悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜 のすべてのチャプター: チャプター 81 - チャプター 90

98 チャプター

第二章:エルミニオの奇妙な執着

突然口を塞がれて、白発光石から遠い奥の方に引きずり込まれた。 エルミニオは銀灰色の瞳を光らせて、冷たく私を見下ろしていた。 助けを呼ぼうにも岩場に体を押しつけられて、身動きが取れない。 まだルイスは砂浜にいて、この異変には気づいていないようだった。「王太子殿下!なぜこのようなことをなさるのですか?」「なぜ?それはお前と二人きりで話す機会がないから、仕方なくだ。」さも当たり前のようにエルミニオは言った。 艶のない黒髪に合わせたようなチェニック、ホーズもブーツとも共に黒い。 これだけ暗い色だと、ここに人がいるとは誰も思わないだろう。 とにかく何と言われようが不快感が募る。 もう感情を隠す気などない。 不敬罪に当たろうが、明らかに異常行動をするエルミニオが悪いのだから。「殿下、私に構っている場合ではないのでは? リーアをお探しになっているのですよね?」暗がりのなかでも月の逆光を浴びているエルミニオ。その表情が鮮明に映し出される。「ああ、リーアは。」「リーアは?」「今はリーアのことはどうだっていいだろう? 俺は今、お前と話しているんだ、ロジータ。」ぐっとエルミニオが岩場を挟んで私に体を寄せてくる。 ふわっとルイスとは違うきつい香水の匂いが香る。「やめてください!大声でルイスを呼びますから!ルイーーーーーーんっ!」浜辺に向かいそう叫んだタイミングで、エルミニオにまた口を塞がれてしまう。「ロジータ!ただ二人で話がしたいと言っているだけだ! あの日以来、なぜお前は俺の話を無視するんだ! なぜ俺を見ない? ———俺を見ろ、ロジータ!」「……っ!」エルミニオはさらにもう片方の手で、私の顎を自分の方へと強引に引き寄せた。 まるで獣のような瞳に捉われる。 ふとあの日の悪夢を走馬灯のように思い出す。 刻印ごと心臓を貫き私をゴミのような瞳で見つめて、本気で死んでくれといっていた冷酷さを。 ———今まで強気でいたけれど、あの時の記憶が蘇ってきて恐怖に心が支配される。 怖い! 私……あれをすっかり忘れたつもりでいたけれど全然忘れていなかったんだわ! とたんに体がガタガタと震えだした。 自分でも気づかないうちにトラウマになっていたのだ。「ロジータ。なぜ震えている? そうか、まだあの時のことを拗ねているのか。 心配するな、
last update最終更新日 : 2025-11-21
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第二章:エルミニオの奇妙な執着

もしかしてこれ、私が原作を変えたことでエルミニオの運命が狂ってきているのでは?「喜べ、ロジータ。お前を約束通り王太子妃にしてやると言っているんだ。 嬉しいだろう? あんなにお前が望んでいたことじゃないか。 ルイスと離婚して、また俺と再婚したいと言えば、父上もきっと……」狂言を吐きながら、エルミニオは私の腰に手を回して引き寄せる。 人の気持ちなどお構いなしに、乱暴に。「嫌です!私に触らないで!離してください!」「ははっ、抵抗すればするほど俺を煽ると分からないのか? ロジータ……以前にも感じたが、お前はこんなにも華奢だったんだな。 それに薔薇の花のような香りまでする。」「こんな馬鹿なことに付き合っている暇はありません! それに、リーアをお探しにならないのですか!? 彼女を愛していらっしゃるのでしょう!?」何とかエルミニオの頭を冷やそうとするが、ほとんど効果がなかった。 あれほどリーアを愛していたくせに、この手のひら返しは何なのか。「ロジータ、俺たちまた以前のような関係に戻ろう。 そうすればうまくいく。そうすれば……」まるで呪文のような言葉。 鋭い眼差しをして、エルミニオは再び顔を近づけてきた。 本気で嫌だった。 私の唇も、体に触っていいのもルイスだけ!「やめて———私はルイスの妻です!」その瞬間、私の胸元がカッと熱くなり光を放った。 強烈な眩さだったのだろう。 思い切り顔を顰め、エルミニオがようやく私から離れてくれた。「ロジータ、お前それ……!くっ!」ドレスの上からでも分かるほど、私の胸の刻印が輝いていた。 まるでエルミニオから私を守っているかのように。 しかも熱い……! 何かがいつもとは違う。 それに、この淡く優しい光は…… だがふと見ると、なぜかエルミニオの胸元までもが微かに輝いていた。 なぜ彼の刻印が? エルミニオは慌てたように、チェニックの襟から自身の胸元を覗き込んだ。「なぜ俺の刻印が……! これは一体、どういうことだ?」「——————ロジータ!!」ふわっと、私の体はエルミニオのそばから引き離された。 腕を引き寄せられ、背後からぎゅっと抱きしめられた。 この甘い匂いも、身に覚えのある体つきも。 エルミニオとは全く違う、強引ながらも優しい手つきも。 本当に大切にされてると感じるのは
last update最終更新日 : 2025-11-22
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第二章:エルミニオの奇妙な執着

