All Chapters of 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜: Chapter 51 - Chapter 53

53 Chapters

第二章:幸せの対価

このところ幸せな気がして、すっかり油断していた。エルミニオから殺される運命を変えることができたと、安心しきっていた。「ルイスが倒れた……!?」また一緒に禁書庫に行こうと約束した前日、ルイスはマルツィオに任された外交で、使節団を迎えていた。彼は順調に仕事をこなしたのだが、さきほど自身の執務室に戻るなり急に倒れてしまったというのだ。血相を変えてマルコが私を呼びにきた時、急いでルイスの元へ駆けつけた。「ルイス……!」ベッドに横たわるルイスの顔は青く、酷くうなされていた。私が来たことも分からないくらい。部屋にはアメリアもいて、今にも泣き出しそうな瞳をして私を見つめていた。そっと近づくと、ルイスの右手の刻印が淡く光っていた。ただし、いつもとは違い、暗く薄暗い色をしていた。「ルイス、しっかりして!」「ロジータ様。今のルイス様は、会話すらできないようです。」アメリアが二、三度首を横に振った。荒々しいルイスの息遣いが部屋中に響き渡る。苦しむ彼の姿にぐっと胸が痛む。ベッドに近づき、私は彼の右手をぎゅっと握った。「マルコ、念のため国王陛下をここへ呼んで。それと、できれば治癒力を持った神官も呼んでほしいと伝えて。」「…分かりました、ロジータ様!」断定はできないけれど、たぶんこれは禁忌の治癒力によるものだわ。マルツィオの忠告が本当になってしまったのね。『治癒力』の使いすぎーーーやはり、リスクが本人に直に現れるということは間違いなかった。 それなのにルイスは昨夜も私の傷を……「ごめんね、ルイス。私がもっと強く止めていれば……!」彼の手を強く握りしめる。これは原作にはなかった展開だ。明らかに、ルイスが私を助けたせいで起きたこと。私がロジータ・スカルラッ
last updateLast Updated : 2025-10-22
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第二章:幸せの対価

ルイスと私の刻印は明らかに色も形も違う。今はエルミニオとも違う私の刻印。思えばルイスが私を治療する時、私の刻印も反応していた。もしかして、これは……?ーーールイスの元へと帰ると、すでにマルツィオと数名の神官が到着していた。しかし、アメリアとマルコが同時に悲しそうに首を振る。「手は尽くしましたが、ルイス殿下には治癒力が効かないようです。なぜこんなことになったのか原因は分かりませんが、残念ですが……」「そうか。手を尽くしたのだから、気にする必要はない。」神官たちが申し訳なさそうにマルツィオに謝罪すると、彼は答えを分かっていたかのように返って慰めの言葉をかけた。そうなのね。ルイスには『治癒力』自体が効かないんだわ。マルツィオは暗い表情で囁いた。「もっと私が強めに警告していれば。」「いえ、陛下。まだ手があります。」「それは……?」驚いたように目を見開いたマルツィオに、私は柔かく微笑した。なぜ、これだけ重要なことをマルツィオが黙っていたのかは今だに分からない。ただ私は、これまで何度もルイスに救われている。何が真実であれ、今度は私がルイスを救う番だ。「今から私がルイスを治療します。ですが、治療方法を見られたくないので、全員出てもらうと助かります。」事情を説明し、私はマルツィオを含めた全ての人間を部屋から追い出してカーテンを閉めた。「ルイス。今度は私があなたを助けるわ。」包帯を解くと私の左胸の刻印が見えた。上部は剣で突き刺された傷跡が残っている。エルミニオの刻印が変化して以来、ずっと悲劇の象徴のようにしか感じてこなかったけれど。私の刻印は、うっすらと赤みを帯びた星形だ。さっき見たのは間違いではなかった。「やはり光っているわね。」刻印は、薄い紅色をした薔
last updateLast Updated : 2025-10-23
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第二章:幸せの対価

あの時はまだ、原作の強制力が働いていたはずなのに。きっとルイスは元から優しい性格だったのだろう。そう思うと胸の奥がじんわりと温かくなる。「ダンテ。お前も、もうロジータが変わったことは分かっているだろう?よければ、兄さんに伝えてくれないか。俺とロジータには本当に反逆心なんてないと。だからこれ以上、ロジータに敵意を向けずにいてほしいと。」切実に願うように、ルイスがダンテの肩を軽く叩いた。「ルイス殿下。確かにロジータ様が変わったのは認めます。ですが、エルミニオの考えがそう簡単に変わらないのはご存知のはず。それにリーアも……」一瞬何かを言いたげにダンテは私に目線を送った。「ダンテ様、お尋ねします。その……。リーアが私に対して、どういう感情を抱いているか分かりますか?」ずっと疑問に思っていたことを私はダンテに尋ねる。あの小広間で、死にかけている私を見てリーアは密かに微笑したのだ。清廉潔白のはずの彼女。原作にはなかった行動。それともあれはロジータ側からしか見れなかった、ヒロインの本質だったのだろうか?「今、宮廷に流れているという悪質な噂。それを流しているのがリーアだというのなら、なおさら放っておくわけにはいきません。彼女に嫉妬して虐げてきた身としては、リーアがなぜそんなことをしているのか私は知らなければなりません。」彼女は原作のヒロインだが、ロジータにとっては長年の因縁の相手でもある。もちろんエルミニオの方も気になるが、こちらも解決しないと穏やかな契約結婚を送れない気がする。少しダンテは困ったように金色の前髪をかき上げた。「さあ。私もリーアの全てを把握しているわけではありませんので。ですが……おそらくリーアはあなたを恨んでいるのでしょう。それこそ、今言った通りです。少なくとも私は、あなたが彼女を虐げた
last updateLast Updated : 2025-10-24
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