Semua Bab 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜: Bab 51 - Bab 60

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第二章:幸せの対価

このところ幸せな気がして、すっかり油断していた。 エルミニオから殺される運命を変えることができたと、安心しきっていた。「ルイスが倒れた……!?」また一緒に禁書庫に行こうと約束した前日、ルイスはマルツィオに任された外交で、使節団を迎えていた。 彼は順調に仕事をこなしたのだが、さきほど自身の執務室に戻るなり急に倒れてしまったというのだ。 血相を変えてマルコが私を呼びにきた時、急いでルイスの元へ駆けつけた。「ルイス……!」ベッドに横たわるルイスの顔は青く、酷くうなされていた。 私が来たことも分からないくらい。 部屋にはアメリアもいて、今にも泣き出しそうな瞳をして私を見つめていた。 そっと近づくと、ルイスの右手の刻印が淡く光っていた。 ただし、いつもとは違い、暗く薄暗い色をしていた。「ルイス、しっかりして!」「ロジータ様。今のルイス様は、会話すらできないようです。」アメリアが二、三度首を横に振った。 荒々しいルイスの息遣いが部屋中に響き渡る。 苦しむ彼の姿にぐっと胸が痛む。 ベッドに近づき、私は彼の右手をぎゅっと握った。「マルコ、念のため国王陛下をここへ呼んで。 それと、できれば治癒力を持った神官も呼んでほしいと伝えて。」「…分かりました、ロジータ様!」断定はできないけれど、たぶんこれは禁忌の治癒力によるものだわ。 マルツィオの忠告が本当になってしまったのね。 『治癒力』の使いすぎーーー やはり、リスクが本人に直に現れるということは間違いなかった。  それなのにルイスは昨夜も私の傷を……「ごめんね、ルイス。 私がもっと強く止めていれば……!」彼の手を強く握りしめる。 これは原作にはなかった展開だ。 明らかに、ルイスが私を助けたせいで起きたこと。 私がロジータ・スカルラッティとして死ななかったから起きていることなのだ。 治癒力を使うと淡く光っていた彼の刻印が、燻った色になっているのも気になる。 これも治癒力が関係しているのかしら? その時、私の心臓にズキっと痛みが走った。 こんな時に、自分の傷なんて気にしている場合ではないわ。「ロジータ様!?」「私は大丈夫よ、アメリア。 それより、ルイスが心配だわ。」また禁書庫に行って詳しく調べるつもりだったのに、何も分からないうちにこうなってしまうなんて! あれ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-22
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第二章:幸せの対価

ルイスと私の刻印は明らかに色も形も違う。今はエルミニオとも違う私の刻印。思えばルイスが私を治療する時、私の刻印も反応していた。もしかして、これは……?ーーールイスの元へと帰ると、すでにマルツィオと数名の神官が到着していた。しかし、アメリアとマルコが同時に悲しそうに首を振る。「手は尽くしましたが、ルイス殿下には治癒力が効かないようです。なぜこんなことになったのか原因は分かりませんが、残念ですが……」「そうか。手を尽くしたのだから、気にする必要はない。」神官たちが申し訳なさそうにマルツィオに謝罪すると、彼は答えを分かっていたかのように返って慰めの言葉をかけた。そうなのね。ルイスには『治癒力』自体が効かないんだわ。マルツィオは暗い表情で囁いた。「もっと私が強めに警告していれば。」「いえ、陛下。まだ手があります。」「それは……?」驚いたように目を見開いたマルツィオに、私は柔かく微笑した。なぜ、これだけ重要なことをマルツィオが黙っていたのかは今だに分からない。ただ私は、これまで何度もルイスに救われている。何が真実であれ、今度は私がルイスを救う番だ。「今から私がルイスを治療します。ですが、治療方法を見られたくないので、全員出てもらうと助かります。」事情を説明し、私はマルツィオを含めた全ての人間を部屋から追い出してカーテンを閉めた。「ルイス。今度は私があなたを助けるわ。」包帯を解くと私の左胸の刻印が見えた。上部は剣で突き刺された傷跡が残っている。エルミニオの刻印が変化して以来、ずっと悲劇の象徴のようにしか感じてこなかったけれど。私の刻印は、うっすらと赤みを帯びた星形だ。さっき見たのは間違いではなかった。「やはり光っているわね。」刻印は、薄い紅色をした薔
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-23
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第二章:幸せの対価