これは《神》の声なのだろうか———?心臓を刺され、死にかけていた私に、運命から逃れられないと語りかけた声。ここは小説の世界。筋書きから外れるのを嫌がることからしても、原作者の可能性もあり得る。嵐じみた風が吹く中、砂浜にいたはずの使用人たちが根こそぎ消えていた。「リーア……俺の愛おしい、運命の人。」ふらっと、エルミニオがリーアに惹きつけられるように歩き始めた。さっきの傲慢な態度とは全く違う。目と表情が虚《うつろ》で、まるで操られているかのよう。「そうです、エルミニオ様。私があなたが一番に愛する運命の相手です。間違えたら駄目ですよ。」まるで天使のようにリーアは微笑して、エルミニオを両手を広げて迎え入れる。だが言っていることは物騒だ。「驚くのはまだ早いですよ?ロジータ様、ふふっ。一体あなたが何をしたのか知りませんが、人の男を奪うのは感心しませんね。エルミニオ様も、ルイス様も返してください。」空は荒れ、まだ強い風が吹いている。明らかにリーアは言っていることも行動も異常だ。私は激しく乱れた髪をよけ、叫ぶように尋ねた。「リーアあなた、一体何を言っているの!?もしかしてあなたも転生者……!?」さっきの言動は、まさにそうとしか考えられない。しかもただの転生者じゃない。この急激な天候変化や、エルミニオを操っている様子からして、もしかするとリーア自身が原作者の可能性も。小説家が、自分の書いた物語に転生。実はこれも『あるある』だ。そして、原作者なら《神》に匹敵する。もしかして私たちはずっと、神に近い存在に抗ってきたの?「リーア……俺の希望の光。俺の生きる、意味。」 私を抱きしめていたはずのルイスが、エルミニオと同じように虚な顔でリーアの方へと向かい始めた。
last update最終更新日 : 2025-11-23
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第二章:エルミニオの奇妙な執着

