All Chapters of 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜: Chapter 61 - Chapter 70

98 Chapters

第二章:ロジータの掲げる正義

私とルイスは、ジャコモの断罪に向けて本格的に行動を開始することにした。原作の知識でリーアの出自である伯爵家の家門名は特定できた。『カルヴァリオス辺境伯』だ。リーア・カルヴァリオス。それがリーアの本名だ。王都からかけ離れた辺境にあった家門だから、ルイスたちに認知されていないのは当然だ。「確か原作では、リーアの家門が王家に謀反の罪を働いたという理由で破門に追い込まれたはずよ。それにお父様は、自分の悪事が暴かれる前に『偽の王命書』を使って伯爵邸に押し入り、リーアの家族を粛清したはずだわ。唯一生き残ったリーアはお父様によって奴隷商に売り飛ばされた……」「そうか。だから王家にリーアの家門の記録が残されていなかったんだな。父上は自分に刃向かった者には容赦なかったから。つまりジャコモは王家すらも欺いたというわけだな……卑劣な男だ。」ルイスの意見は最もだ。それも、この世界の実の父親がしたことだと思うと悍ましくもある。私は何も知らずに呑気に……いつものようにランタンが灯った寝室で、私とルイスは秘密を共有し合った。「謀反扱いでリーアの家門が王国から抹消されているなら、ここで証拠を見つけるのは難しいと思うの。だから私は、お父様が秘密を隠していそうなスカルラッティ家の邸宅を調べるわ。」「それなら俺も一緒に行こう。」「いいえ。ルイスには他にしてほしいことがあるの。私が邸宅で調査をする当日、お父様の目を逸らしていてほしいの。そうね……親睦を深めたいと言って、お父様を狩猟にでも誘ってほしい。お父様も王子であるあなたの誘いは断れないはずよ。その間に私は証拠集めをするわ。」「……!分かった。じゃあその間にお前にはマルコを護衛につけよう。」「助かるわ。それなら、ルイスにはお父様のことを頼むわね。」
last updateLast Updated : 2025-11-01
Read more

第二章:ロジータの掲げる正義

私は久しぶりにスカルラッティ家に戻ってきた。 ゴシック建築を取り入れた立派な邸宅はいつも人目を引いていた。 近くにはやはり運河が流れ、行商船が頻繁に行き来する。 少し曇り空のひんやりとした今日、ルイスはうまくジャコモを狩猟に連れ出してくれた。 スカルラッティ家の持つ森は馬でも数時間かかる。 二人はしばらく帰ってこないだろう。「マルコ。地下室の鍵を手に入れたわ。 行きましょう。」私は動きやすいドレス姿に、濃い緑のローブを羽織っていた。「はい、ロジータ様!」同じくローブ姿のマルコも威勢よく返事した。 さっき再会した継母と異母弟に挨拶をし、とある交渉を持ちかけた。 承諾を受けてこの地下室の鍵を預かったというわけだ。 ジャコモ・スカルラッティの地下室。 立ち入りを禁止しており、誰でも簡単に入ることができない場所。 もしお父様がリーアに関して重大な秘密を隠しているとしたら、ここで間違いないだろう。 金色をした鍵を差し込むと、重たい扉が鈍い音を立てて開いた。 マルコと二人でランタンを持ち、無言で頷いて下へと繋がる階段を降り始めた。 中は薄暗く下に行くにつれひんやりと冷たい空気が流れてくる。「さすがに暗いわね。一体どこまで続いているのかしら。」「足元にお気をつけください。」背後からマルコの気遣いを感じる。 私たちはなるべく歩くペースを合わせゆっくりと階段を下った。 突き当たりに広々とした部屋があった。 そばにランタンがあり、マルコが点灯する。 机の上にはいくつかの古い本や資料、地図などが無造作に置かれていた。 壁にはスカルラッティ家の家系図や先祖の似顔絵などが飾られている。 奥に進むと、階段があり木製の棚がいくつも立ち並んでいた。 禁書庫みたいな複雑さはないが、この中から探すのは一苦労しそうだ。「マルコ。 打ち合わせ通り、『カルヴァリオス伯爵家』や、『奴隷売買書』と言った類の書類を見つけて。」「了解です!」マルコは得意げに敬礼した。 ルイスに頑張ってもらっている間に私たちも頑張らなくちゃ! 私が知る父、ジャコモは用心深い人だ。 大事な書類や重要機密をたかが自室に保存しておくはずがない。 その点この地下室ならきっと——— さっそく私とマルコは膨大な量の資料の中から目ぼしい書類を探し出し始めた。 時間の感覚は
last updateLast Updated : 2025-11-02
Read more

