「悠ちゃん、ごめんね」 うさ子は悠馬に頬ずりをする。赤い瞳から流れる涙が、悠馬の唇の奥にゆっくりと流れていった。「うさ子さん……」 悠馬のか細い声。「すぐに助けに行かなくてごめんね、ごめんね」 うさ子は悠馬に唇を重ねた。「やめて、何やってんの」 飛鳥の大声。うさ子はゆっくりと春樹たちを見回した。「最後の機会だ」 春樹たちが顔を見合わせる。「悠ちゃんにひどいことをしたことを認めよ。そうすれば何もなかったことにしてやる。悠ちゃんは心の優しい人間だ。お前たちを破滅させることなど望んではいない。お前たちが破滅すれば、自分のことのように悲しむだろう。私にはそれが分かっていた」 うさ子が悠馬の髪をやさしくなでる。頬をさする。「私には分かる。私は悠ちゃんの婚約者だからな」 うさ子の問題発言。「あなた、何言ってんの。取り消しなさい」 飛鳥が叫ぶ。「この女、頭おかしいんじゃないか? 陰キャラの婚約者だってさ」 龍が鼻で笑った。「何言ってんだ、この女」 「オレたちゃ何もしてねえ」 「痴漢やブルマを盗んだヘンタイを捕まえただけだ」 「オレたちは正義の味方なんだ」 「お前、ヘンタイのラスボスか?」 「消えろ、ババア」 「消えろ、消えろ」 鈴木たちの合唱。うさ子の瞳が血のような輝きと化した。「それがお前たちの返事か」 うさ子が悠馬を抱きしめたまま、一歩前に進み出た。「私はお前たちが憎い」 うさ子の声が重々しく響き渡った。「セレネイの先住民族の生き残りとして、ずっとムーン・ラット族の再興をめざしていた。卑劣なこともした。残忍なこともした。ずる賢いこともした。私はそういう人間だ。金星と冥王星を滅亡させ、女子ども構わず容赦なく虐殺した人間。それが私だ」 うさ子は悠馬に目を落とす。愛しくてたまらないといった純粋な瞳が悠馬に向けられる。 だが再び、うさ子の瞳が春樹たちに向けられたとき、そこには残忍な殺戮者の恐怖が漂っていた。「だが私は宇宙でただひとり、朝井悠馬を愛した人間として、卑劣で残忍でずる賢いお前たちを許さん。背後にいる人間もだ。エブリー・スタイン!」 ムーン・レーカーの司令室。ムーン・ラット・キッス抹殺を狙うエブリー・スタインはあわてて部下たちを呼んだ。「ムーン・ラット・キッスが現れた。直ちに司令室に集合せよ」 だが広
Last Updated : 2025-11-22 Read more