確かに――弘樹が言ったとおり、玲は過去の出来事を全部覚えている。けれど、それは「いい思い出」だけではなかった。「あなた……自分に都合のいい部分だけ覚えてるんじゃない?」玲は呆れたように眉を寄せ、一歩後ろへ下がり、距離を取った。「さっきあなたが挙げた三つの思い出、全部聞いた。じゃあ今度は――私の番ね。確かに、母さんが私に無関心だったから、毎年、誕生日を一緒に祝ってくれたのはあなた。ただ……いつも部屋に隠れてこっそりとやってた。茂さんが急に帰ってきた時なんて、私がろうそくを吹く前に、あなたはケーキを丸ごとゴミ箱に捨てたよね?見つかったら困るって。そして……私がつらくて高瀬家から逃げ出して、父さんのお墓に行った時――あなたは必ず迎えに来てくれた。でもね、あそこだけが、私にとってやっと呼吸できる場所だったの。あなたも知ってたはずなのに……どうして毎回急いで連れ戻そうとしたの?本当に私を心配してた?それとも……あなたの手の届かない所に置いておきたくなかっただけ?最後に、私をいじめてた使用人を、あなたが何度も辞めさせてくれたこと。あの時私は心から感謝した。本当に、救われたと思ってた」そこまで言い、玲はスマホを取り出し、二ヶ月前のある投稿を開いて見せた。そして、皮肉に口角を上げる。「――これ。あなたが綾のために流した、私を浮気女だと決めつけるデマ記事。十三年前、私をいじめたあの使用人を辞めさせたのは確かにあなただった。でも――十三年後、あなたはその人を見つけ、彼女と私に嘘を塗りたくってネット中に撒いた。下品な噂まで添えてね。結果、私は……何万人もの見知らぬ人に罵倒された。弘樹、あなた……私を大切にしていたって言えるの?秀一さんと同じ土俵に立てると、本気で思ってるの?」――思い出なんて、綺麗なものだけじゃない。恋という色眼鏡が外れた時、残っていたのはとっくに形を失ったものだった。玲は、もうこれ以上昔の話で弘樹を責めるつもりはなかった。それだけの価値すら、もう感じていなかったからだ。「私はもう秀一さんと結婚して……本物の幸せを手に入れたの」彼女は柔らかく微笑む。さっき、自分を庇うために一人で病室へ向かった秀一の背中を思い出しながら。玲は弘樹を見つめ、落ち着いた声で告げる。「綾が留置場で他の人と喧嘩して……子宮破裂
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