第二章:ロジータの掲げる正義

なぜ私が、スカルラッティ家でエルミニオと顔を突き合わせているのだろう。 あの時廊下で彼に遭遇したせいで、私はとっさに重要書類を自分の部屋に隠すしかなかった。 幸い、公爵家の私の部屋はそのままの状態で維持されていたからよかったものの。 しかもマルコに書類を託し、エルミニオに見つからないよう密かに帰るようにと頼んだのだが、彼は首を横に振った。『俺はロジータ様の護衛です。 それに、エルミニオ様の目的が分からない以上、ロジータ様を一人にすることは危険です。』そうきっぱり断ってきた。 確かにマルコの言うことも一理あった。 まるで私たちの動きが分かっていたかのようなエルミニオの訪問が、不気味としか思えなかったからだ。「スカルラッティ公爵に用事があって尋ねてきたんだ。 まさか不在だとは思わなくてな。」応接間のソファに座るエルミニオは、相変わらず無愛想にティーカップのお茶を口にした。 かと思えばカップを置き、漆黒の髪をかき上げてから私を見つめた。 黒に繊細な刺繍の入ったダブレットに、モスグリーンのホーズ、革製のブーツ姿。 完全に外出用の礼服である。 確かに、窓から見渡すとスカルラッティ家の門前に王家の馬車が停まっていた。「エルミニオ王太子殿下。 まさかお父様との約束もなく我が家に訪ねてきたのですか? 王族とはいえ、少々失礼だとは思いませんか。 それに、いくら何でも当主が不在中の邸宅に上がり込むなんて。」私は彼の対面側のソファに座り、少々苛立ちながら言った。 顔には出さないがエルミニオの常識のなさに呆れている。 何より傲慢なこの態度がいちばん許せない。「公爵夫人に通してもらったのだ。 お前にとやかく言われる筋合いはないな。」エルミニオと少し離れて座る継母は、気まずそうに私から視線を逸らした。 彼女だって私たちには早くこの場を立ち去ってほしかっただろうに……。 だが立場的に弱い継母に、王太子の訪問を断ることはできなかっただろう。「そうだとしてもです。 お父様は不在なのですから、殿下はそろそろお帰りになられてはどうですか?」私は肝心のジャコモが帰ってくる前にこの邸宅を出たいのよ! もし地下室から重要書類を盗んだと気づかれたら、私こそ彼に何をされるか分からないのだから。 いつも通り刺々しく言うと、エルミニオは露骨に不愉快そうな
last updateLast Updated : 2025-11-03
Read more