二人の顔を見た瞬間ほっとした。 こんな時に味方がいると本当に心強い。 しかも不思議なことにさっきまで荒れていた天候がぴたりと止み、浜辺には使用人たちの姿も戻っていた。 これは……? なぜかリーアは、マルコとアメリアの前でいつもみたいに謙虚に振る舞っている。「リーア様?ご無事だったんですね!」純粋にマルコとアメリアがリーアの姿を見て喜べば、リーアもそれに合わせて頷く。 いつもみたいにドレスの裾を握りしめて、まるで小動物みたいに可愛く。 どうやら彼らに正体は知られたくないみたいだ。「あ、ありがとうございます。 皆さん。私のせいでお騒がせしました。」「宮殿に戻ろう、リーア。」いつものように、リーアにだけ優しいエルミニオが、彼女を抱き上げて砂浜を歩き始めた。 まるで何事もなかったかのように。「何ですか、あれは。 必死にリーア様を探していたのに、俺たちには感謝の言葉すらないなんて。」マルコがエルミニオの態度に憤る。 けれど、これ以上危害を加えられなかっただけでも感謝しないと。 このままリーアたちが大人しく去ることを、私は心の中で祈っていた。「……!」だが、一瞬振り返ったエルミニオと、バチッと目が合ってしまう。 物憂げな表情。 おかしい、今は明らかに操られているはずなのに。 さらにリーアまでもが、抱かれた腕の隙間から鋭く私を睨みつけてきた。 ゾッとするほどの顔で。 可憐なヒロイン、リーア。 本当に彼女は転生者で、原作者なのだろうか? もしそうなら私たちの運命は? 悲劇的運命を乗り越えて、生きたいと願う私とルイスに勝ち目などあるのだろうか? 新たな波乱が幕を開けた瞬間だった。 --- 「もしかすると、リーアも私と同じ転生者かもしれない。 でもね、まだそれなら対抗できたの。 最悪なのは、リーアがこの小説を書いた『原作者』かもしれないということよ。 まるで神のような不思議な男性の声と、リーアの異常な行動は同時期に起きたわ。 とても無関係とは思えなかった。 リーアが声の主と関係があるのか、彼女自身が男性の『声』なのか…… もしもリーアが転生者で、さらに原作者だった場合、この世界への干渉など容易いはず。 いいえ、彼女の思うがままに、この世界を操れる可能性があるわ。」宮殿の部屋に帰るなり、私はルイスやマルコたちに
last update最終更新日 : 2025-11-24
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第二章:エルミニオの奇妙な執着

ルイスが拗ねたことによって、場はすっかり和んでしまった。 すかさずマルコが揚げ足を取る。「ルイス様〜、本当にロジータ様が大好きなんですね!」「も、もう!ルイスってば、照れるじゃない!」疑う余地がないくらい、ルイスの愛を感じてしまう。「はあ。そうだよ。 俺はロジータが好きだ。悪いか?」素直に気持ちを表現するルイスに、真面目に頷くアメリア。「ルイス様、素直なのは大変よろしいことです。」不思議なことに、この四人でいると不可能も可能になる気がしてくる。 私好きだわ、ルイスにアメリア、それにマルコ。ここにいるみんなが。「けれど、気がかりなことがもう一つあるわ。 その出来事が起きる前、私はなぜかエルミニオ様に捕まったのだけれど…… 必死に逃げようとしてる時に、私の『星の刻印』が光ったの。お守りみたいにね。 きっとルイスもそれに反応したから、駆けつけてくれたのよね。 けれどその前に、なぜかエルミニオ様の刻印までもが反応して微かに輝き始めたの。」「何だって? 兄さんの刻印が、ロジータの刻印に反応しただって? だけど兄さんのは、すでにリーアとお揃いだろう。 それなのに一体なぜだ?」焦るようにルイスが私の両肩を掴んだ。「それは私にもさっぱり。 そもそも、エルミニオ様とは婚約中だってそんなこと一度もなかったの。 ルイスとのことはともかく、こんなの初めてよ。 彼の刻印が変化したのと何か関係があるのかしら? 王家で取り調べを受けている父は、刻印については知らないと言っているみたいだし……」変化したはずのエルミニオの刻印が、私の刻印に反応した。 そもそも刻印の変化は、私とルイスが禁書で調べた内容と無関係ではない気がする。「俺は、スカルラッティ元公爵が刻印を操作したとは思えない。 『星の刻印』は自然と王族の体に刻まれるものだ。 やがて、王族の運命の相手にも同じ刻印が現れる。 俺が知る限りでは、刻印を勝手に刺青のように刻んだり、消したりすることはできない。 つまり、人為的に操作するなんて不可能だと思う。 もしもそんなことができたなら、誰だって簡単に刻印を偽造できたはずだ。」「やはりルイスもそう思うわよね。 私も同じ考えよ。 それにエルミニオ様の刻印の変化は、例の第二王妃に似ているとは思わない? もしかすると《神》がエルミニオ
last update最終更新日 : 2025-11-25
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第二章:リーアの恐ろしい正体

