突然口を塞がれて、白発光石から遠い奥の方に引きずり込まれた。 エルミニオは銀灰色の瞳を光らせて、冷たく私を見下ろしていた。 助けを呼ぼうにも岩場に体を押しつけられて、身動きが取れない。 まだルイスは砂浜にいて、この異変には気づいていないようだった。「王太子殿下!なぜこのようなことをなさるのですか?」「なぜ?それはお前と二人きりで話す機会がないから、仕方なくだ。」さも当たり前のようにエルミニオは言った。 艶のない黒髪に合わせたようなチェニック、ホーズもブーツとも共に黒い。 これだけ暗い色だと、ここに人がいるとは誰も思わないだろう。 とにかく何と言われようが不快感が募る。 もう感情を隠す気などない。 不敬罪に当たろうが、明らかに異常行動をするエルミニオが悪いのだから。「殿下、私に構っている場合ではないのでは? リーアをお探しになっているのですよね?」暗がりのなかでも月の逆光を浴びているエルミニオ。その表情が鮮明に映し出される。「ああ、リーアは。」「リーアは?」「今はリーアのことはどうだっていいだろう? 俺は今、お前と話しているんだ、ロジータ。」ぐっとエルミニオが岩場を挟んで私に体を寄せてくる。 ふわっとルイスとは違うきつい香水の匂いが香る。「やめてください!大声でルイスを呼びますから!ルイーーーーーーんっ!」浜辺に向かいそう叫んだタイミングで、エルミニオにまた口を塞がれてしまう。「ロジータ!ただ二人で話がしたいと言っているだけだ! あの日以来、なぜお前は俺の話を無視するんだ! なぜ俺を見ない? ———俺を見ろ、ロジータ!」「……っ!」エルミニオはさらにもう片方の手で、私の顎を自分の方へと強引に引き寄せた。 まるで獣のような瞳に捉われる。 ふとあの日の悪夢を走馬灯のように思い出す。 刻印ごと心臓を貫き私をゴミのような瞳で見つめて、本気で死んでくれといっていた冷酷さを。 ———今まで強気でいたけれど、あの時の記憶が蘇ってきて恐怖に心が支配される。 怖い! 私……あれをすっかり忘れたつもりでいたけれど全然忘れていなかったんだわ! とたんに体がガタガタと震えだした。 自分でも気づかないうちにトラウマになっていたのだ。「ロジータ。なぜ震えている? そうか、まだあの時のことを拗ねているのか。 心配するな、
最終更新日 : 2025-11-21 続きを読む