリ公主は力なく天井を見上げている。  アマンはそっとその様子を見つめている。キラーリ公主が自らの誤りを悟るとき、必ずセレネイ王国に富と繁栄をもたらし、国民に幸福をもたらす。  それは地球を侵略などしなくても必ず得られるはずだ。  アマンはキラーリ公主の様子を見ながら、話を続けた。「サライ主任が娘のリルちゃんと共に地球への密航を企てたのは、もちろん婚約者の悠馬くんに会うためです。もう二度とセレネイ王国に戻る気はなかったと思います」 キラーリ公主は考え込んだ。「ムーン・ラット・キッス女王も悠馬くんのことを知っていたのはなぜ?」 「サライ主任から悠馬くんについての情報を得たのだと思います。なぜサライ主任が悠馬くんのことを女王に伝えたのか、理由までは私も分かりません。女王は最初は好奇心で、銀河系の惑星のどんな音声でもキャッチ出来る自分の耳を使って、悠馬くんの話す言葉を聞いていました。そのうちに悠馬くんのことが大好きになってしまい、サライ主任を動かして月の表側に人工衛星型の移動望遠鏡を設置し、一日中、悠馬くんの姿を見つめていました」 キラーリ公主は腕を組んだ。「それって、この日本では『ストーカー』て呼ばれる行為だよね。元々は英語だと聞いた。セレネイでは、『スヌスムムリス』と呼ぶけど……」 そう言いながらスマホに収めた悠馬の画像を見つめている。アマンはとっくに知っている。スマホの中の悠馬の画像は、とっくに百枚を超えている。  「ストーカー」。今のキラーリ公主だって同じじゃないか? アマンは思わず爆笑しそうになるのを、必死で我慢した。声を上げて笑うなんて、アマンのキャラクターに絶対似合わない行為ではないか。「だからムーン・ラット・キッス女王は、悠馬くんのために地球総攻撃を中止させようとしたワケね」 キラーリ公主は納得したように大きくうなずく。「キラーリ公主も同じではありませんか」 アマンの言葉に顔を真っ赤にするキラーリ公主。誰にも見せたことのない可愛らしい表情。アマンも思わず微笑んでいた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-21
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~第二十話④~ キラーリ公主も風雲は止められない

「あのね。最初は、サライや女王がそれほど恋焦がれる悠馬くんがどんな人間なのか、好奇心に過ぎなかった。だけど、あの子の心の優しさを知ったら、アマン、あなただって胸のハートが熱くなるのを抑えられなくなるんだから。心のないイケメンなんか、悠馬くんには敵わない」 このとき、アマンはハッキリと悟った。傲慢で自信家の独裁者より、熱く恋を語るキラーリ公主の方がずっと魅力的で大きな事業を成功させる可能性を秘めているということ。もしキラーリ公主が悠馬と結婚したならば、セレネイ王国を銀河連邦最大の惑星に発展させるに違いない。  だがアマンも自分の熱い思いを放棄するなんて絶対に出来ない。恋のバトルは絶対に譲れない。アマンも決意を固めていた。「それで公主は地球総攻撃を今でも諦めてはいないのですか?」 アマンの意地悪い質問。「それを今、言わせるの?」 キラーリ公主のすねた表情。この表情もまた可愛らしい。「好きな人の悲しむことなんて出来ないじゃない」 とうとうキラーリ公主は本音を漏らした。悠馬への思いから、念願の地球総攻撃を中止するとハッキリ認めたのだ。「しかし公主。エブリー・スタイン公子は地球総攻撃に反対するキッス女王を暗殺し、一気に地球総攻撃を進めるつもりです」 「だからキッス女王の情報は弟に伝えていないでしょう」 「公子は既に悠馬くんの存在に気がついています。悠馬くんを利用してキッス女王をおびき寄せようとするでしょう。今のままでは悠馬くんに生命の危機が訪れることになります」 「そうはさせない。弟に直接、命令を下す。これ以上、余計な行動はするなと!」 キラーリ公主は悠馬のために地球総攻撃の中止を決意。弟のエブリー・スタインに「何もするな」と命令すれば、村雨兄弟を利用して悠馬に危害を加え、ムーン・ラット・キッス女王をおびき寄せて暗殺するという計画もボツになるはずだった。  ところが、事態は思わぬ方向に展開していたのである。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-22
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~第二十話⑤~ エブリー・スタインの野望

