「傘次郎。これがお前の教育の成果か」 三十分後、空地では「ハピー」の会長で春樹、龍の祖父、村雨五郎が厳しい目を息子の傘次郎に向けた。「ハピー」の社長、傘次郎は青ざめた顔でうつむいていた。 うさ子は腕を前で組み、空地の隅に立つキラーリ公主やアマンを、じっと見据えていた。飛鳥は悠馬を抱きしめたまま、時々、頬ずりして悠馬の頬を真っ赤にさせていたが、一切、何の反応も示すこともなかった。 その近くでは文や松山警部が証拠品であるレコーダーやデジタルカメラを、証拠品を収納する袋にしまう。 「警部補殿。あなたは今回の捜査には、なんにも関係ないですから。何ひとつ貢献していませんから」 「ひどい、文さん。私を出し抜いて」 「別に出し抜いてなんかいません。警部補殿が無能だったのです」 「ちょっと待ちなさいってば」 文と日美子の恋のバトルのそばで、村雨会長の重々しい言葉が続く。「『ハピー』を発展させたのは私でも、お前でも春樹や龍でもない。ひとりひとりの社員だ。仕事のときはもちろん、私生活でも『ハピー』の社員として恥ずかしくない言動に努めてきた彼らの成果だ。お前たちは経営者とその家族という立場にありながら、社員ひとりひとりの積み重ねてきた努力を一瞬にして水の泡にしたのだ。分かっているのか?」 村雨会長は怒りもあらわに叫ぶ。「学校のウサギを勝手に持ち出し、自分の飼っている犬のエサにした。『ハピー』の名前を出し、一生懸命頑張っておられる八百屋の店長を侮辱した。他校の女子生徒に心の傷を負わせ、クラスメイトに暴力をふるった。絶対に許さんからな」 真宮子が泣き叫ぶ。「ごめんなさい。だけど村雨くんが、協力しなければフーゾクに売り飛ばすと脅したんです。私も被害者なんです」 エエーッ、何だか信じられない話。一方、龍はといえば、髪がボサボサ、目は虚ろで口をだらしなく開け、二度とは立ち直れない悲惨な様子。「そ、そんな~~。ひどいよ~」 宇野や松下、鈴木たちも声を震わせて叫ぶ。「朝井くん、遠山さん、すみません。実は村雨くんに『オレはハピーの社長の息子だ。命令に従わないと六甲山に埋めてやる』と脅迫され、仕方なくやらされていました」 龍は手足をバタバタさせて泣きじゃくる。「ひどいよ~~。六甲山なんか、どこにあるか知らないよ~」 龍がイケメンに戻れる日は二度と来ないだ
Last Updated : 2025-12-06 Read more