Semua Bab ~スーパー・ラバット~ムーン・ラット・キッスはあなたに夢中: Bab 31 - Bab 38

38 Bab

~第七話⑥~ 刑場の母娘

 キラーリ公主がベッドに横たわっていた頃。全身黒ずくめの女性がスタジアムに入る正目面玄関を見上げていた。あたりに人の気配はない。スタジアムからはザワザワと人の声が聞こえてくる。「みなさん、お静かに願います」 アナウンスの声が響いてくる。  ここはセレネイ王国地上中心部フルムーン・シティに建設された「ムーン・パーク」。  ムーン・パークとはセレネイオ王国地上中心部にある円形の公園である。面積約十ヘクタール。東側に正面出入口があり、公園の中心には円形の花壇に囲まれた噴水がある。これだけで二ヘクタールの面積。  花壇には、月だけに存在する「ムーン・リバー」という花がたくさん植えられている。この花は一年中、ゴールドに輝くきらびやかな花をちりばめながら、太い茎がほぼ一直線に空に伸びる。最高で成層圏に達するほどまで生長すると云われ、「ムーン・リバー」のひとつは八キロの高さまで達していた。  「スカイ・ウォーター」と呼ばれる噴水は、月の成層圏十一キロメートルの高さまで噴き出す。  花壇の回りにはいくつものテーブルやベンチが置かれ、恋人同士や家族連れが、花壇の花々と空高く噴きあがる噴水を見て喝采を叫んでいた。この周辺には数多くのミニショップが集まり、軽食や飲み物、スィーツや玩具を販売していた。  北側には野外ステージがあり、休みともなればミニコンサートや演劇、映画などの催し物で賑わう。キラーリ公主やエブリー・スタインが主催する交流会やコンサート、「キラーリ公主を撮影しよう ボランティア・撮影会」などのイベントも開催され、若者たちの人気である。野外ステージに接して成層圏まで伸びる「スペース・コースター」をはじめとする乗り物広場があって、家族連れに圧倒的人気である。  南側は、野外レストランの立ち並ぶスペースとなっており、花や草木などの自然や小鳥のさえずりを楽しみながら、野外に置かれたテーブルで食事の時間を過ごすのだった。  だがムーン・パークの西側を見てみよう。そこだけはほかのスペースとは、全く印象が違っていた。うっそうとした森に囲まれ、寂莫とした雰囲気に包まれている。森を抜けると目の前にスタジアムが表われる。  スタジアムの正面玄関の前には、赤い立体文字が宙に浮かび上がっていた。 ぞっとするように案内だった。<本日セレネイ王国特別法国家
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~第七話⑦~ サライの悠馬への思い

 サライはじっとリルを見守っている。(悠ちゃんは、きっと命令に逆らえなかった私のこと恨んでいるでしょうね。ねえ、私があなたに話したことを覚えてる?『朝井くんはね。優しくて、親切だけど、力もないし勇気もない。本当にダメな子なんだから。泣いたって叫んだって先生を助けることなんて絶対出来ないんだよ。どんなに優しくたって、親切だって、それだけで他人《ひと》を助けるなんて出来ないんだからね』 今の私も同じ。ただの月世界セレネイ王国の情報調査員なんかじゃ、悠ちゃんを助けることなんか出来ない。だけどね……)「早く反逆者の首を斬れ!」 「早く!」 「早くせんか!」 「地球のスパイ野郎を殺せ」 「地球は敵だ」 「地球総攻撃はいつだ」 「さあ、総攻撃の前祝いだ」 「ブルブルブル、ワシはの~、死刑を見物するのが唯一の楽しみなんじゃ。早くしてくれい」    客席の人々の声が大きくなる。リルの泣き声が一層大きくなる。猿轡の奥、サライは心の声で地球に向かって叫んでいる。(悠くん、怒らないでね。この子はね。私は悠くんとの間の子どもからね。ほかの人間の子どもなんかじゃない。悠くんを思う気持ちの中で生まれた私と悠くんの子どもなの。リルの魂はね、もうすぐ地球に行くからね) サライは母娘を冷たく見つめる冷たい視線があることに気がついてはいない。(サライ。地球の情報調査から帰還したお前から悠くんのことを詳しく教えて貰って、初めて彼を知った。悠くんを一日中、見ていたかったから、お前に頼んで、月の表側に人工衛星型の移動望遠鏡を設置してもらった。悠ちゃんに出会って私の人生は変わった。お前には感謝している。だが悪く思うな。お前は死ななければならないんだ) 観客席の何人かが上空を指さす。ステージの上空に、卵を大きくした形の陸空海兼用車「ムーン・ロヴァー」が姿を現した。軍の公用車であることを示すように、色はブラックであった。ムーン・ロヴァーはゆっくりと垂直にステージに降下していく。  果たして母娘の運命は?  
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~第八話 処刑場の決闘①~ アマンとサライ