 キラーリ公主のスマホの振動。これこそが、事態を大きく変えていったのである。「バレリーからだ」 銀河連邦のバレリー広報官の名前が出た。「地球総攻撃について、現時点での私の考えを聞きたい。直ちに銀河連邦本部へ来るようにとラインを送ってきた。恐らく女王の訴えを聞き、私からも意見を聞こうとしているみたい」 キラーリ公主が唇を噛みしめる。「勝手に地球へ来ていることを知られたくない。すぐ銀河連邦の本部へ行く」 「でもエブリー・スタイン公子へ命令を下すのはどうするのです。このままでは必ず公子は悠馬くんに危害を加えます」 「手紙を書くから、すぐにあなたが弟に届けて。私の代わりに悠馬くんを守って。これあなたに頼むのってサ。ものすご~くイヤなんだけど……」 キラーリ公主は慌ただしく地球から去った。アマンにエブリー・スタインへの手紙を託して……。  一時間後のことである。  町はずれの空き地に待機しているセレネイ王国空軍の戦闘機「ムーン・レーカー」。前にも書いた通り、「ブラインドリバーシステム」によって、誰にもこの戦闘機の姿は見えない。  司令室。エブリー・スタインが、キラーリ公主からの手紙を読んでいたのは、わずかに十秒以下。  すぐにキラーリ公主からの手紙は地面に放り出された。靴で踏みにじられた。エブリー・スタインはイケメンにはふさわしくない憎々しげな表情を浮かべた。「この手紙はニセモノだ。アマン、お前がつくったのか? こんなものにオレが騙されると思ったら大間違いだ」 アマンはすぐに反論しようとするが、エブリー・スタインの言葉の方が早かった。上から目線の冷笑が、ストレートにアマンへ向けられる。「オレにフェイクを見せるのは、立派な国家反逆罪だ」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-23
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~第二十話⑥~ アマンが軟禁! 誰も悠馬を助けられない

 月世界セレネイ王国摂政、実質的な統治者、キラーリ公主。朝井悠馬の優しさに魅かれて地球総攻撃中止に傾く。 だが地球総攻撃の成功で自らのカリスマ性を高めようとするエラリー・スタイン公子は、地球総攻撃を妨害するムーン・ラット・キッス女王を抹殺し、一気に地球総攻撃を開始しようとしていた。 ムーン・ラット・キッス女王の居場所を突き止められないエブリー・スタイン公子は、ムーン・ラット・キッス女王が勝手に婚約者と決めつけている愛しの朝井悠馬を利用し、キッス女王をおびき寄せようとしていたのである。 銀河連邦より緊急の呼び出しを受けたキラーリ公主は地球を去った。だがエブリー・スタインに一切何も行動するなと手紙を残していた。もちろん悠馬を守るためである。 だが巨大な戦闘機「ムーン・レイカー」の司令室では、エブリー・スタインがついにヒールのイケメンという正体を現していた。「この手紙はフェイクだ。オレに手柄を立てさせないために、お前が捏造したんだ。そうだろう、分かってるぞ」 エブリー・スタインが憎々しげな口調で、一方的にフェイクと決めつけてくる。アマンはあわてて首を横に振る。もちろんエブリー・スタインは相手にしない。「銀河連邦一番のイケメンとして! じゃなかった、ムーン・ラット・キッス暗殺の特別任務責任者として、貴様を『国家反逆罪』の現行犯で拘束する」 エブリー・スタインが冷たくアマンを見据える。この残忍な表情こそ、セレネイ王国の貴公子として、女性たちから紙テープを投げられ賞賛されるエブリー・スタインの正体だった。「第一、地球にいる貴様がどうして月世界の姉上より手紙を受け取ることが出来たのだ。子ども騙しのフェイクに誰が引っかかるか?」「キラーリ公主は秘密裏に地球を訪問し、さっきまで私と行動を共にしていたのです。どうか、次の指令が出るまでいかなる行動も差し控えてください」 アマンの必死の叫びもエブリー・スタインには届かない。「司令官の命令だ。さっさと誰か来い」 ドメルらの副官が駆けつける。「国家反逆罪の現行犯だ。牢に収容しろかっこ ドメル副官があわててエブリー・スタインの前に立ちはだかる。「アマン隊長が国家反逆罪などあり得ません。どうか、考え直して頂けませんか?」 エブリー・スタインが鼻先で笑う。「どう考え直すんだ? ドメル、貴様が反逆者なのか?」 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-24
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~第二十一話 悠馬絶体絶命~ 悠馬への魔の手

 列車に乗り、御器所の駅で下車。徒歩で桜花高校に向かう。朝井悠馬にとって、いつもと同じ朝のはずだった。 だがこの日はいつもとは違った朝を迎えることになった。 悠馬はいつもは七時三十七分の列車に乗車する。次の列車から車内が混雑してくるからである。改札に向かっていると、突然、作業服を着た五十代後半の老人が話しかけてきた。「すまんがのう。切符売り場はどこじゃ? ア~ウ~」 老人はなぜか大きなトートバッグを両手で抱えていた。悠馬は笑顔で丁寧に教えてあげたが、そのため一本後の列車に乗るはめになった。 だがよくよく考えたら、トートバッグを抱えた老人の行動は不可解だった。悠馬の近くに駅員がふたりいたし案内表示もあったのに、なぜか老人は、わざわざ高校生の悠馬に「切符売り場」の場所を聞いてきたのである。そのうえ老人は切符売り場には行かなかった。 トートバッグの中身を確かめると、「ヒーヒヒヒ。乃木坂のDVDに写真集。みんなワシのもんじゃ」と満面の笑みでつぶやき、「♫ブンブンブン ブンブンブン インフルエンサー ユウキちゃん」と音程のはずれた歌を口ずさみ、スキップしながら駆けていった。 一方、悠馬が改札を通ると、すぐ後から三人のセーラー服の女子高校生が続いた。春樹のマンションで脅されていた三人である。緊張した表情で、悠馬の後をつける。 そしてしばらく経ってから、真宮子が取り巻き三人と一緒に改札を通った。 冷たい目を、階段を下りる悠馬に向けていた。 だが真宮子は知らなかった。離れたところから、真宮子の姿を見ているクラスメイトがいたのである。本来なら、この列車で登校なんかしない生徒だった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-25
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~第二十一話②~ 三人の女子高校生の陰謀

