蓮司は一人のボディガードのガスマスクを剥ぎ取った。たちまち香りが鼻腔をくすぐり、その人の心を支配する。ボディガードは杏奈の手を掴み、蓮司から引き離して床に叩きつけた。そして、やりたい放題に暴れ始めた。あまりに突然の出来事に、杏奈は避けきれず、ボディガードに床に倒され、強く押さえつけられた。彼女は激しく抵抗し、「よくも私に手を出すわね!」と叫んだ。「放して!」他のボディガードたちは、仲間の乱暴を看過するわけにはいかなかった。現場は騒然となり、蓮司は混乱に乗じてガレージへと駆け込み、フェラーリに飛び乗った。ボディガードたちが追いかけてきた時には、すでに彼は猛スピードで走り去っていた。リビングは、騒然となっていた。ボディガードたちは暴走する仲間を取り押さえ、杏奈はやっと解放された。ソファに座り込んだ杏奈は、蓮司の愛人として、子供まで産もうとしていた自分を思い返した。なのに、彼はそんな自分の気持ちも踏みにじるのだ。昔はこんな風じゃなかった。幼馴染として、いつも優しく、大切に思ってくれていたのに。今じゃ天音のせいで、まるで仇敵のように扱われ、ボディガードに好き放題されるなんて。悔し涙を流しながら、杏奈はボディガードに平手打ちを食らわせた。しかし、どんなにこのボディガードを罰したところで、怒りはおさまらない。絶対に、彼らを破滅させてやる。杏奈は携帯を取り出し、テレビ局の萌に電話をかけた。「動画を渡したのに、なぜまだ放送しないの?」「高橋さん、明後日は中村さんと渡辺さんの結婚式ですよね?そのタイミングで放送するのが一番効果的だと考えたんです」萌は冷静に説明した。「そんなの待っていられない、今すぐ放送して!」杏奈はもう我慢の限界だった。天音と蓮司が仲睦まじくしているのも、恵里と健太が結婚するのも、何一つとして許せない。どいつもこいつも、自分を見捨てたのだ。「高橋さん……」萌はまだ説得しようとした。杏奈は突き放すように言った。「こんな特ダネ、あなたが要らないならほかにやるわよ」数秒の沈黙の後、萌の決意に満ちた声が聞こえた。「分かりました。すぐに放送します」そして、萌は独り言ちた。「どうせ放送するんだし、少し早くなっただけ」電話を切ると、ものの数分で、蓮司と恵里のスキャンダル動画はネット上に拡散した
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