雨音は、ただ玲にあれこれ抱え込まず吐き出してほしかっただけだった。だが、まさかここまで勢いよく飲むとは思ってもいなかった。玲は酒に弱いわけではないが、決して強いほうでもない。だが、今の玲の必死さは、雨音に痛いほど理解できた。──雪乃と弘樹。もしあの二人が、ずっと冷たく無情なままだったなら、玲も「もともとそういう人たちなんだ」と自分を納得させられただろう。でも現実は違う。玲が失望しきって離れ、秀一と結婚したあとになって、二人はまるで別人のように態度を変えた。玲に価値が生まれない限り、母親らしく振る舞えないのか?玲がほかの人を好きになってからじゃないと、優しい言葉をかけられないのか?──玲がただの玲だけじゃ、ダメなのか?そんな残酷な問いが、どうしても胸に刺さる。涙をにじませ酒をあおる玲を見て、雨音は胸が締めつけられ、そっと息をついた。だが次の瞬間、玲がまたボトルを持ち上げ、なみなみと注ごうとしたので、雨音は慌てて立ち上がった。だが止めに入ろうとしたその腕を、海斗の手がやわらかく押さえた。彼が何を言うより早く、玲の手首はすでに誰かに掴まれていた。──秀一が来たのだ。暖かい灯りの下、長身の男が静かに立っていた。彫りの深い端正な横顔に、影の落ちた黒い瞳。角度のせいか、その表情が一瞬冷たく見えて、玲の手首をつかむ指先が白くこわばる。玲のさっきの話を聞かれたと勘違いし、雨音は慌てて口を開いた。「藤原さん、玲ちゃんの言ってた弘樹くんの話、あれ深い意味じゃなくて──」「……どうしてこんな飲み方をしてる?」秀一は雨音の言葉を遮り、玲の火照った頬を見つめながら、低い声で問う。怒りではない。嫉妬でもない。ただ、体を壊すのではないかという、まっすぐな心配だけがその声音にあった。その一言で、雨音は肩の力を抜き、正直に今日の出来事──雪乃が再び玲に会いに来た話を説明した。そして、思い出したように付け加える。「雪乃さんが以前一度歩み寄った時、あれくらいじゃ玲ちゃんはここまで落ち込みません。だから今日の二度目の和解で、玲ちゃんは雪乃さんの様子に何か引っかかるところを見つけたんだと思います。でも電話では話したがらなくて……だから今日、一緒に軽く飲んで気持ちをほぐそうと思ったんですけど、まさかこんなに飲むとは……」それから、雨音は慎
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