 ステージ中央。卵を大きくした形の陸空海兼用車「ムーン・ロヴァー」が着地した。運転手が降り、後部座席のドアを開ける。  アマン王宮警護隊隊長が車から下りた。鋭い目つきで客席を見回す。一瞬のうちに客席が静まり返った。  アマンはきりっとした姿勢で歩きながら、サライとリルの母娘に近づき、深く頭を下げた。「申し訳ありません」 サライが不思議そうな顔をする。「キラーリ摂政にあなたへの恩赦をお願いしましたが、実現しませんでした」 サライはそれを聞くとハッとしたように、アマンの顔を見つめる。しばらくすると、サライの方も深々と頭を下げた。「あなたには辛いかと思います。お嬢さんをお先に……」 アマンはサライの胸に顔を埋めたままのリルを気の毒そうに見つめた。何とかならないかと、最後の最後まで考えている表情だった。「お嬢さんが最期を迎える前に、悲しい思いをさせたくないのです」 アマンはサライの耳元でささやく。サライは大きくうなずいた。アマンへの深い信頼がその表情に表れた。「それからこれを」 アマンは赤い布袋を取り出した。小さな袋の中には、大きな愛情がつまっていた。  袋の中身は、サライが悠馬から受け取った真珠の指輪。そして地球に着いたらサライが悠馬に渡そうと考えていた月の石の指輪。  サライの両目から涙があふれた。「大切なものですね」 アマンが微笑む。サライは万感の思いを込めて大きくうなずいた。「大切な人のところへ持って行ってください」 アマンは手にした布袋を、サライのワンピースのポケットに入れようとした。サライの目が微笑む。  突然、強い風が一直線に吹いた。アマンの右手に一瞬、痛みが走った。  次の瞬間、布袋は消えていた。  サライをはさんで正面にひとりの女性が立っていた。数秒前まで、ここにはいなかった人間である。  黒いガウンに黒いベール、全身が黒づくめの女性。月世界の先住民族、ムーン・ラット・キッス。  右手に赤い布袋を手にしている。「何をしているんです」 アマンが立ち上がり、ムーン・ラット・キッスと向かい合う。「反逆者の重要な証拠を私が没収した」 ムーン・ラット・キッスは冷たい口調で答えた。「サライさんに返してください」 思わずアマンは、反逆者のサライを「サライさん」と呼んでいた。「憎むべきセレネイ王
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~第八話②~  アマンの挑戦

 アマンは怒りを押し殺してムーン・ラット・キッスに呼びかける。「その袋をサライさんへお返しください」 「命令するのは私だ。直ちに処刑を執行せよ」 「袋をお返し願います」 「私はサラネイ王国の非常勤顧問だ。この処刑場では私が法律だ。お前は今すぐ、サライ母娘を処刑するがよい」 そのときだった。サライがアマンの方を見て、猿轡の奥から必死で何かを叫び始めた。袋を返すよう要求しているのではない。何か重要なことを伝えたいのだ。だが鼻から下を覆った無慈悲な猿轡は、叫びをうめき声に変えていた。  アマンがサライに近づき、話しかける。「何か話したいのですね。今、猿轡をはずします。私の判断で処刑は一時中止……」 アマンの言葉が終わる前に、ムーン・ラット・キッスの怒号が響き渡った。「お前が先に反逆者として処刑されることになるぞ」 「サライさんは何か話したいのです。もしかしたら……」 アマンが冷ややかな笑いを、ムーン・ラット・キッスに浴びせる。「あなたに都合の悪いことではありませんか? だからこそあなたは、処刑を急いでいるのではありませんか? 私は先ほどから疑っていたのです」 アマンは「しめた」と心の中で叫ぶ。ムーン・ラット・キッスに都合の悪いことは、キラーリ公主には都合のよい話。サライとリルの母娘の生命《いのち》を助けることが出来る。(間違いない。サライさんはムーン・ラット・キッスの秘密を知っている) アマンは客席を見回す。「みなさん、重大な発表があります」 アマンが高らかに叫ぶ。「発表などない」 ムーン・ラット・キッスの残忍で冷酷な声が響きわたった。観衆は、ステージで何が起きているのか、さっぱり理解できずにいた。ただ黒ずくめの女性の正体に気がついた者もいた。「ムーン・ラット・キッス女王だ」 「月世界の先住民族、ムーン・ラット族の最後の生き残り」 「キラーリ公主からも特別扱いされている」 「逆らえば生命《いのち》がないと聞いた」 「関わり合いになると、オレたちも巻き込まれるぞ」 ざわめきが大きくなっていく。「早く逃げ出そう」 「そうしよう」 おびえた声があちこちで聞こえてくる。席を立つ人々も現れた。  アマンがサライとリルをかばうように、ムーン・ラット・キッスの前に立ちはだかる。絶対に指一本触れさせない覚悟だった。(この女が、
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~第九話 アマンとムーン・ラット・キッス 対決の行方①~ ムーン・パークの決闘

