このところ幸せな気がして、すっかり油断していた。 エルミニオから殺される運命を変えることができたと、安心しきっていた。「ルイスが倒れた……!?」また一緒に禁書庫に行こうと約束した前日、ルイスはマルツィオに任された外交で、使節団を迎えていた。 彼は順調に仕事をこなしたのだが、さきほど自身の執務室に戻るなり急に倒れてしまったというのだ。 血相を変えてマルコが私を呼びにきた時、急いでルイスの元へ駆けつけた。「ルイス……!」ベッドに横たわるルイスの顔は青く、酷くうなされていた。 私が来たことも分からないくらい。 部屋にはアメリアもいて、今にも泣き出しそうな瞳をして私を見つめていた。 そっと近づくと、ルイスの右手の刻印が淡く光っていた。 ただし、いつもとは違い、暗く薄暗い色をしていた。「ルイス、しっかりして!」「ロジータ様。今のルイス様は、会話すらできないようです。」アメリアが二、三度首を横に振った。 荒々しいルイスの息遣いが部屋中に響き渡る。 苦しむ彼の姿にぐっと胸が痛む。 ベッドに近づき、私は彼の右手をぎゅっと握った。「マルコ、念のため国王陛下をここへ呼んで。 それと、できれば治癒力を持った神官も呼んでほしいと伝えて。」「…分かりました、ロジータ様!」断定はできないけれど、たぶんこれは禁忌の治癒力によるものだわ。 マルツィオの忠告が本当になってしまったのね。 『治癒力』の使いすぎーーー やはり、リスクが本人に直に現れるということは間違いなかった。 それなのにルイスは昨夜も私の傷を……「ごめんね、ルイス。 私がもっと強く止めていれば……!」彼の手を強く握りしめる。 これは原作にはなかった展開だ。 明らかに、ルイスが私を助けたせいで起きたこと。 私がロジータ・スカルラッティとして死ななかったから起きていることなのだ。 治癒力を使うと淡く光っていた彼の刻印が、燻った色になっているのも気になる。 これも治癒力が関係しているのかしら? その時、私の心臓にズキっと痛みが走った。 こんな時に、自分の傷なんて気にしている場合ではないわ。「ロジータ様!?」「私は大丈夫よ、アメリア。 それより、ルイスが心配だわ。」また禁書庫に行って詳しく調べるつもりだったのに、何も分からないうちにこうなってしまうなんて! あれ
Terakhir Diperbarui : 2025-10-22 Baca selengkapnya