梨沙子が智美の見舞いに訪れた。ベッドの上で呆然としている智美を見て、梨沙子は思わず表情を曇らせた。「智美、本当に心臓が止まるかと思ったわ。岡田さんがすぐに動いてくれたから良かったものの……」智美は彼女をじっと見つめ、唐突に尋ねた。「梨沙子、離婚してから、前の人とよりを戻したいと思ったことはある?」「絶対にないわ」迷いのない即答だった。智美は眉間に指を当て、ゆっくりともみほぐした。「そうよね。離婚まで至ったなら、もう全部壊れてしまったということだもの。意地を張るためだけに、そんな選択はできないわ」記憶の中にいるあの自分が、どうしても本当の自分とは思えなかった。「なんでそんなこと聞くの?もしかして、拉致された件に……前の旦那さんが?」智美には分からなかった。ただ、あの男が自分を攫ったのは、金のためでも恨みのためでもない。ならば、何のために?検査のための入院が一週間続いた後、智美は退院を申し出た。悠人が心配そうに言った。「まだ検査結果が揃っていない。もう少し様子を見よう」智美は頑として譲らなかった。「仕事があるから。その後は定期的に来て診てもらうわ」今すぐ診断が下りるわけでも、治療が始まるわけでもない。このまま病院に閉じこもっていても時間を無駄にするだけで、余計なことまで考え込んでしまう。仕事に没頭して、余計なことを考えないようにしたかった。悠人も折れるしかなかった。「ボディガードを四人増やした。外出するときは必ず付き添わせる」「分かった」智美は断る気にはならなかった。一晩自宅でゆっくり休み、翌日から仕事に戻った。心配性の悠人は、自ら毎日の送り迎えを買って出た。智美は不思議な記憶の断片に悩まされながらも、自分の気持ちに素直になって、悠人の気遣いを受け入れることにした。そうして穏やかな日々が一週間続いた頃、ついに祐介の堪忍袋の緒が切れた。彼は催眠術師に電話を入れた。「催眠は成功したと言ったはずだ。なら今ごろ、智美が俺を一番愛しているはずだろ。俺が羽弥市に来たことはニュースで知っているはずなのに、なぜ会いに来ない?」医師は困惑を隠しきれない声で答えた。「それは……催眠自体は確実に成功しております。最も熟練した精神科医が診たとしても、異常を指摘することは不可能だと断言できます
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