All Chapters of ~スーパー・ラバット~ムーン・ラット・キッスはあなたに夢中: Chapter 41 - Chapter 50

83 Chapters

~第十話③~ 飛鳥は悠馬をそっと見つめている

 飛鳥は今も忘れてなんかいない。  クラス委員を決めるときに悠馬が助けてくれたこと……。  悠馬が雑用係をイヤな顔ひとつ見せずにやっている姿を見るのが心苦しかった。  昼ご飯に校内のショッピングストアでパンを買う生徒も多い。生徒が一度に押しかけても困るので、どのクラスも毎日交代で当番が注文を取りお金を集める。そして二時間目の休憩時間に、ショッピングストアに注文書と代金を提出する。  四時間目の終了後、当番が注文したパンを受け取りに行く。  どのクラスだって当番制なのに、特進クラスでは毎日、悠馬がパン当番。お金を忘れたとか言い出す生徒のため、随分立て替えをして、返して貰っていない分も随分あるはずだ。(特進クラスの編入試験。一位は私で、三位が朝井くんだった。それが許せない人間がいるんだ) 飛鳥はそう信じている。村雨や神宮寺が、飛鳥や悠馬のコンディションを崩そうとしたって、絶対負けるもんか。飛鳥は、心の奥底でそっとファイトの炎を燃やしていた。  そしてもし出来ることなら、飛鳥が悠馬のことを助けてあげたい。そんな思いで、いつも悠馬を見守っている。「ねえ、遠山さん」 ウサギ小屋の水を換ええていた悠馬が急に話しかけてくる。「どうかした、悠くん?」
last updateLast Updated : 2025-08-06
Read more

~第十話④~ ちょっとした違和感を悠馬は感じる

「どうかした。悠くん」 うっかりそう呼でから、あわてて飛鳥は、「朝井くん!」と言い直した。悠馬の頬は真っ赤。頬を赤くしたまま、ゆっくりと話し始める。「あのね。ウサギって六羽じゃなかった?」 「そうだった?」 飛鳥は平静を装って答える。「今、五羽しかいないけど……。一番大きなメスのウサギ」 「さあ~。私、何も聞いてないし……」 飛鳥にそう言われると、それ以上、話は何も進まなかった。  一羽減ったというのは、悠馬の思い込みだったかもしれない。  悠馬は、つまらないことを聞いたのが恥ずかしくて、飛鳥から視線をそらした。その後、悠馬は、手際よくウサギ小屋の作業を済ませた。「じゃあ、お疲れさまでした」 悠馬は早口で言うと、ウサギ小屋を出た。ビニールのコートをロッカーにしまい、まだウサギ小屋の中の飛鳥に、「また明日」と言い残して歩き出した。  飛鳥は慌ててウサギ小屋を飛び出した。悠馬の後ろ姿が遠ざかっていく。「悠くん」 またさっきと同じ言葉を叫んでいた。悠馬が立ち止る。「遠山さん、どうかしたの?」 飛鳥はあわてて首を左右に振った。「ごめん、もういいの」 「そう、じゃあね」 悠馬は軽く手を振った。飛鳥は悠馬の姿が完全に見えなくなるまで、じっと後ろ姿を見送っていた。  それからウサギ小屋の戸締りをしてコートを脱ぎ、自分も帰路に着いた。
last updateLast Updated : 2025-08-07
Read more