それに、原作の強制力が働いていたはずなのに。 きっとルイスは元から優しい性格だったのだろう。 そう思うと胸の奥がじんわりと温かくなる。「ダンテ。お前も、もうロジータが変わったことは分かっているだろう? よければ、兄さんに伝えてくれないか。 俺とロジータには本当に反逆心なんてないと。 だからこれ以上、ロジータに敵意を向けずにいてほしいと。」切実に願うように、ルイスがダンテの肩を軽く叩いた。「ルイス殿下。 確かにロジータ様が変わったのは認めます。 ですが、エルミニオの考えがそう簡単に変わらないのはご存知のはず。 それにリーアも……」一瞬何かを言いたげにダンテは私に目線を送った。「ダンテ様、お尋ねします。 その……。 リーアが私に対して、どういう感情を抱いているか分かりますか?」ずっと疑問に思っていたことを私はダンテに尋ねる。 あの小広間で、死にかけている私を見てリーアは密かに微笑したのだ。 清廉潔白のはずの彼女。 原作にはなかった行動。 それともあれはロジータ側からしか見れなかった、ヒロインの本質だったのだろうか?「今、宮廷に流れているという悪質な噂。 それを流しているのがリーアだというのなら、なおさら放っておくわけにはいきません。 彼女に嫉妬して虐げてきた身としては、リーアがなぜそんなことをしているのか私は知らなければなりません。」彼女は原作のヒロインだが、ロジータにとっては長年の因縁の相手でもある。 もちろんエルミニオの方も気になるが、こちらも解決しないと穏やかな契約結婚を送れない気がする。 少しダンテは困ったように金色の前髪をかき上げた。「さあ。私もリーアの全てを把握しているわけではありませんので。 ですが……おそらくリーアはあなたを恨んでいるのでしょう。 それこそ、今言った通りです。 少なくとも私は、あなたが彼女を虐げたからだと思っています。」「そう。私は彼女に恨まれているのですね。」気落ちする私を、隣のルイスが気遣うように自分の方へと寄せた。「それに、どうやらあなたの父親に関する噂も一緒に広まっているようです。」「どのような?」「リーア・ジェルミは元は奴隷などではなく、どこかの高位貴族の令嬢だったのではないかと。 その家門を破滅に追い込み、彼女を奴隷にしたのが、スカルラッティ公爵だったので
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-24
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第二章:幸せの対価

