七日間の航海を経て、五人はついに東の大陸に到着した。港町の風景は、これまで見てきたものとは大きく異なっていた。建物は独特の曲線を描き、屋根は鮮やかな青と金で彩られている。人々の服装も色とりどりで、街全体が活気に満ちているはずなのに——「静か過ぎるわね」セリアが不安そうに呟く。確かに、港には人影がまばらだった。いるのは一様に灰色の服を着た人々ばかり。誰も笑顔を見せず、小声で話している。「おかしいな」レオンが眉をひそめる。「僕が出発した時は、もっと賑やかだったのに」港の入国管理所で、五人は厳重な検査を受けた。係官が無表情で書類をチェックし、一言ずつ話すたびに記録を取っている。「目的は?」「観光です」「滞在期間は?」「未定です」「使用言語は?」最後の質問で、ユウリが困惑する。「使用言語?」「この大陸では、『標準詩語』以外の使用が制限されています」係官が機械的に説明する。「方言、外来語、感情的表現は禁止です」エスティアが小声で呟く。「これが言葉狩りね……」ようやく入国手続きを終えた一行は、街の宿屋に向かった。しかし、街の様子はさらに異常だった。店の看板はすべて同じ書体で書かれ、人々の会話は単調で感情がない。子供たちでさえ、決められた言葉しか使っていない。「いらっしゃいませ」宿屋の主人が棒読みで挨拶する。「標準的な宿泊をご提供いたします」部屋に案内された五人は、小声で作戦会議を開いた。「想像以上にひどい状況ね」セリアが窓の外を見る。「言葉の多様性が完全に失われてる」『人々の表情が死んでいます』ティオの心の声も暗い。『感情を表現できないから、心も閉ざされてしまっている』「純血詩団の本拠地はどこなの?」トアがレオンに問う。「街の中央にある『言語純化センター』です」レオンが地図を広げる。「そこで、『不純な言葉』の検査と矯正が行われています」エスティアが立ち上がる。「じゃあ、まずはそこを調べましょう」「咎読で、センターの中の情報を読み取れるかもしれない」翌朝、五人は街を散策しながら情報収集を始めた。しかし、すぐに監視されていることに気づく。灰色の制服を着た『言語監視官』が、街のあちこちで人々の会話を監視していた。不適切な言葉を使った者は、即座に連行されている。「ママ、お腹すいた」
Last Updated : 2025-08-26 Read more