第二章:ロジータの掲げる正義

エルミニオの忠実な番犬、ルドルフォは燻んだ灰色の髪を揺らし、帯剣に手をかけた。「貴様!王太子殿下に刃向かうなど、言語道断だ!ルイス殿下の腰巾着が!」「……っく!ルドルフォ様。 どうか理解して頂けませんか? 俺はあくまでロジータ様をお守りしているに過ぎないのです!」二人の護衛騎士が睨み合うなか、エルミニオが一人だけ状況を楽しむかのように嘲笑う。 明らかに立場的に弱いマルコを馬鹿にしている。 本当に嫌な男だ!「マルコ、お願い。剣から手を離して。」彼なりに頑張ってくれているが、これ以上はマルコが本当に危ない。 宥めるように言ったが、彼は頑なに首を横に振った。「ルイス様にロジータ様のことを頼まれたんです。 ここで引くなどできません。」「マルコ。本当に私は大丈夫だから。」ルイスの忠誠心の熱い護衛騎士。 正真正銘本物の騎士だ。誇らしくさえある。 この貴重な人材を、エルミニオのせいで今ここで失うわけにはいかない。 私はすうっと息を吸い込んで、エルミニオを冷たく見上げた。「分かりました。 私が何をしていたのか殿下に教えます。 ですからルドルフォを下がらせて下さい。」「ロジータ様!?」(大丈夫よ、マルコ。 重要書類のことは絶対に言わないから)私が目配せすると、マルコは脱力したように肩をすくめた。「ルドルフォ、その男を見張っておけ。」「は!殿下!」暑苦しい返事をしたルドルフォが、再びマルコを目で威圧した。 それを見てエルミニオが満足げに微笑し、そばにいた継母に軽く頭を下げる。「公爵夫人。今度はロジータの部屋にお邪魔しますね。」「え、ええ、分かりましたわ。王太子殿下。」相変わらず立場の弱い継母は、何から何までエルミニオの言うなりだった。 何がロジータよ、いい加減私を以前と同じように呼ぶのはやめなさいよ。 それに私は一応ルイスの妻なのよ! 密かに怒りを爆発させている私をよそに、エルミニオはマルコをルドルフォに牽制させて部屋を出ようとした。「殿下。部屋には私の護衛も連れて行きたいのですけれど。」「護衛は置いていく。 また邪魔されては困るからな。」まさか私の私室に二人きりで向かうということ? そんな怖いこと了承するわけがない。 一度私を殺そうとしたエルミニオを絶対に信頼できない。 原作を考えると、この男にまた命を
last updateLast Updated : 2025-11-04
Read more

第二章:ロジータの掲げる正義

いよいよエルミニオの行動が理解できない。 男主人公の頭がおかしいとしか。「殿下!?一体何をなされるのですか!? 危害は加えないと……!」必死に抵抗するが、エルミニオは掴んだ手の力を緩めてはくれなかった。 やがて彼はもう片方の手で自身の顔面を隠すように覆った。「はあ。ロジータ、危害は加えない。 だが、俺にはどうしてもお前が俺を愛してないというのが信じられなくてな。」心なしかエルミニオの声は沈んでいるように響く。 ちょっと待って、なぜあなたが哀愁を漂わせるの? まるで私があなたを傷つけたみたいじゃない! 傲慢さは相変わらずだったが、これまでのエルミニオとは明らかに違っていた。 目的は私の暗殺ではないーーーかもしれない。 それにさっきからこの男が吐く内容は、痴情のもつれかのような言い分だ。 そのせいでこっちまで混乱してくる。 だからといって私がこの状況を受け入れるはずがない。 何とか逃げようと身をよじり、エルミニオを睨みつけた。「離していただけなければ大声を出しますよ。」「出したところで、今この公爵家でお前を助けられる人間がいるのか?」   「———!!」エルミニオは壁際に追い詰めた私にぴたっと体を密着させて、真上から嘲り笑った。 ふわりとルイスとは違う香水の匂いが漂う。 硬い体に服の上から押しつぶされて身動きが取れない。 漆黒の髪を揺らし、ルイスとは違う刺すような視線で見てくる。 ドクドクドクと心拍数が上がる。 一体何なのだろう? この男の目的がさっぱり分からない。 私を殺すことが目的じゃないなら、考えられるのはやはりスカルラッティ家への未練? それとも私たちの反逆の証拠でも引き出そうとしているの? この、人を探るような眼差しがとにかく嫌だ。「ロジータ。」低い声で名前を呼ばれて体が無意識に反応した。 何?一体、何なの……? やがてエルミニオはすっと私の横髪をすくい上げ、首筋に注目した。 念のため襟のあるドレスを着ているが、今日に限ってストールをしていないから余計に視線を感じる。「ロジータ。お前、こんなにも肌が白かったんだな。 これまで俺は、何一つ知らなかった。」間近に顔を近づけられて、反射的にゾワッと背筋が逆立つ。 恐怖感に襲われて私は思わずエルミニオから顔を逸らした。 怖い……!! エル
last updateLast Updated : 2025-11-05
Read more