今夜、ヴィスコンティ王宮では伝統の国事式である『晩餐会』が開催されていた。 この日は国王が、常日頃の感謝を込めて貴族や宮廷人たちに食事や酒を振る舞う日である。 “輝きの大広間”と呼ばれる会場には、星形の装飾が輝き、星座が描かれた高い天井がある。 中央から吊り下げられた巨大なシャンデリアが、招かれた客たちの頭上で淡い光を放っていた。 優雅な音楽に、設けられた各テーブルには宮廷料理人たちが腕によりをかけて作った豪華な食事やワインなどが並んでいた。「リーア、今夜の君も輝いているな。」「エルミニオ様が下さった、この素敵なドレスのおかげですわ。」今夜も中央の席で目立っていたのはこの二人だ。 相変わらずエルミニオは人目も気にせずリーアをべた褒めしている。 確かに今夜もリーアはパープルの豪華なドレス姿で、エルミニオの隣で食事をしていた。「どんなドレスも、君の美しさには敵わないさ。」「エルミニオ様。嬉しいです。」本来ならエルミニオは王族席で私やルイスと一緒に並んで食事をしているはずだが、マルツィオがリーアの同席を嫌がったので彼は勝手に席を離れてしまった。 誰に許可されたわけでもないのに、一つのテーブル席を占領し、さっきからリーアとベタベタしているという。 王太子と場違いな使用人という構図に、人々も複雑な表情を浮かべる。 けれど今宮廷ではよくない噂が流れているから、貴族たちの視線は私たちに対してもどことなく厳しかった。「自分勝手な奴め。」マルツィオが怒るのも無理はない。 こうして冷静に見ていると、エルミニオの行動がどれだけ幼稚かが分かってくる。 ロジータの時はこれがかっこいいと思っていたのよね。 馬鹿みたいに。 それにしてもエルミニオは、何でさっきから私を見てくるのかしら。 この間の図書室の出来事も不愉快だったのに。「ロジータ。食事はどうだ?」今夜もこの会場で誰よりも輝くルイスが、私にそう尋ねてきた。 後ろにかき上げられた栗色の髪、シャンデリアの光で輝く琥珀色の瞳。 繊細な刺繍入りの新緑色のダブレット姿が素敵だ。 私は食事を楽しみながら微笑み返した。「すごく美味しいわ。」「良かった。緊張はしてないか?」「大丈夫よ。」ルイスの優しい気遣いにいつも心が温かくなる。 こんな時に思うのは、結婚したのがルイスで本当に良かったなとい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-25
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第二章:ルイスが心に思う人

淡い水色の見慣れない服の裾が揺れた。 どうやらワンピースというらしい。「こういうドレスも素敵だね。」その人は真っ黒な髪をかき上げて、ごく自然と俺に寄り添ってくる。 俺もまんざらでもなく彼女に近づいた。 一体誰だ? 彼女がめくる書物には『記念に残るウェディング・ドレス特集』という文字が書かれていた。 見たこともない町の外観。 ガラス窓の向こう側を歩く大勢の人々。 奇妙な速さで動く乗り物。 立ち並ぶ巨大な建物。 ここは一体どこだ?「どうしたの?〇〇〇。」ふわっと彼女が微笑むと、なぜだか俺は泣きたくなった。 懐かしくて、ずっと会いたい人だったのに。 それなのになぜ俺は、彼女の顔も名前も思い出せないのだろう? ーーー 「待っ……」手を伸ばせば、そこは薄暗い自分の寝室だった。 今のは……夢? 両サイドのステンドグラスから淡い月の光が差し込んでいた。 寝る前につけた蝋燭の炎は消え、室内には薔薇の匂いが漂っている。 ふと隣を見ると、ベッドでロジータが気持ちよさそうに眠っていた。「ロジータ……。」緩やかにカールした金髪。白い肌、見慣れた横顔。 健やかに眠っている彼女の存在になぜか安心した。 俺はロジータと契約結婚をし、彼女と生活を共にしている。 とにかくロジータといると毎日が驚きの連続で…… クスッと笑い、俺はいい匂いのする彼女を無意識にそっと抱きしめた。 ロジータは何て温かいのだろう。 幼い頃に王妃である母を亡くした俺は、それ以降人の温かさなど知らなかったのに。「うーん……」「!!」ロジータが唸り、ゴロンとこちら側に寝返った。 とっさに抱きしめた腕を上に持ち上げて、彼女に気づかれないようにやり過ごした。 一体俺は何をやっているんだ! だが、どうやら起きたわけではないらしい。 こちらを向いたロジータの寝顔は今日もきれいだった。 彼女を見ていると今夜も胸が激しく高鳴る。「はあ、駄目だ。 隣にロジータがいると思うと眠れない。」ロジータは知らないだろう。 実は毎晩こうなのだ。 俺はロジータが隣にいると思うとドキドキして眠れずに、ついベッドを抜け出してソファで夜を明かしていた。 それにしても、さっき夢に出てきたあの女性は誰だったのだろうか? 顔も思い出せないのに、なぜ懐かしいだなんて。 ふとロジータ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-26
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第二章:ルイスが心に思う人

