ふたりの絆を嘲笑うかのように日美子が足早に近づいてくる。「朝井くん、どういうことなのか説明してくれるかしら」 厳しい言葉が容赦なく悠馬に投げつけられる。「ぼ、僕にも分かりません。本当なんです」 悠馬のか細い声。悠馬の声をかき消すように、男子生徒たちの大声。「おい、ウソ言ってんじゃねえよ」 「クラス委員、ヘンタイだと白状せんか」 「みんなにあやまらんか!」 「退学だ、退学」 春樹がゆっくりと悠馬の方に進み出る。生徒たちが一斉に静かになる。まるであらかじめ打ち合わせていたようだ。 春樹が悲しみの表情を悠馬に向ける。心の中では爆笑の真っ最中。 そっと自分の髪をイケメンモードに、さわやかモードにかきわける。「朝井くん。このようなことになって本当に残念だ。ロッカーのキーを持っているのは君ひとり。マスターキーは厳重に管理されている。君もこうなったら潔く本当のことを話して欲しい」 一斉に廊下から拍手が湧きおこる。女子生徒の声援。感動の涙。「朝井君」 松山も近づいてくる。「君のロッカーに隠されていたブルマは、列車内でのわいせつ行為の直接の証拠にはならないが、間接的証拠にはなる。それに新たな犯罪の直接証拠でもある。気の毒だが警視庁本庁まで……」 飛鳥が首を左右に振る。「何の証拠にもなりません。このブルマーは私が悠ちゃんにプレゼントしたものです」 ついに呼び名が、「朝井くん」から「悠くん」、そして「悠ちゃん」に変わった。「あなたがブレゼント?」 「ええ、悠ちゃんのこと愛しているから、私の大切なものを贈りたかったんです?」 「それじゃあ聞くけど何で十枚も二十枚もあるの?」 「それじゃあ聞きますけど、何で十枚、二十枚、持っていちゃいけないんです」 「いい加減なこと言わないで。ブルマのサイズ、それぞれバラバラでしょう。L・M・S! あなたひとりのものじゃないでしょう」 「ストレスで体重が増えたり減ったりするんです」 飛鳥は絶対に引き下がらない。「遠山さんだったね。もうやめよう。これ以上、かばっても無駄だよ」 松山が諭すように話しかける。 飛鳥は松山や日美子をにらみつける。新学期の頃、龍たちにクラス委員を押しつけられて泣いていた飛鳥。だがもう泣いたりなんかしない。 本当は弱虫で臆病な悠馬。本当は他人と争うことなんて絶対に出
Huling Na-update : 2025-11-12 Magbasa pa