隊長を取り込もうとしているのか、それとも、不知火基地が目当てなのか……今の時点では、まだ判明できません。道明寺さんとは関係なさそうですが……」暁が分析してみせた。「行けばわかる」要の視線は深く、底が見えなかった。暁は書類をデスクに置くと、書斎のドアをわざと開けたままにした。こうすれば、要にリビングで話している天音と美咲の声が聞こえるからだ。「天音さん、数年前、風間家を出ていく時、東雲グループを慈善団体に寄付したんですよね?」美咲が言った。天音は少し考えてから、「そうよ」と答えた。「その時、依頼した弁護士って風間会長の奥さんだったの、覚えてますか?」「ええ」「風間会長が天音さんの委任状を利用して東雲グループを乗っ取って、風間社長を取締役会から追い出したのよ」その知らせを聞いて、天音の顔は曇った。「風間会長は昔、妻と子供を捨てて、会社の運転資金まで持ち逃げした。そのせいで東雲グループは資金繰りが悪化して、倒産寸前まで追い込まれたのよ」天音はあの時のことを思い出し、ぎゅっと手を握りしめた。「あの人の手に渡って、東雲グループは大丈夫なの?」彼女は、かつて一緒に働いていたコンピューター部門の同僚たちのことを思い出していた。自分のせいで、彼らに迷惑をかけてしまったのではないかと不安だった。「天音さん、安心して。東雲グループの経営は順調ですよ。それに、あの時ちゃんと慈善団体の監督弁護士リストを追加したでしょう」「うん、美月さんを追加したわ」あの時の天音は、大智の将来が守られるか心配だったのだ。「美月さんはとても有能で、慈善基金会がちゃんと回るようにずっと管理してくれてます。利益のほとんどは、あなたの考え通りに社会に還元されてますよ」美咲は優しく語りながら、天音の手を握りしめた。「天音さんの選択は正解でした」「大智は……」天音はなんとか気持ちを落ち着かせた。「本当に蓮司に施設に送られたの?」「ええ、大奥様が止めてもダメだったみたいです」美咲は彼女を慰める。「でも、美月さんがずっと大智くんの面倒を見てくれてますよ。風間社長にクビされても、ずっと大智くんのそばにいらっしゃいました。大智くんがいじめられてたのは、あの子が誰にも言わなかったから。自分が罰を受ければ、お母さんが帰ってきてくれるって信じてたみたいで
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