ロジータに関して驚くことはまだある。 後から聞いた話だと、俺は先日、原因不明の昏睡状態に陥ったという。 確かにあの日は久しぶりに父に仕事を任され、外交で使節団を迎えるのに忙しかったが…… 俺にはその時の記憶がない。 ただロジータが、アメリアたちに父と治癒力を持った神官を連れてくるようにと頼んだらしい。 だが俺にはなぜか神官たちの治癒力は効かなかった。 俺が『禁忌の治癒力』を使ったのはロジータ、父、アメリア、マルコしか知らない事実だ。 だから神官たちにもなぜ俺が倒れたのか、理由が分からなかったそうだ。 あくまで父は事実を隠し通したらしい。 あの時たぶん俺は、生死の境を彷徨いながらまたいつもの夢を見ていた。「お願い、死なないで。 私をひとりにしないで。」そこにいたのは例の黒髪の女性だった。 彼女は泣き腫らした目で俺を見つめていた。「泣かないで。」そっと彼女の柔らかい頬に触れた。 ……泣かせたくないな。 名前も分からないのに、俺は確かにその人を愛していた。 だが彼女はリーアじゃない。 じゃあ一体誰なんだ? ずっと胸が苦しくて、底の見えない暗闇に飲まれていく感じがした。「ルイス、ルイス……!しっかりして!」だけどそこにロジータの力強い声が響いた。 さっきまで苦しかった痛みが泡のように消えていく。 俺の刻印が淡く光り、ふと見上げるとロジータの胸元もまた服の上からかすかに光り輝いていた。 いつも俺がするみたいに、ロジータが俺の両手を握りしめている。 ロジータから不思議と温かい力が……「……う……、ロジータ?」「ルイス……?」黒髪のあの人みたいに、ロジータは目を真っ赤にして泣いていた。 だけどこっちの方がより真実味があって。 申し訳ないけど、何だかロジータが可愛く見えて仕方なかった。 俺は手を伸ばし、ふとロジータの前髪を撫でた。「どうしたんだ? そんなに深刻そうな顔をして。」「ルイス……!良かったわ! 本当に良かった……!」彼女は思い切り俺に抱きついてきた。 やはりロジータはすごく柔らかい。 それに薔薇のようないい匂いがする。 気づけば俺は泣いているロジータを抱きしめ返していた。 いつからだったのだろう。 こうやってロジータを腕に抱くと、幸福な気持ちを感じるようになったのは。「ルイス、もしかする
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-27
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第二章:ルイスが心に思う人

それにロジータはとある重要な話を打ち明けてくれた。原作で知ったというこの世界の真実を。「ルイス。よく聞いて。私のお父様はリーア・ジェルミの家門を破滅させて、彼女を奴隷に落とした張本人よ。」「何だって?それは本当か!?」衝撃の告白だった。というのも、ずっとリーアの出生についての調査が滞っていたからだ。以前の俺は少しでも彼女の役に立ちたかった。だがかつてリーアくらいの子供がいて、破滅に追い込まれた家門をなかなか絞ることができなかった。過去にヴィスコンティでは貴族間でいくつもの争いが起きており、この何十年かの間にたくさんの家門が消えていた。争いに巻き込まれたり、結果的に国家への反逆だとみなされた家門は容赦なく潰された。さらにそういった家門の記録が抹消されてしまったことが調査をさらに難航させていたのだ。「この件で、私はあなたに責められてもおかしくないと思っているわ。それでね、ルイス。あなたには悪いのだけれど、私、いっそのことお父様の悪事を暴こうと思っているの。」ロジータの声にはいつもの元気がなかった。しかし、それもそうか。この世界の父親であるジャコモの悪事を俺に打ち明けているのだから。「スカルラッティ公爵の悪事を?」「ええ。今宮廷では私たちのよくない噂が流れているというでしょう?それに私のお父様についても悪い噂も。お父様がリーアの家門を破滅させ、彼女を奴隷にしたのは真実なの。原作ではやがてお父様の罪は次々と暴かれていくわ。そうなったら私だけでなく、私の夫になったルイスまで悪く言われてしまうわ。それならいっそ私の手でお父様の悪事を暴いてしまおうと思ったの。」どこか辛そうにロジータは唇を噛み締める。「ロジータ。お前は本当にそれでいいのか?父親のことを悪く言われるのだぞ。」心配してロジータに近づくと、碧い瞳が俺をじっと見つめた。「私のことは構わないわ。けれどもしそうなったら、あなたも悪く言われるかもしれない。それにスカルラッティ家の権力に執着している陛下が少し心配だわ。けれどこれは今の私たちの状況を変えるのに必要なことだと思うの。リーアにひどいことをしたお父様の悪事を隠したまま、平和になんて暮らせないわ。」「ロジータ。お前ってやつは……。」「ごめんね。ルイス。これは一種の作戦でもあるけれど、同時にそうする
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-28
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第二章:エルミニオは不愉快な感情を知る

