魂の共鳴から三日後、一行は小さな村で休息を取っていた。花紋同士の繋がりは日に日に強くなり、互いの感情まで伝わってくるようになっていた。「ユウリが悲しんでる」トアが突然振り向く。「親友のこと、考えてるでしょ?」ユウリは驚いた。確かに、亡くした親友のことを思い出していた。魂の共鳴により、心の内まで筒抜けになってしまう。「……少し、戸惑ってる」ユウリが正直に告白する。「みんなと一緒にいるのは嬉しい。でも、あいつの記憶が薄れていくような気がして」朝の食事を囲みながら、五人は静かに話していた。村の宿屋の食堂は温かく、他に客もいない。だからこそ、心の奥の話ができた。エスティアが優しく微笑む。「忘れる必要はないわ。大切な人の記憶は、心の奥で永遠に輝き続ける」「そうよ」セリアも頷く。「私たちは、あなたの親友の代わりじゃない。新しい家族よ」ティオの心の声も響く。『過去と現在は、対立するものじゃありません。どちらも、あなたを作っている大切な一部です』仲間たちの言葉に、ユウリの心は軽くなった。親友への想いと、仲間への愛は、共存できるものなのだ。「ありがとう、みんな」ユウリが微笑む。「俺は幸せ者だな。こんなにいい仲間に恵まれて」トアが嬉しそうに手を叩く。「私たち、本当の家族みたい」「家族……」エスティアが少し寂しそうに呟く。「私、本当の家族がどんなものか、よく分からない」実験施設で育った彼女には、家族の記憶がほとんどない。血の繋がりがない五人が、どうして家族と言えるのか。「家族っていうのは、血筋じゃないのよ」セリアが説明する。「お互いを大切に思い、支え合う気持ちがあれば、それが家族」『僕も、ここに来るまで一人でした』ティオが続ける。『でも、今は違う。みんながいてくれるから』ユウリが立ち上がり、みんなに向き直る。「なら、改めて言おう」彼が手を差し出す。「俺たちは、血は繋がってないけど、本当の家族だ」四人がその手に重ねる。五つの手が重なった瞬間、花紋が温かく光った。「これからも、ずっと一緒」トアが嬉しそうに言う。「困った時は、みんなで支え合う」エスティアも笑顔になった。その時、宿屋の窓の外に不穏な影が走った。五人は同時にそれに気づく——魂の共鳴のおかげで、危険を敏感に察知できるようになっていた。
Last Updated : 2025-08-19 Read more