物語の夜はひどく静かだった。金の格子が鈍く光り、柔らかな絹が寝台を覆い、その中央に青年がひとり、横たわっている。沈黙のなかで、誰もがその寝台の白さに息を潜める。だが今夜は、侍者の手ではなく、見知らぬ“誰か”の影が部屋に差し込むのだった。青年の足首に、冷たい金属の感触が触れた。細い鎖が、軽く肌に巻かれる。その金色の輪を留める手は、かすかに震えていた。だが力は優しかった。青年は抵抗しなかった。ただ、じっと仰向けのまま、薄く目を伏せて呼吸を整える。足元から腰骨、そしてさらに上へと、手のひらが布の上から滑るたび、肌がほのかに熱を帯びていく。アミールの語りは、ひそやかな水音のように続いていた。「…その夜、誰かの手が青年に触れました。最初は足首を、次に腰骨を、そして喉元へと…」王の視線が、アミールの指先へと降りる。指が寝台の端をなぞり、その動きが物語の輪郭をなぞるようだった。王の手が無意識に膝上で動き始める。語りの声が耳に満ちるたび、その衝動が抑えきれなくなる。「誰にも名を呼ばれぬまま、肌の熱だけが青年を縛っていきます」アミールは低く息を吐いた。王の手が、そっとアミールの足首に伸びる。ふと、現実の気配が語りと重なり始める。アミールはそれを拒まなかった。逆らいも、抗いもない。薄く布越しに指が絡む。金の鎖に似た熱が、皮膚の奥で跳ねる。物語の中の青年は、喉元に掌を感じていた。細く脈打つ血の流れ、そこを撫でる手が、まるで見えない名を刻みつけるように優しかった。息が詰まりそうになる。けれど、怖くはなかった。むしろ、その手があることに安堵していた。アミールの声はますます低く、湿り気を帯びていく。物語と現実が溶け合い、語りの間にわずかに震えが混じる。王はその変化に気づく。だが、もう指を止めることはできなかった。「そのとき青年は思いました。自分の身体が誰かの手で温められること、その甘さのなかにしか、本当の“自分”は存在しないのだと」王の手が、アミールの腰骨にまで辿り着く。布越しに感じる熱。それは現実のはずなのに、語りの中で青年が感じたものと同じ重みを持って
ปรับปรุงล่าสุด : 2025-09-05 อ่านเพิ่มเติม