第二章:ロジータの掲げる正義

けれどこれは完全に私の落ち度だ……! 急いでいたせいか、あの書類を隠したクローゼットをきっちり閉めることができていなかった! 駄目……絶対にエルミニオにあのクローゼットを触らせてはいけない。 もし宝石箱を見せろと脅されでもしたら私たちは即座に詰んでしまう。 権力にしがみつくエルミニオのことだ、重要書類を使ってスカルラッティ家を脅してくるかもしれないし、反対にすぐに破滅へと追い込むかもしれない。 そしたら私……また死亡ルートに!? とにかく今は、この男の目を何とかしてクローゼットから逸らさないと。「私からも一つ質問させてください、殿下。 殿下は、お父様はともかく、なぜルイスが不在だと知っているんですか? もしかして私やルイスの動きを探っているんですか?」そこでエルミニオを挑発してみることに。 思えばこの何年間、この男とこれほど近距離で向かい合ったことなどなかった……。 まるで狼のような野生的な瞳が私を冷たく捉える。 考えてみればエルミニオが私やルイスに疑いを持っている限り、動向を調べられていてもおかしくはなかった。 だが、今回のエルミニオの行動はどこか行きすぎている。 何だかきな臭い……。 必死に目を逸らそうと誘導するが、彼はまた私の目の前で馬鹿にしたように微笑した。「そんなに慌てるということは、やはり何か重要な物でも隠しているみたいだな。 その慌てっぷりがますます怪しい。」エルミニオは私をじわじわと壁際に追い詰めていく。 あまりに力が強すぎてもはや私にはなす術がなかった。 ———だから、どうしてこういうのには気づくのよ! まさかそれが男主人公の補正というもの? 恋愛にうつつを抜かす愚かな彼を、少しでも優秀に見せようという原作の強制力なの?「困ったような顔だな。 以前とは別人かと思ったが、やはりお前はあのロジータだな。」なぜかエルミニオの声が緩む。 顔が近いせいで息遣いまで繊細に聞こえてくる。「殿下。どうでもいいですけど、早く手を離してくださいませんか? 私とのスキャンダルを望まないのであれば。」さっきからかなり交戦的に睨んでいるのに、何一つ通用していない気がする。「スキャンダル? お前とルイスのせいで、すでに俺は醜聞まみれだ。」体を押し返そうとすればするほど、エルミニオはまるで獲物でも締めつけるかのよ
last updateLast Updated : 2025-11-06
Read more

第二章:ロジータの掲げる正義

だから原作で、ルイスの暴走を止める人がいなかったの? 確かにあの時点でルイスは完全に孤独だった。 リーアに酷く執着したのもそのせいだ。 けれど今は明らかに違う。 本来のエピソードが巡り巡って、この場面に変わってしまったんだ! このままだとマルコが私を守るために、エルミニオに監獄送りにされてしまう! ルイスの大事な味方を失ってしまう!「マルコ、私は大丈夫だから、剣を下ろしなさい!」「できません!それに、大丈夫ではないですよね? 実際そんな風に抑え込まれて、逃げることもできていないじゃないですか! 王太子殿下、ロジータ様はルイス様のお妃様です。どうか彼女を解放してください……!」「……これはちょうどいい。」その時、私は目の前のエルミニオの変化を見逃さなかった。 この男、今笑った……?「ロジータ、ルイスの忠実な騎士が俺に謀反を働いた。 このままなら奴は監獄送りになるだろうな。 だがもしもお前がルイスと離婚するなら、助けてやらないこともない。」それはとても信じられない提案だった。 まさかマルコを助ける代わりに、ルイスと離婚しろだなんて!「殿下、あなたどうかしてますわ。」「そうか?俺は元からこんな人間だが。 さあ、どうする?ロジータ。 この騎士を助けるか、ルイスと離婚するか。」———なんて男! そうか。私と引き離せば、ルイスがスカルラッティ家の後ろ盾を失うから! 本当に汚いやり方。 私を守ろうとするマルコの忠義を逆手に取るだなんて。 いくら原作で決まっているとはいえ、どうしてこんな自分勝手な男が王太子なの? 背後からマルコに剣を向けられているのにエルミニオは私から離れようとしないし、そのマルコはルドルフォに今にも斬りかかられそうな勢いで剣を向けられている。 まさに一触即発状態で、部屋は緊縛した空気に包まれていた。 ルイスと離婚?冗談ではない。 彼と契約結婚するために、これまでどれだけ苦労したと思ってるのよ? でも、このままだと本当にマルコがルドルフォに殺されてしまいそう!「さあ、どうする?ロジータ。 あの騎士の命はお前の選択しだいだ。」ほぼ真上で、エルミニオのざらっとした声が響いた。 この余裕ぶった態度、絶対に私が断れないと思っているんだろう。 確かに今クローゼットの中身を知られるわけにはいかないし、ル
last updateLast Updated : 2025-11-07
Read more