 列車内は満員に近く、通路に立つ悠馬は殆ど身動き出来なかった。悠馬はよほど空席がない限りは必ず通路に立つようにしている。 この日、悠馬が乗った列車は、空席どころか通路まで、通勤通学の乗客であふれていた。 十五分ほど列車に揺られて「御器所駅」のアナウンスを聞きながらホームに降りた。そのまま改札への階段を下りるつもりだったが、突然後ろから声をかけられた。「ちょっと待ってよ」 振り返ると見知らぬ三人の女子高校生が立っていた。制服から「春日台高校」の生徒だと分かった。悠馬よりは学年が上のようだ。「君ね。満員をいいことにずっと史緒里にタッチしてたでしょう。胸とか、腰とか……」「私たち、ちゃんと見てたんだよ」「絶対許せない」「今から警察呼ぶよ」 史緒里と呼ばれたのはロングの黒髪の女子高校生だった。緊張した表情で下を向いている。ブルブルと全身を震わせていた。 ほかのふたりは何度も言葉につかえながら、悠馬を追求してきた。「すみません。僕、あなたたちに今、初めて会うんです。何かの誤解だと思います」 悠馬は緊張の限界の表情。顔が透き通るくらいに青ざめていた。なぜ突然、身に覚えのないことを言われたのか、悠馬にはさっぱり理由が分からない。「本当なんです。信じてください」 三人の女子高校生も悠馬の言葉を百%信じていた。だが言葉は裏腹。「私、ハッキリ見てたの。どんなに知らないと繰り返したってムダだから」「私も見た。ふたりも目撃者いるんだよ」 追及の言葉はなぜか涙声だった。悠馬は気づかなかったが、ふたりともずっと後ろめたさを感じていたのである。「駅の人、呼んでくるからね」 悠馬は大きくうなずいた。「そうしてください。僕、本当に何もしていません。ちゃんと警察の人にも説明……」 悠馬の言葉が途切れる。いきなり右腕をつかまれていた。「何してるの? 遅刻するよ」 悠馬のよく知っている声が聞こえてきた。飛鳥は悠馬の腕をしっかりと強く握ったまま、悠馬を引きずるように階段を駆け下りていった。 女子高校生三人は、何も出来ないまま、その場に立ち尽くしていた。 すぐに悠馬と飛鳥の姿は見えなくなった。そもそも何が起きたのか? 三人の女子高校生には見当もつかない。「何やってんだよ、バ~カ」 真宮子が大声で叫びながら駆け寄る。「追いかけるんだよ」 だ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-26
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~第二十一話③~ 飛鳥はそれを我慢できない

 真宮子が悪だくみに励んでいた頃、飛鳥と悠馬は校庭のウサギ小屋の陰にいた。 朝のショートルームまでのわずかな時間。ウサギ小屋の周囲には誰もいない。 飛鳥は悠馬の右腕を握ったままだった。「遠山さん、いけないよ。僕、やっぱり駅に戻る。ちゃんとみんなに説明する」 飛鳥はゆっくり首を左右に振る。「遠山さん。お願いだから、腕を離して。卑怯な真似するなんて僕、絶対にイヤだもの」 飛鳥はニッコリと笑った。悠馬を優しい目で見つめた。次の瞬間、飛鳥の両目からは、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。 飛鳥は空いている右の手で涙をぬぐった。「朝井くんはね。いい子だよ。本当にいい子だよ。だから私……」 飛鳥はしっかりと悠馬を抱きしめていた。「私、悠くんのことが大好き。今は私の言うこと聞いてね」 悠馬は茫然とした表情のまま、飛鳥を見上げる。真っ赤になった悠馬の頬を、飛鳥は愛しそうになで回した。「しばらく私とバスで登校しようね。私、遠回りになるけどいい。悠くんと一緒なら構わない」 飛鳥は悠馬のおちょぼ口に、自分の唇をピッタリと重ねたかった。 けれども今は……。 大きく深呼吸してから、真っ赤に染まった悠馬の頬に、そっと唇をつけた。それが飛鳥の気持ち。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-01
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