~第十話⑤~ 近道の出会い

 学校の北門まで来たときだった。悠馬の胸ポケットに入れたスマホが激しく振動した。悠馬は立ち止る。長野県にいる母からのLINE。 悠馬の両親は天文学者だった。父が亡くなった後、東海科学館から長野天文台の副主任に招きたいと話があり、単身赴任していた。悠馬は特に天文に興味はなく、美術大学へ進学したいと考えていた。母が帰ってきたら、また進路のことで色々言われるだろう。  桜花高校に入学しながら、なぜ有名な「天文部」に入らないのかと問い詰められるかもしれない。(だって僕、絵を描くことが好きなんだし……) 母の言う通り、桜花高校に入学した。だが「天文部」には入らなかった。  三年後は数多くの有名画家が卒業している関西美術大学に推薦入学。将来は大学で美術を教えながらコンテストや展覧会に出品するのが今の夢だった。(お母さんは分かってくれないんだから) 母と一緒にいるのが楽しかったのは小学生まで。高校一年の今は、また将来のことを持ち出されるのが憂鬱でならない。  色々考えていたので、肝心のことを忘れていた。新しい画材道具を買う予定だった。隣町に行かなければならないので、近道することにした。  森の中を歩くコースである。車一台が通れるくらいの幅の舗装道路を急ぎ足で歩く。  昼間でもあまり人通りのない道だ。誰にも会わなかったけれど、思いがけない出会いがあった。  突然、目の前に真っ白なものが飛び出した。悠馬は驚いて後ずさりする。  真っ白なものが悠馬の足元に近づいてくる。別に後ずさりする必要なんかなかった。  それは白ウサギだった。体長は六十センチほどだろうか?十五センチくらいの長さの耳を立て、赤い瞳で悠馬を見上げている。  悠馬はその姿に見覚えがあった。学校のウサギ小屋で飼育され、今日は見かけなかったメスのウサギじゃないだろうか? ウサギ小屋のウサギの中で一番大きく、ほかのウサギより耳が長かったので、よく覚えていたのである。  どうしてここにいるのだろうか?  悠馬が両手で白ウサギを抱き上げると、おとなしく悠馬の胸に抱かれた。「どうしてここにいるの? ウサギ小屋に帰ろうよ」 悠馬が優しく呼びかけると、ウサギの長い耳が悠馬の頬をそっとなで回す。悠馬はくすぐったくて温
last updateLast Updated : 2025-08-08
Read more

~第十話⑥~ 村雨春樹とタイガー

 村雨春樹。身長は百九十センチ近くあるだろう。長身でイケメン。桜花高校の女子のハートをガッチリ握っている男子。  しかも父親は日本を代表する流通チェーン「ハピー」の社長。  桜花だけではない。多くの女子生徒が、村雨春樹とお近づきになれることを願っている。  だが犬を連れた春樹のもうひとつの顔を知る女子生徒は少ない。冷たく残忍な表情で薄笑いを浮かべている。これがイケメン、春樹の本当の姿なのだ。  春樹の連れている犬は、オオカミの血が流れているウルフ・ハイブリッド。  オオカミのようにギラギラと残忍な目を持ち、大きな口は常に獲物を求めて舌なめずりしている。素早い動きで、狙った獲物は一瞬の後に噛み殺しているとも云われる。  アメリカでは「狂犬」の異名で呼ばれる残忍で凶暴な猟犬である。  春樹の連れているウルフ・ハイブリッドは一メートル以上の体高の大型犬で、毛を黄色と黒の縞模様に染められていた。まるで虎そのものである。   「お前ら、タイガーを飢え死させるつもりか? ウサギはどうした」 春樹が冷たい口調を投げかける。「兄ちゃん、ごめん。逃げ出したまま、まだ見つからない」 「村雨さん、すみません」 「すみません」 悠馬の前では上から目線の龍たちが、ペコペコ春樹に頭を下げている。「タイガーは猟犬だ。こいつがいつまでも元気でいるには、たった今まで生きていた獲物の生肉と血が必要なんだ。お前らがディナーになるか」 「ごめんなさい、ごめんなさい」 「逃げられたで済むワケないだろう。さっさと捕まえろ」 「探してるんです。だけど逃げ足早くてどうしても……」 龍や鈴木たちの悲惨な口調をかき消すように、 ウーウウウ タイガーの名前をつけられたウルフ・ハイブリッドが突然低いうなり声をあげた。不気味な声が長く低く続く。「タイガー! どうした、ウサギの居場所が分かったか?」
last updateLast Updated : 2025-08-09
Read more

