玲はまさか――雪乃が数日を置いても、ここまでしつこく食い下がってくるとは思っていなかった。リビングのソファに腰を下ろし、向こうに座る雪乃を無表情で見つめる。「で?今日はまた何の用なの?」「玲、そう警戒しないで。今日は高瀬家を代表して、大事なものを届けに来たの」玲の冷ややかな態度に、雪乃は内心ざらつくものを覚えながらも、やるべきことを思い出して無理に微笑む。そしてバッグから、招待状を取り出した。「これは弘樹さんと綾さんの婚約式の招待状。半月後にシャングリラホテルでやるって、茂さんが決めたの。式は高瀬家が主催だから、招待状もこちらで届けることになっているの」だからこそ――玲は弘樹と綾の義姉であるにもかかわらず、招待状を受け取るのは雪乃から、という面倒な形になる。恵子も、その筋だけは立てざるを得ず、以前のように雪乃を追い返すことはできなかった。綾は藤原家の娘として、本来ならロイヤルホテルで婚約式を挙げたいと強く望んでいた。だがその願いは秀一にあっさり退けられた。シャングリラホテル――それが高瀬家にとって、見つけられる一番いい場所だった。とはいえ、半月後に弘樹と綾が婚約?半月……計算が合っていれば、その頃ちょうど綾は、ようやく留置場から出られる程度の時期だ。妙だ、と玲は思う。以前、茂が弘樹と綾の縁談に固執していた頃、玲はそれを「高瀬家の格を上げたいから」と解釈していた。綾を嫁にもらうのは、彼らにとって得になると信じているのだと。だが今は違う。綾は立て続けに問題を起こし、名声も藤原家での立場もガタ落ちしている。そんな状態の綾を迎えれば、高瀬家にとっては何の得にもならないどころか、茂という義父も、弘樹という夫も、世間から笑われるだけだ。それでもなお、茂は固執するどころか、婚約式を積極的に前へ押し進めている。――茂はいったい何を考えているのか、玲にはさっぱりだった。もっとも、これは高瀬家と綾の問題だ。自分が首を突っ込む必要はどこにもない。「招待状は受け取るわ。高瀬家のためというより、藤原家の手前、参加しないわけにはいかないし」玲は招待状を受け取り、雪乃には一杯の茶すら淹れないまま、淡々と言った。「用事が済んだのなら、そろそろ帰ってもらえる?」雪乃は一瞬、言葉を詰まらせた。さっきまで浮かべていた微笑は、
Read more