蓮司は特殊部隊の隊員と揉み合いになり、スーツの襟はぐしゃぐしゃ、見るも無残な姿だった。大きな手で天音の手首を掴む蓮司の目には、絶対に手放さないという強い意志が宿っていた。まるで天音がまだ蓮司の所有物で、行くも留まるも蓮司が決められるとでも言うように。でも、蓮司に何の資格があるの?天音は激しくもがいて、その手を振り払った。天音は蓮司の手から心電図の結果を奪い取ると、蓮司に叩きつけた。「私の心臓はどこも悪くないわ。私を騙していたのは、隊長じゃない」蓮司は心電図を掴むと、眉をひそめてそれを見た。そこには異常は見られなかった。どうして、異常は見られなかったのか。「天音、もう一回検査しよう」蓮司は天音の手を引いた。天音が振りほどかないのを見て、要の目に冷たい光が宿った。検査室から出てきた特殊部隊の隊員が蓮司を捕らえようとしたが、要の一瞥で動きを止めた。天音の手首は蓮司に固く握られていた。そしてもう片方の手は、指先まで要にしっかりと絡め取られていた。天音は、蓮司のほうへと向き直った。「最初から最後まで私を騙し続けていたのは、あなたよ。あなたは大智を施設に放り込んで、辛い思いをさせた。それなのに、私の前では良き父親を演じていたのね」天音には信じられなかった。蓮司が実の息子に、こんな仕打ちをするなんて。「恵里のために、あなたは何度も私を騙した。あなたたちの娘を、彩花の代わりにしようとした。私が産んだ大智のことなんて少しも愛してないし、私のことも、まったく愛してないのよ!あなたが心から愛しているのは愛莉と恵里、あの二人だけなのよ」「違う、そうじゃないんだ」蓮司は慌てふためいた。天音は嘲るように笑った。「彼女のために、私に贈ったのと同じビルを桜華大学に寄付した。私のために集めたRhマイナス血液型のドナーグループも、彼女が使えるようにした。おまけに、私に贈るために競り落とした『海の星』まで、彼女の首につけてあげてたわね。私の父親と恵理の母親は、間接的に私の母を死に追いやった。それなのに、あなたは?彼らに援助を続けて、のうのうと暮らさせていた!あなたは彼らを、ちやほやして甘やかしたのよ」「天音、すまない、俺が悪かった。母さんに薬を盛られたんだ。どうかしてたんだよ」そのすべてが、蓮司の
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