~第十話⑦~ 絶体絶命の悠馬

 悠馬はしっかりとウサギを胸に抱きしめた。絶対、村雨たちに渡してはならない。その思いでいっぱいだった。  だが忘れてはならない事実。それは……。  悠馬は弱虫なのだ。今の悠馬は体がブルブル震え、息が荒くなっている。泣き出したくなりそうな恐怖に必死で耐えている。  例えウサギを助けたくても、一体、悠馬にそれが出来るのだろうか?。虎のような巨大な犬を連れた冷酷なイケメンと仲間たちは、間違いなく力づくで悠馬からウサギを奪おうとするだろう。  悠馬はウサギを守れるのか?  悠馬の体が左右に小刻みに揺れだした。  やっぱりどう考えても不可能だ。  悠馬はギュッとウサギを抱きしめる。悠馬に出来ることはそれだけ。ウサギの毛はあたたかく、フワフワと柔らかく、悠馬がウサギに抱っこされているようだった。  タイガーのうなり声が近づいてくる。「タイガー! お前のディナーはすぐ近くのようだな」 春樹の意地悪い声。「は、早く遠くへ逃げないと……」 悠馬はその場から離れようとした。だが一歩も足が動かない。顔面蒼白のまま、その場に立ち尽くしている。「あの犬、僕らのいるところ、分かってるんだよね」 当たり前のことをつぶやくだけの悠馬。ウサギどころか、自分の身も危ない。  果たして悠馬とウサギの運命は?「行け、タイガー!」 村雨春樹の叫び。「いやだ、来ないで!」 悠馬の絶望的な叫び。タイガーがうなりをあげる!  
last updateLast Updated : 2025-08-10
Read more

~第十話⑧~ 誰でも警察は怖い

 そのときだった。  けたたましいパトカーのサイレン。龍や結城たちも顔色を変える。「に、兄ちゃん。あれ!」 「村雨さん」 「まずいですよ」 さすがに春樹も眉をひそめている。だが何とか威厳を保って冷静な口調で呼びかける。「何をあわてている? オレたちと関係ない。何もしてないだろう」 だがバトカーのサイレンはだんだんと近づいてくる。最後はすぐ近くでブレーキの音がした。「警部。不審な少年たちが目撃されたのはここです」 「すぐに探せ」 「ハイッ」 何人かの声がハッキリと聞こえる。龍や結城たちは真っ青。すぐにその場から逃げ出す。  無言でそれを見送る春樹。  タイガーは、異変に気がついたらしく、一瞬でおとなしくなる。  悠馬はウサギを抱いたまま、木の陰から春樹の様子を見ていた。  春樹は何事もないように、その場に立っている。だが両膝がかすかに震えている。そっと後ろを振り返る。「どこに隠れている?」  「よく探せ」 またも聞こえてきた声。ついに春樹に限界のときがきた。タイガーを連れてその場から駆け出すと、あっという間に龍たちを追い越して遠くへ走り去った。  悠馬はウサギを抱きしめたまま、その場に膝をつく。安心したように大きく息を吐いた。  助かったのだ……。
last updateLast Updated : 2025-08-11
Read more

~第十話⑨~ 飛鳥からの電話

 一時間後。悠馬の勉強部屋では、連れてきたウサギが無心にニンジンを食べている。悠馬は机に向かって勉強をしながら、時々、ウサギの様子を見守っていた。 スマホが着信を知らせる。一時間前に別れたクラスメイトの名前が表示された。「朝井くん」「如月さん、どうしたの?」「朝井くんの言ってること正しいよ。ウサギは六羽いたの」 飛鳥の意外な言葉。悠馬はすぐには返事が出来ない。 飛鳥は悠馬の反応には構わず続ける。「村雨くんや松下くんたちが来て飼育委員の先生からの許可証を私に見せた。だから一番大きなメスのウサギを渡した。許可証があるからどうしようもないでしょう」「たけど……」 悠馬には信じられない出来事だった。「そんなこと勝手に……」「朝井くん、君だって知ってるでしょう」 飛鳥が急に冷たい口調に変わった。「村雨くんのお兄さんは生徒会長。お父さんはPTA会長で『ハピー』の社長。それが全ての答えだから」 悠馬は何も言うことが出来ない。「村雨くんは私にね、こう言った。『余計なこと言いふらすな』 怖い顔してた。だけど私、朝井くんには話すことにした」 飛鳥が声を落とす。ゆっくりとハッキリと話す。「君だけには話した。それを忘れないで」 スマホは切れた。悠馬はlineでお礼を送るべきかどうか迷った。 しばらく考えてから、「教えてくれてありがとう。感謝してます」と送っていた。すぐに既読になっていた。
last updateLast Updated : 2025-08-12
Read more

