この小説の諸悪の根源、ジャコモが王国兵によって連行されていく。 なんとも不思議な気持ちだった。 リーアが原動力としていた理由が、今ここで消えるのだから。 そもそもジャコモが欲のために自分の娘を王太子妃にしようとしなければ、この悲劇は起こらなかった。 しかしまだ『星の刻印』についての真相は未解決のまま———「お父様、どうか罪を償ってください。」一つの家門を破滅させ、ヒロインを奴隷にした罪は重い。 処刑か、運がよければ流刑。 これから調査や裁判が始まるにしろ、すでに罪は明白で、彼は公爵としての地位を失うだろう。 一度も愛してくれなかったこの世界の私の実父。 それでも血のつながりのある父親を断罪したと思うと、胸が痛まないわけではなかった。 ただ……彼には悪いが、スカルラッティ家はこれで終わるわけにはいかなかった。 再び私はマルツィオに向き直って訴えた。 打ち合わせ通りに。「陛下。私からお願いがございます。」唐突な私の発言に周囲がまた騒ぎ始めた。「なんだ?ロジータ、申してみよ。」玉座に座るマルツィオの表情が険しくなる。 そこにタイミングよく、私の継母であるスカルラッティ公爵夫人とその息子、まだ10代の異母弟が現れた。 二人は私の隣に並びマルツィオに丁寧に頭を下げて挨拶をする。 二人と顔を見合わせ、私は会場中に聞こえるように大声を張り上げた。 奥でルイスが静かにそれを見守っている。「私、ロジータ・スカルラッティは今この場でスカルラッティ公爵家の嫡子としての権利、立場を放棄いたします! その代わり、ここにいる異母弟に公爵位を引き継がせてくださいませ!」実はこれもルイスと話し合い、事前に決めていたこと。「もしも異母弟が公爵位を引き継ぐことができ、スカルラッティ家の血筋を残すことをお許し頂けるのでしたら、今後スカルラッティ家の忠誠はルイス様でもエルミニオ様でもなく、国王陛下となるでしょう!」見上げると、鋭い鷹のような目をするマルツィオと目が合った。 相変わらず表情は読めないが、彼にとってこれが上手い話であるのは間違いなかった。 断る理由がない。 だからこそ事前に、マルツィオにもこの話を通しておいたのである。 つまり彼は今、演技をしているに過ぎなかった。 これが断罪劇で準備しておいた全てだ。「そういうことであれば、許そう
最終更新日 : 2025-11-11 続きを読む