夜が訪れると、王はいつものように長い帳を引いた小部屋に足を踏み入れる。帳の向こうでは、アミールが小さな蝋燭の灯を見つめていた。淡く揺れる炎の下、その横顔は影と光を交互にまとい、今夜の空気をどこか違うものにしている。王が近づいても、アミールは顔を上げず、指先で膝の上の布をさまよわせるばかりだった。語りが始まらない夜は、これまで一度もなかった。王の足音が絨毯に吸い込まれる音すらも、今夜はやけに大きく響く。王は喉の奥で言葉を飲み込みながら、静かにアミールの横に座る。蝋燭の光が、ふたりの間に長い沈黙の糸を垂らしていた。王は問いかけたかった。「なぜ黙っている」と。だが、その問いすら声にできずにいる自分を、内心で持て余す。アミールの沈黙は、拒絶とも、懇願とも、どちらにも取れる微妙なものだった。王はその曖昧さに、じりじりと焦りと渇きを覚える。語りを求めるのは王自身だ。物語に癒され、夜ごとにアミールの声を求め、救われてきた。なのに今夜は、その声がどこにもない。蝋燭の火が風もないのに揺れる。アミールの瞳は深く伏せられたまま、ただ静かに、閉ざされた唇だけがやけに白く見える。その唇が、一語も零さぬことに、王は目が離せなくなる。ふたりの間に、息遣いだけが微かに流れる。王は思わず自分の膝に手を置き、爪を強く押し立てる。その小さな痛みで、今夜の「違い」を実感する。アミールの肩が、ごくわずかに震えた。王はその変化を見逃さない。けれど問いただすには、あまりにもその背中が脆く見える。強い言葉を投げつければ、今にも壊れてしまうかもしれない――そんな予感が王の中に芽生える。蝋燭の火がまた揺れる。部屋の片隅には曇りガラス越しの夜の闇が滲んでいる。王は無意識に、アミールの手の甲へそっと指を伸ばしかける。けれどその手は、ためらいのなかで空中に留まり、降ろすことも、触れることもできずにいた。静寂が続く。王はやがて、声を出さずにただ心の中で問い続ける。「なぜ語らぬ?」と。その問いは、アミールの沈黙と同じだけの重みを持って、ふたりのあいだに落ちていく。アミールの呼吸が浅くなる。まるで、語り出そうとするその一歩手前で、自らの意思を押しとどめているかのようだった。その姿に王は、語ることが
ปรับปรุงล่าสุด : 2025-09-15 อ่านเพิ่มเติม