夜はひときわ深く、星々が静かに瞬いている。王宮の高窓からも、その光は小さく揺れて届く。アミールの語りは、まるでその星のひとつひとつを撫でるように、王の意識の奥底をかすめていく。物語の兄弟は、それぞれ別の部屋で祈りを捧げていた。兄は、粗末な祈りの布を肩にかけ、窓辺で星を見上げている。弟もまた、手のひらに古びた花を載せて、同じ夜空を仰いでいた。だが、ふたりの祈りの言葉は決して交わることがない。それぞれの孤独が、同じ空の下で静かに並んでいるだけだった。兄は自分の胸の内に、誰にも言えぬ葛藤を隠している。弟を守りたい。だが、それが自分の手から零れ落ちてしまう恐れを、どうしても拭えない。愛しているのに、近づけば近づくほど傷つけてしまいそうで、つい、距離を置いてしまうのだ。弟は兄の背中を追い続ける。兄がどんな夢を見ているのか、何を恐れているのか、すべて知りたいと願っている。その切実さは、祈りの布をぎゅっと握る手の震えとなって表れた。けれど、どんなに声を上げても、兄の耳には届かない。兄が向けるのは、弟ではなく、はるか遠くの星への眼差しばかりだった。星が一つ流れた。弟は祈る。「兄の孤独が癒えますように」その願いは、夜気に溶けて消えていく。兄もまた、ほとんど同じ言葉を、低くつぶやいていた。「弟が傷つきませんように」それは、誰にも聞かれないようにそっと布にくるまれて、静かな涙となって落ちていく。二人の祈りは、どこまでも平行線のまま交わらない。互いのことを思いながら、その想いは星の間をすり抜ける風のように、決して掴むことはできなかった。弟は兄のすべてを知りたいのに、兄の孤独の深さには決して触れられない。兄は弟を守りたいと願いながらも、守るために自分から離れるしかない。それが、ふたりの痛みだった。王はその語りに身を委ねながら、知らず知らずのうちにアミールへと感情が滲んでいくのを感じていた。どうしようもない喪失感。それはザイードを失った夜と酷似していた。名もなき痛み、誰にも癒せない渇き。その空虚を埋めるために、誰かを強く抱きしめたい衝動だけが胸を満たしていく。アミールは王の視線を受けながら、そっと語りを続ける。弟が祈りを終え、そっと兄の部屋へ近づく場面。扉の隙間
ปรับปรุงล่าสุด : 2025-09-11 อ่านเพิ่มเติม