All Chapters of そろそろ別れてくれ〜恋焦がれるエリート社長の三年間〜: Chapter 401

401 Chapters

第401話

玲は電話に出なかった。忙しいのかもしれないし、着信に気づいたが無視しているのかもしれない。弘樹は三度、四度と続けて電話をかけた。返ってくるのは、冷たい機械音声の「ただいま電話に出ることができません」だけだった。窓の外で白い月光が落ちている。弘樹の眉間は、その光の下で深く寄せられた。次の瞬間、彼はスマホの電源を切り、コートをつかむと、玲の元へ向かう決意を固めた。――今夜だけは、どうしても会わなければ。玲を、こんな地獄のような現実の中に一人で放り込むわけにはいかなかった。実の父は事故死ではなく殺された、しかもその犯人が実の母だった。そんな残酷すぎる真実を、玲だけに背負わせることなどできない。そう決意してドアに手を伸ばした瞬間、ドアは外側から押し開けられた。弘樹が一瞬、思考を止める。その視界に飛び込んできたのは、見慣れているはずなのに、どこか異様に恐ろしく見える顔――茂だった。「手は、もう治ったのか?」茂は細めた目で、包帯に覆われた弘樹の手をじっと見つめる。後頭部が強張るような緊張が走った。それでも弘樹は表情を動かさず、手を隠そうともしなかった。「……いえ、まだです。入院していても回復が遅くて。途中、何度も邪魔が入って休めなかったので、あと半月は必要だと」嘘ではない。綾のわがままに付き合わされ、さらに強引に身体の関係を求められたせいで、傷口が開いたのは一度や二度ではなかった。医者も本気で頭を抱えるほどだった。だが茂は、そんな事情などどうでもいいという様子で、薄く笑った。「弘樹。そんな苦し紛れの言い訳で、私が騙されると思ったか?君のことだ、綾を避けたいだけなら、いくらでも方法はあったはずだ。なのに自分を傷つけて、綾を怒らせ続けた。結局、私に利用されることを恐れたからだろう?」実の息子だからこそ、茂には確信があった。目的のためなら、他人だけでなく自分を犠牲にすることも厭わない。この点において、本当に自分とよく似ている。だが、弘樹が玲を愛するあまり、茂に利用されて玲を傷つけるくらいなら、自分の体を壊す道を選ぶとは――茂もそこまでは読んでいなかった。弘樹は何も言わない。ただ、痩せた顔には、こわばった表情が浮かぶ。その顔を見た瞬間、茂のわずかに残っていた忍耐がぷつりと切れた。雪乃の騒動でとうに苛立ち
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