第二章:ロジータの掲げる正義

とにかくルイスは全然動揺していなかった。 一体誰がルイスを影の王子だなんて言っていたのだろう? この堂々とした姿。 いくら自分の兄が偉かろうが全く臆すこともなく。 やはりルイスは最高の夫だわ! 普段はツンデレだけど、こういう時になると本当に頼りになる。 ただ、この勇ましい横顔…… どうしても理佐貴を思い出さずにはいられなかった。 だって理佐貴もかつて居酒屋で、酔っ払いに絡まれた私をかっこよく助けてくれたことがあったから。「とにかく兄さん、これ以上ロジータとマルコに絡むのはやめてください。」怖い顔してルイスは再度エルミニオを非難した。「そ、そうですよ、殿下! これ以上私やマルコに何かしたら、陛下に訴えますからね! 例の秘密も暴露しますよ!」私も、ルイスの腕の中からエルミニオを思い切り睨みつけてやる。「ロジータ、ルイス、お前たち……! 俺に楯突いたら、後悔することになるぞ!」まるで悪党みたいにエルミニオが私たちを鋭く睨みつける。 それ、いかにもモブが言いそうな台詞だ。「くそ……!ルドルフォ、行くぞ!」「は……エルミニオ様!」ついにーーーエルミニオは舌打ちをし、苛立ちながら部屋を出て行った。 残されたルドルフォも慌てて剣を鞘に納め、エルミニオの後を追っていった。 ……まるで嵐のような男だった! 室内がシンと静まり返る。「ロジータ、大丈夫か? 兄さんに何されたんだ?」彼らが部屋からいなくなったとたん、ルイスに勢いよく両肩を掴まれた。 さっきまでと違ってすごく不安そうな顔で。「え?あ、その、何というか、ただちょっと押さえ込まれて。」「押さえ込まれた……だと?」「でもルイスが来てくれたから。 危うく目的の物がエルミニオ様に見つかってしまうところだった。」「……っ!ということは、例の物が見つかったということか?」「ええ、そうよ、ルイス。 マルコと二人で協力し合って、探し出したの。 今日のマルコは本当に大活躍だったわ。」「よくやった、マルコ! それに……兄さんから命懸けでロジータを守ってくれたこと、本当に感謝している。」「いえ、当然のことをしたまでです。 それにお恥ずかしい話ですが、どちらかと言うと俺の方がロジータ様に守られているようでした。 ダンテ様の時もそうでしたし……。」「いえ、それは違うわ、
last updateLast Updated : 2025-11-08
Read more