~第十話⑩~ ウサ子の名前は却下です

 悠馬はウサギに声をかけた。「ウサ子ちゃん」 ウサギの耳がピンと立った。「ウサ子ちゃんが構わないなら、この家で一緒に暮らそうよ」 「ウサ子」と呼ばれたウサギが悠馬を見上げてくる。まるで悠馬の言葉が分かっているような反応だった。「ウサ子ちゃんを学校に連れていけば、村雨さんのタイガーという犬のエサにされてしまう。そんなこと絶対させないから」 突然、ウサギが大きくジャンプした。悠馬はウサギのジャンプを見るのは初めてだった。そのまま椅子に座った悠馬の膝に飛び乗る。  何だか首を左右に振っているように見える。まさか、「イヤです!」と言っているのかしら。「どうしたの? 学校に帰りたいの?」 ウサギが悠馬を見上げてくる。やっぱり首を左右に振っている。「じゃあ、この家で一緒に暮らそうよ。それでいいよね、ウサ子ちゃん」 ウサギがまた首を大きく左右に振る。「どっちなの? ウサ子ちゃん」 ウサギが悠馬の膝の上でピョンピョンはねる。相変わらず首を左右に振っている。悠馬は腕を組んで考え込む。何かメッセージを送っているのは確かなようだ。何を嫌がっているのだろうか?「そうか」 ハッと気がつき、悠馬が叫ぶ。「もしかしたらね。『ウサ子』という名前が気に入らないの?」ウサギが後ろ足で立ち上がり、悠馬の胸に前足を置く。悠馬のことを赤い瞳でじっと見つめている。「だってメスのウサギだと聞いてたから。じゃあね。何て呼んだらいいのかしら」 悠馬は首をかしげる。ウサギは悠馬の胸に鼻をこすりつける。ふたつの長い耳で悠馬の頬を優しくなでてくる。「そういえばね。子どものときに『ピーター・ラバット』というウサギの絵本を読んだことがあるんだ」 ウサギの長い耳が、またピンと立った。何だか悠馬に向かって大きくうなずいているようにも見える。気のせいとは思えない。「でも『ピーター・ラバット』だと男の子だよね」 悠馬がウサギに話しかける。アレレ! 目の前にウサギの姿がない。左右を見回したら、悠馬の勉強机の上。一冊の問題集の上に四つ足で立っている。「エーッ、いつのまに!」 悠馬は信じられないといった表情。考えてみたら、さっきから悠馬の言葉を理解しているようにしか見えない態度だって不思議なこと。  このウサギ、ただ者じゃないのかもしれない。  悠馬はじっとウサギの行動を見守って
last updateLast Updated : 2025-08-13
Read more

