天音の手のひらは、じっとりと汗をかいていた。手を繋いでいたのだから、要がそれに気づかないはずがない。「俺の娘だ」要は表情一つ変えずに言った。息子が嘘をつくなんて、今まで一度もなかった。裕也と玲奈は明らかにホッとした様子だった。「なぜ連れてこなかったんだ?もっと早く言ってくれればよかったのに。祖父と祖母になるんだから、何も準備してないじゃないか」裕也は、孫の顔を見る日をずっと夢見ていたのだ。裕也の言葉を聞いて、玲奈は訝しげに要たちに尋ねた。「どうして最初から言わなかったの?」天音は、緊張で足がすくむのを感じた。嘘をつくのは、本当に辛い。すると、すかさず要が彼女の腰を抱き寄せた。その細い腰は、片手で掴めるほどだった。「結婚式の後で、娘のことを話するつもりだった。正式に妻として迎える前に、俺の子を産ませてしまった。天音が、うちが厳しい家だと知っていたから。俺があなたたちに責められるのを心配してくれたんだ」要は全ての責任を自分一人に負おうとした。裕也と玲奈は顔を見合わせた。要と天音の仲睦まじい様子を見て、他のことはどうでもよくなったようだ。「天音もお前のため、遠藤家の名声のために考えてたんだ。しかし、名声より俺たちの孫娘の方が大事だ。早く俺たちの孫娘を連れてきて結婚式に出席させろ。あの子も一緒に戸籍に入れよう」裕也は焦っていた。「あなたたち二人の子なら、きっと佐々木家の娘さんより可愛い子になるわ」玲奈もそう言った。仲の良い貴婦人たちは、暇さえあれば孫を連れて玲奈の前に現れ、要が何年も家と揉めていたこと、そして、蛍が頼りにならないことを知っていて、わざと挑発してくるのだ。玲奈も頭に血が上りやすく、集まりで怒って帰宅することもしばしばだった。これで、やっと可愛がれる孫娘ができた。要は天音を見下ろして、尋ねた。「いいか?」その優しい眼差しに、両親は思わず顔を赤らめた。息子は本当に変わった。天音は小さく「うん」と答えた。何故か、要に寄り添い、「正式に妻として迎える前に、俺の子を産ませてしまった」という言葉を聞いているうちに、顔が熱くなった。顔を上げることもできなかった。裕也は嬉しさのあまり、尋ねた。「子供は何という名前だ?」「松田想花だ」要は言った。「天音の母親の苗字
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