この世界は全て私の思うがままだった。あのロジータ・スカルラッティが生き残るまでは。「どうして、こんなことに……!なぜあの女が生きているのよ!」辺境伯令嬢としてこの世に生を受けた、可憐な少女、リーア・カリヴァリオス。まるで銀糸のような美しい銀髪に、宝石のようなサファイアブルーの瞳。白い肌に、整った顔立ち。何もかもが完璧な容姿。彼女こそがこの世界のヒロインだった。父親は銀髪の辺境伯で、母親は元侯爵令嬢。大恋愛の末に結婚をした彼らは、自分たちの子であるリーアを心から愛していた。「リーア。私たちの可愛い娘。」「こんなに素晴らしい子に出会えて、神に感謝しないといけませんね。」優しい両親から一身に愛を受け、リーアはすくすくと育っていった。やがてエルミニオに『星の刻印』が現れると、王都では、彼と同じ刻印を持つ運命の相手は現れるのか?という話題で持ちきりになった。そんな騒ぎの中、ヴィスコンティの大神官がとある予言をしている。『美しい銀色の髪に、サファイアブルーの瞳をした少女が、王太子妃に最も近い存在となるでしょう。』———だが、辺境伯は王都よりずっと遠い地を治める貴族。王都ではその容姿に近い娘たちが集められたが、カリヴァリオス辺境伯にまでその知らせは届かなかった。自分の娘であるロジータをどうしても王太子妃にしたかったジャコモ・スカルラッティは、リーアの存在に気づいて恐ろしい計画を実行した。「まだ邸《やしき》の中にいるはずだ!カリヴァリオス辺境伯に関わる者は、一人残らず殺せ!使用人も執事も厩番も、庭師も!全てだ!誰一人逃すな!」リーアが4歳になる頃、ジャコモの企みによって彼女は全てを奪われた。偽の王命書によって彼の私兵たちがカリヴァリオス辺境伯邸に押し入り、両親を殺害。邸宅で働いていた使用人たちも残らず殺された。悪事の証拠が残らないよう邸宅には火が放たれ、全てが燃やされた。
last update最終更新日 : 2025-11-26
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第二章:リーアの恐ろしい正体

ぜひと縋りつくように言うので、私は彼が書いた偏見だらけの小説の中から、自分好みの男が登場する小説のヒロインになりたいと言った。《分かった。愛するルクレツィアのために、今から君をこの小説のヒロインに転生させるね。》原作者がそう言うと、私は自分とは全く違うヒロインとなって別の小説の世界にいた。 これが初めての転生、いいえ憑依だった。《ルクレツィア。君はその世界のヒロインだ。 君の好きな男と、たくさん恋愛しておいで。》そうして私は、自分好みの物語のヒロインへ憑依しては、完璧でイケメンで私だけを愛してくれる男主人公たちとの恋愛を楽しんだ。 原作者はどれもこれもヒロイン優遇の物語を好んでいたので、ライバルと思われる女たちは勝手に自滅していってくれた。「何であんたが、よくも〇〇様を奪ってくれたわね!」中には恋人を奪われたと狂ったように迫ってくるライバルがいたが、すぐに男主人公が助けに来てくれた。「俺の愛する人に何をする!」物語通りに可憐で、可愛いふりをしておけば、男主人公たちはどれだけ私が悪くても必ず助けてくれた。 ライバルたちが涙ながらに愛していると泣き叫んでも、彼らは私への愛で頭がいっぱいだった。 ライバルの女たちが愛する男たちに捨てられて、惨めで傷ついた顔をするたびに私は…… ああっ!何て気持ちいいの!? それに男主人公の盲目的な愛が、この優越感がたまらない! もっと、もっと愛されたい! もっとモテたい!もっともっとたくさんのいい男たちと恋愛したい! 物語はどれも未完成だったので、すっかり私に恋に落ちた男たちに飽きた段階で、いつも物語から離脱した。「何で物語が全部未完成なのよ。 男主人公と結婚し、家庭に入った後は義母の面倒を見て専業主婦になれって? 嫌よ、そんな地味な生活。」《そんなこと言わないでよ、ルクレツィア。 未完成作品のその後は君が好きにしていけばいいんだからさ……》原作者は私に愛してると言いながら何も分かってなかった。「私はいつまでも男主人
last update最終更新日 : 2025-11-27
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第二章:リーアの恐ろしい正体

