「本当に秘密組織なんてあるのか?」蓮司眼差しは氷刃のようで、嘲るような笑みを龍一に向けた。探偵は続けた。「ええ、ダークウェブには数え切れないほどの秘密組織が存在しますが、中でも特に強力な二つの組織が暗躍していて、重大事件のたびに、必ず動きます。そして、その間ダークウェブは異様に静かになるんです。D国のS市で起きた地震もその一つです」探偵は龍一と蓮司の方を向き、「目撃者の証言が真実だとすれば、奥様はどちらかの秘密組織のメンバーではないかと疑っています」探偵の言葉に、龍一は目を見開いて蓮司を見た。まさかたった一枚の写真と、その裏にあるメモから、蓮司がここまで調べ上げるとは思わなかった。龍一は彼を侮っていた!しかし、ここまで来たら後戻りはできない。「佐伯教授、こいつの言っていることが嘘か本当か、判断してくれないか……」蓮司は言葉を切り、探偵を一瞥した。探偵は怯えて首を横に振った。そして、蓮司は龍一に向き直り、「それとも、いくらか真実が含まれているのか?」これは探りだ。龍一は冷静さを保ちながら言った。「風間社長は、自分の奥さんを疑っているのか?単なる彼の推論?それとも、何か確たる証拠があるのか?」もし確たる証拠があるなら、ここで探りを入れるような真似はしないはずだ。その言葉を聞いて、探偵は慌てて蓮司に首を振った。もし証拠など自分が見つけたりしてたら、既に生きていないだろう。「まさか妻を疑うわけがないだろう。それに、もし妻が秘密組織の人間だったとしても、それは妻が優秀だってことだ。むしろ喜ばしいくらいだ」蓮司は冷静に言った。龍一は胸を撫で下ろし、平静を装って答えた。「俺はただの科学者で、研究のことしか分からないんだ。風間社長、本題に戻って、AI創薬の話をしよう」その時、執事が監視カメラの映像を持って来た。「ちょっと待て」蓮司は執事の携帯を受け取ると、龍一の目の前で監視カメラの映像を再生し始めた。「昨夜、別荘のキッチンで、佐伯教授の助手が妻にパソコンを渡していた。どうやら、パソコンの使い方教えていたようだが、どれくらい理解できたのか気になる。佐伯教授はの直属の上司として、助手の教えぷりも見てくれないか?」昨夜、あの時間に天音が防御システムを構築したことを、龍一は思い出した。もし天音の能力がバレたら、ヘリ
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