宮殿から馬車を走らせると見えてくるのは、リーアが寝泊まりしている森の離れだ。 名目上は王族専用の狩猟小屋として扱われているが、秋から冬にかけては滅多に使われなくなる。 見た目は丸太小屋だが、中は案外広々としていて大きな暖炉もある。 少しでもリーアが自分のものだと感じたくて、数年前から彼女を囲い込んでいる場所だ。「エルミニオ様。」パチパチと燃える暖炉の前でリーアが熱っぽい瞳で俺を見つめる。 長くて美しい銀髪が俺の手の中でさらっと揺れた。「リーア。今夜も君はきれいだ。」このところ不愉快なことばかりが続いて俺は苛立っていた。 だからリーアを抱けばこの感情も消え去るのではないかと考え、今夜もこの場所へ足を運んだ。 彼女も俺がここへ連日通うのを分かっていたようで、羽織の下は艶っぽいシュミーズのようなものを着ていた。 胸の隙間から白い肌が見える彼女を引き寄せて、キスをした。「ん……。」柔らかい唇。 リーアが気持ちよさそうに小さく震える。 ぐっと彼女の細い腰を引き寄せる。 いつもならこうすれば嫌な出来事も忘れることができた。 それなのになぜだ?「エルミニオ様?どうしたんですか?」キスを止めた俺をリーアは不思議そうに見つめた。 このままいつもみたいに押し倒して彼女を隅々まで味わい尽くしたいのに。 俺の心はなぜか目の前のリーアに集中できずにいた。 目を閉じるとあの金髪が浮かんでくる。 ロジータのあの挑発的な碧い瞳が。 なぜあんな女が……。 だが、あの夜からだ。 俺は思わずリーアを強引に引き寄せて胸元に顔を埋めた。 集中しろ。俺が愛しているのはこの女だ。 俺と同じ刻印を持つ、純粋なこの女だ。 それなのに頭にちらつくのはあの舞踏会の日、テラスでルイスと踊っていたロジータの姿。 まるで冬の精霊のようだった。 いや、だからさっきから何を考えている! ロジータとルイスが俺を陥れようと企んでいるのは分かっている。 いや、ルイスがスカルラッティ家の権力を手にするためにロジータを丸め込んだ可能性も。 だがあの二人は本当に結婚してしまった。 結婚式ではルイスに騙され、向かった会場はもぬけの殻だった。 せっかくダンテに頼んだ妨害工作も何の意味もなかった。 あの二人は俺を侮辱し続けている。 本当に許せない! 父上の王命でなければ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-29
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第二章:エルミニオは不愉快な感情を知る