 闇の中に悲鳴と不気味な咆哮が響きわたる。さすがのアマンも、何が起きているのか、全く何も掴めずにいた。    ウオオオオーーーーン 謎の咆哮が闇に吸い込まれていった。後には逃げ回る人々の助けを求める叫びだけが残った。  一体、あの咆哮は何だったのか?  やがてステージを包んでいる闇がだんだんと薄れていった。死刑を見物に来たら自分が死にそうな恐怖に遭遇、大声で泣き叫ぶ人々のぶざまな様子がハッキリと見えてきた。  そして元のように、キラキラと明るい星空に包まれたスタジアムの光景があった。  星空の照明の下、アマンは茫然とステージに立ち尽くしていた。  白いステージが完全に消えていた。ステージ全体が、どす黒い血の絵の具で覆われている。客席も血の飛沫で覆われ、手足や衣装に血のついたことに気づいた観客が再び悲鳴をあげている。  血の海の中、赤い物体がふたつ転がっていた。  アマンはハッとして、ふたつの物体のそばに駆け寄る。血まみれになっていたが、それが何であるかすぐに分かった。  血で赤くなったサライとリルの母娘の頭部だった。首の付け根から下は、ステージを囲む溝の中に横たわっていた。  サライは目を大きく開けて、アマンを見つめていた。何かを話したそうな表情だった。だが猿轡の奥から、うめき声が聞こえることはなかった。リルは恐怖に怯えた表情で、口を大きく開けていた。  最後に一体、何を見たのだろうか?「処刑は滞りなく終わった」 背後で声がした。「ご苦労だった」 アマンはムーン・ラット・キッスと再び向かい合った。「あなたの仕業ですね」 ムーン・ラット・キッスから返事はない。「これを見て何も感じないあなたを私は許しません」 アマンは右手の剣先を突きつける。剣先の一メートル先には、ムーン・ラット・キッスの喉元がある。「ただの職業軍人が、月の先住民族、ムーン・ラット族の最後の生き残り。そしてセレネイ王国非常勤顧問の私に挑戦するつもりか?」 ムーン・ラット・キッスが小さく笑った。「悪いが無理だろうな」 アマンは負けない。「軍人である前に、私は人間です。権力を振りかざし、好き勝手に振る舞い、自分に都合よく他人を利用し、そして生命《いのち》と幸せを平気で奪うあなたを、人間として許せません」 アマンは剣を構えたまま、一歩前に出る。剣先はム
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~第九話②~ 勝敗の行方

「このムーン・ラット・キッス。短期間で冥王星と金星を滅亡させ、死の星に変えたムーン・ラット族の女王だ。この星もそうなりたいのか」 ムーン・ラット・キッスの叫びが終わるのを待たず、アマンの剣が風を切って一直線に進む。「あっ」 風は風のままに、アマンの剣は空を貫く。アマンの前には、黒いガウンもベールもない。  一瞬でムーン・ラット・キッスはいずこかへ消えた。緊張の表情で、あたりを見回すアマン。  客席の観衆は恐怖のあまり、ついにスタジアムから飛び出していく。先を争ってあちこちで怒号が聞こえる。「私は地球へ行く」 ステージでただひとり、無人となった客席に囲まれるアマン。人々の叫びが遠ざかっていく。血の香りが新たにアマンを包み込む。  空の彼方より高らかな叫びがステージに下りてきてた。声の主、ムーン・ラット・キッスがどこにいるのかは、全く分からない。「よけいなことに関わっている暇はない。アマンよ。月の先住民族、ムーン・ラット族の女王、そしてセレネイ王国の非常勤顧問である私への反逆罪については、今回は見逃してやる。」 ムーン・ラット・キッスが憎々しげな言葉を投げつけてくる。「いずれお前とは決着をつけよう。いざさらば」 声が一気に遠くなり、そのまま空に吸い込まれて消えた。ムーン・ラット・キッスの声は二度と聞こえなかった。    
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~第九話③~ 決着は地球で