~第十一話 村雨兄弟とタイガー①~ スーパー・ラバットはみんなの人気者

 スーパー・ラバットは悠馬の家族になった。どんな関係?   もちろんウサギと飼い主なんて平凡な関係ではない。  悠馬はケージを買ってきて庭に置いた。そこがスーパー・ラバットの住み家になるはずだった。  悠馬は学校から帰ると、スーパー・ラバットを散歩に連れていく。  散歩に連れて行くとすぐ立ち止まり、悠馬の方を見つめて動かない。悠馬が腰を落としてのぞきこむと、すぐに悠馬の胸に飛び込んでくる。結局、スーパー・ラバットと悠馬の散歩というのは、悠馬がスーパー・ラバットを胸に抱いて近所を歩くことだった。  この散歩は、随分と人の役に立っている。  大声で泣いている小さな子どもがいれば、すぐにスーパー・ラバットを連れていき、涙を幸せな笑顔に変えていた。  彩良先生や今日華先生とボランティアに通った幼稚園や保育園にまで、スーパー・ラバットを連れていった。  今ではそれ以外に、近所のおばあちゃんとか、学童保育の子どもたちとか、スーパー・ラバットのファンもたくさん出来ている。  みんなの笑顔を見られるのは、悠馬にとって二番目に嬉しいこと。  一番嬉しいことって何?   それはスーパー・ラバットのことを褒められること。  どうしてかって? まるで恋人を褒められたみたいに、胸を張ってみたくなるからである。  ところがひとつ問題が出てきた。夜、スーパー・ラバットをケージに入れて家に入ろうとすると、悲しそうにずっと悠馬の方を見るのである。フーフーッと、いつまでも小さな鼻声を長く響かせる。  そのまま、家に入ることなんか、悠馬は出来ない。悠馬が振り返ると、スーパー・ラバットはじっと悠馬の方だけを見ている。  結局、もうひとつ、屋内用の小型のケージを買って、勉強部屋に置くことにした。母が帰ってきたら、絶対何か言われるのは間違いなし。  それでもなぜか、スーパー・ラバットとは、出来るだけ一緒にいたい。今では悠馬まで、そんな気持ちになっていた。  それからもうひとつ、不思議なことがあった。  最初の夜。悠馬ははひとりでベッドで寝ていたのだけれど、いつのまにか、スーパー・ラバットが悠馬の隣で白い体を丸めていた。特にケージに鍵をかけていたワケじゃない。それでもやっぱり、ちょっとだけミステリアスだった。   「一緒に眠りたいの」 悠馬が声をかけると、スーパー・ラ
last updateLast Updated : 2025-08-14
Read more

~第十一話②~ 飛鳥の涙を悠馬は知らない

 嵐の前の静けさの予感? 今日一日、飛鳥は授業に集中出来なかった。今日明日と顧問の荒川先生が休みのため、急遽天文部は休み。別にクラブのことなんて関係ない。悠馬がいないなら、もう辞めたいというのが本音。けれども、突然、悠馬が入部してくる可能性が絶対にないとは云えなかった。  授業に集中出来なかったのは、全く別の理由。隣の席の悠馬のことが気になったから。今日は悠馬がそわそわ落ち着かなかった。  飛鳥は思い切って休憩時間に聞いてみた。「ねえ、朝井くん」 悠馬はドキッとした表情を飛鳥に向ける。ずいぶん近くなったと飛鳥は勝手に思っていたけれど、何をそんなに緊張しているのかしら?「何かあったの?いつもの朝井くんと違うみたい」 悠馬は困ったように下を向いた。「そうなの? そう見えるの? あのね。明日、単身赴任してる母が帰ってくるんだ」 悠馬は本当に困った表情だった。ふつう、そんなことで「困った」なんて云わない。「今日、今日華さんが母のところに……」 悠馬はハッとしたように口を押さえた。飛鳥は聞き逃さない。荒川先生が、天文学者の朝井博士の後輩という話を思い出した。荒川先生は博士を迎えに長野へ行っているのだろうか?   飛鳥は、この機会だからと悠馬の母親のことを詳しく尋てみようと思った。ところがが、龍の取り巻きのひとり、宇野が、「おい、クラス委員」と声をかけてきた。(何て失礼な態度だろう) 飛鳥は怒りを覚えた。またクラス委員に関係ない自分たちの用事を押しつけるつもりだ。「じゃあね」 悠馬は会釈する。「今、行くから」と宇野の席に向かった。「早くしろ」 「クラス委員なら真面目にやらんか」 宇野と松下が口を尖らせた。飛鳥の眼からポツリと涙が落ちた。
last updateLast Updated : 2025-08-15
Read more
PREV
1
...
34567
...
9
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status