それに二人が結婚式を挙げた直後から、貴族たちの動きが慌ただしくなっている。ユリには中央貴族たちを中心に、ダンテには地方の領主たちに不審な動きがないかを探ってもらっている。スカルラッティ家の後ろ盾を失った今、四方八方に気を配っておかなければならない。いつ弱点を狙われ、王太子の座を奪われてしまうか分からないからだ。「やはり第二王子派の動きが活発になっているようですね。ここぞとばかりに、ルイス様を王太子の座に押し上げようと狙っているようです。」ユリが調査報告をしに執務室を訪れた。その顔はどこか物憂げだ。「やはりそうか。今後も注意深く見張っていてくれ。それで、ルイスやロジータに何か動きは?」「いえ、今のところ特には。」「変だな。そろそろルイスが本格的に何かしてきてもおかしくないのに。」腹黒い俺の弟、ルイス。これまで俺の後ろで従順なフリをしていたが、ついに本性を表した。あいつは俺の婚約者であるロジータを奪ったのだ!スカルラッティ家の後ろ盾を得るために!だが……予想に反してルイスが表立って何かを仕掛けてくるということはなかった。「まさか本当に恋愛結婚だとでも言うのか……?は!笑わせるな!」俺は思わず、机の上にあった未記入の羊皮紙をグシャリと握りつぶした。そんなはずない。心臓を突き刺されたあの瞬間でさえ、ロジータは俺に愛を乞うていたじゃないか……!「エルミニオ様。今宮廷では、二人のラブロマンスが囁かれています。“王太子”に裏切られたロジータ嬢、ルイス殿下によって真実の愛を知る。または、ルイス第二王子とロジータ第二王子妃は初夜の日ずいぶんと激しく愛し合った……」ドン!と俺は机を激しく叩いた。「そんな話は聞きたくない!」俺が不機嫌になるとユリは
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-30
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第二章:エルミニオは不愉快な感情を知る

俺は舌打ちをし、手紙を暖炉の中に放り投げた。 これだけ愛の言葉を送っておきながら、ロジータはもう俺を愛していないという。「俺にこんな手紙を送っておきながら……! あっさりとルイスに靡くなんて!」苛立ちながら俺は全ての手紙を暖炉の中に次々と投げ入れた。 燃やし尽くしたかった。 そうだ、これでいい。 ロジータに関することを消してしまえばいい。 だがふと、俺は最後に残った手紙を燃やすのをためらってしまう。《エルミニオ様———私は一生あなたを愛し続けます。 私が王太子妃になったらあなたを懸命に支えていきます。》そこには、かつて熱心に俺を愛してくれていたロジータの気持ちが込められていた。 変わってしまったのは俺か、ロジータか? 手紙を眺めていると、脳裏に幼い頃の二人の姿が蘇ってきた。 あの頃の俺とロジータはお互いに心から信頼し合っていたな。 将来結婚するのを微塵にも疑わなかった。 一体何がここまで二人を変えたんだ? 何がこれほど俺を不愉快な気持ちにさせるのか。 いや……待てよ。 道から外れたのがこの不愉快さの原因なら。 一度原点に帰るべきじゃないか?「そうだ……。 ロジータは王太子妃になるのが決まっていた。 ずっと決まっていたことじゃないか。 例え俺の運命の相手が、『星の刻印』の相手がリーアだとしても。 いくら俺がリーアを愛していても。 予定通りに、ロジータは王太子妃になるべきじゃないのか?」そうすれば全て元通りじゃないか。 ルイスに奪われる必要もないし、スカルラッティ家の権力も俺の手の中に戻ってくる。 俺とロジータの関係も元通りだ。 考えてみれば、なぜ争う必要があったんだ? 俺の隙をついてロジータを奪ったルイスが悪いんじゃないのか?「そうだ。ルイスが悪い。 あいつが俺のものに手をつけたから不愉快なんだ。 それなら、ルイスからロジータを取り戻してやる。」最後の手紙を俺は再び机の引き出しにしまった。 暖炉の方を向き、深く椅子に腰掛けた。 俺の人生は、王太子エルミニオとして完璧でなければいけない。 完璧な人生のためにはやはりロジータが必要だ。 そのためにこれは当然のことだ。「リーア。君は変わらず俺の愛する人であり、愛人だ。 だからロジータを王太子妃にすることを…… 許してくれるよな?」燃える暖炉
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-31
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