 純白のロングドレスに包まれると、キラーリ公主はまさしく月世界セレネイ王国の象徴である。ドレスを着たキラーリ公主が、自信に満ちた大きな瞳で空を見上げる。  彼女さえ信じていればきっと大丈夫という大きな信頼感を国民に与えてくれる。この信頼感があるからこそ、コンサートで熱唱し国民とハイタッチし、子どもたちとゲームをして遊ぶ彼女の姿が一層親しみやすく魅力あふれる姿に見えるのだ。  キラーリ公主がたくさんの子どもに囲まれ、ひとりひとりとハイタッチしながら、原っぱを進んでいく。  銀河連邦の各惑星で放映されるプロモーション用の立体映像である。  キラーリ公主はベッドの上にうつぶせになり、両手に顎を乗せ、冷たい表情でプロモーション映像を見つめている。  ベッドのそばには、スーツ姿の中年男性が控えている。その隣ではエブリー・スタインが、デザイナーと共に新しいタキシードの製作中である。   「セレネイ王国は銀河連邦の発展に貢献します」 キラーリ公主の呼びかけが流れてプロモーション映像が終わる。  キラーリ公主があくびをかみ殺している。スーツ姿の男性、サプライ宣伝相が恐縮した様子で呼びかける。「いかがでしょう」 「このプロモーション動画で銀河連邦代表理事に選ばれると思う?」 サプライ宣伝相は返事も出来ずにうつむく。「あなたが選ばれると思ってるなら、それでいいけど」 キラーリ公主の言葉は背筋が寒くなるほど冷たかった。「ただサ。一生懸命やったけどダメでしたはやめてね。責任の取り方は色々あると思うけど、私は押しつけはしないから」 サプライ宣伝相は恐縮して立ち去る。エブリー・スタインは、ベッドの上の姉に話しかけた。「アマンからは何と?」 キラーリ公主がベッドの上に起き上がった。「ムーン・ラット・キッスはサライを脅して、何年間かに亘って勝手に彼女から地球の情報を得ていた。サライを脅して、移動望遠鏡を使って勝手に地球観測をしていた。どちらも我々の星では重大犯罪になる。サライがそれを暴露するのを恐れ、口を封じるため勝手に処刑を進めた。たぶんアマンの推理当たってると思う」 キラーリ公主がベッドから離れる。侍女から「ムーン・リバー」と呼ばれる果実酒の入ったグラスを受け取り、口をつけた。「私たちのお陰で贅沢してるのにサ、何も感謝もしないあの年寄りはね、
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~第九話④~ キラーリ公主の企み

 キラーリ公主は空のグラスを侍女に返した。思いっきり深呼吸すると、白く細い両腕が水晶の輝きを見せる。「私、若いからね。威張ってる年寄り、大キライなんだ。だけど分かるでしょう。先住民族を手厚く保護していれば、人道的指導者と銀河連邦で支持を集められるから何とか我慢してたけど……。今なら、あの女も高齢だから、空気のない場所にヨダレを垂らしながらフラフラ出かけ窒息死したと云ったって、銀河連邦の人たちは納得するよね。」 キラーリ公主はそう言うと、二杯目の果実酒をあおった。酒のせいなのか、陽気にスキップを繰り返す。「まだあるじゃん。老衰で死亡したことにも出来る」 キラーリ公主の言葉に、エブリー・スタインが身を乗り出す。「姉上、ではいよいよやるんですか?」「ただひとつ、私にも分からないことがある。短期間で冥王星と金星を滅ぼしたというあの女のパワー。出来ればまずそれを突き止めたい。アマンの希望、前向きに考えておこう」「冥王星と金星を滅亡させたことは聞いています。しかしどうやって……」 キラーリ公主が大きく首を振った。「分かんなーい」 そう言って肩をすくめた。「だってみんな死んじゃったから。女や子どもまでね。教えてくれる人間はひとりもいないワケ」 ムーン・ラット・キッス。月の先住民族、ムーン・ラット族の元女王で最後の生き残り。月世界セレネイ王国で手厚く保護されている女性。  そしてひそかにその生命《いのち》を狙われている女性。  地球に向かった彼女を巡って、どんな事件が起きるのだろうか? 
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