何でいちいち我慢する必要があるの? こっちは早く刺激的な恋愛を楽しみたいのに。 仕方ないから私は、エルミニオを仕草や言葉で巧みに誘惑した。 おおまかな物語を変えない限り、セリフも行動も私の好きにしていいと原作者に言われている。 だからいい雰囲気の中で、私からそっと彼の頬に触れた。 身体的なスキンシップほど単純なものはない。 ほら、好きな少女に触れられたら簡単に理性が崩壊するでしょう? あの女の存在なんか私が消し去ってあげる。「リーア、君が好きだ。」「で、でも、殿下にはロジータ様が。」まあ、あくまで可憐なリーアを演じながらね。「ロジータには悪いと思っている。 だけど今の自分の気持ちに嘘はつけない。」熱のこもった顔でエルミニオが顎を引き寄せたので、私は自然と目を閉じる。 本当のリーアならここでのキスを断ったはず。 だけど私は違う! 彼がキスしやすいように導いてあげる。 可愛く震えながらも、あなたを受け入れますよという顔で。 その日私たちは初めてキスをした。 まだ女を知らないエルミニオとの、じれったくも甘酸っぱいキス。「君が俺の『星の刻印』の相手だったらよかったのに……。」エルミニオが蕩けた顔で私の肩に顔を埋める。 心配しないで、エルミニオ。 物語ではちゃんと、私とあなたは運命の相手になる。 まあ、あなたとの背徳感ある恋愛も楽しいけど、まだまだ他の男との恋愛も楽しませてね。 ルイスに、ダンテ、ユリにルドルフォ。 みんなすっかり私に夢中になっていく。 そのうち男たちが私の取り合いを始める。バチバチに火花を散らせて。 そう、これよ!これ。最高の気分。「リーア・ジェルミ!あなた、ただの使用人のくせに、なにエルミニオ様に色目を使ってるのよ!」その一方で、嫉妬に狂ったロジータからのいじめにも対応しなければいけなかったけれど。 本当に惨めな女。 馬鹿みたいに喚いたり、くだらない嫌がらせを繰り返したりして。 残念ね、エルミニオがあんたのものになる日なんか永遠に来ないのに。 それにどうせあんたは、彼に無慈悲に殺される『悪役令嬢』。「ロジータ!なぜリーアに冷たく当たるんだ!」当然、私がロジータにいじめられて涙を流すたびにエルミニオが駆けつけてくれる。 何の憂いもない。ただロジータのマヌケな顔を見て、吹き出さないように
last update最終更新日 : 2025-11-28
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第二章:リーアの恐ろしい正体