第二章:ロジータの掲げる正義

この場には関係者以外に裁判官と、重要な中央貴族たちを数人呼んでいた。 つまり玉座の間は今、裁判所と同等の役割を担っていた。 こうすれば多くの人の前でジャコモの罪が明らかになるからだ。 いざという時にジャコモが言い逃れなどできないように。 私はジャコモがリーアの家門を破滅させた証拠の書類をみんなの前で掲げた。「こちらが、私の父、ジャコモ・スカルラッティ公爵の犯した犯罪の証拠でございます! 今から約17年前、父はあろうことかリーアの本当の出自である『カルヴァリオス辺境伯』に謀反の罪を着せました! そしてこの『偽の王命書』を使ってカルヴァリオス辺境伯邸に侵入、私兵を使って一家を粛清したのです! その時、一人生き残ったリーアを、父はあろうことか奴隷商に売り渡してしまいました! それがこちらにある『奴隷売買証明書』になります! 私の父は、リーアを…… そしてリーアの出自であるカルヴァリオス辺境伯の一家を、自分の私利私欲のために破滅へと追い込んだのです……!』「それは……!」ジャコモの顔が醜く歪んだ。 『ロジータ、なぜそれをお前が持っているのだ!』と言わんばかりに。 一気に場が騒然となった。 もちろんマルツィオの顔が険しくなっただけでなく、エルミニオやユリたちの反応も同じだった。 ただリーアは唖然としていたが……。「なんと、17年前にそんなことが!?」「覚えているぞ。 確かに『カルヴァリオス辺境伯』と言えば、ヴィスコンティ王家に謀反を働いたという理由から粛清され、破門された家門だった!」「つまりあれは全部、スカルラッティ公爵が仕組んだことだったのか!」裁判官をはじめ、中央貴族たちは当時の記憶を引き出して騒然とする。 一方のエルミニオたちはリーアをお姫様のように囲いながら、全員が憤っていた。 ダンテを除いては。「そうか、やはりジャコモがリーアの家門を……!」リーアの肩を抱きながらエルミニオが唇を噛みしめる。 そんな二人を横目に私は少し複雑な思いを抱いていた。 未完成だった小説『奴隷になった私が、王太子の最愛になるまで』。 本来の原作だと、この断罪はエルミニオが行うものと推定していた。 その前にエルミニオたちはジャコモの悪事を次々と暴いていく展開があった。 だが私は途中で交通事故で死んでしまい、その後の小説がどうなったか
last updateLast Updated : 2025-11-09
Read more

第二章:ロジータの掲げる正義

貴族たちは私がリーアに頭を下げるのを見て、当然のように騒然とする。「あのロジータ・スカルラッティが実の父親の罪を暴き、しかも謝罪までするとは……!」「やはり噂は本当だった!ロジータ様は変わられた!これは間違いない!」「自らの身も危うくなるのに、それでも正義を貫こうとするとは!」「ロジータ様の勇気に私は拍手を送ります!」頭を上げた時、すでに貴族たちの表情は晴れやかで、しかも私に向けて拍手までし始めた。その時はなぜか天井から吊るされたシャンデリアまでがやけに輝いて見えた。まるで世界が変わったかのように。まさか私もそこまで評価が変わるとは思っていなかったので驚いた。「あ……。」やはりこの断罪とリーアへの謝罪は効果覿面だった。すでに宮廷に流れていた父の噂も含めて、私の評価を変えるためにはこうするしかなかったとも言える。「リーア。私の父がしたことは到底許されることじゃない。当時幼かった私は、つい最近までこの事実を知るよしもなかった……けれど、これまであなたが辛い思いをしてきたと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだわ。それに私も、嫉妬からついあなたに意地悪ばかりしてきた。それも含めて、本当に申し訳ないと思っているわ。あなたこそ王太子妃に相応しい。だから、これからはあなたが、リーア・ジェルミ……いいえ、リーア・カルヴァリオスとしてエルミニオ様を支えてくださいね。私は心からお二人の幸せを願っています。」もう一押しね。いまいちよく分からない顔をするリーアに、私はもう一度深く頭を下げた。「そ、そんな。ロジータ様、頭を上げてください!私は別に……!」可憐な声でリーアが私の腕を掴む。ただその瞬間、強烈な痛みを伴った。「……っ!」リーアの爪が腕に食い込んでいるのだ。あの華奢で弱々しいリーアが、私にだけ見えるように不満げに唇を尖らせる。「余計なことを……」ぼそっと漏れた声も私にだけ聞こえるようにだ。私はもう分かっている。リーア・ジェルミはただのか弱い、女主人公《ヒロイン》ではないということを。これが本当にヒロイン?と思うけれどもうどうだってよかった。私とルイスの安全さえ確保されたら。だがなぜかエルミニオだけは私を黙って見つめていた。公爵家でのこともだが、彼はその時もずっと不気味だった。「ロジータ!お前、実の父親を断罪
last updateLast Updated : 2025-11-10
Read more
PREV
1
...
5678910
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status