そもそも私を愛しているはずのルイスが、あのロジータを助けたというのだから驚きだ。「ちょっと!物語の登場人物たちが自分勝手な行動を取っているんだけど!これってどういうこと?早く物語通りにロジータを殺して!邪魔で仕方ないわ!」《それが、バグなのか僕の命令が効かないんだ。こんなこと今まで一度もなかったのに。》「何よそれ!あなたが作った小説でしょ?神でもあるあなたの命令を効かないなんて、そんなおかしな話しがあるの!?」原作者は「そんな、責められたって……」とブツブツ何かを呟いていた。 ルイスとあの女が結婚すると聞いた時は腑が煮えくり返りそうだったけれど、エルミニオとの婚約破棄宣言をしたことだけは褒めてあげる。これで、彼は心置きなく私を王太子妃にしてくれるはず。それなのに……。全てうまくいっているはずなのに、何かがおかしい。エルミニオはいつも上の空で、何かを誤魔化すみたいに私を抱くし、なぜかロジータを見ていることの方が増えた。それにロジータのあの目!まるで私のことは全てお見通しよ、みたいな目で見てくる。あの女のやることなすこと気に食わない。だから宮廷に悪口を流してあげたのに。ロジータは自分の父親まで断罪して、自分とルイスの評判を回復してしまった!嫌な女!あの時決められた通りに死ねばよかったのに!極めつけは、なぜかエルミニオが暁紅葉の島で生誕祭をすると言い出したこと。あの二人が新婚旅行してる島になんて、何を考えてるの?と思ったけれど、確かにルイスがいないとあの監禁事件が起こらないから仕方ないかと……「リーア。俺はロジータを王太子妃にしようと思ってるんだ。君は分かってくれるよな?」「え?ですがロジータ様はもうルイス様と結婚されてますよね?しかももうロジータ様には何の権力も……」「分かっているが、これは元から決められていたことだ。俺は二人を別れさせてロジータと再婚し、君は愛人にしてそばにいてもらう。」———何この男、頭沸いてるんじゃないの?「そんなの……嫌です!私を王太子妃にしてくれると言ったじゃないですか!」エルミニオ、あなたは私だけ見つめてればいいのよ!「どこよ!原作者!出てきなさいよ!何で物語通りにいかないのよ!こんな酷いことある!?」《そんなの、僕分からないよ。》「何とかして!」その間にもエルミニオは私じゃな
last update最終更新日 : 2025-11-29
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第二章:二つの刻印が導く答え

--- 外は土砂降りの雨、海は大荒れ。 それによってガレージ船の出航は困難だと言われ、私たちは仕方なく嵐が止むのを待つしかなかった。 アーチ窓から荒れ狂う海を見ながら、私は部屋に待機しているルイスやアメリアたちに告げる。「もしかするとこれも、リーアが何か関わっているのかもしれないわね。」「もし彼女が神だというのなら、あり得なくはないな。」窓のそばに立つ私をを見ながら、ルイスが深刻そうな顔で頷く。「俺もリーア様に関してはずっと、健気な女性だとばかり思っていました。 でも、知れば知るほど恐ろしい女性ですね。」「私は、実は以前から少し違和感を抱いていました。 確かにリーア様はルイス様に優しかったですが、上辺だけの優しさというか……」マルコに引き続き、アメリアが話を続ける。 さすがはアメリア、リーアの違和感に気づいていたなんて。 そうやって私たちが今後のことを話し合っていると、部屋の扉がノックされてーー「ルイス殿下、ロジータ妃殿下。 エルミニオ王太子殿下が、生誕祭にぜひ参加なさるようにと申しています。 嫌だと断れば、強制的にお連れせよとのこと。」「何ですか!私たちの部屋に断りもなく入ってきて!」姿を現したのはユリとルドルフォだった。 しかも、私たちの意見を言う間もなくエルミニオの連れてきた私兵によって、会場に強引に連れ出されてしまった。「俺の生誕祭に参加してくれた皆に感謝する! 今回は料理も飾り付けも急いで用意させたので、いつもより質は劣るだろうが、孤島でしか獲れない魚料理などがふんだんに使われている! 皆、存分に食事を楽しんでくれ!」確かに急いで準備された生誕祭は、これまで私が見てきた中で一番質素だった。 積み上げられたプレゼントさえも、何とか間に合わせで準備されたような。 だが、しかしそれでも宮殿の使用人たちの手によって完璧に飾り付けられた料理、様々なお酒、珍しい果実のデザートなどがずらっと並べられていた。 荒れ果てた天候、逃げ場のない孤島。 シャンデリアの蝋燭の炎が、ゆらゆらと揺れていた。 私とルイスは席を離されて無理やりテーブルに座らされ、中央の特等席にはエルミニオが偉そうに座っていた。 隣のリーアと目が合うと、彼女はニコッと笑い私は思わず彼女を睨みつけた。 どうせこれも全部あなたの仕業なのでしょう!?
last update最終更新日 : 2025-11-30
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